2019/05/07 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にミケさんが現れました。
ミケ > 武者修行中の少年。
夢である騎士になるため、ダイラスの闘技場で戦いに関しての技術を向上させようとして、訪れた。

外見は純朴の田舎のおのぼりさん。
持っている武器は使いこまれよく整備されている。

今は試合の前の控室の端に座り、深呼吸をしたりソワソワしたり、手に浮かぶ汗をズボンでごしごしと拭いている。

因みに純粋な勝負と聞いているがそれは嘘。
負ければその身を自由にできる。 と、試合相手には案内されている事を本人は知らない。

ミケ > あとどのくらいで自分の番だろうか…。
一生懸命落ち着こうと、息を深く、深く吸い、ゆっくりと吐き出していく。
「スゥ─… 、ハァ─…」

ダンジョンや遺跡でも戦ったし何とか生き延びても来れた。
訓練場で騎士とも闘いいろいろなことを教えてもらった。
であるが、たくさんの人が見ている中で武を競う。
それは初めての行為で、心がふわふわと落ち着かず、
自分の体がまるで他人の様。

すこしでも落ち着こうと、周囲を見渡せばそれなりの広さがあり、体を動かす事は出来そうで。

「良し。」

自分の頬を両手で叩き、胸を数度強く叩く。
手汗をもう一度ズボンで拭ってから、槍を握り先がとかがった片手盾を腕に付け立ち上がる。

「フッ… フッ…」
小さく鋭い突きを繰り出し、型を演武を交じえて体を動かし始める。
程なくして浮かぶ汗はキラキラと弾け、体は次第に柔らかさを取り戻し始める。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にビスコさんが現れました。
ミケ > 集中し、ウォーミングアップをすれば玉の様に汗が浮かぶも、いつもの体の動きを手に入れる。

そうしているうちに、遂に少年が呼ばれ、控室を後にし、通路を通ってたどり着く闘技場。

自分の相手はどんな相手であろうか─。
緊張でごくりと生唾を飲み込み、闘技場の客から掛けられる声でまた緊張しそうになってしまう。

ビスコ > 〈わあああああああ…………ッ!〉

アリーナの方からどよめきが響いてくる。闘士が入場したのだ。
すぐにミケの元にも、試合開始のために入場を促すアナウンスが届くだろう。

ミケの対戦相手となるべく闘技場入りしたのは、長身ながら細身の女性。
肌は白磁のように白く、長く垂らした髪も艷やかな白。叩けば折れそうな手足。不健康そうな印象を抱くだろう。
そんな体を守るのは、肘から手先、膝からかかとまでを覆うなめし革製のポイントアーマー。
防具と呼べる装備はそれだけ。他に衣服すら、下着すらも纏っていない。
股間には小さな布切れを貼り付けられ、女性の最も恥ずかしい部位はかろうじて覆い隠されている。
しかし、胸ははだけられ、慎ましやかに膨れた乳房の先に桜色の乳首がつんと立っているのが遠目にも見える。
あとの装備は10cmはあろうかという厚底靴、頭頂のフリルヘッドドレス、そして頑丈そうな首輪。

……いわゆる奴隷戦士である。
この闘技場において、ただ強者に供され、叩きのめされ、犯されるだけの存在として、そう珍しい姿でもなかろう。
しかしながら。

「……………………………………………」

まっすぐ背筋を伸ばして所定の位置に立ち、対面に対戦相手が現れるのを憮然と待つ姿は。
そして、手に持った全長5mはあろうかという革製の鞭の異様さは。
凡百の奴隷闘士とは違った威圧感を放っている。

ミケ > 響くどよめき。
少年もアナウンスに従い闘技場へ姿を現す。

日焼けした健康的な肌。
短いシャツから覗くのは日焼けしていない白い素肌を持つ少年。

興行主から聞いたのは純粋な戦士の戦い。
で、あるのにもかかわらず、今目の前にいるのは美しい女性。
つい見惚れそうになりながらも、ぎゅっと一度目を閉じ、前に出る。
せめても戦士であろうと。
その視線に侮りはなく、むしろ相手を尊敬の念で見つめる。

少年が持つのは右手に槍、左手に盾。

闘技場の中央に進み、少年はこれから戦う相手に先ず一礼。
相手の装備は長い鞭。
そして、騎士たちよりも強い威圧感を払う。
後ろに下がりそうな足ぐっと堪えて、むしろ一歩前へ。

「よっ よろしくお願いします!」

そんな小さな少年の声をかき消す様に試合開始の合図とともに、割れんばかりの歓声。

(ガキやっちまえ! いや お前にゃ無理だボロボロにされやがれ!
女 犯されろ!!)

