2020/02/27 のログ
クレス・ローベルク > 「し、死ぬかと思った。本当に、今のは死ぬかと思ったぞ……!」

手での防御が間に合わなければ、首元にナイフが突きつけられていたかもしれない。
流石に寸止めだっただろうが、そうなったら判定での敗北は免れなかっただろう。

「うぉっと!危ないな。だが、お転婆が過ぎるぜ、セインお嬢ちゃん」

振るわれるダガーを見切り、彼女の二の腕を踏みつける。
支点である此処さえ抑えてしまえば、腕を振るう動作はある程度制限される。
強いて言うなら、男の足を斬りつける程度だが、威力が乗らなければ、痛い程度で済むものだ。

「それじゃ、一回目のお注射だぜ、セインちゃん……!」

右手の剣を離し、代わりに試練の媚薬をホルスターから引き抜く。
それが、彼女の首筋へとゆっくり近づけられていく……。

セイン=ディバン > 「軽く一回死んでおきなさいよ……!」

普通腕で刃物を止めるか!? と内心驚くものの。
良く考えれば、自分も似たことをよくしてるなぁ、と。
そんな思考が仇となった。
振り回すダガーをもあしらわれれば、女は思考の回転速度を上げる。

「ってぇぇぇ、またそれかい!
 えぇい芸の無い!」

相手の言葉と行動に、女が叫ぶ。
女の空間転移の呪文は、触れているものも巻き込んで跳躍する。
今発動しても、相手と一緒に飛ぶことになるので、意味が無い。
仕方ない、と。女は相手の行動を受け入れる覚悟をし。
同時に、身体を大きくひねる。

「……っ! づううううううううっっっ!」

ごりんっ! という音が女の腕から鳴るのと。
相手の媚薬が打ち込まれるのは同時だったろう。
むりやり肩を外した女は、そのまま腕をあらぬ方向へと曲げながら、相手にケリを放つ。

クレス・ローベルク > 「死ねよりも剣闘士を傷つける言葉を……!」

いっそこのまま前戯なしでぶちこんでやろうかと思うが、しかしその思考は現実にならなかった。
腕があらぬ方向に曲がり、男の戒めから抜け出したのだ。
しまった、と思うと同時、蹴りが男に跳ぶ。
今までにない行動パターンだったので、予想外だったのがいけない。
防御行動が取れない状態で、彼の蹴りは――

「あうっ!?」

股間に直撃した。
人間と言うよりは、甲高い鳥の鳴き声の様な物をあげた男は、そのまま内股になって股間を押さえる。
何せ、手の負傷とは違い、予想外の痛みだ。

「お、こ、こっ、こっの……!」

観客達の同情の視線の中、しかしこれ以上無いほどの隙を晒している。

セイン=ディバン > 「じゃあ、テク無し、って言ってあげましょうか!?」

なんともお互い、微妙に間の抜けた罵倒。
しかして、相手の拘束からムリヤリに逃げ出した女。
その女の放った、メチャクチャなケリは。
……なんと。相手の股間を強打し。

「……」

女、なんとも珍妙な表情。
うわぁ、痛そう、みたいな。
あるいは、あ、ゴメン、みたいな。
しかして、女はそこで思いっきり地面に手をつき。

「~~~~~~っっっっ!」

ごぎんっ、と。体重を乗せて無理やり肩を嵌める。
そのまま、女は股間を押さえる相手に向かい突進し。

「だああああああああありゃあああああああああああっっっ!」

タックル。まさしく体当たりであった。
この機を逃せば、次のチャンスは無い。
そう思いながら繰り出したのは、それこそひねりの無い体当たりであったのだ。

クレス・ローベルク > 「ちょ、ま、待っ!」

嘘だろ、という表情で、全力で駆けてくる彼女を棒立ちで待ち構える。
流石熟練冒険者の蹴りというべきか、鳩尾まで衝撃が貫いており、動きが鈍い。
だが、そこでまともに受けないのが男の男たる所以である。
元より、相手は女性。人間の生態的に、男と女なら男のほうが筋力もあって体重も重いのだ。

「う、うおおおおおお!?」

腕を交差して、彼女のタックルを受け止める。
だが、痛みと差し迫った攻撃を前に、男は失念していた。
貫かれた手は、痛みもあるが、力が入りにくい。
万全の状態でない状態で受け止めた身体は、そのままずん、と衝撃を受け止め、バランスを崩す。

「げ――」

倒れる身体。
腕を突き出し、追撃を防ごうとするが、剣を手放しているが故にただの突きである。
それが効を奏すかは、微妙な所で――?

