2018/11/20 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > [待機中です]
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
■ヒナ > 「貴方の予想通り、御明察です。何故かは知りませんが私の魔力は枯渇寸前、距離を取って粘るのは正解ですが見え透いた挑発をするのはどうかと思いますよ?相手によっては冷静さを取り戻すかも知れませんね。」
投げつけられた卑猥な玩具をキャッチし握り潰す、ベキベキと音を立ててまるで砂粒のようにさらさらと風に散るディルドだったモノを眺めて彼女は薄く笑った。
「され、どうしますか?仮に私の魔力が完全に尽きても体力までを奪いきる事ができますか?」
あくまで余裕を振り撒く彼女だがそれを嘲笑うかのように件の黒幕が秘密裏に彼女を嵌める準備を進めているとは気付いて居ないようだった。
■クレス・ローベルク > 挑発まさかの逆効果。
冷静に対処された挙句、アドバイスされた大人は、その場で地団駄を踏み、
「ぐわー、冷静にアドバイスされたあ!子供に!冷静な!アドバイスを!されたぁぁぁぁぁっ!素直に辛い!」
『おーっとクレス選手。まさかの大人なら絶対勝っている筈の人生経験でまさかの惨敗です。もう何か、さっきまでの失態と合わせ技で、闘技場から契約解除されんじゃないですかね……』
「やめろぉ!暗い未来予想やめろぉ!?」
などとコントしつつ、ヒナに向き直る。
一応、薬はまだ効いているはずだが、あちらはあくまでも余裕だ。
まあ、火力で絶対なハンディがあるのだ。それもやむ無しと言うところか。
とはいえ、
「ええい、こうなったら小細工はなしだ!大人の力を見せてやる!」
と、自分で開けた距離を自ら詰めて、右手と左手にそれぞれ薬品注入器を構える。左手を胸に、右手の薬品注入器の先をヒナに向けるその構えは、まるで短刀術の構えのようだ。
『おーっと、クレス選手!これはいけません!一体この人はヒナ選手がつけてるぶっとい篭手が見えないのでしょうか!?そんなにヒナ選手に負けて選手生命を絶たれたいのでしょうか!?』
「うるせえ!こうなったら一か八かだ!っていうか、こっちは遠距離攻撃手段持ってないんだよ!さあ、来やがれ、これが最後の戦いだ!」
そう言いながらの待ちの構えは、あからさまにヒナの攻撃にカウンターを合わせる構え。
そのカウンターが"何"なのかまで、ヒナが見抜けるかは解らないが――
■ヒナ > 「良い度胸です。遠慮なく叩き潰します。」
軽く地を蹴り肉薄していく彼女。
相手が策を用いようとそれごと蹂躙するのがこの形態のスタイルだ、だがしかし。
その豪腕がクレスの元に届くことは無かった。
その代わりにクレスとの距離があと数歩程の地面に巨大なクレーターが現れていた。
『おおっとどうした事か魔法少女?クレス選手への接近を突然止め地面を殴り付けたー!?何かの策でしょうか?それとも...。』
ラファリエッタ・・・ヒナの視線はクレスを飛び越え遥か後方の観客席最上段。そこには彼女が救出するべき貴族令嬢と肥え太った奴隷商人、それと柄の悪い大男が一人貴族令嬢に刃物を突き付け下卑た笑みを浮かべていた。。
「この娘がどうなっても良いなら存分に戦え、ですか。悪趣味ですね。」
小さく呟き無防備に立ち尽くす対戦相手にクレスは何を思うのか?
