2022/08/13 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > ダイラスで、尤も手っ取り早く金を得る方法。
それは、何かを賭けることだ。
ただし、必ずしも金貨である必要はない。
『アケローン闘技場定例大会へようこそ!
第一試合、クレス・ローベルク VS ○○○の対戦は、もうすぐ行われます。
第一試合のBET受付は後十分で終了しますので、まだ賭金をお賭けになってない方はお早めにお願いします!』
魔導機械のスピーカーから、そんなアナウンスが観客席に流れる。
この観客の内、少なくない人間が、これから戦う二人の勝敗に、金を委ねるのだ。
そして、その二人は既に試合場で向かい合っている。
「やあ。今日はよろしくね」
試合場に立つのは、これより剣と、場合によっては操を賭ける事になる二人の選手だ。
試合場に立つ青い闘牛士服の男が、向かい合って立つもうひとりに声をかける。
対戦相手は、男にとってはある種のパートナー。
故に、敵意などなく、朗らかに挨拶を行う事もあるのだが――さて。相手はどう返すだろうか
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にリウスさんが現れました。
■リウス > お金が手っ取り早く手に入る方法を噂で聞きどうにかダイラスまでやってきた。
闘技場の受付に話しかけてみれば、目を輝かせた受付に『お嬢ちゃんでも簡単に大金が手に入る』との言葉を受け即答。
騙されているとも知らずに、控室へと案内され待機し、時間が来たのか刃渡り15㎝程度のナイフを手渡され。
小さな動物ならいいのに、と期待を胸に闘技場のドアを出てみれば
見えてきたのは大人の男性。
流石に驚くもののここまで来たのだからと震える脚を叱咤し前に出ては彼に正対し見上げよう。
「よ、よろしくお願いします! 小さいからって舐めないでくださいね!」
敵意など感じない様子の彼であれど、緊張のためか、
キッ、と精一杯虚勢を張り睨みあげたらナイフを順手で構えよう。
年相応で恐怖があるか手が震えているが、慣れのようなものを少し感じるか。
■クレス・ローベルク > 「(うーん、ちっこい)」
彼女を見た第一印象は、そんな感じだった。
いや、小さいのは別に良いのだ。この界隈に於いては、見た目の年齢と実際の実力が比例するわけではない。
実際の年齢と実際の実力で比較してさえ、乖離している事も多い。
だが、男の戦術眼で分析する限り、目の前の少女はあまりにも『当たり前』過ぎた。
つまり、二十五の男と十余りの少女がまともに勝負するのと変わらない様相で。
「まあ、うん。試合相手をなめるつもりはないけども」
実際、ナイフを構えるその動きにもたつきはない。
戦闘経験があるのか、それとも練習でもしたのかはともかく。
全くの素人という訳でも無いらしい。そして、その上で。
「ともあれ、女性相手と言うのなら、ハンディをあげないとね。
最初の攻撃は、君から打ってくると良い。
俺は、それを回避したり防御したりはするけど、カウンターはしない。
それを以て、試合開始の合図としよう」
舐めてると言えばこれ以上なく舐めた提案だが、これは女性の試合相手全員に言っている事である。
尤も、そんな事は全く知らないであろう彼女がどう思うかは、別の話だが。
■リウス > 少女は、一年前までは普通の生活をしていた一般人である。
その少女がナイフを手に入れ、運も多分にあるがどうにか生き抜いてきた。
貧民地区からの生活を脱却するには、もうこれしかないと飛び込んだ闘技場だ。
幼い少女でもわかっているのは、目の前の相手を倒さないといけない
それと、観客を満足させなければならないということ。
承認の子供であったというのもあるのだろうか、臆病ながらも頭は回る様子。
ちらちらと観客席へと視線を移しては反応を見る。
ヤジさえ飛んでくる様子に内心ビクついて隠そうとするが、肩を跳ねさせているので台無しだ。
だから、精一杯ビッグマウスを演じよう。
「その油断が命取りです! 華麗に買って賞金を持ち帰ります!」
観客に聞こえるように精一杯声量を上げる。
これ以上はもう、あとがないのだ。
「そ、そうですか…では!」
彼の言葉を聞き、舐められている、油断していると取った。
先程の「なめるつもりはない」との言葉も嘘だと判断。
精々油断してもらおう、と目を細め腕を突き出し、ナイフの先端が届くギリギリ外へと陣取る。
そうして、一息入れた後一気に踏み込んだのなら彼から見て右側の腹へと
少女にしては鋭い突きを放つ。
尤も、見た目と実力がイコールの少女であるので、その早さも彼にしてみれば止まって見えるやもしれないが。
■クレス・ローベルク > 声を張り上げて、戦意を高揚させる――正確には、そういう演技をする少女に、男は和みのようなものを感じていた。
演技としては稚拙であり、傍目からだとただ女の子がぷりぷりと怒っている様であるが、その辺は演技慣れした男。
声の張り方や素振りから、彼女が観客を意識しているのは分かる。
「(うーん、何だろう。この子、普通に気に入ってきたな)」
自分の仕事の真似をする娘を見た時の父親ってこんな気分なんだろうかと考えていた。
……ので、彼女がナイフを構え、突き出してきたのを認識したのは、彼女が既にモーションに入った後だった。
「あ」
彼女の突きが、予想よりも上手く"できて"いたのも不味かった。
男の肉体は、彼女の突きに対して反射的に迎撃反応を示す。
