2020/02/26 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 最近、闘技場の運営が迷走している気がする。
試合場に立つ、黒いタキシードに、仮面を着けた男はそう思った。
今回の興行試合はコスプレデー。
試合賞金が高くなる代わり、闘技場側が指定した衣装を着るというものだ。

「(まあ、鎧とか着れない可能性高いから、怪我を負わさずに倒すことが出来るタイプの剣闘士を選んだのは良い判断だと思うけど……)」

しかし、いよいよ『闘技場ではまともに戦うものは居ない』って評判が確かになるよなあと、満天の星空を仰ぎ男は思った。
試合場に屋根がないのは、星を見て心を切り替えられるので少し有り難い。

『さあ、それではコスプレデー最後の対戦相手に入場して頂きましょう!今日の対戦相手は――』

クレス・ローベルク > 「(にしても、何のコスプレ着てくるんだろうな)」

こちらは仮面舞踏会を意識したコスプレだ。
普段の闘牛士服と変わらないが、あまりこちらが目立つと、肝心の対戦相手が目立たないのでこれは仕方ない。
対して、あちらは一応闘技場側が指定した衣装。
エロ重視で行くのか、見栄え重視で行くのかは、運営の判断だろう。

「(出来ればエロ……いや、格好良いのをズタズタに切り裂くのもそれはそれで……!)}

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

入場口の門が開く。同時に、湧き上がる歓声。
闘技場の空気は独特だ。冒険の時、魔物と戦うのとは何もかもが違う。
観客の視線。渦巻く高揚感。凌ぎを削る強敵との全力の勝負。
それを、男……いや、『女』は好んでいた。

『挑戦者の準備が整いました!
 今宵の挑戦者は……この場に、戻ってまいりました!
 昔日の屈辱を晴らしに! 己のプライドを賭けて!』

絶対負けるの期待してるくせに。内心そう思いつつ、女は闘技場へと歩み出る。
その姿は、レザー素材で作られた。ちょっといかついバニースーツ姿であった。
豊満なバストは、今にも零れ落ちそうである。

『挑戦者! 悪喰! またの名を【千人斬り】……』

アナウンスがその通り名を口にした瞬間。
女は放送席に向かって睨みを利かせる。
殺意マシマシ。常人なら失神確実の凄まじい怒気を乗せたヤツだ。

『……し、失礼いたしました。
 冒険者! セイン=ディバンです!』

アナウンスが名前を呼べば、会場に更なる大歓声が響いた。
声の内容は、まぁ。ヤジ半数。賭けに夢中になる声半分というところ。
女は、髪を優雅に掻き上げると。相手を真っ直ぐに見て。

「ハァイ、クレス。遊びに来たわ。
 やっぱりアナタと遊ぶならアナタのフィールドじゃないとね?」

今回は、勝つわよ。そう言って、相手に向かって投げキッスをする女。
距離ある中でも、女の調子が良いのは見て取れるだろう。

クレス・ローベルク > 開いた門の先に現れるは、嘗て自分が倒した女性だ。
その名はセイン=ディバン。
男性であり、女性でもあるという、少し不思議な身体をした人間だ。
前と違い、身体にフィットしたバニースーツでの登場。
プロポーションの良い身体のラインが見え、特に零れ落ちそうな胸が揺れているが、

「(眼福ではあるけど、怖いなオイ……!)」

知らず、首の辺りに汗を掻く男。
戦い方が既に知られているというのもあるが、何より調子が違う。
勢いが違うと良い変えても良い――こういう敵の相手をするのは苦労するのだ。
何せ、油断もしなければ、萎縮もしない。最初からフルパフォーマンスでかかってくるからだ。

「(うわー、やだなー。負ける気はないけど、苦戦しそうだなー)」

頭を抱えたい気持ちはあるが、それを表に出さぬからこそのプロ。
平静を装って、男は彼女に応える。

「いらっしゃい。待ってたよとは言わないけど、来るとは思ってた。
前回やりたい放題やった分、報復が怖いからね。悪いけど、今回も勝たせてもらうよ」

そう言いながら、剣を抜き右手で男。
そして、左手を相手に伸ばして、指先をくいくいと自分を指して、『来い』と指示する。
前と同じく、最初の一撃を相手に撃たせるつもりのようだ。

