2019/04/20 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 『さあ、今日も始まりました、アケローン闘技場興行試合夜の部!』

夜空を仰ぐ円形闘技場では、今日も試合が始まっている。
昼の試合では、この闘技場では割と珍しいガチの激戦が行われたとあって、観客席は大盛り上がり。
試合前から既に歓声が挙がっているほどに、この試合は期待されているらしい、が――

「(うーむ、これはこれでプレッシャー)」

試合場に立つ青い闘牛士服の男は、そう独りごちた。
勿論、期待に沿う努力はするが、今回は少し盛り上がりすぎている。
此処で圧敗などした日には、自分の名前に大きな疵が付く事は間違いない。

「(せめて、やられ役の奴隷とか、そっちの『楽な試合』になってくれないかなあ)」

盛り上がりに水を差すことにはなろうが、男としてはそちらの方がまだマシだった。
しかし、どうなるかは結局は上のご意向次第。
神様ヤルダバオート様上司様と祈るしか無いのだ。

『さあ、それでは今日の選手は――』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にルーシェ=イストレリアさんが現れました。
ルーシェ=イストレリア > にわかに闘技場がどよめく。
どうやら対戦相手が決まったようだ。

『えー。闘技場のスカウト員から情報が入りましたー。
どうやらこの女は昼の熱戦を退屈そうに眺めていたということでスカウト員が拉致った模様です。
やけに自信ありげで生意気だったので拘束具を提案したところ賞金の上乗せを条件に快諾。
果たしてこれは相当の実力者かはたまた無謀な命知らずか?
相対するクレス剣闘士はいつもの【お楽しみ】にありつけるのかー?』

そんなアナウンスが響き闘技場に一人の少女が現れる。
一見ミレー族とおぼしき少女は手枷により両腕を身体の後ろで拘束された状態でやって来た。

「ふむ、中々に鍛えていそうな相手じゃないか。ニンゲン風情の児戯と思っていたが少しは楽しませてくれるかな?」

現れて早々不遜な態度を丸出しにした少女は開始の鐘を待っていた。

クレス・ローベルク > 「すっごく帰りたい!」

手枷をされた状態でやって来た彼女を見た瞬間、男は悲鳴のように叫んだ。
こういう時は挑発の一つでも言って場を盛り上げるのが常なのだが、しかしそんな余裕は何処にもなかった。
敵の細かい肉体的特徴がミレーの物とは一致していない――事は置いておいても、そもそもハンディを付ける戦士と戦って、楽勝だった覚えがない。勝ったとしても、ボロ雑巾になるのが常であった。

とはいえ、帰る訳にもいかないし、対戦相手を待たせる訳にもいかない。
表情を、何時もの――温和な、されど感情のない笑みに戻す。

「いや、失礼。まあ、前回の戦いぐらいには、観客を楽しませようとは思う。残念ながら、君を楽しませると約束はできないけどね。俺、弱いし」

此処で、下手に張り合うと碌な事が無い――下手に強さをアピールした挙句、じゃあ、と手枷を外されても困るのだ。
なので、必死に弱者アピールをしつつ、しかし、

「……嫌だけど、非常に嫌だけど、俺の試合じゃ、最初の一撃は女性からと決めている。それが、試合開始の合図だ。
ハンディみたいで嫌かもだけど、遊びの形式みたいなもんだと思って付き合ってくれ」

それはそれとして、ルールはルール。それがマイルールであっても。
故に、挑発とも取れる様な台詞を、やや自信なさげに口にした。

ルーシェ=イストレリア > 「ふむ。先手を譲るとは殊勝なことだ、ならば頂くとしよう。
遊びと言うのであれば適度に抜いてやる。精々一撃でくたばってくれるなよ?」

相手の行動が此方を侮っての事には見えない。
寧ろ先手など譲りたくないと言う叫びが聞こえてきそうだ。
しかし余りに見え見えに手を抜いては失礼。
であれば初手は…。

「来い、我が紅の刃脚【ヨアルキ】」

振り上げた足に魔力が宿り形を成す。
それは紛れもなく靴だ。刃が展開されている以外は特に目立つことも無いだろう。

「ワタシも一つルールを追加しよう。拘束された手は勿論、この戦いにはこの二脚しか使わん。貴様が全力を振るうに相応しい好敵手だと判断するまでは…。な。」

そう言い残し少女は消える、否。消えたように錯覚するだろう。
次第にクレスの足下に影が落ち、見上げれば全力で踏み抜かんと落下してくる少女の深紅、黄金の双眼と目が合うだろう。

