2018/01/22 のログ
エルフリーデ > 「……そうですの? でも、あと少しで出産ですわ。身体を労るのも大切ですわ」

てっきり仕事を色々任せてくる組合長のせいだろうと思っていたのもあり、自ら望んだと聞けば、意外というように驚きの様子を僅かに見せる。
しかし、それでも二人分の負荷がかかる身体なのだからと、苦笑いで注意を促してつつ、少女のもとへ。

『だって怒らなそうだし、こう……変なことしても、優しく窘めてくれそうだもん』
『だよねぇ、忙しいとあっという間……ぁ、いまのそうなの? 元気だねっ』
『ふふっ、可愛い~! お熱いですね~!』

自覚が無さそうな様子に、重ねるように説明の言葉をかけていくと、視線はエルフリーデの方へ。
何気なくその視線を追いかけると、嗚呼といった様子で少女が納得するが、あれは違うというように苦笑いで頭を振っていた。
エルちゃんはちょっとドヤりすぎ だの、いい子だけど、お淑やかというか、お嬢様なんだよねぇ だのと、お淑やかとは異なる答えを並べる。
とはいえ、嫌っているのではなく、ハッキリとした性格がお淑やかとは重ならないらしい。
餌に群がる猫の如く彼女にじゃれついている少女達の元へ戻ると、目的の店へと向かっていく。

「そうですの? てっきり……王族か武家の御令嬢かと思っていましたわ」

好き勝手動き回る彼女達とは異なり、ハンガーラックの前で立ち止まってしまう彼女の言葉に、意外というように瞳が開かれる。
口数の少なさや、身体の所々から感じる戦う筋の作りからは王族としての護身で技術を学んだか、若しくは武家の娘として戦うためにつけたものという印象を覚えていた。
驚きながらも、それならばと手に取ったのはグレー色のワンピースだ。
シンプルなデザインながら、胸元から下のあたりがストンと落ちるようなスカート状のデザイン。
袖のところは肌に吸い付くような少しタイトなデザインだが、胸元よりも腹部のほうが大きくなると、細身のデザインとの対象差で妊婦故の膨らみだと、違和感をなくすもの。
首元も寒くならないようにタートルネックのくしゅくしゅとしたデザインをあしらった、可愛らしい遊び心もある。

「これなら、大きくなっても身体に負荷は掛かりませんわ」

どうかしら? と言いたげに、ワンピースを広げるようにして彼女に見せつけながら、答えを求めるように見上げた。

ルクレース > 「ええ。収入源別の資料作成と、実際の現場を知っておきたかったので…。可能な限り、お手伝いができればと思いまして…。気をつけます…。」

彼も、事あるごとに無理をしていないかと問いかけ、無理をしないようにと念を押してくれる。
大切な彼との間にできた命。けれど、もっとお腹が大きくなったら、子供が生まれたら、暫くは彼の補佐をすることはできなくなってしまう。
仕事で疲れた心を、暖かく部屋で迎えて癒してくれれば十分と、彼は言うが少しでも何か手伝いたいと思って、
無理のない範囲でと心がけているつもりではあるが、少女からも体を労わるように注意されて、やはり焦りが自分の中のあったのだろうかと考え直す。

「……どう、でしょうか…嗜めるという経験がないので、実際の場面になってみないとわかりません、ね…。一日に数回は、こうやって動いているのがわかります。もっと大きくなったら、蹴る感覚がもっと強くなるらしいです。…………。」

誰かを叱ったり、窘めたりというような指導する立場にはなったことがないと、少女の想像に微かに首を傾げて考えながら、視線はエルフリーデへと向かう。
その視線を感じ取った少女も振り返ると、視線の先にいるエルフリーデを捉えて、苦笑いを浮かべながら首を横に振ったのに、数度瞬きする。
傍から見ていると、面倒見のいい気遣いのできる少女のようだが…お淑やかとお嬢様なのは違うのだろうか、と更に首をかしげることになった。

「………出生や生い立ちは…その、少し特殊なのでご令嬢というわけではありません。」


かなり特殊な生い立ちは、説明するのが少々難しいところ。
どう説明したものかと、考える間また沈黙が流れ、カルネテル王家の血を濃く受け継いでいることを言うべきか迷ったが、混乱させるだけかと思うと簡潔な言葉になってしまった。
驚きながらも、彼女が手にとったのは腹部がゆったりとしたグレーのワンピース。
エンパイアスカートになったそれは、これ以上お腹が大きくなったとしても、腹部の締めつけはまったくゼロといっていいデザインだった。
体の冷えも考慮して、首元はタートルネックになっており、シンプルながらも遊び心もあるものだ。
色もグレーと落ち着いた色合いだが…気になるのは…

「お腹がとてもゆったりとしていて楽そうですし、首元が可愛らしいですね。…あの方も、気に入ってくださるでしょうか…。」

スカート部分を広げて、どうかしら?とワンピースを見せられるのにルーク自身は気に入った様子だったが、ぽつりとそんな呟きが溢れる。

エルフリーデ > 固くも丁寧に答えていくルークの様子に、少女達もあれやこれやと言葉を重ねていくが、今は彼女に似合いそうなものを探して、散らばっていく。
流石に普段のように騒がしくはならないのは、周りの雰囲気を察してというところだろう。

「奥様がいつもの笑顔で、仕事から変えられた組合長を労っていただければ、それだけでも心身の癒やしになりますわ」

服を選びつつ、彼女の焦りに応える言葉は彼がいうのとほぼ同じ。
やはり、愛する人が迎えてくれるだけでも疲れというのは変わるものだが……同性として、それだけでいいのだろうかと悩む気持ちは察するところがあった。

「とはいえ……手持ち無沙汰になるのが不安な気持ちは、わかりますの。例えば……そうですわね、オイルマッサージとかなら、あまり身体に負荷がかからないでしょうし、しっかり疲れが取れそうですわ」

自分がそうなったらどうだろうか、そう思えば落ち着きのない自分も無利子なギリギリまで動くのは簡単に想像できるからで。
提案したのは、集落の一部でも行われているマッサージ。
心地よい香りと熱を与えるオイルで身体を程よくもみほぐし、肌をなでていくそれは、人気のスポットの一つだ。
疲れも取れるし、実働的なものもあると考えたのだろう。
提案しつつ、選び取ったワンピースを見せれば、納得した様子に良かったと笑みを浮かべるが。

「お熱いですわね……でも、あの方なら喜んでくれますわ。ちょっと変わってますが、無粋な事はしない方ですもの」

彼女が気に入ったものなら、彼も喜ぶはずとクスクスと微笑むものの、ちょっとだけ表情が赤くなっていくのは、彼女のひっそりとした思慕が溢れてくるからだろう。
そんなゆったりとした買い物の時間を過ごしつつ、少女達が戻ってくれば、これはどう? これは? と、次々に飛びついてくる。
戸惑うだろう彼女を前に、順番にと代わりに制しながら、騒がしい買い物の時は過ぎていく……。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からエルフリーデさんが去りました。
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