セイン=ディバン > 『クレスに500!』
『セインに200だ!』
『クレスに300!』

女が登場した瞬間、賭けの声が一気に盛り上がる。
なにせ、以前女はこの相手とかなりの好勝負を見せた。
その時は、女が降参する形となったが。今回も接線になるのは予想に難しくない。
そうなると、当然客達の賭けもヒートアップするものである。

「ふふっ、嬉しいわね。
 そんなに私のことを想ってくれてた?
 私の登場を指折り数えてた訳?」

口元を抑えながら、クスクスと笑う女。
その様子は、余裕綽綽という感じだが。
内心、負けん気はメラメラである。

「ふふっ。私が勝ったら、蹂躙してあげる。
 情けない声を出しながらびゅーびゅー射精するような状態にしてあげるから。
 覚悟しなさいね」

あるいは、男に戻ってお尻を可愛がってあげようかしら、などと。
趣味の悪い冗談を口にしつつ。
女は指を鳴らす。空間から取り出した物体二つ。それを……思いっきり相手に向かって投げる。
相手の目のよさなら、それが何か分かるだろうか。
一目で分かる爆発物。その正体は女謹製のスモークグレネードである。
もしも、外見からそれを『爆弾だ』と誤認すれば。逆に大きな隙を生むかもしれない。

クレス・ローベルク > 正直な話、負けて犯される事は今でも偶にある。
というより、男側が負けて犯されない事が多いのは、あくまでも女性側が自分からわざわざ犯す理由がないからであって、女性側が犯すのを止めるルールはないのである。
とはいえ、流石に男に戻って犯すと言われると鳥肌が立つ。
自分がそうなった事は無いが、しかしその様な試合を見た時は尻の穴が縮こまる様な思いをしたものだ。

「俺そこまでの事をされるような事を……したな、うん。
でもやめろよ!?絶対にやめろよ!?」

などと言っている内に、相手が仕掛けてきた。
こちらに投げたのは、魔導機仕掛けのグレネード、と男は認識した。
何せ、一瞬のこと、魔力の流れから、それがどのような特性を持つかなどは判別出来ない。外見から予測するしか無いのだ。

「っ、しょうがないなっ!」

急いで後ろにステップで下がる男。
爆発物だからといって、恐れるような事はないが、しかし炸裂したのは爆風ではなく、煙幕。
一瞬で、視界が煙に染まっていく。

「しまっ……!」

それでも、とっさに横にステップして、煙を逆用して現在位置を隠すぐらいの判断は出来たが。
こちらは煙の中、対し、相手は煙の外から煙の中を狙えば良い状況。
不利なのは、明らかにこちらだった。

セイン=ディバン > 「どうしようかしらねぇ。
 良く見れば、アナタなかなかイイ男だし?」

くくっ、と笑いつつ、相手のうろたえる様子を愉快に思う女。
だが、その会話の隙を突き、女は相手にグレネードを投げる。

「さすが。弾き飛ばすようなマネはしないって訳ね」

もしも相手がグレネードを弾いていたのなら。
勝負は一気に決していたかもしれない。
なにせ、煙幕の中棒立ちになるのだから。
だが、相手は冷静にバックステップで距離を取っていた。
女は、笑いながら煙の中へと突っ込んでいく。

(手札を知ってるのは相手も同じ。
 こう考えてるんじゃないかしら。
 煙の中に向かって、銃をぶっ放しまくれば優位に立てる、とか)

当然。最善策はそれだ。運よく相手に当たれば儲けもの。
そうでなくても、相手の行動を妨害できる。
だからこそ。女は煙の中へと突撃する。

(……音と気配を殺すのは、本職の暗殺者には劣るんだけどね)

勢い良く煙の中へと飛び込めば。姿勢を低くし、極力音を殺して移動する女。
相手の居場所も、おおよそでしかつかめないが。
ゆっくりゆっくりと近づいていく。手にはダガーを二振り。
それぞれ、順手と逆手に握り、相手への奇襲を狙う。