ナイフが突き出されると同時に、身体を入れ替える様にして彼女の背後に回り込む。
あまりにギリギリで回避する動きに、彼女は男が消えた様に認識したかもしれない。
だが、この後が問題だった。彼の身体は、既にカウンターとして、彼女の首筋に手刀を入れる構えに入っている。
……が、此処でカウンターを入れてしまっては、彼女に言った言葉が嘘になってしまう。それは悪いというより、格好悪い。
そこで、男が取ったのは、首筋ではなく、頭に軌道を変更する事。そして、当たる箇所も手刀ではなく、掌で、つまりは――
「はい、よくできました」
ぽす、と頭に手を載せて。
そして、ゆっくりとかき混ぜる様に掌で触る。
つまりは、頭をよしよしと撫でたのだ。
「さ、それじゃあ、最初の一撃も終わったし、そろそろこっちも攻撃するから……本気で避けてね?」
まだ、抜いてすらいなかった長剣をすらりと抜いて。
男は優しい笑みを浮かべるのだった。
■リウス > もとより、自分のビッグマウスに怯むなど考えていない。
相手は年上、大人の男性なのだ。自分のような小さな女に慄くはずもない。
だから精一杯、油断させたまま懐に飛び込んでナイフを突き出した。
当たった、と思った。刺さった、とも幻想で感じ取った。
だが現実は目の前から彼が消えたという事実で。
「はぇ…?」
自分は幻影と戦っていたのだろうか、と思うほどに華麗な動き。
だからその動きが見えず、きょろきょろと周囲を見渡そうとしたら
頭に感じるのは温かい、温かくて懐かしささえ感じる感触。
つまりは、頭を撫でられていた。
「お、おとうさ…ちがっ…こ、この…!」
かき混ぜるように撫でてもらったから、その手の動きに頭を連動させるように揺らすが
直ぐに頭に乗っていた手を振り払い鋭い目つきのまま振り返り距離を取る。
といっても、ナイフが届く圏内で立ち止まり彼の隙を伺っているのだが。
腕をくの字に折り曲げ、ナイフを少し突き出した構えで彼を見ていた。
「……ひっ…!」
抜かれていなかった長剣、それが露わになってしまえば浮かぶのは恐怖の感情。
顔さえも、作っていた睨むような目つきは消え去り情けなく目を垂れさせる。
浮かべてくれている優しい笑みさえ、怖く感じてしまい。
「しにたくない…しにたくないよぉ…」
勝機があるとすれば先程の一撃のみだった。
先程の消えるような体捌きで実力差を見せつけられて心が折れているのに
抜き身の鋼を見せられては無様に逃げたくなってしまう。
だからか、観客に聞こえぬような小さな声で声を震わせて呟く。
ナイフを持つ手さえ震えて、取り落としそうになるのを堪えるので必死だ。
こんなところで死ぬのだろうか、とぼんやりと思いながら、そのまま恐怖で棒立ちになってしまう。
戦意はもう、粉々に砕け散った。
■クレス・ローベルク > 「(ありゃりゃ)」
頭を撫でた段階では、緊張が解れて良い感じかとも思っていたが。
今、目の前の少女は、泣き出しそうな表情でナイフを構えている。
否、彼からすれば、既にそれは構えているのではなく、単にナイフをこちらに差し出しているだけである。
ちょっと刃を握って引けば、簡単に奪えてしまいそうな程、彼女の手元は覚束ない。
「んー、まあ仕方ないか。見た所、マジで見た目通りの年齢みたいだし」
剣などというものを前に恐怖しても、仕方ない。
寧ろナイフ一本渡されて、戦闘のプロに戦いを挑めただけ、上出来と言う者である。
とはいえ、そうなると、下手にギブアップさせるより、気絶させた方が良いだろう。
下手に意識を残すと、この場で"勝者のお楽しみ"をする理由になりかねない。
その権利自体は行使するとしても、この状況下でそれをやれば、本気で彼女の心が壊れかねない。
「しゃーない。ちょっと手荒になるけど」
そう言うと、男は長剣を構えて彼女に肉薄する。
そして、下から上にナイフの刀身に向かって切り上げて、そのナイフを天高く弾きあげる。
そして、今度は剣をくるりと逆手に回し、その柄頭で彼女のこめかみを強打する。
「(ダメージとしちゃ脳震盪程度。
加減もしたし、少し寝れば、直ぐに回復するはずだけど――)」
何せ、見た目がえげつない上に多少なりとも出血もある。
観客に、手加減などしなかったと見せつけるには、十分なはずで。
■リウス > 今、ナイフを握っているだけでも幸運というほどに足元が不確かで
恐怖で手に感覚がない。下手をすれば落としてしまうような握り。
「……」
彼の声が遠く聞こえる。
確かに、中には自分のような見た目で強い人もいるだろうが自分はそうではない。
年齢相応の力しか無い。だから、息を荒げながら不安に押しつぶされそうな顔で見上げることしかできない。
「ふぇ…? あっ……」
自分に迫ってくる彼を眺め、ナイフが勝ちあげられて宙を舞う。
これで自分の得物は無くなってしまった、彼の優しい心を知らず
負けと死が来ることが分かって走馬灯が流れる。
こんな世界、だいっきらい。
自分に優しくないこの世界を憎みながら目を閉じ死を待った。
しかし、それは彼の優しさによって気を失うだけに留め
こめかみを強打された衝撃で倒れ伏して気を失った。
後は、彼の望むままに動くだろう――
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
■リウス > 【後日継続】
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からリウスさんが去りました。