2021/03/07 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にラファルさんが現れました。
ラファル > お約束待機
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「(ダメージは入った様だけど……戦闘不能にはならない、か)」

相手の力を利用する様なカウンターは、大ダメージにはなりにくい。
何かを確かめる様な素振りの少女だが、しかしその体の揺れには疲れが垣間見える。
……逆に言えば、此処までやってまだ"疲れ"程度にしか消耗していないという事でもあるが。

「(仕方ない。リスクが不明確すぎるから、あまり気は進まないんだけど……)」

その思いを心に置いて、男は剣を鞘にしまう。
鞘に仕舞って――しかし、柄に手をかけたまま、姿勢を低くして彼女にゆっくりと歩み寄っていく。
それは、まるで東国の抜刀術の様な構えだ。
ゆっくりと、攻撃の気配を極力消して近づく――その狙いはただ一つ。

「(逆鱗――そこにしか勝機はない)」

あるとすれば、おそらくは首元。
然れども其の喉下に逆鱗の径尺あり――というシェンヤンの文書もある。
尤も、人間状態の彼女にあるかどうかはわからないし、場所が違う可能性もある。
しかし、例え無かったとしても、そもそも首元は人体の急所だ。

「(問題は、弱点故に、普通にやったらまず防御されちゃうって所だな――)」

故に。男は、奇襲を以て、その弱点を狙う――その為の抜刀の構えだ。
できるだけ狙いを掴ませないよう、視線を前に固定し、男は敢えてゆっくりと彼女に迫る。
逃げに回っても、逆に立ち向かわれても、どちらにせよ狙うは首元、その一点。

ラファル > 「そんなに、殺気立ってると、狙いが、駄々洩れ、だよぉ?」

にまぁ、と幼女ラファル、大きく口元に弧を描いて笑って見せる。
幼女はこれでも、色々と学習し、経験し、修行をしている、幼さ故の不足はあるかもしれないが。
それでも、人の数倍は知能が高く、そして、訓練を繰り返している。
赤ん坊がハイハイしている時から、幼女は一人前になるための訓練を繰り返しているのだ。
だからこそ、あの衝撃、まともに受けているよう見えて受け身を取り、衝撃を流していたりもする。
裸に近いのは趣味ではあるが、それと同時に、鎧が必要ないほどの強靭な肉体でもあるのだ。

「ボクの逆鱗は―――ここ。」

彼の狙い、さっきが集中する首元を見ているのがわかる。
それは間違いではない、しかし、正しくも、無い。
トゥルネソルの三姉妹―――否、リスの娘も含め逆鱗の場所はそれぞれ違う。
長女リスは、心臓の真上、次女の竜胆は、未だ秘密、そして、ラファルは―――首の後ろ、うなじにある。
トントン、と親指で指し示すのは、彼のエンターテイメントに乗っかっているから。
ただ、強いで毛で幅が覚める。
弱い物が強い物を倒す、そんなエンターテイメントだって、必要なのだ。

まあ、後で屹度、師匠に大目玉食らうかもしれないけど。
その前に、色々と訓練して、戦いの技の修練も行わないとだ。

色々と、学ぶべきことが判るから、こういう所は得難いと、幼女は思う。
安全に、弱点を見つけて、訓練できるんだから、と。

相も変わらず腰の武器を抜かない―――余裕をもって、対峙する。
じゃり、じゃり、と足元の砂利を踏みしめ、近づいていく。

「しぃっ。」

構えを取り、息を吐き出す。精神を集中し、格闘の構え。
といっても、グラップラーなどではなくて、生来の竜の戦い方に近い、本能的な、それだ。

クレス・ローベルク > 「わざわざ自分から教えてくれるとは……。随分と自信家さんだね。そろそろ少し小憎たらしくなってきたよ。まあ、可愛さあまって――とも言うけど」

それも、この大観衆の前である。
いっそ傲りとさえ言えるが、しかし実際は余裕と言えるだろう。
そもそも、彼女の機動力に追いついて攻撃を当てる事そのものが、人類の限界に挑戦するに値する難行なのだから。
増して、後ろを取るとなると難易度は更に高まる。

「とはいえ、まずは懐に飛び込まなきゃ始まんないね。
行くよ――っと!」

そう言って、腰を低くした体勢のまま、ラファルに向かって駆ける。
重心を低くした状態では速度が鈍りそうな物だが、しかしその速度には一切の鈍りはない。
地面を蹴るのではなく、身体を前に押し出すように走る様な足捌きで、重心を前にかけられないハンデをカバーしている。