そういった野卑な声は少年の耳には入らず、下肢に力を籠め間合いをつぶすために盾を構え、その裏に槍をいつでも出せる様に力を籠める。

自身を鼓舞し威圧感を跳ねのけようと少年は吼えながら踏み込む。
「う、おぉぉぉぉぉ!!」
少年の踏み込みは鋭いが、それはその年齢の者の中ではというぐらいである。
戦場に出たり戦いで実を立てる者にとっては甘さばかりが目立つだろう。

「おぉぉぉぉぉ!!」

ビスコ > なぜビスコがこんなところに居るのか。ただの貴族付きのメイドであるはずのビスコが。
……それは他の多くの闘士と同じである。金儲けのためだ。
ビスコ属するフィナ家はまだまだ没落には程遠いが、家計にはすでに火が付き始めている。
こういった興行の場に出向いて小遣い稼ぎをすることが、まったく無意味とはいえない状況になりつつある。
それに、いまだ希少性高い『魔導機械のセクサロイド』としてデモンストレーションを行うのも意義深いことであろう。

さてさて。よく陽に焼けた、汗の香るような少年が対面に現れる。
観衆のどよめきと卑屈な羨望の中、少年が挨拶をしてくれば、長身の女性も脚を正し、一礼。

「はい、よろしくお願いいたします。フィナ家の従者、ビスコと申します。良い戦いを」

抑揚の少ない声色で早口気味に放つ。覇気に欠け、観衆の声に溶け込んで届かないかも知れない、そんな微量な声。
そして向き直ってレフェリーの合図が下れば、試合開始。

「……………………………」

開始の合図が鳴っても、ビスコは構えを取らず、直立したまま。
対して少年の方は喚声をこだまさせながら一直線に突進してくる!
うり坊を思わせるような怒涛の突進を、ビスコは冷ややかな視線で見下ろしつつも目で追う。
………と。

ギュパアァァァァァァァンッ!!

雷鳴を思わせるような轟音が2人の間に鳴り響く。砂敷が強い力で打たれ、いくつもの微小な礫が巻き上がる。
ビスコは直立姿勢のまま腕だけを機敏に動かし、鞭を振るったのだ。
その先端は容易に音速を超え、突進するミケの眼前1mの位置を正確に打ち据えた。
威嚇攻撃である。この少年はどう反応するだろう?

「………………………とてもたくましい突進です、坊や」

唇がかすかに動き、先程にも増して小さな声でささやくように、挑発の言葉を紡ぐ。
もしこの威嚇にまったく臆さなければ、直立不動のビスコはミケの攻撃を避けられないだろう。

ミケ > 何故相手がこんな処にいるのか、田舎者の少年には考えも及ばない。

煽情的な格好をしながらもこちらに鋭い威圧感を向けるる相手をただまっすぐに見つめる。

「ゾス村出身、騎士を目指している、ミケです。」

かろうじて聞こえた相手の声、自分の名前を相手に告げ、レフェリーの合図とともに前へ!
余分な事や駆け引きをやっても相手に勝てるわけもない。

盾を構えながらの突進。
視界の中にちらりと入る鞭ではあるが、常人の動体視力であり、戦いの経験もない少年。かろうじて捕らえられるぐらいである。

目の前1m程の所に雷が落ちたのではないかと錯覚するほどの鋭い音。
音速を超えた鞭の先端が作る小さな石礫が盾に当たり、甲高い音を立てる。
ここで止まったところで槍よりも間合いの拾い鞭の餌食になるのは明白であり、止まりそうになる足を、無理矢理前へ振り出す。
目を閉じるという愚は犯さない。

挑発にもにた囁きは、歓声と、大きな雷鳴により麻痺しかけた耳には届かない。

「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!!」

直立不動でこちらを見据える相手に少年は吼えながらさらに距離を詰め、は突進のまま相手の眼前に立てば、盾ごと体を一度相手に沈め身体ごと繰り出される所謂シールドバッシュ。
何処までも愚直で真っすぐな攻撃、相手がその気になればいかようにも調理できるだろう。

少年の小さいながらもしなやかに鍛えられた四肢が躍動し汗を散らす。
相手の眼前で軽く身を沈みこませ
相手よりも身長が低い為、若干打ち上げ気味になるだろう。

ビスコ > 元より戦闘用として設計されていないビスコは、武器を取り扱う機能も有していない。
自律型のセクサロイドが暗殺能力を有していては危なっかしいにもほどがある。
……しかし、殺傷能力のほとんどない武器であれば別である。
主にマゾヒストなお客様相手に行使するための各種鞭、その取扱いにかけてはプロの曲芸師並みなのだ。

そんな腕前から放たれた長い鞭の一撃は、防具に対しては効果が薄いものの、皮膚に当たればすさまじい苦痛をもたらす。
当たらなくとも、超音速で風を切る先端の敏捷性とそこから発せられる衝撃波は、あらゆる獣を本能的に威圧する。
どうやらミケと名乗ったこの少年は、獣ではなかったようだ。
威嚇にひるまず、降り注ぐ砂礫にも構わず、突進を続けてくる。
ビスコはすぐさま手首を返し、鞭の先端をこちらに手繰り寄せる……が。
その数瞬にて、ミケとの距離は、もはやこの長過ぎる鞭の威力を発揮できないほどに詰まっていた。

「ふむ」

何かを思案するような声を漏らす。しかしなおも、ビスコは防御姿勢を取らず……。
棘付きの剣呑な盾が、少年の質量を伴って、弾丸のごとくビスコに命中する!

