2021/02/05 のログ
■クレス・ローベルク > この子は……と天を扇いでしまうが、まあ仕方ない。
龍が人の細々とした事情を斟酌してくれると考える事自体が甘えだ。
寧ろ、彼女はその辺は良く"心得て"いる方である。
天真爛漫ではあるが、同時に意外と世間擦れしてる幼女なのだ。
「スカウトマンの人も大変だよな……。
まあでも、彼には悪いけど、今回ばかりはナイスタイミングだ、ラファルちゃん。ちょっとまっててくれよ?」
と、彼女に対して、にやりと笑う。
ハッタリではない。心の底から、彼は強敵に出会えたのを喜んでいる。
それは、新たな力を試せるが為、である。
「おーい。『雇用契約に基づく緊急事態時の対応第五項、イレギュラー選手に対する試合前の演出変更の為の特権』使いたいんだけどー。"ローブ"じゃなくて、"靴"と"ダガー"の方」
何か、ちょっと店員さんに試着を頼むノリで、堅い条文っぽい事を、上の実況席に言う男。
すると、実況席の女性が、男に向かって靴と、それからベルトを放り投げた。
男は、その靴とベルトを付け替え、元の靴とベルト、ついでに剣を係員に預ける。
ベルトには、前と同じ媚薬注入器と、ダガーが、交互にホルスターに入っている。
「おまたせ。これで準備完了だ。
後は、前と同じ様に――君に先手を譲ろう。前と同じく、カウンターなし。
それを以て、試合開始の合図としよう」
■ラファル > 「およ?」
なんか珍しい様子だ。
普段はもう少しすんなりと遊び始める所ではあるが、今回、彼はそうしない。
理由があるようだし、それはそれで面白いので、待つことにする、何やら、係員の人に、お話をしている。
「お?おおお?」
ぽいーっと、実況席から放り投げられるものがある。
靴と、ベルトらしい、そのベルトには何かが取り付けられている。
装備としては、武器―――だが、剣ではなくてダガー、そして、前に使った媚薬の入れ物だ。
竜である幼女は、その見た目よりもはるかに強靭な肉体を持っている。
だから、打撃力の低い武器ではそもそもダメージを与えられない。
それが、魔法のダガーだというならまた話は別になるが、さて、どういう物なのだろう。
金色の竜眼はキラキラと輝く。
強敵と言うのは楽しい物である、闘争と言うのは、嬉しい物である。
だから、幼女はそれを見守るのだ。
彼が何をするのか、何を求めているのか、を。
■クレス・ローベルク > 「……先手を譲ったけど、来ないか」
いやまあ、もとより彼女に先手を譲るとか、そういうハンデめいたものは不要である。
それでもそうするのは、あくまでもこちらの意地と都合である。
前はそれを汲んだが、今回はそれよりも好奇心が勝ったと言う事だろう。
「ま、それならそれでいいさ。チャンスは与えた。これで"ハンデ"は成立したとみなして――いざ」
ラファルの方に、自ら駆ける男。
だが、その速度が前よりも格段に上がっている。
剣という不安定な重りを外し、数こそ多いが身体の中心に重心のかかるダガーを用意した事で、機動性を上げたのだ。
まるで、風……否、枷を外した狼の様に、
「行くよラファル!」
膝をかちあげ回し蹴り――からフォームをスイッチしての飛び足刀。
狙うは、胸元。尤も、幾ら剣を捨てたとて彼の蹴りは、龍の身体にダメージを与えられる程ではない。
だが、靴の足刀部分から、何かが若干飛び出している。それは――刃。
仕込み武器の様に、刃が靴に仕込まれているのだ。
それには、彼の使っていた剣と同様、皮膚を斬らないという魔法はかかっているものの、
「(蹴りの威力を、刃という狭い範囲に集中させれば、打撃力は桁違いに跳ね上がる……ついでに、服を切り裂いておっぱいを露出できるっ!)」
これぞ戦略的エロ攻撃。
剣にこだわらず、仕込み武器を使うことで、見栄えとエロと戦略を同時に戦術に組み込める。
……エロを戦術に組み込む必要性については議論が分かれるところだろうが、男にとっては最優先事項であった。