「(ま、これでもあっちの速度には負けるんだけど――)」

その状態で、彼女の拳のリーチの外から、削るように抜刀術ならぬ抜剣術で、剣戟を繰り出していく。
あちらが距離を詰めようとすれば、逆にこちらが後ろに下がり、逆に距離を詰めれば前に出る。
先程までのカウンターによる一撃狙いとは打って変わって、相手を削るような戦術だ。

「(まともに逆鱗を撃ち抜くのは難しい――だから、相手の疲れを利用する)」

とにかく、時間を使って相手を焦れさせる。
そして、隙の多い大技や、或いは何かしらのミスを誘発させる。
狙いはそれだけなのだが、しかし彼女の様な超速度を相手にするのは、かなり骨が折れる難行だ。

しかし、あちらが長年の訓練を行っているなら、こちらもまた、何百年もの間、先祖が積み重ねた経験と、常識外れの鍛錬の上に立っている。

「全く、可愛い女の子と踊るなら、もうちょっと綺麗めのBGMで踊りたいもんだよ……なっと!」

それでもなお、こちらが先に折れるとは考えない。
それぐらいの自負は、男にだってあるのだった。

ラファル > 「でしょー?だって、その方が―――た の し い でしょ?
 ボクが、という訳じゃなくて……周りのみんなが、ね?」

 ドラゴンとは、プライドの塊である、幼女も、その片鱗を持っていると言える。
 驕っているように見せて居れば、相手は油断する、隙を見せる。隙を突こうとする――――。
 其れゆえの思考誘導、ともいえる行為である。それで油断をしないなら、計算をするなら、それに対応する計算をはじき出す。
 幼女なりの相手の確認方法だ、彼は優秀だ、思考誘導に引っかかりつつも油断はせずに、隙を伺い、計算する。

「おっしゃこーい!」

 駆けだし始める彼は、その体格に、筋肉量に即した加速を見せる。
 方だを鍛えて居れば、体が大きくても速度は出せるし、速度が出ればその分ぶつかった時の衝撃は激しく成るものだ。
 幼女が普通の幼女であればその質量がぶつかってしまえば――軽く吹っ飛ぶのであろう事が判る。
 突っ込んでくる彼を眺めやる。
 速度に関しては、幼女の方が数段上であり、彼の速度が見切れないという訳ではない。

「さて、勝つには。」

 遊びに来ているから、勝つのは目的ではなく。
 とは言って、負けるのも癪でもある。色々制限プレイではある状況だが、勝つための全力を尽くすのは、彼に対する礼儀。
 だからこそ、勝ち筋を探すことにする。

 例えば一つ―――・地面なり、壁なりに背を預けてのブレス。これは確実だが、先程のパフォーマンスからの流れでは、しらける。だから没。
 ドラゴンパワー全開などは矢張り制限プレイ故に、没。
 加速しての突撃、自分への逆鱗への一撃を防いでこそ、か。

「と、お、と、と、とぉっ。」

 伸びて突き出される剣の腹に手の甲を当てて滑らせて逸らす。
 思考をしている間に彼の間合い、そういえば、間合いは彼の方が長かった、と。
 唯々、剣を見て、滑る様に受け流し、其の連続を両の手で逸らしていく。
 見た目は高速戦闘に見えるだろう、実際に高速での戦闘なのだ、彼の剣を逸らし逃がし、幼女は彼を見やる。
 うーん、見た目的にも、手甲とか、装備した方が良いのだろうか、装備とか、矢なんだよなぁ、とか考える幼女。
 闘技場は、自分を見つめなおす、格好の場所となって居た。

「なら、BGM係に行ってみたら、如何かなっ?」

 彼の剣を外側に、何度目か、逃がしたところを狙い、踏み込む。
 空体になった所、彼の狙いを逆に返したように、攻撃したところに踏み込んでからの、腹部への掌底。
 小さな体が、急激に加速し、彼の攻撃の前進に合わせての、一撃だ。

クレス・ローベルク > 「お気遣いどうも!……まあ、真面目な話、こっちもそろそろ観客の視線が気になってきた所だしね……」

難敵相手だと、どうしても攻略の方に意識が集中してしまう。
今など、一歩間違えればただの消極策である。
勿論、それは一時のもの。直ぐに膠着状態を打破するつもりではある、が――