グドォンッ…!

重たく柔らかいものと、大きな表面積を持ったものとがぶつかり合う鈍い音が響く。
ミケのシールドバッシュは見事、ビスコのおへそ付近を捉えていた。
しかしミケに伝わる打撃の感触は、人間や獣を打ち据えたときとは明らかに異なっているだろう。
ビスコの体はまるで高粘度の粘体のごとく、衝撃を吸収していく。内臓や筋肉の感触すらない。
受けたモーメントに相応しい変形を見せていくが、胴体寸断にも及ばず。
そして、クリーンヒットを受けたはずの女性側からは、悲鳴どころか、嗚咽の1つすらも漏れ聞こえてこない。代わりに。

「まずは盾で攻撃ですか。相手の出方を伺う、攻防一体の初撃。参考になります」

なおも平然とした面のまま、棒読み気味のセリフが聞こえてくる。
ミケの盾には、ビスコの体組織がベットリと張り付いている。ひしゃげつつも破裂しないその体は、まるで水飴のよう。
アッパーカット気味に打ち込んだので、彼女の75kgの体がまるごと重石として盾に負荷をかける。
しかしその高粘度により、引き剥がすのは極めて難しいだろう。そして引きずり倒そうとすれば受け身を取ろうとする。

「……しかし、運が悪いです、坊や。その武器でなければ……」

ミケ > 安全圏でもある懐に潜り込む。
やはり、鞭は相性が悪い超音速の先端を盾で捕えない限り、少年の体は打ち据えられてしまう。

石礫と恐怖におびえる時間を潜り抜け、体をしなやかに折り曲げてから力を爆発させるシールドバッシュ。
相手の体を捕らえた。と思った瞬間盾から帰ってくる手ごたえは人とは全く異なり重い水の中で盾を降った感覚。
鍛えていても、体が完全には出来上がっていない少年の体はミシリと悲鳴が上がる。
損な体の悲鳴をねじ伏せ少年は裂帛の気合と共に相手を吹き飛ばそうとする。

「っくぅぅ… りゃぁぁぁぁぁ!!!」

まさか、それが開く朱だったとは思いもしない少年、此方を観察するような相手に向けて言葉を紡げる余裕は無い。
盾から伝わる感触は盾が相手に飲みこまれたような感覚を感じながらも勢いにを吸収する相手に伸び切ってしまった体。

振り払う事もできず、引き戻すことも出来ず、かといって前へ出る事に意味はなければ、
「僕の武器は盾だけじゃないよっ!!」
盾から腕を抜き、槍で相手の足を払おうとする。

ヒュッ─。

鋭い音が響くが、それも相手が常人であれば転ばせることも出来ただろうが、相手が交わすかその粘性な体を使えば少年の体を押倒す事は容易いだろう。

ビスコ > 水飴の体に突き刺さった棘付き盾。その向こう側からかかっていた圧力がふっと抜ける。
素早い判断で盾から腕を抜いたのだろう。
ビスコの体に絡め取られてしまえばそうせざるを得ないだろうが、判断の速さはさすがである。

「……まずは盾を無力化」

とはいえアドバンテージではある。挑発するように事実を述べてミケに伝える。
……と、そんな相手の身体が眼前で沈むように視界から消えた。

「むっ」

脚に衝撃を感じる。槍を振って足払いしてきたのか!
しかし、ミケがその短槍をビスコの脚防具に当てた瞬間、その防具は弾け飛ぶように外れ、地面の上を転がっていく。
もとより防御が意味を持たないビスコの身体である。着けていた小手も脛当ても、ただ貼り付けていただけだったのだ。
防具が外れた後の生足に槍が叩きつけられても、先程の盾と同様にズブズブと体組織に埋め込まれ、衝撃が呑まれてしまう。
さすがに少しはよろめく様子を見せるも、見かけよりはるかに重たいビスコの身体は倒されるに至らないだろう。

「本当に、運がないというか、ワンサイドでごめんなさいというか」

冷淡な口調で、脚元の少年にとぼとぼと語りかけるビスコ。

「もし坊やの武器が槍や盾でなく剣でしたら。それも、シミターのように重厚な刃のついた剣でしたら。
 ビスコはあっという間に手足を切り落とされ、ダルマとなって陵辱される末路になっていたでしょうに。
 ですがその槍では、ビスコの脚を切り落とすのは難しいでしょう」

そう早口気味に諭すように言いながら、ビスコは鞭を持った手を振るう。
まずは先端を高く真上に放り上げ、そして勢いを着けながら鞭全体の弾性を発揮させ、先端を超高速で引き落とす。
その狙う先は、槍を握るミケの手の甲! 至近距離での無理のある鞭遣いだが、当たれば痛い速度だ。
避けるか、防ぐか、それとも……。

「武器をすべて手放したら戦意喪失とみなされます」