2019/05/18 のログ
■モルファナ > 「わふ。気にしなイ? うン」
こくり。頷く。素直。
改めて、構えた青年へ向かう攻撃。手応えは、浅い。
倒れながらのカウンターが来る。
「ふゥゥ!?」
黒目が細まった。危ういところで同じ向きに回転して回避。
獣毛に覆われた肌は汗をかけないが、逆立った毛がその感情を表す。
「あッはァ! 強いなァクレス兄ィさン!」
楽し気に獣娘は叫んだ。
青年の胴を目掛けてスタッフを薙ぐ。
こちらも回避の流れからの攻撃。体勢を整えながらゆえ、狙いは甘い。
どう繋ぐか。脳筋なりに考える。
■クレス・ローベルク > 今度は胴体への打撃。
あちらの狙いは甘いが、何せこちらの体勢が悪い。
手をついてブレイクダンスの様に回っているのだから、足による回避はできない。
そして、当然、手で回避などということも出来るわけもなく。
「ぐっ……!」
着弾。
体勢を整えながらの攻撃なので、力が載ってないのが幸いだが、それでも相当の痛みが脇腹に走る。
だが、男はひるまない。殴られたクォータースタッフを動かせないように脇で挟み固定。
そのまま立ち上がり、
「せえええやっ!」
クォータースタッフを伝う様に走り、モルファナに距離を詰め、そのまま蹴りを放つ。
モルファナが武器を離すか、別の対抗策を瞬時に見出さぬ限り、杖は動かぬまま蹴りが腹を捉えるだろう。
■モルファナ > 「むぅっ!?」
思いの他、確かな手ごたえを感じて口の端を持ち上げたのも束の間、完全に固定された得物に、判断は遅れた。
時間にしてコンマ数秒。しかしそれは戦いの中では明らかな隙。
杖を軸にして襲い来る相手の蹴り。
武器を手放せば回避も出来ようが、そうはしなかった。
近づくことで、逆に力点をずらし、威力を殺す狙いである。
「ぐ、ゥゥゥ! がぅゥゥゥ!!」
脇腹を直撃する鈍い痛みに表情を歪めながらも、今は敢えて杖伝いに接敵し……犬歯をむき出して首筋に食らいつかんとする。
無論闘技場のルール上、命に関わるような力で噛むつもりはないが、それなりの力は入れよう。
■クレス・ローベルク > 「くっ!」
首筋などに噛まれれば、その時点で"事実上の敗北"として、負けになりかねない。
素早く右手を彼女と首筋の間に――文字通り"噛ませて"盾とする。
とはいえ、これは時間稼ぎだ。彼女の狡噛力がどれほどかは解らないが、恐らくその気になれば頸動脈を引き千切れるぐらいにはあるのだろう。
故に――
「このっ……これで、どうだっ!」
開いた左手で、力一杯、彼女の喉を締め上げる。
例え彼女が鉄さえ噛みちぎる程の狡噛力を持っていても、呼吸が苦しくなれば、口を開けざるを得ないだろうという判断だ。
■モルファナ > 「がぐゥゥ! ん、う゛ゥゥゥ!」
首を狙った喰いつきは片手に阻まれ。
それでも、相手の攻撃手段を減らせるなら上等、それに手なら死にはすまい、と、顎に力を込めた。
己の喉を捉える相手の左手。興奮状態のミレー少女は、文字通り唸りを上げる手負いの獣。
苦しさを無視して、お返しとばかりに彼の首を両手で締め上げようとする。
掴むのが成功するか否か。判断力は低下し、それも解らない。
ぎり、ぎり、ぎり。噛む力を強めて……
「……ぅ……」
小さな呻きと共に。
ふ。と噛む力が失われ……柔らかな獣娘の体重が青年に預けられる。
脳への酸素供給が足りなくなり、少女は『落ち』た。
アナウンスが、クレス・ローベルクの勝利を告げる。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
■モルファナ > (後日継続予定)
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からモルファナさんが去りました。