■ラファル > 「え?だって、急に変わるんだもの、警戒して当然だよね?」
先手を譲る、その言葉にホイホイと乗るのは何も考えてないと言っているようなものである。
確かに、幼女は本気を出すことはない、しかして、彼を舐めているわけではないのだ。
幼女にとって闘技場の戦いは、戦闘訓練の様な物である、勝っても、負けても、学べれば良い。
寧ろ、負けても死ぬことが無いのであれば、最高の実践訓練場なのだ。
今回は、直前是装備を変えるという行動に、警戒を強くすることにしたのである。
「成程。ボクと同じスタイル、だね。」
武器が変わる、ダガーの様なナイフは己の体格で、爪を持つようなものだ、体術の延長として動くことが出来る。
速度の速くなった彼の動きを黄金の瞳は見つめ、見据える。
早くなったと言うのであれば確かに。
ただ、それは。
「ん!こいやぁ!」
幼女は彼の動きをじっと見据える、飛び足刀。
自分よりも体重の多い彼の一撃を考えれば、己の体重全てを一撃に組み込めるから威力は上がる。
しかし、だ弱点も又、飛んでいるから、という所がある。
彼の爪先にあるナイフの威力は屹度普段の威力から見れば跳ね上がる事だろう、其れこそ槍の様だ。
幼女は動かずに両手を広げて待つ。
ナイフが、幼女の胸のベルトに食い込む、バチンと音がしてベルトがはじけて、可愛らしい両の胸があらわになる。
「取ったぁ!」
飛び足刀の弱点とは、基本な話、飛んでしまえば方向転換などが出来ない。
魔術師などであれば魔法でとは出来るが、彼は戦士、魔法使いではない筈だ。
だからこそ、飛び足刀のダガーを受けて、足を掴む。
そして、彼の足をねじりながら、投げ飛ばす。彼を拘束スピンさせながら、地面に叩きつける。
ドラゴンスクリューと、何処かの世界で呼ばれているだろう技術。
残念ながら、この世界にはそういう名前の技は無いと思う、だから、見た目的には足を掴んで、彼を回転させながら叩きつける、と言う。
荒唐無稽な一撃となる。
そして、投げ飛ばすから、幼女のピンク色の先端も、画面に大公開されるわけである。
■クレス・ローベルク > 「(あれは演出なんだけどね……俺だって本当は先手取れるならしたいよホント……!)」
『女性は力が劣る事が多く、一撃で試合が終わりかねないのでせめて初撃を譲って最初の見せ場は作る』
結局彼の思惑はこれだけなのだが、しかし現実にこれをそのまま言えば挑発である。そして、相手に合わせて挑発する剣闘士程間抜けなものはない。
故に、彼は女性相手であれば初撃を譲る――そうせざるを得ないのである。
「掴まれ――っていうかうぉい君それはちょ……!」
ドラゴンスクリューという技名は知らないが、その術理は一目で理解できる。
投げ技――の様に見えて、その実は投げる際全身の勢いを使った極め技に近い。
いやまあ、それは良いのだが、それをドラゴンの膂力でされれば、
「脚折れるじゃ済まないっつう……の!」
最悪、脚がミキサーに掛けられた如し惨状になる。
故に、男は策を講じた。
左足で地を蹴り、もう一方の脚を、彼女の首にフックさせたのだ。
これで投げ飛ばすとどうなるか。勿論、クレスの脚は死ぬが、同時にフックさせた首の方も折れる事になる。
「(人間と同じ様に……ドラゴンだって、自分の膂力程度の力でも、当たりどころが悪ければ、死ぬ)」
故に、敢えて攻撃を止めるのではなく、攻撃をすると自分を傷つける状況を作る。
勿論、それだけではない。もしも、彼女が一瞬でもそれで隙を見せるなら、
「(この密着状態なら、ちょっとの隙でも薬打ち放題だからね……!)」
薬品注入器を今のうちに構える男。
手でも、顔でも脚でも。隙があれば、必ず打ち込むと、そう決めて。
■ラファル > 「―――それで、いいの?」
自分の首に引っかかる彼の左足、右足を掴んだままに、幼女はにまぁ、と笑って見せる。
彼の目の付け所はいい、行動も思い切りがある、しかし、だ。
彼の足の強度が、幼女の強度と同じであれば、成り立つという前提が発生する。
