2019/04/03 のログ
クレス・ローベルク > ――試合が始まる
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 少し暖かくなった春の空気を、冷たい風が通り抜ける。
その風に凍え、小さく身を震わせる者達が居た。
試合場の檻の中に入れられた、奴隷たちである。

『さあ、アケローン闘技場特別イベント、隷剣会、隷属の会!
勝者は奴隷を得られるという破格のイベント、その奴隷の番人となるのは――クレス・ローベルク選手!』

青い闘牛士服の男が、「どーもどーも」と歓声に応える。
試合場の隅っこの奴隷たちにも、一応手を振るが、彼等が手を振り返すこともない。
まあ、彼等にしてみれば、男はただの他人であるどころか、仮に男の対戦相手が奴隷を解放するタイプの善人であれば敵だ。
有効的に接しろと言う方が無理な相談だろう。
男は、直ぐに意識を切り替えて、試合場の扉――対戦相手が入ってくるであろう扉に注意を向ける。

『さあ、それでは、今日の挑戦者をお呼びしましょう!
今日の挑戦者は――』

試合が、始まる

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にオウカさんが現れました。
オウカ > 『竜を殺し、鬼を斬ったと言う東方より来た歴戦の猛者!! "竜殺鬼斬"オウカ――――!!』

実況が高らかに紹介するは幼い風貌の東洋の戦士。
背には槍と大太刀を背負い、腰に二刀流、後ろに小太刀二刀。
手にしたるは東洋の大弓。

「それでは宜しくお願いいたしまする」

歩む姿は悠々と。
特に気負った様子もなく、慣れた様子で場に現れる。

クレス・ローベルク > 実況の凄まじい紹介に、一瞬男の微笑みがぴくり、と引きつる。
男のプロ精神で何とか表情を抑え込んだが、その心中は相当に動揺している。

「(竜?竜ってドラゴン?つまり、ドラゴンスレイヤー!?まぁじでえ!?)」

一体どんなのが出てくるのか、と戦々恐々で扉を見やる。
観客達も、ごくりと息を飲み、扉を見つめている。
そして、現われたのは――この場には似つかわしくない、少女であった。
観客達は、何だ、ただのフカシかと失望と嘲笑の入り混じった視線を向けるが……それを見て、男の口端は、更に引きつることになるのだった。

「よ、宜しく。えーと、それ全部使えるのかい?
必要ない武装なら、幾つか置いてきてもいいけど……」

もし、彼女がそれを全部使うと主張すれば、それこそ本物だ。
あれだけの武器種を、全て扱えるなど、それだけで並ではない。
試合前の探り合いとして、それぐらいの情報は欲しかった。

オウカ > 「? はい。問題ありませぬよね?」

武器固定のルールありましたか、とジャッジに問いかけ。
ノー、と言うモーションを観るにうなずいてから。

「ええ、問題はないようでするので」

弓に弦を張りながら微笑んで。
張られた弦の強さ、おおよそ8人張り。
成人男性八人でもってなされるそれをただ一人でやった。
"膂力一つ"とってみても尋常ではないのは察しがついた。

クレス・ローベルク > 「ああ、いや。問題ないなら良いんだ。
……そっかあ、全部使えるのかあ」

一瞬、遠い目になる男。
しかし、直ぐにそれをアジャストして、何時もの笑みに戻る。
相手が魔族だった事もあるのだ、ドラゴンスレイヤーぐらい、と無理矢理ポジティブに考えて、

