2015/12/09 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」にセツさんが現れました。
■セツ > カチャン、カチャンというガラス同士の触れ合う音と、ざわめきと呼ぶには幾ばくか大きすぎる男達の声。
露出こそ多くとも、見せる気も覇気も無いウェイトレスの瞳が行き交う酒場。
その端にある申し訳程度のステージに腰掛けている、黒髪の女。
長いその髪をポニーテールにまとめて、涼やかな瞳を手元に落とす。
バンドネオンと呼ばれるその楽器を自在に操りながら、酒場の喧騒に切なげなメロディを混ぜて、雰囲気を形作っていく。
手荷物は少しだけ。船で降り立った街々で、こうやって路銀を稼ぐ日々。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」にフラウメオーさんが現れました。
■セツ > 物憂げな悲恋の歌を、穏やかに聞く人はあまりいない。
今から賭け事に興じようという人間は興奮しているのだから、静かに曲に耳を落とすわけもなく。……そんな人間は酒場などに立ち寄らない。
賭け事に勝った相手は何をしても上機嫌。
負けた相手の前であまりに目立てば絡まれる。そういうことだ。
「ん、……っと次は明るい方がいいのかい。」
おそらく、賭博をしにやってきたのだろう。
見るからに人相の悪い男が銅貨を投げてよこせば、それをひらりと掌で受けて。
まあ、お仕事なのだから頼まれれば弾かぬわけにもいくまい。
腕を、指を少しだけ強く……メリハリのついた動かし方をし始めれば、情熱的な踊りの曲が酒場を包み込み。
■フラウメオー > 潮騒の香りとはまた別の、何処か生臭さすら感じさせる生の匂いが満ちている場所。
爺様が生きていたらきっと、そんな風に言ったんだろうなと来る度に思い、前回もそう思ったなと一人口端が緩んだ。
「騒乱騒擾、御家騒動に戦争とまあ、乱れに乱れて好都合ったら無い。」
良くも悪くも動いている国。というものは物入りで他国と比べて様々な品物が高く売れる。
だから此処最近の私は此処マグ・メールを起点として彼方此方を行ったり来たりの渡り鳥。
そうして今は「来たり」の帰還で、疲れを癒そうかと酒場を潜ったのさ。
――潜ったら、丁度私の頭上を人相の悪い男がすっ飛んでいった。
「おやおや、賭け事で負けたか勝ったかそれとも酔漢か。」
併しこの私は慌てず済ました顔で肩の一つも竦めよう。
これで相手がそれなりの風体であるなら傷薬でも売る所だけれど
生憎とそうではないので捨て置いて酒場の中へ。
店内は騒動の直後だった所為かすこうし鎮まって……いなかった
静かに、でも随分と熱の有る曲だけが自然と不自然に鳴っていて。
「おや以前は見無かった人だ。新しく雇われた弾き語りの方で?」
どんだけ神経太いんだこの人。と気になっちゃったもんだから一声かけてみるのでした。
■セツ > 曲を頼んだ男は、銅貨を誰かからくすねて投げてよこしたらしい。
こちらに投げた後に、思い切り殴られている姿が目の端に入る。
……ん、そうなると今私の手元にあるものはくすねた銅貨なわけなのだけれど。
そんなことは銅貨は囁いてはくれないし、何より曲の最中だ。
頼まれた仕事を終わらせるまでは、動くことはできないね、ああ残念。
たん、たたん、と足を踏み鳴らす音が響いて。
その音は、まるで曲に合わせて踊っているステップのよう。
瞳を閉じて静かに聞けば、踊る姿が瞼の裏に映るかもしれない……が、まあ、この酒場では難しい。
「………と。」
曲が終わったところでかけられた言葉に、僅かに瞳を開いて視線を向けて。
僅かに口を開いて、しっとりとした声が流れる。
「僕は旅をしている吟遊詩人。
今宵はマスターのご厚意で、一晩の職にありついたというわけだね。
そういう君は、……商人の方かな。」
ケンカが当たり前のように起こるこの場所にいても、風に靡くかのように落ち着いた物腰は………思った通り、神経が太いのだろう。
■フラウメオー > 私の言葉が契機だったのか、それとも偶々曲が終わったからなのかは知れやしないけれど
目を開いた面前の御仁と来たら、まるで刃物で切り込んだような目元で、夜の路地裏なんかで出会ったら踵がくるりと返りそうな感じ。
ただ……声色は抑揚こそ薄いけれど、穏やかなものだったし、高名な人形師が象嵌したんじゃなかろうかって容貌は……
