2019/03/17 のログ
■クレス・ローベルク > 「ぐっ!」
剣を振るモーションからのチャージ。
懐に飛び込んでいる最中故に、それは回避も受ける事も出来ず、まともに食らってしまう。
が、二歩ほど後ろに下がるものの、その笑みが崩れることはない。
それぐらいでは揺るがないとでも言いたげな笑みだ。
「成程、こういう戦いがお好みか」
ならば、と男は覚悟を決める。
最初は足で翻弄して、隙を見せたところを攻撃するつもりだったが、乱打戦がお好みとあらば、付き合うのは吝かではない。
――流石に、試合序盤から、媚薬を使うのも興ざめであるし。
「偶には真っ向勝負もしないと――ね!」
二刀の内、右の刀をコンパクトに横薙ぎに振るう。
狙うは彼女の胴。一応、鎧対策に、使用している刀は鎧ぐらいなら切り裂ける程度の業物を採用している。
鎧を過信して胴で受ければ、意外な被害を受けることになるだろう。
■プリミオ > 「そう、これでこそ戦いですわ!」
少女もまた笑顔だ。
楽しそうで、自信たっぷりで、だからこそ魅力的な表情。
得物からして想像がつくかも知れないが、それを振り回して暴れるのが好きなのである。
「真っ向勝負……大歓迎、ですわ!」
右の刀は自分の剣で防ぐ、と言うより自らも動いて剣の陰に隠れた。
両者の武器を比べれば、こちらは取り回しで敵うべくも無いが、左手で地面に突き刺すように落とせば重さのハンデは少なくなる。
もちろん次に使おうとする時には余計な時間を食う事になるが、切れ味が鋭いと聞くカタナと言う武器を素通しするわけにも行かなかった。
そして間髪いれずに相手の顔面を狙って右のストレートを打つ。
今もう一振りの刀で狙われたらかわしきれず、受け切れない。
先手必勝だ。
■クレス・ローベルク > 鋭い音とともに、刀が剣に弾かれる。
鉄の塊を思い切り叩いた衝撃が手に伝わるが、しかしそれよりも目前に構えられた拳の方に意識を集中する。
少女の細腕とは言え、それに秘められているのは大剣を縦横に振り回す程度の膂力。
こちらの意識を刈るだけの威力は、十分にある。
「くっ……!」
故に、男は回避を選択した。
上半身を流すように逸し、彼女の拳をギリギリで回避する。
そのままでは追撃を喰らいかねないので、身体を逸した勢いを利用し、左足を軸にして身体を回転させ、その勢いで刀を一閃。
攻撃というより、彼女と自分の間に壁を作るような剣閃で、追撃を押し留め、そのまま構えを元に――否、さりげなく左の刀だけを逆手に持ち変える。
もし気づいたならば、明らかに不自然な動作にしか見えない。が、
「今度はこっちの番だよ……っと!」
相手にその意図を考察させる暇を与えまいとするかの様に、右の刀で、彼女の顔面に対して突きを繰り出す。
■プリミオ > 「……っと!」
攻撃をかわされてたたらを踏むが、何とか踏みとどまって一閃を回避する。
当てるつもりの攻撃であればだいぶ深く傷ついていただろう。
安心したのか思わず一瞬気を緩めてしまい、反撃を許す。
「っ、痛っ!」
顔面への突きを、首を振ってかわす。
直撃は避けたが、鋭い刃が頬を裂いた。
白い肌に一筋の赤い線。
でも致命傷ではない。
体勢を立て直し、得物を構え直せば勝機はある。
そう考えて剣を握る左手に力を込めた。
まだ、逆手に持ち代えられた左の刀の意図には気づかない。
■クレス・ローベルク > 普段なら、少女の頬を浅く裂いた時点でブーイングが来るが、今回はプリミオが最初から積極的に戦いに飛び込んできたのが幸いした。
観客の意識が、性よりも戦いにシフトしているおかげで、この闘技場では珍しい、単純な戦いによって観客の耳目を惹きつけられている。
「(まあ、とはいっても、これを女の子にするのは流石に気がとがめるんだけど……!)」
とはいえ、乱打戦を仕掛けてきたのは向こうだ。
故に、遠慮なく男は左の刀を攻撃に使用した。
否、正確には、使うのは刀ではなく――柄。
首を振ってかわしたそのこめかみに、逆手で持った柄の先端を叩きつける。
「殺撃ッ!」
柄による打撃。
刀の柄の先端は金属製になっていて、勿論刀ほどの硬度も威力もないが――それでも鉄は鉄。
まともに殴られれば、かなりのダメージが入るだろう。
先程の逆手持ちは、柄による打撃をスムーズに行う為の持ち替えだったのだ。
■プリミオ > 多少切り傷が出来ても気にしない。
それどころかにこにこしている。
好戦的な笑み、と言うよりはスポーツを楽しむような。
とは言え突きをかわした後ではそれを言葉にするような余裕は無い。
剣を振り上げ――
「くぅっ!?」
ようとして、思わぬ衝撃を感じた。
剣を抜くために若干腰を沈め気味に力んだのもあり、こめかみに直撃して意識を刈られるという事は無かった。
だが、それでも側頭部に打撃を食らった事には変わりない。
一瞬目の前が真っ暗になった。
その瞬間、少女の体はふらりと後ろに倒れそうになっていただろう。
何とか尻餅をつくのは堪えたが、抜こうとしていた剣はいまや体を支える杖の様。
脳を揺らすような打撃に明らかにふらついている。
■クレス・ローベルク > 「(あっ、やべっ)」
左は利き腕ではないのもあって、つい全力で殴りつけてしまった。
気絶させるつもりはあっても、殺すつもりはまるでなかった。というより、規定上、殺すのはルール違反という事になっている。
まさか、死んでないよね!?と一瞬思うが、ギリギリ剣で身体を支えているので、恐らくセーフだろう。
そして、セーフである以上、試合は続いている。
「チェック!」
と言いながら、トドメとばかりに彼女の喉元に突きを繰り出す。
とはいえ、これは寸止め前提の突き。
"チェック"とは、勝利確定攻撃の合図であり、この寸止めが成立した時点で、男の勝利となるが――果たして。
■プリミオ > もしこれが実戦であったなら、その突きは少女の命を奪うことは無かっただろう。
なぜなら、結局耐え切れずに地面に仰向けに倒れこんでしまったからである。
「うぅ……あぅ、参りましたわ~……」
あんまり緊張感の無い声ではあったが、随分痛いは痛いのだろう。
軽く皮膚が裂けた側頭部を押さえながら、もう片手を上げてギブアップの言葉を告げる。
受け答えはできているし、命に別状は無さそうであった。
大剣もまた、主を追うように時間差で地面に倒れた。
「レディ・ファーストって仰いましたわよね?