「それじゃあ、始めようか。
一応、俺の試合特有のルールとして、女性に限っては初撃を譲るってのがあるんだ」

そう言うと、腰の剣を一本抜いて、正眼に構える。
相手は、只者ではない。
下手に二本抜いて、両方共破壊される様な展開は避けたかった。

「さあ、何時でもどうぞ。それを以て、試合開始の合図だ」

オウカ > 「……よろしいので?」

首を傾げれば、黒い髪が揺れて。
手をぷらぷら、と触れば、真紅の瞳が見やる。
その瞳の色は、侮る事もなく。
彼の信念がそうなのだろう、と言う納得の色一つ。

「本当によろしいので?」

もう一度、問いかけを投げかけて。
とん、とん、と二度軽く地をつま先で叩く。

クレス・ローベルク > 「う、そう言われると何かミニマム嫌な予感」

最早、男の笑みは完全に苦笑いである。
しかし、その眼は揺るがない。
もしかしたら、一撃で無様に負けるかもしれない。
この試合は、基本負ける事が許されない。
奴隷一人の損失は、決して安いものではないのだ。
だが、それでも――

「勿論。俺が勝手に決めたローカルルールだけど、ルールはルール。
君が例え神の様に強くとも、悪魔の如く狡猾でも、一度決めたルールを揺るがすことはできない」

単に弱い女性が、全く見せ場もなくやられる事を防ぐためのもの。
眼の前の少女には、当てはまらないかもしれない。
だが、此処の観客達全員が、そのルールを知っている。
ならば、そのルールをゆるがせば、それは観客への不実だ。
故に――

「さあ、クソ便利なマジックアイテムでも何か超強い魔法でも、何でも使ってこいよ!
言っとくけど、そう簡単には負けないからね!……負けないからね!?」

凄まじい自信のなさだが、それでも男の眼にゆるぎはない。
どうやら、本当にやれと、そう言っているようだ。

オウカ > 「承知致しました」

こくん、とうなずいてから。
二度、三度、足元を確かめるように踏みしめてから。

「――――その信念、その意志、感服致しました故」

ぐ、ぐ、ともう一度、足元に力をこめ。
気と魔力がそこに収束する。

「全力で参りまする」

刹那、それが弾けたように膨れ上がる。
瞬間、空いていたはずの距離が一瞬で殺される。
無造作のように見えて精密無比なまでに突き出されたのは握り拳。
そこに宿った膨大な気と魔力、それを東方の巫術にて融合し、練り上げたソレ。
恐るべき威力を体表ではなく、体内に浸透させ炸裂させる"鎧徹"。
放つは男の腹部目掛けて。

クレス・ローベルク > 「――あー、早まったかな」

一体、何をどうすればその年齢で、そこまでの領域に到れるのかと言えるほどの力。
それは、何ら妨害もなく、一点に集められ、そして、爆ぜる。
その移動法は、観客達から見れば、"移動"というより、ただの"消失と出現"にしか見えなかっただろう。

「――巫山戯んな殺す気かっ!?」

そして、それに対して男が行ったのは、回避。
しかし、普通の回避では、追撃を食らうと判断したがゆえに。
男は、くるりと後ろを向いた。
そして、そのまま、手を使わず、バク転。
オウカの低い身長を飛び越えるように、後方宙返りで拳を回避したのだ。

「貰ったあ!」

そのまま、後ろからオウカのつむじに向かって剣を振り下ろす。
魔剣の効果で斬れない様にしてあるが、それでも鉄の塊相当の打撃力。
当たれば、それなりのダメージは覚悟すべきだろう。

オウカ > 「――――なるほど」

その一撃を避けられた事になんら驚く事もなく。
前に倒れ込むように姿勢を崩すと同時。
足に気と魔力をこめると同時、地に手をついて。
片手で逆立ちするのと同時、剣の一撃をその足裏で受け止める。
袴がふわり、と舞い、白く艷やかな瑞々しく、まぶしい足がちらり、と一瞬目に入る。

「……っとっ」

受け止めた刃をそのまま蹴り上げれば、手に力をこめ。
とん、と飛び跳ね一気に距離を取ると同時。
番えられていたのは四本の矢、すでに弦は引き絞られていた。

「天心不然十二門戦場合戦術弓術――――火龍」

その矢先に魔力が集中し、火が灯り、斉射。
不思議に不思議の事あり、ほむらの矢四本。
まるで生命があるようにその全てが男目掛けて殺到する。