2015/11/06 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」にマユズミさんが現れました。
マユズミ > 「夜 ハイブラゼール裏通り」

ブン、と男の振るう棒を姿勢を低くし避ければ、そのまま鞘に納められたままの刀で男の鳩尾を突く。
昏倒させるには十分な威力で。
碌に回避も出来ずに男は倒れ伏した。

「……全く、ただ私は休んでいただけなのに」

今も彼女を取り囲む二人の男を前にし、嘆息する。

事は彼女が例の如く裏路地で休んでいた時。
息を切らせ路地裏へと入って行く彼女を見て、与し易いとでも踏んだのか、後を追う様に路地裏に侵入してきた。
大方奴隷だか、慰め者にでもしようと言う魂胆なのだろう。
抵抗すれば痛い目を見る、と言うのでぞんざいに扱っていたらこのザマである。

「―――抜きはしないけど加減はしないからね」

睨み付け、威圧。
いざ戦いとなれば疼きは治まった。
正確に言えば、今も印は疼いているのだろうけど、それを今は闘争本能が勝っているのだろう。
今は全く気にならない。

マユズミ > 次の男がナイフを片手に走り込んでくる。
そもそも裏路地で狭いのだから地の利も此方に在ると言うのに。

「―――」

単調にただ突っ込んでくるだけ。
溜息すら出そうになる。
鞘のままの刀を翻し、結果、短剣はあっさりと手から弾かれ地面へと転がった。
返す刀(鞘のままだが)で思い切り顎を殴打する。
鈍い音と共にまた一人、地に落ちる。

残り一人。
視線を向ければカトラスを抜く男の姿。
捕まえるのは諦めた、という事らしい。

「―――抜いたね?」

大声を上げて此方へと斬り掛かってくる。
そもそも大声を上げた時点で路地裏とはいえ騒ぎが知れるのでどうかと思うのだが。

「ふっ」

一呼吸の元に鞘から抜き放った刀。
相手のカトラスを避けるとともに、カトラスを持つ指を両断する。
ぼとぼとと落ちる指と鮮血。

「悪く思わないでよね。降り掛かる火の粉は払わないと」

今も怨嗟の声を上げる男を尻目に刀を一振りし不浄を払えば。
刀を鞘に納めた。

マユズミ > 「……」

そして相手が抜いたので思わずこちらも抜いてしまったが。
別に抜かなくても問題は無かったか、と今更思う。
十分に戦意が削げればよかった訳で。

三人を見下ろせば、こちらを怯えるような目で見つめている。

「さっさと離れてくれないかな。―――今なら命は無事なんだからさ」

わざと鞘から刀身を少しだけ出す。
じりじりと下がって行く三人。
やがて一人が走れば残りも走って行く。

「ああ。指は拾っていけばいい。運が良かったらつくかもね?」

そう後ろから声をかけてやれば。
指を斬られた一人が憎々しそうに此方を睨み、指を拾い走って行く。
しん、と静まり返った辺り。

「―――ふう」

一つ息を吐く。
頬についた血を軽く手の甲で拭い、よいしょ、と座れる場所に腰を下ろした。

マユズミ > やっと休める。
そう思い、少し目を閉じる。
静かな辺り。
大通りの喧噪が少しだけ耳に入るようで。
落ち着けば、ずくん、と印が疼くがそれよりも刀を抜いた時の火照りがまだ強い。
だがそれも。
今はまだ、そちらに傾いていないだけで。
いずれどうなるかはわからない。

「―――ふう」

再度息を吐いた。
しばらく、この火照りが消えるまでは大人しくして居よう。

マユズミ > 暫く後。
ぱちりと目を開ける。
大分火照りも疼きも治まってきた。

「とはいえ」

毎回こうなる度に休んでいては。
全く以てどうしようもない。

「解呪する方法、か」

ぽつりとつぶやいた。
シャツ越しにその辺りを擦って。
解除しなければならないという自分と。
快楽に身を任せたい自分。
その存在は自覚していて。
それがこの印の解呪を躊躇わせている。

「副作用だって、あるかも知れない」

などと言い訳して。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」にDr,ジェラルドさんが現れました。
Dr,ジェラルド > 『解呪する方法、あるよ』

(非常に軽い口調で不意にマユズミには声が聞こえるんだろう。
当の本人は相変わらず認識を弄って誰にも見えない状態でいたが、本当にたまたま何の用もなく通りかかって、一部始終を見ていて。女性がそういう事を喋っていたのと。少し前に同じような淫紋を刻まれた女性を弄んだ経緯から、思わず話しかけてしまった。話しかけて声が届けば、そのマユズミの目の前に、仮面に黒マントの、マントの端からは蜘蛛の足のようなものが見え隠れする。異形の男が現れるはずで)

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」に魔王ベルフェゴールさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」に魔王ベルフェゴールさんが現れました。
マユズミ > 「……っ!?」

気配が無かった。
瞬間、言葉の意味を理解するよりも。
視線を飛ばすより先に身体が動く。
ザッ、と思わず距離を取り低い体勢で刀の柄に手を掛け。

そこで初めて姿を見、掛けられた言葉の意味を噛みしめた。
解呪する方法がある。

「……本当に?」

未だ警戒は強めたまま、言葉を紡いだ。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」からDr,ジェラルドさんが去りました。
マユズミ > 「……?」

ふ、と目の前から気配が消える。
さっきまで居たはずの異形の気配。
それが最初に出た時の様にふっと霧散する。
目を閉じて気配を探る。
それでも出てくる気配は無く。
感じれる気配は表通りの雑多な気配。
目を開く。

「……なんだったんだ」

柄から手を離す。
解呪する方法がある。
そう、異形は言っていた。
あるのだろう。
それは彼女も理解している。
問題は―――。

「……」

首を振る。
要は結局それを確かに彼女の中に芽生えているもう一人の自分を手放せるかどうか、で。

マユズミ > 「……行こう」

完全に居なくなったと判断する。
これ以上ここに居ても危険かも知れない。
そして脳裏に浮かぶこの印と共に脳裏に刻まれた言葉。

「探す、かな」
それが何を意味するのかはわからない。
ただ一人そう呟いて。

裏路地を後にする。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”裏通り」からマユズミさんが去りました。