「とと、失礼。余りジロジロとするものではないですね。いえね、以前この酒場に居たのは年を召された御老体だったと記憶してまして。
渡り鳥さんなら私もそうなんですよ。推察の通り行商人と冒険家の二束の草鞋……今日は仕入れの帰りに此処に寄ったんですけどね。」
くるりと表情をかけて手をぽんと打ち合わせながら、そろっとステージ上、詩人さんの隣に腰を下ろしましてにんまりと笑顔。
「折角ですし情報交換でもしませんか?私はこの国に戻ってきたばかりなので、最新の話に疎いものでして……あ、御礼はしますよ。
この東の国から仕入れて来た果物の塩漬けなんかどうですかね?試しに仕入れてみたんですが、やたら酸っぱくて……」
重さをまるきり感じさせない所作でリュックを下ろし、中から素焼きの小さな壷、紙で封がされた物を取り出してぺらぺらぺらりと御話モード。
■セツ > 「人は目新しい物を好み、何時もの場所に帰るものだから。
時には僕のような目新しい色物が座るのも、悪くないことだと思うよ。
きっと明日には何時もの弦の音が響くさ。」
こうやってやってきた吟遊詩人がいる間は休暇となるらしい。
きっと今頃、奥の賭場で札を片手に盛り上がっている頃だろう。
「商人の方……。 なら、護衛の方の一人でもいるのかな。
この場所は一人では危ない場所だよ、お嬢さん。」
手を打ち合わせて隣にやってくる彼女に、こちらも穏やかに視線を向けて………
それでも、少しだけ首を横に振ってみる。
「どうだろうね、僕も船から降りて仕事を見つけるだけで精一杯。
それに、僕が知っている情報なんてのは、その場所のお酒の味くらいなものだから。
そんな僕の話でいいのであれば、いくらでも付き合おうか。
酸っぱいのは嫌いじゃないからね。 ……交換で、飲むかい。」
金属のボトルに入った酒を水のように煽れば、……そっと差し出してみる。
濃い酒の匂いが溢れだすが、酔った仕草はほとんど見えない。
■フラウメオー > 「おや誌的……ってよりは哲学的というか、魔術師みたいな事を仰りますね。
ああでも音楽は魔法のようなものって捉える人も居るんでしたかね――」
田舎に引っ込んでいるのが厭で飛び出した我が身からすれば、一寸賛同しかねる言葉。
ただそれが逆説的なものだと気付いたなら、相槌の一つもでかかるんですが。
ですが。
「ああいやいや私は生憎気ままな独り旅なんですよ。でもまあちょっとコツがあって
割合安全――ってお嬢さんじゃなーいっ。」
思案顔から納得顔、所により宙を切る手刀並びに怒り顔。風船みたいに頬が膨らんで注釈を、ひとつ!
「もう、ハーフフットを見た事ない?私はこう見えても24歳なの。大人なの。レディーなのよ。いい?
だから酒場にだって来るし、お酒だって飲めるのよ……!」
どうやら詩人さんも船旅直後だとゆー御話を押し流すように腕を振り上げて注釈を、ふたつ!
然る後に差し出された金属のボトルをはっしとつかみ、ぐいっと一息に煽ってみせて
「ごぶふっ」
そのあまりの酒精の強さに咽て俯いて、暫しの間げほげほと喧しくなっちゃうのでした。
■セツ > 「それが自然な人間というものだから、魔法でも何でもないさ。
そうなのかい? ……この街で一人で動くのは危ないから、僕がベッドまでお守りしようか。
安全は程々に。 そして良い夜になることは確実に。 保証をする、と言っておこうかな。」
片目をそっと閉じて囁きながら頭を撫でようとして………
ひゅん、っと手刀が空を切り、目を少し見開いて驚く。
「おっと。………それは申し訳ない。 僕もまだまだ不見識でよろしくないな。
見た目通りではないことは、すぐに理解はしていたんだけれども。
……24なら貴女のほうが年上だね。 お姉様、とでも呼んだ方が良いかな。
商人としてではなく、貴女としての声が聞けて、少し嬉しいけれども。 ……そっちが素、ということかな。」
ふくらむ頬をそっと指で突いてやりながら、変わらぬ穏やかな瞳で相手を見つめ。
「ああ、それは結構に強いから、一気に飲むのは慣れないと辛いかもしれないね。
筋金入りの船乗りの人とかがよく飲むのさ。」
むせている年上のお嬢さんの背中を、甲斐甲斐しくそっと撫でて。
■フラウメオー > 口中から鼻腔にかけてが燃えるように熱くて痛くて、反射で思わず涙を零しながら咽こんで
それだけでも少々アレでソレなのに背中まで擦られたら私の外面ってものが倒れるとおり越して倒立だってしてしまう。
「むぐごご……おのれさてはドワーフか何か……って私の方が上なの?