竜の膂力で投げ飛ばしてしまえば、幼女の首が折れるよりも前に、彼の足が引きちぎれる方が早いのだ
しかし、それは幼女の望むところではないので、幼女は行動を変える。
回転して投げ飛ばすのではなく、両手で保持した右足から左手を離し、彼の左足を掴み。
そのまま、両足を押し上げるように投げる。
そうすれば、彼は180度縦回転して地面へ。その薬品注入具を離し受け身を取るなり、何かしらの対策をしなければ大地に叩きつけられるであろう。
その気になれば追撃も未だ、出来るとは思うが、彼は狙っている模様だし。
軽く後ろに飛びのいて間合いを作る。
「うん……うん。今度は、ボクから、行かないと、ね。」
体勢を立て直すのを待ってから。
殴りかかろうか、それとも蹴りをだそうか。
幼女は考える、彼との戦いを通じて、駆け引きという物を学んでいる。
戦闘経験が豊富な彼だ。
ハンターのように動くのであれば、どんな一撃が良いのだろうかと。
ダガーを狙ってみようか、等、等。
自分を調べるようにぶつけていきたいのである。
行く、と言いながら、更に一度後ろに跳躍、間合いを明ける。
突進する為の、加速する為に。
■クレス・ローベルク > 「――世の中、良くなくってもやらないといけない事って、あるよね」
人間の儚さを物理的に知る事ができる貴重な機会である。全く嬉しくないが。
勿論、彼女の理解していることは薄々解っていたが、"闘技場のルールを守って"彼女を止める方法が現状これしかなかった。
願わくば、彼女が自分の足の耐久度を高めに見積もってくれればよかったのだが。
ともあれ、幸いな事に彼女は気を変えてくれた様だ。
「ふおっと」
流石にこの状況で不意打ちを試みるほど阿呆でも無粋でもなく。
投げ飛ばされた彼は、そのままバク転の要領で回転し、着地。
観客たちは、アクロバットな技の応酬に、無責任に歓声を挙げているようだが――
「(まさか、"見逃された"とは思っていないだろうなあ……)」
この少女と戦う時は、毎度そんなもんであるが、やはり悔しさは滲む。
純粋なパワーで敗けているという言い訳はあるが、それを超えてこそ、という思いはあるのだ。
とはいえ、その思いに囚われるより先に、目先の試合が大事だ。
「(さっきのお礼も兼ねて、少しはいいとこ見せないとな)」
間合いを開ける彼女を追わず、突撃してくるであろう彼女を迎え撃つ。
脱力し、だらんとした姿勢。
普段は、相手が何をしても対応できるように、全身に力を漲らせているが為に、これは対照的であった。
手に、一応ダガーを持っているが……しかし、その手指にも力が入っていないので、今にも落ちそうなほどだ。
「さて……どう来るかな、あの子は」
■ラファル > 「大変、だよね。」
彼は、大人気の剣闘士、負けたとしても死ぬことはない、そして、逆転劇を何度も見せるエンターティナー。
彼の実力の一端としては、エンターテインメントを感じさせない迫真さ、という所だろう。
仮に八百長だったとしても、それを八百長とは感じさせないだろう、演技力がある。
別に八百長などを考えているわけではないけれども。
ただ、彼の苦労は見ていてわかるから、と言っても共感できる程理解しているわけではないので。
どこか他人事のような一言が零れ堕ちるのである。
「――――ん!」
何をするのかを決める。決めたのならば、後は動くのみである。
全身に力を貯めて、ゆっくりと前傾姿勢に、一歩踏み出して、二歩目は加速、三歩目で、残像が残る。
ジグザグに、右に、左に、残像を残す幼女。
ストライダーを伊達に名乗っているわけではなく、速度は、走ることに関しては、其れこそ有数といって良い。
流れるように、音も薄く、流水のように走り、濁流のように動く。
「い、く、よ……!」
声を置き去りにしそうな、加速の中、幼女の選択は。
加速し続けたまま、突撃―――つまり、頭突きである。
