2019/01/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にロザリンドさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「ぐふあ!?」

ビンタからの柄での打撃をまともに喰らい、男は後ろへと吹っ飛ぶ。
尤も、吹っ飛んだのは威力を殺すために自分から吹っ飛んだのだが、それでも流石に無傷とは言えず、仰向けに倒れ込む。
吐き気にも似たダメージを抑えつつ、慌ててバク転で距離を取る。

「……ってあれっ?」

てっきりくると思っていた追撃が来ない。
見れば、少女は表情を元の笑顔に――ややおおっかなく感じるのはこちらの心情の影響だと思いたい――戻し、獲物を地面を突き刺して思案している。

「いや、まあ、君が望むなら、降参って形でこれで終わってもいいけど、ルール上は未だ続行可能だよ。
……そうだよね?」

『え、あーはい。ちょっとお待ちを!』

実況席に声を掛けると、どうやら、ルールブックを参照しているらしい紙を捲る音が聞こえた後、

『はい!試合終了の条件は、両者何れかの降参、両者合意による引き分け、又はKOか、審判が戦闘不能であると見做した事によるTKOに限ります!
審判からは続行のサインが出ておりますので、試合はこのまま続行されます!』

「……だ、そうだ。
ま、俺としては、これで降参してくれるなら、楽にギャラ貰えて良いなってぐらいなんだけど……観客がねえ」

見れば、周囲の観客達は口々に「どうした!まだこれからだろうが!っていうか、俺嬢ちゃんに賭けてんだよ!降参とかやめろよ!」「折角久々に見応えある試合なんだ、もっと見せてくれよ!」「俺はお嬢ちゃんの濡れ場を楽しみにしてるんだぞ!客の期待を裏切るってのか、ああん!?」

などと好き勝手に囃し立てている。

「彼等の声を無視するのは、ちょっと、ねえ。
一応、闘技場の雇われだからさ。お客さんの声は無視できないんだよ」

とはいえ、あくまでも決定するのはロザリンド。
敗北を認めれば、それはそれで潔しと見る者もいるだろう。

ロザリンド > 「……ふむ」

ちゃんとした戦いができると踏んだのだろうか。
一時は静まり返っていた観客席が俄かに熱を帯びる。
その只中で僅かに首を傾げる。
客からすればやっと面白くなってきたばかり。
此処で終わることを望むはずもない。

「成程」

言葉少なく呟き、僅かに地面にめり込んだ斧槍を構え直す。
これはどちらかが分かりやすく地に伏すより他になさそうだ。
ならば、存分に”リベンジ”させてもらう。

「では改めまして」

女は初めて戦闘に臨むものらしい構えを見せた。
その心情を映す様に構えられた結晶質の武器は
碧色の細かい光を乱反射している。
先程までの柔らかい印象の中に、剃刀が紛れ込んだような
そんな僅かで、けれど危険な雰囲気を纏うと

「稚拙ではありますが……
 ――参りますわ」

踏み込んだ足元に亀裂を残しながら飛び込み、
躊躇なく斧槍を真横に一閃した。

クレス・ローベルク > 「(……明確に、空気が変わったな)」

歓声の中、男は彼女を観察する。
今までは攻撃も防御も鎖頼みだったのが、武器を構え、こちらを明確に敵として捉えている。
油断をやめた、と取るべきなのだろうか。

「ま、苦戦は何時もの事……か!」

真横への一閃に対して、男はステップで一歩下がる事で対応する。
擬音にするならば、とん、という力のないステップだが、それ故に敵の斧槍をギリギリで回避することが出来る。
そして、ギリギリで回避できたということは、斧槍を引き戻すより早く、こちらが攻撃できるということだ。

「やれやれ、剣を捨ててしまったのは本当に悔やまれるな、と!」

一歩下がった時に、既に男は軸となる右足を曲げる事で重心を安定化させ、蹴りの体勢に入っている。
ステップで下げた左足を引き戻し、

「そいやっと!」

軽い口調だが、それに反して放つのは重い蹴り。
腹部を狙うその蹴りは、直撃すれば相応のダメージは覚悟しなければならないだろう。

ロザリンド > 遠心力に引かれそのスカートがふわりと広がる。
叩き付けるように振るったこちらの一撃を軽く身を引くことで躱す男。
素直に当たってくれるとは最初から思ってはいないが、
1歩しか引かなかったことに僅かに称賛に瞳が細められた。
観客ならいざ知らず、相対する相手であればこの武器が掠りでもすれば
並の盾なら簡単に防御ごと砕く様な重量物だと理解しているはずだ。
それを敢えてぎりぎりで躱すというのはそこに最も勝機があると冷静に判断したということ。
それを判断したとしても並の胆力で出来る事ではない。
……と言って称賛したとて手を緩めるわけはない。

「セイ!」

裂帛の気合と共に振り切った勢いを利用して体を捻り、
一歩退いた相手をさらに追うようにもう一歩踏み込むと
踏み込んだ足を軸に回転して、更にもう一歩。嵐のような横薙ぎを振り切る。
その重量にも関わらず片手で武器を振り回すその細腕は両手持ちに比べ可動範囲が広い。
その為見た目以上に間合いがぐっと伸びてくる様な感覚を受けるかもしれない。
とは言えいくら加速した一撃であろうともそのままであれば
腹部に放たれた重い蹴足に体を弾かれ威力を削がれる事になるが……

「此方をお忘れですか?」

最早聞きなれたであろう金属音と共に
その攻撃の間を縫うように重鎖が男へと襲い掛かる。
半数は腹部を狙う足を弾き、砕き、絡めとらんと襲い掛かり、
残りはその軸足を払うように低い位置を薙ぎ払う。
先程までとは違い主人の動きに追従し、その隙を潰すように動く鎖は
その時々に攻撃を弾く盾になり、または穿つ鉾となって
本を抱える片腕以上に主人の”手”を増やす役割を忠実に果たす。