2019/09/03 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 今の時期の夜は、程よく乾燥して、程よく涼しい。
剣闘士にとっては非常に過ごしやすい季節だ。
特に、年中分厚い闘牛士服を身に纏って戦う、闘技場に立つ男にとっては。

『さあ、今日も始まりましたアケローン闘技場、興行試合!
今日の闘技場側選手は、クレス・ローベルク選手!』

最早大多数から見れば見慣れた選手だろうに、それでも歓声を起こしてくれる観客達。
この付き合いの良さは、男にとってはありがたい。
半分以上は選手の陵辱目当てなので人間性としては最悪だが、しかしノリが良いというのは観客の美徳だ。
手を上げて歓声に応えている内に、アナウンサーがてきぱきと進行していく。

『それでは、今日の対戦相手をお呼びいたしましょう!
今日の対戦相手は――』

試合場の扉が開く。
今日の対戦相手が、出てくるのだ。

クレス・ローベルク > 「(さて、今日は誰が来るのかな……)」

対戦相手は知らされていない。
露骨に対策を立てしまえば、盛り上がること無く勝ててしまう事もあるからだ。
男の価値観としては、勝敗よりも盛り上がりに価値の比重があるので、知らされてもそういう事は基本しないが、規則というものだろう。

「(出来れば、かわいい女の子だといいなー。
やられ役の子出してくれって何時も言ってるんだけど、年に数回レベルでしか出してくれないんだよなあ……)」

運営側ももう少し楽をさせてくれ。
そんな、何時もの文句を心中に置きつつ、対戦相手を待つ。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクロさんが現れました。
クロ > 『闘技場の花形、クレス・ローベルク選手に対するは――あれ?今日の対戦相手って確か……ああ、うん?いや、使えるのか?うん、うん……まあ、駄目ならダメで何とかしてくれるか。よし!気を取り直して対戦相手はつい先日闘技場に登録した新人ミレー族の女、名前はクロ!何とこれがデビュー戦!しかも実は場外乱闘で別の選手をKOしてきたばかりのとんだじゃじゃ馬だァ!!そんなバカ、もとい暴れん坊が闘技場の洗礼、流儀をこれから知る羽目になるかもしれないが言い訳無しだ!準備はOK!?駄目と言っても待った無しだぞ!』


「――はーい!とにかく目一杯遊べばいいんだよね?分かったよー!体動かした後はご飯ちゃんとお願いね!……お兄さんが相手だよね?私(クロ)はクロ、よろしくねっ。」

試合を盛り上げる進行役が何とかトークで間を持たせようとするが一向に対戦相手が現れない。
そこで黒服の男が近寄り耳打ちすれば露骨に顔を歪めるのが闘牛士服の剣闘士からは見えたかもしれない。

アクシデント発生。
何でも、闘技場に入場前に揉め事が起きて負傷して戦える状態ではないということ。
そして、その原因となったミレー族らしき女を飯(えさ)で釣って連れてきて、単純そうだったから何とか大切な説明は省いて都合の良い情報だけ与えて試合に代理出場させるという流れになったことを報せれば、司会役としては本日の目玉イベントが台無しにされて頭を抱える事案だ。

しかし此処で慌てる姿を見せれば金蔓である観客の空気を悪くする。

何喰わぬ顔で最初からこういう予定だったとばかりにアクシデントもそれとなくしれっと入場アナウンスの前口上に付け足し、若くして闘技場常連、熟練の闘士の相手に目配せ。

緊急事態発生。察してくれ。と。

まあ、本来の対戦相手はそれなりの実力者ではあったがとんだ助平親父だったからきっと色仕掛けか何かで油断して負けた可能性もあるし実力は保証しかねるが、それならそれで凌辱なりなんなりすれば良い。
そういう意味の目配せ。

そんなやり取りなど露知らず、裏で味音痴なのか鉄の胃袋なのか本来魔物用の餌をたらふく食って腹ごしらえをしてからテキトーに対戦相手がいるからほどほどに、後は分かるな?と念押しされて入場したのは癖っ毛が特徴の重い黒髪に反して暗い印象どころか日輪が如き満面の笑顔で、此処が戦う場所というぐらいしかよく理解していない獣は観客達の歓声の意味もよく分からずとりあえずノリで両腕をぶんぶん振って愛嬌を振って。

身動きがとりやすい軽装の獣は人懐っこい笑みをこれから闘うという対戦相手へ向け、右手の拳を固めて差出し、楽しく遊ぼうと挨拶を。

――情報が錯綜しているせいで上手く伝わっていない。本来の対戦相手が負傷の程度が酷く完全に再起不能になっている事も、後は分かるな?と念押ししたのに遊ぶ=殺さない程度に殴る、という大変アバウトなニュアンスぐらいしか把握していないことも。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > アナウンサーの目配せに、こくりと頷いてみせる。
遅れて現れたミレー族の少女(それも明らかに奴隷ではない)と普段はない目配せを考えれば意味はわかる。つまり、"トラブル発生"だ。
トラブルの内容は解らないが、アナウンスの内容を踏まえて考えると、どうやら彼女が自分の対戦相手を"出れなく"してしまったらしいのは解る。

だが、具体的な指示はない以上、試合は継続。そして、トラブルの発生を客に気取られるのは、剣闘士としては二流。
故に男は何の問題も起きていないかのような、平和な笑みを浮かべて挨拶をする。

「ああ、俺が今回の君の相手だ。
名前はクレス・ローベルク。今日は良い試合をしよう」

こちらは左の拳を出して、彼女の拳にぶつける。
まあ、トラブル云々はさておいて、彼女自身は舞台映えする素質がある。
寧ろ、試合としては良い物になるだろう。
男が彼女に早々に倒されない限りは――だが。

「さて、と。それじゃあ早速試合を始めようか」

そう言うと、男は彼女から二歩程離れ、実況席に目配せする。
こちらの目配せは何時も使用する"試合開始"の合図だ。
アナウンサーも心得たもので、直ぐに試合開始の宣言をする。

『さあ!それでは早速、試合開始と行きましょう!
新人選手はベテラン剣闘士を打ち倒せるのか!或いは、クレス選手が意地を見せるのか!?
試合、開始です――!』

実況席が言うやいなや、にぎやかな管楽器の音色が試合開始の宣言を告げる。
それに呼応して、即座に男は剣を抜く――が、まだ動かない。
様子を見ているのではなく、寧ろ彼女を待っているかのように。

「まあ、ちょっとしたマイルールでね。女性相手の場合、最初の一撃は女性からという事に決めてるんだ。
いやまあ、何か君ふたなりっぽいけど、見た目女性で新人さんだし。
ハンデって事で、最初の一発殴ってきてもいいよ?」

ある意味では挑発にも取れる提案をしてくる男。
さて、彼女はどう反応を返すのか。