「(それにしたって、こいつはやりにくいな)」

様々な角度から剣を振るうが、相手は上手くいなしてくる。
腕で剣を裁くなど、手甲やプレートアーマーでも着ていなければただの自殺行為だが、しかし彼女の場合は肌そのものが鎧のような物。
鎧の様な荷重もなく、鎧以上の防御性能を体現するという無茶具合だ。
今は、こちらが優勢な様に見えるが、

「う、あぶっっっっっ!?」

こちらの攻撃のテンポを見切られたのか、こちらが前に出ようとした機先を制すように、掌底が突きこまれる。
寸での所で身体を捻って回避するが、恐らく掠っただけでも肉が抉れるレベルの威力だ。
流石に恐れを成したのか、独楽のように身体を回し、その回転に沿わせるように下から上に剣を振るって牽制しながら、ラファルから遠ざかる――

「(――今っ!)」

次の瞬間。男は後ろに下がるのではなく、彼女の左へと回り込んだ。
簡単な視線誘導と足捌きによるトリックだ。
身体を回しながら剣を振るうことで、彼女の視界を下から上に走る剣の軌道に集中させ、その間に彼女の横へと回り込む。
それも、最初に一歩下がって見せる事で、男の動きを下がるものと誤解させた上での回り込みだ。

「BGM係への苦情は間に合いそうも無いんでね、今日の所は、観客の歓声で代えさせてもらうとする、さ!」

ラファル > 「―――へぇ!」

 素直に、驚きと称賛を、幼女は言葉にする。
 彼の行動、攻撃に合わせてのカウンター、故に並の人間であれば、これを回避することは出来ないものだ。
 その攻撃を、実をひねり回避する、経験か、それとも、彼の中にある長年の歴史か。
 その動きは、見事、といって良い―――否、美事と、賞賛すべき事であろう。
 掌底は空を切り、彼はそのまま回転をして左に回る。

 目は、追う事が出来る、体は―――追うことも出来る。
 しかし、此処には『遊び』に来ているのだ、勝ちを―――生き残る事を前提とした、闘争ではなく。
 訓練の様な物だ、負けても良い戦い。学びを得ることの出来た場でも、有る。

 なれば。
    なれば。

「ムードのあるお誘いをしてくれるなら、ボクだって、女の子だし?考えなくもないよ?」

 にま、と笑って返答をして見せる。
 体は、掌底を放ったままの瞬間的なものだ。
 負けを認めて、彼の一撃を甘んじて受けることにする。
 綺麗に彼は、気絶でとどめてくれるだろう――――あ。

「そうそう、あまり強く打たないでね?そこ、下手打たれると、死んじゃうから。
 軽く小突くぐらいで、十分だから、ね?」

 これは、流石に彼にしか聞こえない程度の小さな声。
 逆鱗とは、其処に触れられたら、竜が怒るという物。なぜ怒るのか。
 死んでしまう可能性のある、弱点だから、だ。この場所だけは、鍛えられない。
 底を打たれれば、死んでしまう、だから、触れようとするものを許すことができない。
 それを踏まえて、手加減して打ってねと、幼女は囁く。

クレス・ローベルク > やべ、と男は思う。
一瞬、彼女の目がこっちを見たからだ。
左へ回った後の自分に視線が流たということは、つまり、こちらの攻撃に対し対応が出来るということだからだ。
かなり強引に身体を制動した故に、体勢が整っていない。カウンターを喰らえば、どうなるか――といった所で、しかし彼女は動かずに、寧ろ誘う様な事を呟いた。

「OK、何か考えとこう」

元より、逆鱗を本気でぶっ叩くつもりはなかった。
最初のプランでは、刀身ではなく、柄頭で叩くつもりだったぐらいだ。
逆鱗が首元ではなくうなじにあると言われて、止む無くそのプランは放棄してしまったが。
とはいえ、流石に此処で手加減というのも、客が冷める、ので。

「せやああああああああ!」

首の後ろを、上段から下段に振り下ろして斬りつける――実際には、当たる直前で腕を寸止めし、手首のスナップだけで逆鱗を叩くのだが、観客には全力で首筋を殴ったようしか見えないはずだ。
彼女の言が正しければ、これで彼女は気絶するはず、だが――?