2020/01/03 のログ
■セイン=ディバン > リロードの瞬間というのは、銃使いにとっては生命線であり弱点。
女の感覚、時間が間延びしていく。
もどかしくなるほどに。自分の動きが鈍い気がする中。
クイックローダーを取り出すと同時に、相手が突撃してくるのが見えた。
一瞬。本当に一瞬だけ、視線を切ったのと同時。
ハッキリ言って、敵ながらアッパレとか言いたい。
(……いやぁ、凄い腕だ。
リロードが終わると同時、なら相手の方が有利だもんなぁ)
リロードしつつ、後方に体重を移動する女であったが。
女が逃げ切るよりも先に、剣の切っ先が迫る。
リロードが終わっても、銃にはポイントの時間がある。
狙わぬで撃った射撃など、何の意味も無い。
そんな攻撃でビビる相手でもあるまい。
そう考え、女はどう対応するか、思案する。
選択した手札は……切り札の中でも、かなりの強いカードであり。
「お触りは……厳禁よ?」
女がそう呟くと同時に。女の姿が消えうせる。
相手の剣は、空を切ることになるのだが……。
瞬間。相手の目の前に、一丁のリボルバーが出現していた。
まるで手品のように。空中に漂う銃。いや、一丁だけではない。
相手の左右にも、一丁ずつ。計三丁の銃が、相手の頭部をポイントしていた。
それだけではない。その空中の銃は、誰が触れているでもないのに。
かきり、と。撃鉄が起き始めているのである。
「……かわしてみなさいな。色男♪」
女の声は、相手の背後から投げかけられる。
これこそ、女の切り札の中でもほぼ最強クラスの札。
空間転移の呪文で、女自身は跳躍、距離を取り。
物質転送の呪文で、相手の周りに銃を配置。
一度手元に取り出した銃を、引き金を引くと同時に転送したがため。
相手の周りで銃が、まさに発砲されようとしている。
……とはいえ、相手は気づくかもしれない。この銃は、特殊な銃でもなく。
狙いも、安直な頭部狙い。防ぐのは、決して不可能ではないレベルであり……。
女には、小細工はあれど、問答無用の攻撃呪文などの手札が、無い、ということに。
■クレス・ローベルク > 「瞬間、転移……っ!」
タイミングは完璧だった。自負ではなく、事実の分析としてそう思う。
だが、彼女の手札は男の想定以上に幅広かった。
瞬間移動。それ自体は銃使いとは相性が良い魔法であり、驚くには値しない、が。
その上で、彼女は置き土産の如く銃を置いていた。
「やばっ……!」
ヤバいのは、彼女の技もだが、何よりタイミングがまずい。
今、男は剣を突き込んだタイミングだ。
剣で銃弾を受ける事はできないし、体勢が崩れていて回避が十全にはできない。
素早く巡らせた視野の内には三つの銃――すべて頭部狙いなのが、せめてもの救いか。
「やるしか、ないかなっ!」
男は、前に倒れ込む。
元々、突く事で重心が前に偏っていたから、後は少し足を滑らせるだけで全身は簡単に地面に堕ちる。
左右の弾丸は男の後頭部を掠めただけ。
だが、正面から放たれた弾丸は、首をギリギリまで傾けても――
「いっ……!」
左耳を貫通。
戦闘行動には支障はないが、ズギンズギンと嫌な痛みが走る。
耳骨を貫いた様だが、これでも幸運な方だろう。
変に銃弾が逸れれば、そのまま頭にめり込む可能性だってあったのだから。
「だけどっ!いや、だからこそ、これでいいっ!」
うつ伏せに倒れた男は素早く仰向けの体勢に。
そして、背後の彼女の腰に、自分の足を絡め、そのまま捻って彼女を転ばせようとする。
その途中で瞬間転移で逃げられるかもしれない、が――それならそれで、また別の対処をするまで。
――寧ろ肝心なのは、落ちた銃を男がこっそり拾ったことに気づかれない事なのだから。
■セイン=ディバン > (いや、頭イイとか。勘が鋭いってレベルじゃないでしょ。
マジで。コイツ化物か?)
何が起きたのか。普通の人間なら理解すらできないだろうに。
状況を把握し、自身が危機的状況にあると判断し。行動する。
リスク上等。最大の利益を手に入れるために我慢できる部分は我慢する。
本当に。敵ながらアッパレだなぁ、と。耳を負傷しただけで回避した相手を見ながら思う。
「チッ……!」
しまった。もっと距離を取ればよかったか、と後悔するが。
すぐさま、女は、次の行動を選択する。すでに足は絡んでいる。
今空間転移した場合、相手と一緒に転移してしまう可能性がある。
ならば、やむなし、と。女は転びながらも、懐からダガーを取り出し、逆手に持ち、相手に向かってそれを突き立てようとする。
まずは、相手と距離を取ろう、と。その考えに意識を持っていかれてしまい。
相手が、銃を拾っていることに気づけずにいた。
「足癖の悪い殿方ね……。
そういうのは、お断りよっ!」
狙いは相手の首筋。殺しまではしないが、ちょっと致命傷を喰らってもらうつもり。
相手が回避に専念して距離を取ったのなら、また遠距離戦にもちこんでやる、と考える女。
自身が今、危険の只中に居るなどまったく気づいていない。
■クレス・ローベルク > 男は仰向けの状態のまま、彼女がダガーでこちらを突き刺そうとするのを見た。
迫る刃。だが、男はそれが突き刺さる直前、彼女に拳銃をつきつけた。
「悪いけど、っていうか、悪いのは足癖だけじゃないんだなこれがっ!」
一応、男は両手どちらでも物を扱えるよう訓練されているが――それでも銃などそうそう扱わない。
そして、だからこそ良いのだ。
相手が十全に動けるなら、こんなブレブレの、素人からの射撃など簡単に回避されてしまうだろう。
だが、足で挟まれ身を捩る様にしか動けない今の状況ならば、それは逆に作用する。
何処に当たるか男が解らない以上、致命傷を避けるのは彼女しか出来ないからだ。
「悪いけど、頭や心臓を避けて撃つなんて器用な事は出来ないからね。受けなきゃ死んじまうかもしれないぜ、お嬢さん!」
撃つのは二回。
彼女が受けきれずに死ぬリスクと、彼女がダメージ覚悟で突っ込んでくるリスクを考えたギリギリの射撃数。
彼女がダメージ覚悟で突っ込めば負けるのはこちら。だが、受けに回ったならば、こちらにも勝機はある。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。