2020/04/01 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 夜の闘技場は、常に活気にあふれている。
魔導機械越しに聞こえる、アナウンサーの呼びかけと、観客が立てる騒音。

『さあ、もうすぐ始まります、アケローン闘技場興行試合!
ドリンク並びにフードは、試合前の購入を――』

その中心となる試合場では、青い闘牛士服の男が一人、試合相手を待っている。
その表情は、何時もと違い少しだけ戸惑いの色が見える。
というのも、今回の試合相手は、最近になって存在を確認された、『闘技場スカウトサービス』がスカウトしてきた選手だというのだ。

「(スカウトサービス、ねえ)」

勿論、どんな来歴の相手であっても、別け隔てなく戦うのが男の主義なのだが。
そうはいっても、奴隷などを除けば、自らの足で此処まで来た者ばかりだった。
しかし、このスカウトサービスは、『どんな手段を使ってでも』選手を大会に参加させる――つまり強制させる訳で。

「頭に血が登って殺しに来たりとかしないよなあ……しないでほしいなあ」

などと、ちょっと悲しい未来予想図を描いている間に、どうやらあちらの準備も終わったようだ。
扉が開き、選手が入ってきた。

『さあ、それでは今日の対戦相手は――』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にミヤビさんが現れました。
ミヤビ > 「全く、面倒なことになりました」

ミヤビがこれに参加したのは、脅迫半分、賞金への魅力半分だった。
正式な市民であるミヤビにそこまで無体なことはできないようで、賞金はそれなりのものが約束されており、
またでなければ娘に危害を加えるといわれると、断るのも難しかった。

「戦闘は、あまり得意ではないのですが」

武器は何でもありと聞いているので、あえて無手を選択した。
単純に、こちらも相手も無手ならば自分の傷が浅くて済むだろうという考えであり、特に得意というわけではない。

そうして闘技場の中に入ると、目の前にはなかなかかっこいい男性がいた。
どうやら彼が有名剣闘士であり、貴族剣士とも呼ばれるクレス・ローベルクらしい。
周りも観客が多数おり、衆人環視で犯されるのか、と思うとげんなりしていた。

「お手柔らかに頼みますよ」

また娘が増える、とあきらめ気味で構えをとった。

クレス・ローベルク > 「(あー、成程、そういう感じか)」

出てきたと同時に、男は何となく察した。
主にやる気の無さと大体の事情を。
つまり、最初から負け前提。敗者は犯されるということは、逆に言えば犯されればそれで済むということ。
つまり、この試合は一種の八百長試合に近い。

「ま、そういう事なら、"お手柔らかに"してあげよう。
……女性相手のハンデだ。初手は君にあげよう」

剣を投げ捨て、代わりにホルスターから右手で媚薬注入器を抜いて、構える。
そして、左手でくい、と指先を己に曲げ、かかってこいと意思表示。

ミヤビ > 「では遠慮なく」

ふらふらとやる気なさげに近寄るミヤビ。
普通の歩き方であって、戦いのための歩き方ではない。

「あ、ちなみにボク、無手なので、クレスさんも無手でお願いします。怪我したくないので」

等といいながら、近寄っていく。
そうして目の前に立つと、クレスのの左手の裾と胸のあたりを手でつかもうとするだろう。

クレス・ローベルク > 「(成程、組技投げ技が主体か)」

これは厄介だ、と思う。
普通ならば問題ないが、一撃を相手に譲ると考えた時、相手に掴ませるまでは、明確に"一撃"が成立しない。
つまり、この左手の裾と胸ぐらを掴む所までは、相手に譲らねばならない。

「しょうがない。あまり接近戦は得意じゃないんだが」

無抵抗に彼女に掴まれる。
その代わり、腰を少し落として、相手の動きに合わせて反応できるようにする。

ミヤビ > 「では、お言葉に甘えて」

そう言ってしっかりと服をつかむ。
手が抜けないように、服を巻き込むようにつかんだので、まずはずれないだろう。
そのまま、半回転しながら懐に潜り込み……


「どっせい!!!」

そうして繰り出すのは背負い投げだ。
足の力まで、体の力全てを使うこの投げは、先ほどまでの自身なさげな雰囲気とは打って変わって堂に入ったものだった。
よほど重心を後ろにしなければ持っていかれるだろう。

クレス・ローベルク > ぐん、と身体が前に持っていかれる。
そして、衝撃。身体全身が、地面に叩きつけられる。

「がっ……!」

覚悟していた分受け身が間に合ったので、骨が折れたりはしていないが。
それでも、背中前面から抜ける衝撃で、肺の空気が全て持っていかれた気分だ。
だが、その程度のダメージでは、行動不能にはならない。
寧ろ、この状況は、男の方に有利に転がる。

「文字通りに、ね!」

倒れた状態のまま、男はミヤビの右足にしがみつく。
そして、腕力で少し脚を持ち上げてからの、

「ローリング……!」

その右足を巻き込む様に転がる。
踏ん張りが聞かない右足に体重をかけ、そのまま倒してしまおうという算段だ。

ミヤビ > 綺麗にクレスは飛んだ。そうしてそのまま背中から落ちた。
その投げられっぷりに観客からは失望の歓声が上がるだろう。
しかし、ミヤビの投げは所詮捕縛術の一つでしかないため、ダメージは与えられても殺すことは難しい。
受け身をとられてしまえば、ダメージはあまり大きくはないだろう。

「んにゃあああああ!?」

そのままクレスに右足をつかまれて巻き込まれると、悲しいかな、そのままバランスを崩し引き倒されてしまう。
しかしただでは転ばない。つかまれた右足の膝を鳩尾狙って叩き落そうとする。
逆に言うとすでにそれくらいしか取れる手がなかった。

外してしまえば、体格差ゆえ抑え込まれてしまうだろう。そうなればギブアップである。