2021/09/16 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「はー……やれやれというか、何と言うか。面倒な事になったなあ」

いつもの闘技場。いつもの興行試合。
なのだが、彼の表情は浮かない表情である。
それもその筈。今日の試合は、『絶対に勝たないといけない』試合であるからだ。

その理由は、実は出奔した実家の事情に拠る。
そもそも、クレスがわざわざローベルクの姓まで名乗っているのは、嫌がらせが8割だが、実は実家への飴という側面もある。

元々、"英雄"を作るのにリソースを全振りしているこの家。
ローベルクの家の領地自体が相当に豊かであるからこそ、その様な事ができるのではあるが。
その為に、貴族にとって本来絶対に必要な根回しや、周囲に対する権威のアピールという武門貴族にとっては絶対必要な要素が欠けているのである。
まあ、そんな事をしなくても、"英雄"が活躍していれば、その辺は自然とどうにかなるというのもあながち間違いではないが。
魔物討伐や戦争への加勢オンリーでは、味方に付けられる家の性質にはどうしても偏りが出てしまう。

それ故に、ローベルクの名を持つ者が、闘技場と言う平民から貴族王族まで出入り可能で、しかも人気のある舞台で戦うのは、家名のアピールとして決して悪くは無いのだが――故にこそ、結果が求められるという訳で。
今回も、その『結果』をせっつかれたという訳である。
具体的には、ローベルク家の息のかかった――つまりは雇った人間を闘技場に出場させるので、そいつに勝て、というもので。

「(まあ、雇った人が冒険者なのか、それとも貴族なのか解らんけど。
あんま無茶な奴は送ってこないで欲しいよ本当に)」

なんせ、此処で負ければローベルク家はそれ見た事かとばかりに連れ戻すのが目に見えている。
実家に付け入る隙を与えたくはない。
故に――男は何としてもこの戦い、勝たねばならないのであった。

クレス・ローベルク > 「(ん……?遅いな)」

そろそろ試合が始まる為、試合場にて待っているのだが、一向に来る気配がない。
何か、トラブルだろうか。
それとも、ローベルク家側が、人材を確保できなかったか――

「(それはない……と言いたいところだけど、まあこういうのってめぐり合わせもあるからな)」

となると、最悪試合中止という可能性もある。
いや、男個人としては、それならさっさと帰るなり、店に行くなりしようと思うのだが。
しかし、剣闘士としてはあまり歓迎すべき事態ではない。
観客を待たせた上での中止は、職業倫理に引っ掛かる。

「うーん、どうしたもんかなー。いや、どうすることもできないんだけどさ」

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。