セイン=ディバン > 「でぇぇいっ!」

相手の静止の声も無視し、全速力で突撃する女。
相手の動きは平時に比べてかなり鈍い。
女は、走る中、どう追い詰めるべきかを考え。

「だぁっ、っしゃああぁっ!」

勢い任せに相手にぶつかり、相手が倒れるのを確認すれば。
女は、相手の腕を取ろうとする。
……いわゆる関節技。技名で言うのならば、腕十字固めを狙ったのであるが。
見事、その体勢に入る直前。

「ひゃぅっ!?」

ふにょん、と。
相手の伸ばした腕が、女の胸をわしづかみにした。
瞬間、動きを止めた女ではあったが。

「……せぇぇぇぇいっ」

その胸への愛撫に怒り、完璧な腕十字固めを決めてみせる。
ぎしぎしと肘を攻めるのではあるが。その腕は、女の胸に挟まれてたりする。

クレス・ローベルク > 手に伝わる、女性的な柔らかさを感じて、男の方も動きが止まる。
二人が静止した事により、試合場の時間が止まった様な様相を呈する。

「あっ」

何せ、我武者羅、殆ど後先の考えなしでの抵抗だ。
相手が一瞬でも怯めば良いと考えていたがゆえに、その行き先まで考えてはいなかったのだ。
そして、

「ちょ、ちょっと待てセイン!
今のは事故というかそもそも男なんだからそこまで気にする事もででででで!お、折れっ!折れッッッッ!?」

腕十字固めの抜け方は知っている。
だが、困ったことに、その為には極まっていない方の腕を使う必要がある。
そして、その手は現在、ダガーが突き刺さって不自由な状態だ。

「(……あれ、詰んでね?)」

否、まだ一つ、たった一つ手がある。
幸い、既に一度目は達成して、相手の身体は敏感になっているのだから、

「お、おおお……!」

男が取った行動。
それは、取られた腕で彼女の胸を揉みしだき、乳首を扱き、愛撫することである。
一見、馬鹿みたいな行動であったが、全く無意味な行動ではない。
腕十字固めは、足と腕、その両方で極める技である。
逆に言えば、そのどちらかの力が緩めば、一気にその威力は減じられる。

尤も、それより先に彼の腕が折れてしまえば、それで決着はついてしまうが――。

セイン=ディバン > 「アハハハハ、そんなデリカシーの無いことを言うクレスにはオシオキが必要ね?」

元が男なら、今女でも胸を揉まれても気にしない。
そんなわけがあるか、気にするわい。
そう言いながら、力を込めていく女。このまま相手の腕をねじ切ってやろう! とするのだが。

「ひゃああああああああああっっっ!?」

しかして、相手もさすが熟達の剣闘士。
まさかまさかの反撃は、胸への愛撫であった。
一瞬、力を緩めそうになる女だが、すぐさま再度力を込め。

「ちょ、ちょ、レフェリーーーーーーーーーッッッ!
 これ、完全に決まってるでしょ!? 私の勝ちよね!?
 だってこのままだったらコイツの腕折れるもん!」

そこで思いっきり叫ぶ女。
すぐさま、審判役のスタッフが近づき、状況を確認するのだが。

『クレス、ギブアップするか!?
 それとも、まだヤれるか!?』
「おいいいいいいいいいいっっっ!
 今、戦れるのイントネーションおかしかったぁぁあああああっ!
 おかしい! 私の勝ちでいいじゃんかあああああああああっ!」

審判、なぜか相手に降参の意思を確認する始末。
文句を口にする女だが。相手の愛撫により、徐々に徐々に拘束の力は抜けていっている。
相手が、あと数十秒凌げば。恐らく技は完璧に解除されるだろう。

クレス・ローベルク > まさか、上手くいくとは思わなかったが、しかし逆転の糸口が見えた事よりも、余裕ぶった彼女の表情が崩れた事の方に男はカタルシスを感じる。
一度として見せた事のない独特の悪役笑いで彼女の抗議を笑い飛ばす。

「ふははへは!残念ながら今日の審判は俺の飲み友達だ!
観客の需要と友誼があれば多少のルールの解釈は許される……!」

※許されません。
とはいえ、元々女性相手の不平等な裁定に定評のある闘技場。
恐らく、運営側も『外し技があるなら無理に取らないでも。っていうか、考えてみればまだあっちの衣装とか脱げてないし』ぐらいの思惑はあるのだろう。
むにむにと痛みのない程度の力加減で揉み、相手を感じさせていく男の手業に、彼女の手足の力は抜け、

「今だっ!」

無理矢理彼女の手から腕を引き剥がし、距離を取る。
何とか、勝っている様に見せているが、しかし現実にはこちらは右手負傷であちらは薬を打ち込んでいるだけである。
客観的に見れば、あちらの方が未だ有利なのである。

そもそも、あちらが腕十字ではなく、拳銃を突きつけていれば、それで負けていた可能性もあり、そういう意味では今負けていないのが既に奇跡である。

「(次で決めないと、多分負けるな……)」

此処が正念場と見た男は、今まで突き刺さっていたダガーを引き抜く。
血が吹き出る様に出るが、短時間であれば問題はない。
それよりも、少しでも左手の握力を取り戻すことの方が先決だった。
失血による寒気を感じながら、両手で剣を構え、

「さあ、最終ラウンドと行こうか……!」

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。