クレス・ローベルク > 男は、見えている行動に対しては最善の行動を取れる。
その様に教育されている。
だが、見えない行動に対しては、予測を立てるしかないのだ。
読み合いやブラフ戦においても決して弱くはない男だが、しかし考えうる全ての行動に対して対策できるわけでもないのだ。

「(結果論にはなるけど、あそこは後ろに跳ぶんじゃなくて、前に出るべきだったな……!)」

相手の予測撃ちに警戒し、煙の中を音を立てずに歩くように移動。
一秒、二秒、三秒まで数えた所で、男はピタリと止まり、

「――銃じゃないな、これは!」

猛然と煙の外へと駆け出す男。
予測撃ちをするなら、こちらの位置が解っている早いタイミングで撃たねばならない。
それをしないということは、つまり相手は別の何かを狙っているのだ。
ならば、それを妨害しなければならない。それ故の疾走。

だが、男は相手の位置が解っていない。
煙の中に居る彼女が駆け出す男の影に気付けば、走っている間の隙をつけるかもしれない。

セイン=ディバン > (ホ~ント。冒険者として相棒にしたいくらいの腕よねぇ)

あるいは。経験の足りない剣闘士だったなら。
煙幕に驚くか、予想外の行動に浮き足だったかもしれない。
しかし相手はそうではなく、しっかりと行動しているのだから。
正直、驚嘆に値する判断力だった。

(とはいえ……手加減する気もないけどね!)

煙の中、じりじりと相手に近づく女。
しかし、次の瞬間。

(……チッ、バレた!
 ったく、マジで戦い慣れし過ぎだっつー!)

相手の声に、女は舌打ちする。
状況に対する思考能力。判断能力。行動力。
どれもこれも一級品である。
追撃が無いからと言って、普通相手の狙いが分からないのに動いたりはしないだろう。
相手の足音に耳を澄ませ、女は身を伏せ……。

「……シッ!」

相手の走る速度と距離を計算し。
女は、相手に飛び掛る。手にしたダガーでの二連撃。
横へのなぎ払いと刺突。虚は突いたと思えるが。
幾分、相手には距離があった。もしも相手が心構えをしていたのなら。
防御は間に合うかもしれない。

クレス・ローベルク > 「(煙の外に出たら、とにかく相手の狙いを見定めない……)」

「とぉ!?」

視界の端で煙の流れが、突然逆巻いた。
そう思った瞬間には、彼女が煙の中から飛び出していた。
横薙ぎの一撃は、とっさに横飛びで回避。
空中で身体を回してセインと正対するが、

「やべっ」

続く刺突が問題だ。
何せ、こちらは着地直後で、足が衝撃を吸収した直後だ。
此処で下手に跳んだら、それこそ大きく体勢が崩れかねない。
だが、体の姿勢だけで回避しようとしても、セイン程の使い手ならば――

「しゃあないなっ!」

続く刺突を、男は左手の掌で防御した。
否、人はそれを防御とは言わないだろう。
何せ、ダガーはその勢いのまま、男の左手を貫通したのだから。
ただ、とにかくそれで彼女の短剣が一つ、使用不能になったのは確かで、

「いってえな、こんちっくしょう!」

涙目になりながら、しかし男はその痛みに囚われず、相手の胸を、というより、その胸のレザー生地を掴み、背負うように担ぐ。
恐らく、武に生きる者なら一度は見たことがあろう、背負投げを敢行しようというのだ。。
――流石にバニーガールを投げた者を見た事はないだろうが。

セイン=ディバン > 「チィィィィッ!」

思わず女の口から毒が漏れる。
速度には自信があったのに、攻撃を回避されるとは。
しかし、刺突は外さない。完璧なタイミングだ。

「取った!」

相手の言葉と女の言葉は同時。
覚悟と、勝利への確信。
次の瞬間。女のダガーは相手の手を貫いたものの。
その危険性に、女はすぐに気づく。

「だぁぁぁあ、チキショウッ!」

思わず地のしゃべり方が出るが。
相手に服の胸元つかまれ、女の体が宙を舞う。
わずかな時間、女は思考するが。

「……がはっ!!」

地面に、背中から落ち、肺から酸素が搾り出される。
とっさに、その場で残ったダガーを遮二無二振るう。
このままマウント、などとなっては。目も当てられぬからだ。