2019/03/16 のログ
クレス・ローベルク > 試合が始まる――
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 何時もは、まっさらな試合場が、今日に限っては賑やかであった。
その賑やかしは、地面から生えている何本もの竹。
何時もの踏みしめられた地面ではない、柔らかな土から生えている竹は、林のように乱立して、観客席からの眺めを少し悪くしていた。

『さあ、今回の試合は、少し趣向を変えて、東国の竹林をイメージした戦場になっております!
剣闘士クレスも、それに従って東国風の装備での参戦ですが……急な装備の変更に、不安などはないのでしょうか?』

青い着流しを着た男が、二刀の刀を携えて立っている。
何時もの絢爛な闘牛士服とは違い、派手さはかけるものの、しかし慣れぬ衣裳にも装備にも全く戸惑うことなく、ひょうひょうとした表情で立っている。

「前々からこうする予定だったからね。
きちんと刀の扱いも覚えたし、無様な戦いはしないつもりさ」

台本通りの実況娘の問いに、台本通り答えつつ。
男は今日の対戦相手を待つ。
何時もと違う試合に現れるのは、果たしてどんな戦士なのだろうか。

『それでは、今日の対戦相手は――こちら!』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にプリミオさんが現れました。
プリミオ > 試合場に現れたのは同じく和風の剣士、などではなかった。
冒険者風の軽装の少女である。
少女にしては大きめの体格ではあるが、それでも扱いきれるのか怪しい程の大剣を携えている。
好奇心で目を輝かせながら、闘技場内へ歩を進める。

「竹ですわ!珍しい……あら、これは失礼。」

はしゃぐ様に歩いていたが、対戦相手に気付いてこほん、と咳払い。

「お初にお目にかかります、プリミオ・クレンと申します。
 以後お見知りおきを、オサムライ様?」

剣を柔らかな土に突き立てて、スカートを摘まんでお辞儀をする。
礼儀作法の心得はありそうな動きである。

クレス・ローベルク > 建前上、対戦相手は剣闘士や一般人から無作為抽出である。
なので、今回の戦場にそぐわぬ冒険者風の少女を見ても、「まあ、そうぴったり嵌り役とは行かないよな」程度の感想しか無い。
とはいえ、竹を珍しがる少女は素直に微笑ましい。

「いやいや、俺も試合場でセッティングされたのを見た時はビックリしたしね。……俺はクレス・ローベルク。こちらこそ、宜しくね、お嬢さん」

彼女のお辞儀に、こちらは軽いお辞儀で返す。
そして、両刀を抜いて、足を肩幅に開いて、刀を八の字に構える。
刀身の先が軽くクロスするように構えられているのは、刀を受けにも払いにも、攻撃にも使える様にしてあるのだろう。

「まあ、此処って言うか、俺のマイルールなんだけど、最初の一撃は女性に譲るって決めてるんだ。
それを合図に、試合開始としよう。レディ・ファーストってやつさ」

そう言うと、彼女の動きを待つように、ぴたりと静止する。
彼の努力の成果が発揮されているのか、その構え自体は、本物のサムライの様に見えるだろう。

プリミオ > 「ふふ、レディ・ファースト。」

くすりと笑う。
馬鹿にしているとか、舐められて怒っているとか言う雰囲気ではない。
ただただ微笑ましくて笑ってしまった、と言うのが伝わるだろう。

「それでしたら、お言葉に甘えまして……行きますわよ!」

侍風の構えを見てもたじろぐ事も無く。
先ほど地面に突き立てた大剣を掴むと一気にダッシュした。
刀より長く、幅広の剣を構えながらもその足取りは軽い。

「はぁっ!」

まずはお手並み拝見、とばかりに片手で大きく横薙ぎに剣を振る。
もちろん、相手が動かなければ直撃するコースである。

クレス・ローベルク > 闘技場でそれなりの経験を積んだ男の目で観察するにおいて、彼女は非常にバランスの良い戦士と見えた。
こちらの"マイルール"を侮辱と捉えない程度には精神が安定していて、大剣を用いながらも動きは俊敏。
今の所、非の打ち所がない、所謂"秀才型"のファイターに見えるが、

「(そこをどう打ち崩すかが腕の見せ所、ってね)」

そして、自らの腕を見せるために、男は動いた。
彼女のダッシュに対して、敢えてこちらも真っ直ぐに、彼女の懐へと飛び込んでいく。
未だ刀は振るわない。目指すは、彼女が振るう刃の軌道よりも内側、彼女の至近距離という安全圏。
彼女の剣に速度が乗るより早く、彼女と身体が触れ合う距離へと近づいくつもりだ。

「(さて、どう対応してくるかな)」

この動作自体は、大剣などの大物の獲物に対する対処としては、割と初歩の類。
彼女と同様に、こちらもお手並み拝見の段階であった。

プリミオ > 懐に飛び込まれると、一瞬『あら?』とでも言いたげなきょとんとした表情をする。
予想外、と言うよりはこう来たか、と言う顔である。
闘技場と言えば武器と武器がぶつかり合う派手な戦闘、と言う先入観があったのだろう。
武器で受けてきたところを思いっきり叩きたかったらしい。
しかしそこは気を取り直して相手の行動に対処する。
剣を振り抜こうとした右腕を左手で剣を掴んで強引に止め、ダッシュの勢いのままに肩からぶつかっていく。
想定としては、大剣を持っている自分のほうが質量的に有利、と言う所ではあるのだが。
体がぶつかり合うような野蛮な戦い、少女の目は楽しそうに爛々と輝いている。