2018/11/11 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 『さあ、アケローン闘技場定例大会、今日も今日とて、大盛況です!』
わあああ、と大観衆がぐるりと取り囲む観客席。
彼等が見下ろすのは、土を踏み固めて作られたバトルフィールドだ。
その中心で、男が一人立っている。
『東方は何時ものコイツ、クレス・ローベルク選手!今一勝率が安定しない、良く言えば劇場型、悪く言えば全くの不安定な、ある意味賭けの胴元である闘技場には都合の良い戦士!ぶっちゃけ私が賭けるなら、コイツが出てる試合だけには賭けたくありません!』
「いや、駄目だろそんな事言ったら!俺への悪口がどうとかと言うより、賭博もこの闘技場の収入源でしょ!?」
相も変わらずこの実況娘は恐れを知らない。
まあ、盛り上げ重視という意味では、これも一種のプロの仕事なのだろうが。
『さて、それでは、西方の選手に登場してもらいましょう!選手、入場――!』
■クレス・ローベルク > 『……ん?どうした事でしょう。来ませんね、今日の選手が……?』
疑問符付きで首をひねる実況娘。
その後、突然魔導拡声器が雑音を鳴らす。
どうやら、ドタバタと足音が鳴ったらしい。
『おーっと、申し訳ございません!現在、第一選手の方が、都合により辞退を申し入れたようです!申し訳ありませんが、第一試合の方は中止に――』
BOOOO!BOOOO!とやじを飛ばす観客。
そりゃそうだ。彼等にしてみれば、今日の試合が一試合少なくなったのに、席代は同じなのだ。
とはいえ、流石に今から出場選手の当てもない
「さて、どうしたものか……」
無理矢理押し切るのは簡単だが、それでは芸が無い気もする。
誰か乱入とかしてくれないかなーとか思うが、果たして。
■クレス・ローベルク > 結局、この日は中止、席代については、一試合少なくなった分割引ということに相成った。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 『諸々の事情から暫く開催できませんでしたが、隷剣会、隷属の会、再びの開催です!』
円形闘技場に、実況娘の声が響き渡る。
隷剣会、隷属の会とは、要するに闘技場側が用意した戦士――この場合、クレス・ローベルクと、勝てば奴隷がもらえる、という趣旨の大会だ。
貰える奴隷は名指しも可能だが、闘技場側が所有している奴隷など一般人は知らないので、闘技場の端っこに、サンプルを兼ねて美男美女の奴隷を入れた檻を入れてある。彼等は新たなる自分の持ち主が現れるかもしれないと、不安の表情を浮かべている。
既に円形闘技場中央には、青い闘牛士服の男が待機している。
男は何とも言えぬ苦笑いで、その実況を聞いていた。
「(諸々の事情っていうか、ふつーに人気無くなったからなんだけどねー)」
何事にも流行り廃りは存在するもの。
とはいえ、代わり映えしない闘技場の、数少ないイベントだ。
要するに、料理で言うところの"変わった味わい"としての隷剣会なのだろうが。
『さあ、そういう訳で、奴隷を求める欲深き、或いは奴隷を開放する為戦う高潔なる戦士は――コイツだっ!』
実況娘の言葉とともに闘技場の扉が開く。
■クレス・ローベルク > 「(高潔なる戦士、ね……)」
実際そういう戦士は来た。
しかし、今までに来た戦士の大半は性奴隷目当て、或いは労働力目当ての連中ばかりで、そういう連中はほんの僅かだった。
要するに若くて綺麗な奴隷には、人権などという曖昧な物よりも確かな価値があるという事なのだろう。
「(とはいえ、童話のいじわる爺さんみたいに、大半はボッコボコになって帰っていくんだけど)」
それでも、少なからず、"高潔な戦士"も居れば、勝って奴隷を手に入れる"強い"戦士も居る。
勿論その辺の損は上も把握済みなのだろうけど
「(さあ、今日の対戦相手は……)」
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
■ヒナ > 『おおっと、対戦者の準備が整ったようです。ご紹介しましょう。西に悪徳貴族が居れば行って成敗し、東に悪の結社あれば行って壊滅させる。最近巷を騒がせる正義の魔法少女が何の因果か奴隷解放を企てた。その招待は一切不明、熾天銃声ラファリエッタの飛び入り参戦だー。』
ゴゴゴゴと重厚な扉がゆっくりと開かれる。
ゆっくりとした足取りでステージに現れたのは一見武装しただけの少女。しかし魔力を感じられる者ならばその身に内包された魔力量に下を巻くだろう。
『えー。今入った情報です、今まで公に姿を見せなかった彼女ですが今回はとある筋の依頼で悪徳な奴隷商によって奴隷に堕ちた名門貴族の令嬢を解放しに来たとのことです。代価に自分が負けたら奴隷落ちする条件を笑顔で呑んだと言うクレバーかつクレイジーなお嬢さんですー。その青臭い正義感は果たして通用するのかー?』
と捲し立てる実況娘は所々吹き出しそうになりながらも要約する。
