2017/12/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にティーアさんが現れました。
ティーア > 所用で出ていたバニーガールが勤める建物が見えた頃、頬を冷たいなにかが触れた。
上空を見上げると同時に周りからも『降ってきたな』などと聞こえてくる。
夜空をどんよりと覆う雪雲から降ってくる結晶はちらほら。
この調子なら積もる事はないかもしれないが、ただでさえ冷たい空気がさらに冷やされ、ウサギ娘は駆け足になる。

「ふぅ。今夜は寒いと思った。
 ――――寒くないですかー?暖まるついでに懐も暖めて行きません?」

勤めるカジノの入り口まで来ると屋根の下で雪を払っていたが、道行く人々に声をかけておく。
実際には懐が暖まって帰れる者などごくわずかだ。
しかしこういったものは、だからこそ楽しいのだろう。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にジアさんが現れました。
ジア > 工房の仕事がひと段落した夜から働ける場所として、カジノの小間使いを始めた少年は、歪んだ金具を直した看板を一人で持って入り口から出てくる。
小柄故、殆ど看板に身体が隠れてしまいそうになりながら危なっかしく歩いていて。
それでも鍛冶仕事で鍛えた成果の両腕でしっかりと支える看板の向こうからは、町の喧噪が伝え聴こえてくる。

「あ、雪……。
あ、ええと、ティーア先輩?戻られたんですか?」

肌寒い空気を感じて上を向けば、ひらひらと落ちてくる白い雪を見て、白い息が漏れる。
そんな時、看板越しに聴こえた声に、少年は看板からひょこっと顔を出すようにして声をかけようとする。
ディーラーとしての仕事はあまりなく、雑用ばかりしている少年は、たまに顔を合わせる程度だった。

ティーア > ちょうど1人の男が釣れたところだった。
この街に来る者は少なからず賭け事に興味があるのか、客寄せはそう難しくない。
彼と少年はちょうどすれ違うような状態となり、バニーの視線も客から少年へと移る。

「はい。今。雪が降ってきたんですよ。そんなに強くはないですけど。
 でもあんまり遅いと道が凍るかも…。ジア君はまだ小さいですし、早めに切り上げても構いませんからね」

職人に言わせれば彼の実力がどの程度なのか分からないが、少なくとも素人目には立派な職人である少年。
だが、それはそれ。どう見ても自分よりかなり年下なので子供扱いはする。
雪のおかげで少し湿った肩を撫でながら建物のなかに入ると、そこは熱気に満ちていた。
魔導機で循環する熱気だけではなく、賭け事に熱中する人々が発する熱。
外気との差に身震いし、片隅に設置されたバーでゴソゴソ。
温かい飲み物を準備中。ふたつ。

ジア > 自分の横を通っていく客に、少年は持っている看板を立てて慌てて道をあける。
看板自体は金具さえ直せば吊り下げるだけなので、作業もすぐに終わって。
客に続いてカジノに戻る相手の背中を追いかけて、再び扉をくぐっていく。

「いっぱい積もったら、雪だるま作ってみたいです。
わかりましたっ。でも、ここから宿は遠いから、中にいた方が暖かいかもしれませんね。
わあっ、ティーア先輩ありがとうございます!」

子ども扱いな相手の言葉に違わない気質が出てしまっていて。
肌寒い外気を感じてから戻れば、マヒしかけていた感覚がリセットされてその熱気に苦笑する。
そのまま相手の背中についていくように歩いていく少年は、バーで相手が用意してくれる飲み物を受け取って笑顔になる。
作業で冷えた手をコップに触れさせて温めながら、飲み物を口にしてほっと溜息をついた。

「ティーア先輩は、こんな寒い中外でお仕事だったんですか?」

飲み物を手に、バーの椅子にちょこんと座る少年は、先ほど帰ってきた相手の方を見て首をかしげる。
このカジノにいる女性は誰もがそうであるが、その身体のラインを強調して露出も多い恰好に心配そうな目を向ける。
しかし、目のやりどころに困る恰好を見続けていることに後ろめたさを覚えて、すぐに視線を前に戻してしまった。

ティーア > 「ジア君は雪だるま作った事ないんですか?南国出身とか?」

『作ってみたい』という言い方に引っかかり、訊ねながら自らも飲み物一口。
ホットミルクに体を温める目的でアルコールが少々入ったもの。
体の内側から暖まっていく心地に頬を緩ませ、少年の問いに頷き。

「お仕事もあったんですけど、ついでにちょーっと買い物もしてきました。
 今日の営業が終わったらお客さんとエッチするっていう娘がいたので、妊娠しないお薬を」

少年の視線が辿る変化を気にするでもなく、明け透けな事情を言ってのける。
『魔道具のお店で』『遺跡にしかいないピンクスライムが原料だとか』などと無駄な情報も口にして。

「――――あ、おかわり欲しかったら言ってくださいね」

世間話感覚なので、その話題の最中にも相手の飲み具合を見つつ暢気な発言が混じる。
ここで働くまではそう軽い貞操観念でもなかったハズだが、今や色々毒されており。

ジア > 「…あ、ええと、そ、そんな感じで、雪もあんまり見たことないんです」

相手の問いに、それ自体は不思議ではないだろうが、明らかにしまった、という表情を浮かべてしまう少年。
この辺りが、少年がディーラーを任されない所以でもあった。
そして、身体を温めるためのアルコールが入っていることを知らないままに、誤魔化すようにぐいっとホットミルクを喉に通す。
少しぽーっと熱に浮かされたような心地になる少年の変化は、外から見れば紅潮する様子もわからないだろう。

「へぇ、何の買い物……えっ?あ、あはは、そうなんですね…」

街に出て買ってきた、という言葉に反応したところで、明け透けな情報に一瞬怯む少年。
それから、続けて告げられる言葉がぐるぐると頭の中を回転し、再び飲み物に口をつける。
それがまた、少年の身体にアルコールを入れることになり、その裡にある情念の火に油の如く降り注いでいって。

「あ、いえ、おいしかったです、ありがとうございます…。
あの、ティーア先輩、そのエッチのためのお薬って、余ってたりしませんか?」

おかわりについて、少年はニッコリと笑って首を左右に振りながらぺこりとお辞儀をする。
そして、少しの間黙っていた少年は、くてっと相手の身体に頭を預けるように寄りかかろうとする。
とろんとした瞳で相手を見上げながら、いつもよりも熱くなっている肌を触れさせていて。