■クレス・ローベルク > 「……!?」
地面を殴りつけた少女の動きに、男は不審を覚えた。
先程の攻撃に合わせて、こちらは媚薬注入器の媚薬を、思い切りヒナの眼に当ててやるつもりだった。
それを気付いたのかと思ったが、しかしそれなら眼を瞑って適当にぶん殴ればすむ話である。
しかし、その謎の答えはすぐにわかった。
「成程ね。そもそも、フェアプレイではなかったって事か」
そういう趣向か。成程。確かにそれは魔法少女とのゲームメイクとして有りだろう。
人質に取られ、本来勝てるはずの相手に……というのは王道だ。
だが、
「……気に食わないな。おい、ラファリエッタ」
男はそう小さく声をかける。媚薬注入器を腰のホルスターに直し、
「君の膂力で俺を思い切りぶん投げてくれ。俺じゃ君をあんな遠くまでは投げられないんだ」
そう言う男の表情は、不貞腐れた子供のようだった。
■ヒナ > 一度油断させるために敗けを演出するか、それとも無理矢理もう一度ラビットになって上を片付けるか。まぁ、その場合は負荷が掛かりすぎなんで命の保証は無い...か。
思考を加速させ対処法を思案し黙り混んだ彼女は不意に対戦相手から告げられた提案に目を丸くする。
「気持ちは有り難いですが貴方にはデメリットしか無いのでは?勿論貴方の立場が悪くならないように暗躍はしますけど。」
相手の意図を組んで残されていた魔力を使いきるかの様に全身から爆発するかのような魔力放出を行う。準備運動と言わんばかりに肩を回す彼女はもう一度だけ相手に問うた。
「組み付く振りをしながら全力で投げ飛ばします。残念ながら怪我の保証は出来ないので巧く受身は取ってくださいね?あのクソ商人にぶち当たる様に調整するので。本当に、良いですか?」
口ではそう言うものの先程まで対峙していた時の様な口調の刺々しさは消え仲間だと信じた相手に見せる彼女本来の笑みを見せた。
■クレス・ローベルク > 「デメリットもメリットもないんだよ。俺は、こんな事知らなかった。闘技場側の戦士である俺が知らなかったってことは、これはショーじゃない。ただの観客が起こしたトラブルだ。それも、ショーをつまらなくする類の」
これが、闘技場側から予め申し伝えられていた"趣向"ならば、男はその流れに準じただろう。
或いは、これがこの大会を盛り上げるのであれば、それでもやはり男は準じただろう。
だが、これは違う。こんな、布石も伏線も無いようなゲームメイクは、ただのゴリ押しだ。
そんなものに――クレス・ローベルクの興行を邪魔されて、黙っていられるか。
「OKOK。諸々任せたよ。っていうか、それぐらいの事はできるさ。こう見えて、ピンチを凌ぐことは得意だからね。何せ結局、魔法少女に負けなかったんだから」
そう言うと、男は思い切り、そして大ぶりに右腕で、ヒナを殴りつけるモーションをする。
この隙をついて投げろという事だろう。
ちなみに、ちゃっかり左の服の裾に、薬品注入器を隠し持って居たりするのだが。ヒナがそれに気付くかは、さてと言ったところか。
■ヒナ > 「それでは遠慮な...く!!」
身を屈めスッとクレスの裏手に回り込む。
腰から手を回し引き込む様な動作で思い切りクレスを放り投げた。その速度はまさに流星か何かと見紛う初速で、観客、実況娘。そして投げられるとわかって身構えていたクレスさえ置き去りにし全ての思考、企みを封殺する必殺の1投。
既にクレスを信頼していた魔法少女は疑う事も警戒することも無かったためもしクレスがその気なら媚薬を盛る事は容易だっただろう。その反則級な速度と体にかかるGに対応できれば、の話だが。
全てはクレスに託された、悪漢の企みの正否も、囚われた令嬢の命も、そして敵対していた魔法少女の運命さえも。
■クレス・ローベルク > 魔法少女としては、恐らくこれが事実上、最後の技であり、クライマックスであっただろうが。
しかし、ラファリエッタさえ知らぬ理由において、彼にとってもまた、この投げられる時がクライマックスであった。
「ぐ、お……!」
準備段階で既に強烈なGがかかる。
幸いにして、薬品注入器は爆発魔法にすら耐えうる頑丈さを持つ。だから、これで割れる心配はない。
そして、その条件だけで、男が勝利の笑みを浮かべる理由には十分だった。
寧ろ、今までの何より楽勝とさえ、言える程に。
「(やれやれ、まさか、勝てる試合をこんな形で投げ捨てるなんてね……!)」
何故、男がこれ程までに魔法少女に苦戦したのか。
それは、彼女が超スピードで走り回り、射撃武器や投擲武器で一方的にこちらを攻撃し続けたからだ。
