2016/12/18 のログ
■ジア > 「―――っ!?」
錆びている鉄のドアは、大人並みの少年の力を持ってしても中々重く、音を立てないように注意すればゆっくりとした動きで開けることになる。
あともう少しで扉が開く、というところで背後から掛けられた声に、ビクンと声もなく肩を跳ねさせていき、手を離した拍子にドアが閉じてしまう。
恐る恐る振り返ると、そこには先輩である従業員の青年が笑顔で立っていた。
「あ、えっと、ボクその、気分が悪くて、気が付いたらここにいて…」
仕事をさぼってしまったと思われたくない一心で、先輩に言い訳する少年。
先輩の青年はそれを笑って流しながら、ここは殆ど使っていない部屋で、鍵もかけられないから放置しているのだと説明してくれた。
それをどこか上の空で聴きながら、少年はスタッフ用の休憩室まで連れられて行く。
まだ熱に浮かされたようにボーッとしている少年の視点は低く、受け取った水の入ったグラスを俯いて見つめているから気が付かなかった。
そう語っている先輩の目が笑っていなかったことと、閉じたはずのドアが薄っすらと開き、向こうから何かが少年の背中を見ていたことに―――。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からジアさんが去りました。