2018/07/23 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 夜の騒がしい酒場の中で、一人の男が呑んでいる。青い闘牛士服を着て、二つの剣を腰に下げた、やや細身の男だ。彼は入りしなエールをジョッキで注文し、それを美味そうに煽った。

「うーん、美味しい!やっぱり海の街は良いね。色んな所から酒が入る」

「もう一杯!今度はもうちょっと強めので!」とマスターに声をかけ、再び酒を煽る。
服装と腰に下げた物さえ無ければ、何処にでも要る普通の若者だ。

クレス・ローベルク > エール、ワイン、それから変わり種として置いてある清酒まで堪能した男は、ふと周囲を見渡す。基本的に湾港労働は集団労働が多いためか、仲間で呑んでいる者が多い。
それを見て、男は一つ溜息をついた。

「あー、何かボッチ気分……。うーん、『美少女に酌をして欲しい!』とまでは言わないけど、何か話でもしたい気分だねえ……。職場の人連れてくればよかったかな」

いや、職場の人達ってつまり商売敵だから、そこまで仲良くしてはもらえないか……などと呟きつつ、先程つまみとして注文した鶏肉の煮込みを一口。

クレス・ローベルク > 「金ならあるんだから、もう少し高目の店行っても良かったかなあ……」

無論、それはそれで客層が変わるだけで結局ボッチには変わりないだろうが、それでもこの賑やかさの中一人取り残されるよりはマシだった……という後悔が今更になって後ろ髪を引く。

「いっその事お酒じゃなくて料理中心で行くかな。お腹へってるし。えーと、少しずつ食べるとして串焼き、ピクルス、あ、お刺身も良いな……」

そう言って注文して数十分後、机に料理の皿が並んだ。
ホタテのバター焼き、小魚の焼き魚、刺し身、海産物を使ったスープ……それと幾つかの肉料理。大体10種類ぐらいが机の上にある。だが……

「やっべ、ちょっと多すぎたかな……」

机一杯に広げられた料理の数々を見て、ちょっと冷や汗が出た。
食べられなくはない、が、全部食べるとやや苦しくなるぐらいの量だ。調子に乗って大盛りのご飯まで頼んだのも、クレスの苦境を加速させていた。

「……まあ、勿体無い事にはならないから、まだましかな……」

クレス・ローベルク > もぐもぐ。もぐもぐ。最初は空腹の為に箸が進んでいたが、やがて少しずつ、少しずつ、料理が口に入る頻度が減っていく。
言わずもがな、満腹の為である。

「くそう、美味しい、美味しいのに苦しい……」

生じ使っている魚が美味しいが故に、その味がくどく感じて辛い。
いっそ残した方が魚に取っても自分にとっても良いのではと思うのだが、もともとの育ちが良すぎるのか、それとも単にケチなのか、強引に口に突っ込んでいく。

「元々は楽しくお酒を飲むつもりだったのに……!」

気づけば孤独を噛み締めつつ、自分で頼んだ料理に苦しめられている。「複数人で食べれば美味しかったろうに」という湧き上がる気持ちが、一層自分の孤独感を高める。――気付けば少し涙目の25歳であった。

クレス・ローベルク > 「げっふ。食った食った……」

結局、全部完食し、腹をさすりながらクレスはつぶやいた。
空になった皿を満足気に見渡すと、背もたれによりかかり姿勢を楽にする。
どうやら暫く休んでから、出発するつもりのようだ。

クレス・ローベルク > そしてクレスは酒場から出ていった……
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からクレス・ローベルクさんが去りました。