爆発的な魔力でブーストされているとはいえ、"単なる膂力"相手に遅れを取るなど――それは最早、今まで男が下した対戦相手への、侮辱と言えた。
「(……!)」
少女がこちらに力を込める瞬間、男の反射神経は意識すら届かない速度で、定められた動きを正確に行使した。
速度が載っているタイミングで、ラファリエッタの首筋に打ち込む。そして、
「GO!」
猛スピードで、男は発射された。
着弾までは一瞬。その一瞬を顔面を右手でガードし、左手は伸ばしておく。
そして、そのまま衝突。速度が載った男は悪漢に着弾し――その左腕は、奴隷商人の首にラリアットをかましていた。
その勢いのまま、二人とともにもんどりうって倒れる男。
幸い、悪漢もこんな状況で少女を抱えてはいられなかったらしく、放り出された少女は、そのまま立ち上がって逃げていた。
「……お客様」
男が持っていたナイフを、二人に突きつけ、言った。
そもそも、これを言うために、男は二人の元にぶっ飛んだのだ。
即ち。
「――鑑賞中、席をお離れになるのは、ご遠慮ください」
――観客の、マナーを。
■ヒナ > クレスを放り投げた刹那首筋にチクリとした感触、内心彼女は相手の勝利を讃えた。
-全く。強かな男ですね、貴方は。
「勿体無いですがまぁ、良いでしょう。ここから先は後のお楽しみ、ご褒美と言うことにしましょうか。」
残っていた魔力を全て消費した。クレスを投げるために体力も使い果たした。これで彼女の【切り札】の準備が整った。
ーlastcodeジョーカー承認ー
ー全状態をneutralへ移行ー
ー熾天銃声ラファリエッタ執行ー
「さぁ、これがラストダンスです、ラファリエッタcodeラストジョーカー、執行開始です。」
二度目の投薬により訪れ始めていた体の変化を含め体力魔力疲労全てが完全に回復する。それだけに留まらず溢れだした魔力により大気は震え局地的な魔力振動さえが観測される中、通常状態の黒衣を身に纏った全くの別物の彼女が舞った。
二挺拳銃が抜くモーションさえ見せずに火を噴く。目標の座標へ直接弾丸が到達する奇跡の射線。命を奪わず、しかし再起不能は免れない裁きの銃声が轟き、囚われの少女を戒めていた鎖、クレスに問い質される承認と御付きの悪漢へと不可視の弾丸が叩き込まれる。
否応なく意識を刈り取られた邪な二人組は少しのあとに闘技場側が派遣した警備によって連れ去られるだろう。
事が一段落した時には彼女、ラファリエッタの姿は忽然と消えていた。
暫くしてクレスは気付くだろう。
自分が使用した薬品の数が合わないことに。
クレスが使用した2回分、そして魔法少女が奪って使用した1回分。そこから更に2本消えて合計5回分が無くなっていることに。
更にホルスターに【真夜中の人が消えた頃闘技場で待つ】と書かれた紙切れが挟まっていることに。
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草木も眠る、とはよく言ったもので昼間は賑わいを見せるこの場も今は物音ひとつ立たない無音の空間だった。
昼間の試合の最中魔法少女が刻んだ大きなクレーターの中央、黒衣の魔法少女は待ち人が来る確証の無いままに仁王立ちで待ち続けていた。
■クレス・ローベルク > 真夜中の闘技場。
夜の闘技も終わり、スタッフも殆ど全員が帰った後。
男は、悠々と忍び込んでいた。
「やれやれ、一体何の用なんだか。まさか、『協力してくれて有難う。それはそれとして女の敵は死ね!』とか言われる訳じゃあないよなあ……?」
だとしたら、いよいよクレスの命は無いが。
結局、あの媚薬も最終的には解毒されてしまっていたし。
仮に"あの"彼女を本気で倒すならば、それはもう、闘技場で戦う為の"人間"を想定した武器ではなく、"怪物"を想定した"兵器"を出す必要がある。
尤も、そんなものを大人気なく闘技の場に出した時点で、剣闘士としてはクレスの負けであり、つまりこの勝負は最初から決まっていたのだ。
「あーあ。全く勘弁してほしいよ。
怪物退治は実家の領分だ。
俺は楽しく闘技場で戦えればそれで良いのに、と」
クレーターの中心で立っている少女を見つけ、手を振る。
「どうも。感想戦って奴かい?しょーじき、語れば語るだけ語るに堕ちるって感じだけど……ま、折角だし、魔法少女と二人でお話も悪くない、かな」
■ヒナ > 「感想戦?何を言っているんですか?私は一応貴方の勝ちを祝福しに来たんですよ。剣闘士クレス・ローベルクをね。」
