2016/05/14 のログ
■ハーディ > 転移の仕掛けを施したガレオン船により、帰りは驚くほどあっさりとした帰港だった。
今夜は情報収集をメインに。明日以降、先方の欲しがる穀物類を調達せねばならない。
手元に集まった情報では、シェンヤン山間部に蕎麦らしき植物があるそうだ。
麦とコメは各地域から独自に調達するしかないらしい。
なにせ戦乱の世、兵糧に直結するであろう麦類はその多くが徴収され、また国民の腹を満たし、残りも地元で消費されるかどうかくらいで、なかなか正規ルートで買い取るのは難しい。
あとは色々訳ありな非正規ルート、それに開発から取り残された辺境の村落を押さえておく程度か。
『ですが、ルミナスの森に行くにはあの辺りを通らねばいかんでしょう。……また絨毯使いますか?』
部下の一人が頭に囁くと、ハーディは首を振って答えた。
「いいや、あまり大勢で行くと見つかりやすい。
その盗賊団の規模、出没地域、合わせて、他にルートがないか調べよう。
あれだけ大きな森だ、未踏の道などいくらでもあるだろう」
それより、と話題を変える。
「良い船も手に入ったことだし、そろそろ行商人の同業と接触する頃合だろうな。
この辺りはそうでもないが、マグメール王都近辺はもっと人通りが多いと聞く。
今までは少人数の隊商だから省略してきたが、各所に謁見の申請もしておいたほうがいいだろう。
武器取り扱い、私兵囲い込み、急な規模拡大。これら3つは権力者に目をつけられやすいから、控えてきたが、
ほら、武装商船買っちゃっただろ。妙な因縁つけられないように、手を回しておかないと」
■ハーディ > ざり、と近づいてくる足音に顔を上げ、目線がそちらを眺めれば。
恰幅がいいというか、赤ら顔で真ん丸な風船のような体型の親父が、ニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
背後には顔に傷をもつ、いかつい男たち数名。毛むくじゃらの太い腕に奴隷だろうか、小柄な少女を抱え、ハーディ達の前で鼻を盛大に鳴らした。
『おや、生きとったんかい。貧乏国家の田舎商人どの。
ただの商船一隻で海に飛び出したそうだな、ここしばらく姿が見えんかったから、てっきりくたばったかと思っとったぞ。
それともまさか、今の儂の前に居るは幽霊かね』
丸太のような手で女の体を弄りながら、ぐひゃひゃと笑い、わざとらしく十字を切った。
暴言にピクリと眉を動かしながらも、浮足立つ護衛を片手で制し、ハーディは言葉を返す。
「……お久しゅうございますな。
そちらこそ、砂漠に金脈を探しに行ったと伺いましたが、結局見つかったので?
今の時期だと砂嵐と、砂ダコやサンドワーム等の魔物でそれどころじゃあなかったでしょう。
あ、でもお仲間が来たと思って寄ってきたのかもしれませんな」
最後の一行は男の顔を見ながら、肩をすくめて答える。
『この野郎、人がせっかく気にかけてやったのにひでぇ言い草だぜ』
「そう思うなら暴言くらいおさめたらどうです、教養の低さが露呈しますよ」
『がはははは!』
「ははははは!」
渇いた笑いが響いた後、男の顔がタコのように真っ赤に茹で上がったが、
近づいてくる黒服に気付き、かろうじて拳を握りこむにとどめた。
『ふん、せいぜい潰されんように気をつけるこった。
マグメールの王族貴族連中はお前が思ってるより曲者だぞ』
捨て台詞を吐くと、のっしのっしと遠ざかっていく。
その後姿を見ながら、ハーディはつぶやいた。
「誰も事を構えるなんて言ってないんですけどねえ。一体どこから聴いていたのやら。
ま、ご忠告はいただいておきますよ」
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 商人たちの集会所」からハーディさんが去りました。