それなら、抱き起こして手当てもして下さるかしら?」
■クレス・ローベルク > 仰向けに倒れ込んだプリミオを見て、再び焦りが心をよぎる。
やはり、やりすぎたか、脳に障害が出たら神聖魔法でも治るか解らないぞ――
しかし、その心配は、少女のふにゃふにゃとした声によってかき消される。
場が場でなければ、その場でずっこけてしまいかねない能天気さであった。
「ああ、はいはい。そうさせて貰いますよお嬢さん……
おーい、治療班、来てくれ。側頭部裂傷、受け答え良好、他外見異常なし!」
本来なら、此処で陵辱なり調教なり、勝者の権利を行使するフェイズが入るのだが。
先程のプリミオの降参宣言でそういうムードでもなくなってしまった。
割と内心しょんぼり気分で、彼女の身体を抱き起こしつつ、治療班を呼ぶ。
試合上で目立たぬ様黒衣の衣裳を着た治療魔術師が駆け寄ってきて、彼女の頭に治癒魔法をかけてくれた。
しかし、かけてくれたところで、
「……いかん、本格的にタイミングを逃した。もういっそこのままあやふやにして試合終わらせるか……?」
女性に勝利して一切エロい事せずに帰るなど、男にとっては前代未聞だが。
しかし、これから改めてエロいことをするのも何だか空気が読めてない気がする。
皮肉なことに、今一番懊悩としているのは、勝利した男の方なのだった。
■プリミオ > 「ふぅ……助かりましたわ!」
やはり能天気な声。
思い切り頭を殴られたとは思えない様な明るい声だった。
脳に障害があるとすれば今回ではなく、もっと前の物に違いない。
治療班に礼を言い、見送る。
そして今日の対戦相手の前にぴしっと立って、強引に握手なんかしてしまうのだった。
「今日はありがとうございました。
負けてはしまいましたけど、思いっきり剣が触れて久々にすっきりしましたわ!
次は負けませんわよ!」
とても爽やかに言い切ると、にっこりと笑う。
その上で応援してくれた観客に手を振ってみたりして。
男の内心など、全く気付いていない様子であった。
■クレス・ローベルク > 「あ、うん……はい……どういたしまして……?」
されるがままに手を取られ、そのまま握手などされてしまう。
今まで、負けた側に恨まれたり睨まれたりする事は数あれど、感謝される事などまるでなかった。
流石に観客もこの異常事態に心が追いついたらしく、何人か「おい、何やってんだよ犯せよ!」とか「ヘタレてんじゃねーぞ!?」とかちらほらブーイングらしきものが飛んでくるが
「(……どうしよう)」
このまま男は本懐を遂げるのか、それとも何となく雰囲気に流されてしまうのか――
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からプリミオさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > アケローン闘技場、試合場。
その中央に、いつもどおり――あくまで男にとってのいつもどおりであり、実際には試合の顔ぶれは常に変わっているのだが――立っている男。
何時も通りの温和な笑み――だが、しかし、その表情は怒りで引きつっていた。
『さあ、それでは今日も張り切って参りましょう、今日の挑戦者は――』
「いや、早い早い早い!
あの、今の状況を解りやすく説明してくれるかな!?
具体的には、この首輪について!」
男の首には、犬の散歩で使われるような首輪がかけられていた。
首輪は、試合場中央に立っている鉄の柱に括り付けられていて、ちっとやそっとの衝撃では外れそうにない。
鎖の長さは凡そ3mほど。柱の周りであれば自由に移動できるが、少しでも遠くに行こうとすれば、鎖が邪魔して先には行けないようになっている。
『説明も何も、ハンデですよ、ハンデ。
最近、参加者も減ってきたことですし、此処は試合の難易度を調整して、挑戦者を呼び込もうという、上からの物理的圧力です』
「こんな解りやすい圧力が、あっていいわけないだろ!?」
『まあまあ、もしかしたら挑戦者の方が憐れに思って拘束を解いてくれるかもしれないじゃないですか。
ハンディなんですから、向こうが要らないって言えば解かれますよ。
それに期待してくださいな』
男が実況席に怒鳴ろうが、声の主はどこ吹く風。
元より、彼女に男の処遇をどうこうする権利など無い故に、何処までも無責任に彼女はイベントを進行させていく。
『それでは、改めまして!この鎖に繋がれた哀れな子犬を打倒し、挑戦者は賞金を獲得することができるのでしょうか!?今日の挑戦者は――こちら!』
そして、今日の試合が始まる――