此処で疑問が湧くだろう、自分は彼女に名乗っていない。実況娘も『クレス選手』としか呼んでいない、彼女はどうして自分の名を知っているのかと。
「おっと失礼、名乗らずして名前を呼ばれるのは不愉快かも知れませんね。私は魔法少女として東奔西走する前からずっとこのダイラスで暮らしていたので貴方の事は少しだけ知っているんですよ。」
手を振り近付いてきたクレスに対し敵意が無いことを証明するかのように二挺拳銃と脚に付けられていたナイフを消して見せる。
「ラファリエッタに初の黒星を付けた貴方に祝福を。」
と良い恭しく頭を下げた。
■クレス・ローベルク > 「(え、あれ、言葉に棘がない?演技……って訳じゃあないよね、あれ。いや、それより)」
いきなり、勝ちを祝福とか言われ、狼狽したが、それよりも警戒の方が強い。
何故、彼女は自分を知っているのだろう。別に実名バレは気にしていないし、寧ろ宣伝していた程だが、しかしそれは闘技場という狭い世界での話だ。
昨日今日此処に来た筈の"ビギナー"に名前が知られているとも思えなかった。
しかし、その謎は直ぐに彼女自身から解き明かされる。
「成程、そういうことね。確かにダイラス生まれってんなら、俺の名前を知っててもおかしくはない、か」
仮に闘技場に来たことはなくても、その観客や対戦相手が酒場で愚痴ったり、そういう事もあるだろうし。
納得した男だが、その首は再び傾げられる事になる。
男の前で、ラファリエッタが自らの武装を解除したのだ。
そして、その後の台詞を聞くと、男は苦笑いを浮かべ
「黒星と言っても、ギブアップ成立前にリングアウトしちゃってるから、形式的には俺の負けだし、結局媚薬はレジストされてるから、内容的にも俺の負けなんだけどね。でも、そう言われて悪い気はしないな」
何せ、あれだけの戦力を持った少女だ。
冷静になって考えてみたら、勝てるはずのない相手。
例え実際はどうあれ、その相手から勝利を讃えられたのは、嬉しくないはずがない。
「……でも、それを言いに此処に来たのかい?
それなら俺の薬を奪わずとも、用件を書いてくれれば何処へでも行ったよ?」
と不思議そうに尋ねる。
■ヒナ > 「逆に貴方も私の正体は知っていると思いますが、ね。」
言うが早いか彼女は変身を解く。
一瞬光に包まれた彼女はどう考えても奉仕するには向かない改造メイド服に身を包み手元で賽子を弄ぶギャンブラー。
数か月前にハイブラゼールの大カジノに彗星のごとく現れ何人ものディーラーを廃業に追い込んだ伝説的な博徒。ヒナ当人であった。
「えーと。初めまして、で良いですかね。自分で言うには憚られますが豪運天才のスーパーギャンブラーヒナです。私が正体を明かすのは貴方が初めてですかね。」
そして相手の謙遜を受け彼女はこう続けた。
「最後の変身は対人の為のものでは無いので、あの場で使った時点で私の試合放棄です。本来であればあの薬の効果は消えず私のジリ貧で決着してたでしょう。な・の・で。」
スッと取り出したのはクレスからこっそり奪っていた媚薬の入った注射器2本。それを首元にあてがいこう聞く。
「私から贈る【ひとつめ】のファイトマネーです。生身の私ですが、貴方が望むなら【続き】しましょうか。」
これが奪った薬の用途ですよ、と笑った。
■クレス・ローベルク > 「?俺が君の正体を知ってるはずが――ってえええええええ!?君、あの"豪運天才"のヒナだったの!?まさか、実在してたのか……」
変身後の姿に、男は驚いた。
その姿について、男は良く知っている。
格好こそ意味不明なメイド服だが、その実は天才じみた――或いは化け物じみた博徒。
「そりゃ、心理戦に乗ってこない訳だよ……」
結果としては、最後に近接戦を挑んだのは、決して間違いではなかった。
天才ギャンブラーというからには、当然心理戦だってお手の物だろう。
挑発に乗るどころか、逆に手球に取られていた可能性さえあったのだ。
「でも、何でそんな事を……え」
こちらが持っていた媚薬を首筋にあてがい、微笑むヒナを見て、絶句する。
まさか、あの状態からの続きに誘われるとは思っていなかった。
一応、今持っているのは人間用の武装だ。
リターンマッチは可能な状態だ。故に、男は動揺を抑えるため深呼吸し、
「……一応言っとくけど、二回それ食らって、俺に勝った選手は、プロを含めて殆ど居ない。だから、それを覚悟って言うなら、俺も、最後までお付き合いするよ」
剣を構えた。
尤も、二回の媚薬を食らうことがどういう事か、ヒナも理解しているだろうし、何より変身を解いているので。
これはあくまでも形式的な――或いは滑稽な――茶番に映るだろうが。