彼が足刀をしたように、体重の軽い幼女は、全力で加速し、その加速度から、自分自身を砲弾のようにぶつけることを選択する。
下手にダガーで受け止めようとしても危険だろう。
両手で受け止めるにしても、その次に、繋ぐことの出来る、布石としての。
其れでも速度も体重も乗った、全力の、一撃だ。
■クレス・ローベルク > 奴隷相手に虐めに近い勝利を収める事も多いのだから、ある意味では釣り合いはとれているのかもしれないが。
どうして自分だけその応報がハードモードで来るのだろうか。
神様とやらがいるなら一度でいいので問い合わせたい。
「ともあれ」
流石に、竜種と言った所か。
ただ走るだけで魔法のような残像を残してみせる。
ジグザグに走ってみせるだけでも、並の人間ならば見失ってしまうのではなかろうか。
尤も、男は"並の人間"では無いわけで。
「(撹乱のつもりなんだろうけど――)」
右に左に走る。それは逆に言えば、走っている時の全身を、彼に晒しているという事にほかならない。
例え、目で完全には追えずとも、それだけの情報があれば、歩幅からどのタイミングでこちらに着弾するかぐらいは読める。
しかし、男には攻撃手段がない。蹴ろうが殴ろうがダガーを突き立てようが、多少のダメージにはなっても決定打にはならない。
結局はラファル自身の力を使うしか無いが、関節技をかけてもラファルの膂力なら手足ごと引きちぎられてしまう。
ならば――
「クレス選手、目の前の跳び箱を――飛んだァッ!」
男は、彼女が走り出すと同時に跳躍し――彼女の頭を、跳び箱の要領で飛び越えたのである。
言い換えるなら――自分の体重を全力で載せて、疾走中の彼女の頭を思い切り前に押し出した、のだ。
ただでさえ、重心が前に行く高速頭突きの最中、そんな事をされればどうなるか。
当然、バランスは崩れ、頭から地面に叩きつけられるだろう。残像が残るほどの、高速域でだ。
人間ならば、地面との摩擦で磨り潰される程の威力だろう。
「俺を引きちぎるのは簡単でも――地面を引きちぎるのは相当骨が折れるんじゃないかな、ラファルちゃん?」
■ラファル > 『クレス選手、目の前の跳び箱を――飛んだァッ!』
跳び箱じゃないやい、遺憾の意を込めて猛反論したい所だけれども、そんな状態ではなかった。
前に進もうとする勢い、それを上から地面に叩きつけられた、地面に顔から落ちていく。
ドガン!!!
そんな音が響き、闘技場の固い石造りの床に叩きつけられて、其れで勢いが止まるわけではなく。
ドガガガガが、と地面を、石畳を削りながら幼女は地面を滑っていく。
それだけの速度が出ていたという事で、彼から離れた所で止まる。
しゃちほこのように顔面を地面につけて、のけ反った状態で屹立する脚。
両手は地面に充てられて。
すぽん。と良い音を立てて地面から、顔を引き抜く。
「いたたた………っ。」
顔中に泥だの石だのを張り付けて、幼女はぺいぺいっ、と石を取りごしごし、と目を擦る。
ぷひぃ、と息を吐き出して見せる。
しゅう、しゅう、と言う音を立てて、擦り傷が治っていくのは竜の治癒能力か。
ぺターンと、地面に座ったままで、男を見上げる。
「範囲にも、寄るよ?」
絶対に無理とは言わないが、可能とも言い切れない。
ドラゴンの死因で一番あり得るのは、墜落し、大地の強さは矢張り、ドラゴンにも効果が高いのだ。
最強武器、地面と言われるだけある。
ゆっくりと、パッパッ、と砂を払いながら立ち上がろう。
その様子には、少し疲れが見える。
「うん、やっぱり、来れ、改良したほうが、イイよね……。」
ふむふむ、と何か検分しているようで。
ただし、視線は、クレスから外しはしない、油断はしてないのだ、油断は。
■ラファル > (中断致します。)
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からラファルさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。