2019/05/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 夜の闘技場は、いつもの賑わいを見せている。
その中心、試合場で、今日も男は試合開始を待つ。
闘技場における、試合のプロ――剣闘士。
これだけの衆目を前にして、怯む様子もなく笑顔で周囲に手を振っている。

『さあ、今日も始まりました、アケローン闘技場興行試合!
普段の武闘大会とは違い、闘技場の選手に一試合勝利するだけで賞金が貰えるお手軽イベント!
今日の対戦相手は果たして、賞金を得てこの闘技場から無事に帰る事ができるのか!』

アナウンスの声と共に、扉が開く。
対戦相手が、入場してくるのだ。

『それでは、今日の対戦相手をご紹介しましょう――!』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にモルファナさんが現れました。
モルファナ > アナウンスが『ご紹介しま――――』ぐらいのタイミングで、挑戦者はフライング気味にゲートを飛び出した。
真っ白な毛並みが夜風になびいて揺れる。
両手にした木製杖で地面を突き、棒高跳びの要領で跳躍・空中前転のパフォーマンス。

そして……剣闘士の青年の数メートル前に着地した。

「……にっひぃ~♪」

全身白の体毛で覆われ、防具も全て白塗りの獣人娘が、楽し気に笑う。

クレス・ローベルク > 『しょう――えっ!?』

アナウンサーが狼狽するが無理もない。
何せ、こちらの事情など知ったことかとばかりに飛び出してからの、突然アクロバットな動きだ。
観客はおお、と感心した様な声を挙げているが、彼女からすればいきなり梯子を外されたようなものだろう。
それに何より――

「全身毛のミレーか。どっかの本で発見例を読んだことはあるけど、お目にかかるのは初めてだ。
――俺はクレス・ローベルク。よろしくね、えーと」

楽しげに笑う少女を前に、こちらも温和な笑みで応える。
その間に、アナウンサーの方が改めて、彼女の名前と簡単な来歴を説明している。
それを聞くと、『モルファナっていうのか』と男は頷き、

「それではモルファナちゃん。対戦相手が女性である場合、最初の一撃は君から行うことになってるんだ。
だから、それを合図として、試合を始めよう」

モルファナ > 「わぅ。クレスにィさン? よろしク。よろしク。
でもモルファナは、むずかしーコト、よく解んナイ!」

ひどく訛りがあった。
歳に比べて幼げな、鼻にかかったような少女の声。白い尻尾はゆーらゆら。
自分が珍しいかどうか、その辺りも解っていないあたり、少々、頭の作りは残念なご様子。
それでも、自分がメスということで、ハンデをくれたらしいのは、解った。
重心を落とし、構えは半身。

「いーノ? んじゃあ……遊ぼっカァ!!」

ヒュ、と木の棒が空を切る音。
彼の左のコメカミ狙い……と見せかけてフェイント。
本命の足払い。ごめん、初手二撃だ。

クレス・ローベルク > 「あ、うん。要するに、君とよく似た子を知ってるって事さ。気にしなくていい」

難しいことを考えられる性質ではないらしい。
まあ、それは問題ない。もとより世間話に来ているわけではないのだし。
相手の構えに対してこちらも構えを取る。
こちらは剣を抜いて両手で構え、左足を引いて右足を深く曲げる。
そして、こめかみを狙う棒を打ち払おうとして、

「うぉ!」

本命の足払いに、足を取られる。
とはいえ、これぐらいの事は想定内だ。
前に出した右足を払われた事で、横に倒れつつある身体を手をつく事で支え、

「よっと!」

ついた手を支えにして、そのままコマの様に身体全体を回転させる。
彼女の反応が遅れれば、今度はモルファナが回転する足に引っ掛けられ、転ぶことになるだろう。