ふぅん、それならまあ……ってお姉さまはおかしいでしょう。」
風船のように上がった不満顔が指でつかれてぶしゅうと窄まり溜息となり、
降ろしたリュックから水筒を取り出すと中の水をぐいと呷って口直し。
「まったくもう。お察しの通りだけど、誰だってプライベートとお仕事モードは違うものでしょ?
まあ、直ぐにむがーってなっちゃう悪癖は直したい所なんですけどね。
ほら、商人って聡明でないと舐められますから。」
だからほら、こうしたものを付けていたりするんですよ。と右目にかかったモノクルを示したり
頭を飾る大きな羽根付きベレーを指差して示すのです。
「……あ、あと。御守も間に合ってますよ。独りで寝られないなんてのはもう14年くらい前に卒業してますからねっ」
こう、ふんす、と鼻息を荒げながら。
■セツ > 「残念ながら普通の人間だよ。お酒はまあ、昔からずっと飲んでいたから。
寒い地方の出身だと、そういうことはままあるみたいだからね。」
お酒に関しても、悪びれる様子も無ければ威張る気配もない。
ただ水を飲むかのように口をつければ、相手の言葉に首を傾げて。
「敬意は見た目で発生するものじゃあ無いからね。
僕からしたら、聡明であろう…聡明だと理解されようと創意工夫をし。
下手をしたら子供扱いされてしまいそうな危険の中、こうやって一人で歩くことができる貴女の方が余程姉に当たるんじゃないかな。
僕は自由気ままに歩いて、お酒を飲んで。気の向くままに音を鳴らして歌っているんだから。
……ほら、長女気質では無いと思うんだ。」
なんて、くすくすと笑う。
「無理に飲ませてしまったこともあるし、一杯何かご馳走するよ。
商人ということは、近いうちにでもここを発つ予定があるのかな。
……ああ、僕はまだ卒業ができていないんだ。今宵は膝枕で眠らせて貰う、のも悪く無いかもしれない。」
■フラウメオー > 「見れば判りますよーだ。ドワーフってのはもっとこう、土人形みたいなずんぐりむっくりが特徴ですし。
貴方はどう見ても違うじゃあないですか……それにしても寒い所、北国ですか。ああいう所は食品等が限られそうだし
何時かは足を伸ばしてみるのもいいかもしれませんね。」
頤に指を添わせて少し唸りはてさて如何様なものが良いかと「出来る女」らしく考えて……
「……いや、あの。そんな褒めても何にもでませんよ。この果物の塩漬は差し上げますけどね。
で、私もまあ、爺様の遺したこのリュックがあるから自由気ままにやれているようなものですよ。
ちょっと持ってみてごらんなさい。きっと驚きますよ。」
不意に褒められて、視線が彼方此方泳いだ末に己の茜色のリュックを見止め、片手でいとも容易くひょいと掲げて渡そうとするのです。
掴むなら、まるで空の雲を掴むように不自然な軽さを感じ取れるでしょうか。
尚、私の顔色も茜色のようになっているのはそれは先程の酒精の所為です。所為ったら所為です。
「あと予定なら明後日には町を出て王都に向かう予定です。此処でも少し仕入れなり販売なりして行く予定ですし……
あら卒業出来てないの?お酒は強いくせにおっこさま~……ミルクとか御馳走してくれたりするのかしら。」
でも結構ゲスったらしく北叟笑んだりもし、一寸した酔っ払いのようでもあったかも。
■セツ > 「さあ、どうかな。世の中には驚くようなハーフの人がいるようだから、僕ももしかしたらその血筋が混ざっているのかもしれない。
行くならば、出来る限り人の集まる場所だけしておいた方がいい。商売にはなるかもしれないけれど、……北の北は、本当に寒いから。」
穏やかな声で忠告をするように、相手に言葉を一つ漏らして。
相手がリュックを差し出せば、少しだけ驚いた表情を見せて………片手で握ってみる。
「なるほど、………思い出の品ってわけだね。
いいと思うよ、そういう思い出は他人にとっては価値が無くとも、自分にとって換金し得ない価値があるものだからね。」
言いながら、そっと返して………。
「聞いている人がいるから、あまり口にしないほうがいいかもね。」
一人にしか聞こえないくらいに小さな声で、囁いて片目を閉じる。
理解をした上で言葉を選び。
微笑を浮かべて楽器を手にしながら、更に続けて。
「……それに、こんな場所でお仕事をする人間なんていうのは、よほどの理由がある人間が半分くらいはいるんじゃないかな。
名前を知っていても、荷物は預けたら危ないよ。
……僕はセツでいいよ。 吟遊詩人で、昔はシーフの真似事もしていたんだ。」
自己紹介に交えて、穏やかに注意喚起をしつつ。……笑う。
「じゃあ、今宵と明日の夜は……お姉様の腕枕で眠らせて貰おうかな。」