果たして彼女が言った『手を抜く』を避けれる程度にはするが当たったら死ぬ。
だと理解できたかは別だが…。

クレス・ローベルク > あちらが魔力武装を顕現させると同時、こちらも剣を引き抜く。
魔力武装自体は、魔法戦士の魔法としてはメジャーなもの。
初手が靴と言うのはやや変わり種だが、ハンディとして手を封じられている以上、普通に頷ける選択ではある。

「それはマジで有り難い。できれば、試合が終わるまで好敵手と認めてくれないでいると有り難い……っ!」

軽口は、途中で警戒の無言に消える。
だが、男は彼女の姿を見上げない。
剣を抜いたまま、そこで立ち尽くすままだ。
そして、着弾寸前、男は嘲った。

「――かかった」

刹那、女の姿を一度も見もせずに、その脛を掴んだ。
別に、大した事ではない。影の大きさから、飛距離を計算し、影の大きくなる速度で落下速度を測り、着弾時間を読んだだけの事。
移動距離を、速度で割れば時間が出る。落下の数式はもう少し複雑な式ではあるが、それでも単純な算学だ。
魔力で加速されれば無様に転がるしかなかったが、幸い試合序盤であったのが幸いしたのだろう。素直に、重力加速だけで落下してくれた。

「っていうか、ブレード怖っ!あっちに……いけっ!」

いくら捕まえたからと言って、ブレード付きの靴底に頭を晒しておきたくはない。
男は、ルーシェが落下する勢いのまま、思い切り中空に投げ捨てようとする。

ルーシェ=イストレリア > 「ふむ、重力落下程度の速度は見切るか。結構結構。」

掴まれ放られた彼女はそこで体制を建て直し立ち上がる。
そう、【何もない中空】に立っている。

「挨拶代わりの形式ばった初撃はこれで御仕舞いだな?
良かったのか?反撃しなくて、その剣を突き立てるくらいは出来ただろう?」

その二脚は空中を滑り出す、まるで見えざるレールが敷かれているかのように滑らかに、高速に、時に複雑にターンを交え、接近か離脱かはたまた強襲か?

「すまんが場外決着等と言う結末は用意していなかった。暫し踊ろうではないか!」

クレス・ローベルク > 「クソ、せめて地面に落ちて土まみれになりゃ、少しは可愛げもあるんだけどな……!」

そう上手くは行かないというのは解っていたが、しかし見事に返された物だ。
とはいえ、まだ試合は序盤。
空中を滑るという奇妙な動きは厄介だが、しかしそれならそれでやり様はある。

「女性に突き立てる剣はないって言いたいけど、あの状況で足技なり駆使されて抜かれたら死ぬからなあ」

こちらは、たん、たんとステップで後ろに下がる。
踊りに付き合うつもりはない、とでも言いたげに。
勿論、ただの逃げではない。本命は、相手の接近に合わせての、

「(邪魔眼……)」

とある魔術師から教わった、魔術破壊の術だ。
靴そのものは魔力かどうか解らないが、空中を浮遊するという"機能"は魔術効果。
魔力を視線を介して送るという技の仕様上、ある程度時間を稼がなければ効果は発揮しないが、あちらがフェイントを重ねた分だけ、単純な時間のアドバンテージになる。
勿論、その間も攻撃は飛んでくるので、それは避けなければいけないが、

「さて、踊り殺されない様に、精々頑張りますかね……!」

ルーシェ=イストレリア > (ふむ、距離を取るだけ…。か。
妙ではあるな。何か策があるのか…。それとも。)

「策を弄するもまたよし、ではワタシは意趣返しと行こうじゃないか。」

クレスの目論見を見抜いたわけでは無いが少女は魔力線を解除し地に降りた。
そしてなんの工夫もなく軽い足取りでクレスに歩み寄って行く。

「さぁ止めてみろ!先程見たいにうっかり掴もうとすると腕が無くなるかも知れんがな?」

まっすぐ近付き蹴り込む、特殊なことは何もないがその脚が放つ圧は凄まじく彼女の忠告はあながち誇張では無いことを察せられるだろう。
一撃に込められた重さが空気を震わせあたかも脚自体が意志を持ち殺意を振り撒いてるかのような重圧が蔓延する。