「そういうことです。貴方に恨みはありませんがルールに則り倒しちゃいます。攻撃は全て否殺傷を付与しますので安心してくださいね?」
そして得物の2丁拳銃を抜き構えた。
「悪事の元からパパっと討滅、熾天銃声ラファリエッタ颯爽推参です!!」
そうポーズをとった彼女に声援や野次が乱れ飛ぶ。
後はただ開始のゴングを待つばかりだった。
■クレス・ローベルク > 「へえ。あのラファリエッタか……」
クレスも名前ぐらいは知っている。
正体は不詳、出自も不明。ただ、その実力自体は彼女が打倒した数々の巨悪が証明している。
実況娘は割と馬鹿にしているし、同じ事を仮にただの無名の女の子がやっていたら自分も失笑しているが、実績は印象より重い証明書だ。
「(しかし、とんでもないね。プロの魔術師以上じゃないか、この娘)」
とはいえ、この年代の娘に気圧されている訳にも行かない。
いつもの、柔和な笑みを浮かべて、
「勿論。それがルールだからね。寧ろ、倒す努力をしてもらわないと困る……。とはいえ、そちらが手加減してくれるなら、こちらも同じじゃないとフェアじゃあないな……魔剣アストルフィン、起動」
そう言うと、腰に差した二本の剣が、魔力を帯びる。
ヒナ――否、ラファリエッタ程の魔法少女なら、それが"人体を傷つけない"という効果を持つ物だと解るだろう。
男はそれを二本抜いて、構えた。
構えは右手を上段に、左手を下段に構える、どの攻撃にも対応できる型だ。
「ルールって訳じゃあ無いが、俺の戦いじゃ、最初の一撃は女性からとしているんだ。何時でも攻撃してきていいよ。それがゴングだ」
■ヒナ > 「そうですか、それでは参ります。」
相手が構えるのを待ち若干二秒の間を置いて真っ直ぐクレスに向けて駆け出す。魔力に制御を掛け射出される弾丸の特性に否殺傷を付与し左右の足元から逆Xを描くように秒間に十数発の弾丸の嵐、遠距離型と侮った相手は自ら距離を詰める行動に虚を突かれ、挟み込む形の弾丸に逃げ場を失い早々に敗北を喫するのだが彼女は感じていた。この戦いはそう易い物にはならないだろうと。
「勿論手は抜きません、全力で!行きます!!」
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。
■クレス・ローベルク > 「……!」
前回も銃使いと戦った事はあるが、その時は、あちらはある程度こちらに距離を取りつつ戦う、ミドルレンジ・ロングレンジの戦士だった。
だが、目の前の少女は、逆にこちらに向かってくる。
流石にこれは意外だったが、
「この程度の意外性、エンターテインメントの範疇だよッ!」
こちらも、同じくヒナに向かっていく。
使っている物が銃なのだから、後ろに下がるのは意味がない。だから、前に出るのは当たり前の行為。そして、逆Xの軌道が、こちらを捉える前に行うのは、
「さあ、ラファリエッタ、君の戦闘センスを見せてもらおうかなっ!」
そう言いながら、ラファリエッタの足元に、スライディングを浴びせる。軌道が下から上である以上、いきなり下に避けたこちらをいきなりは撃てまいという読み。そして、ただでさえ少女の身体は軽いだろう上に、連射による反動もある。普通の戦士なら、此処で転び、致命的な隙を晒すはずだが、彼女は果たして。
■ヒナ > 「やはり経験の多い生粋の戦士相手ではこの程度の奇策では通用しませんね。ですが...。」
弾丸の下を抜ける行動、その次はおそらくこちらの足元に意趣返し、でしょうか。
「戦闘経験であれば私が負ける道理もありません!」
スライディングを狙い身を沈めたクレスの肩を踏み台に跳ぶ。空中で捻りを加えた宙返りを決めた体勢のままがら空きであろう背後からの二射狙うはクレスの両手、握られた剣を弾き飛ばさんと正確無比な弾丸が放たれる。
■クレス・ローベルク > 「なっ、俺を踏み台に……!」
今度こそ虚を突かれたクレスの背後から、両手に、弾丸が撃ち込まれる。
当然、クレスはそれが見えては居ない。だが、どうであれ、背後を取った次の行動は、当然隙だらけのこちらへの攻撃と言うのは本能で理解できる。
「あんまり大人を……舐めるなよ!」
ラファリエッタの方を振り向きもせず、身体を右に飛ばす。
ラファリエッタがこちらの胴体ではなく、的の小さな先端部を狙っていたのが幸いだった。弾丸の軌道から両手は外れた。しかし……
「グッ!」
正確無比であるが故に、手には当たらずとも、左の刀身、それも柄に近い部分に当たり、手から弾かれる。そのまま闘技場の端っこまで滑っていった。
「侮れない、侮れないぞ魔法少女……いや、まだ魔法は使っていないから、これはこの娘そのもののセンスか……!」
左の剣は見捨て、右の剣を両手持ちし、再び向かっていく。
突撃[チャージ]ではない。寧ろ、右と左のステップで、ヒナの狙いを絞りにくくしてからの、
「さあ、此処から俺のターンだ……!」
少女の右下から左上を切り刻む一撃。
勿論攻撃能力はないが、もろに当たれば少女の衣服を大分露出高めに仕立て上げる攻撃だ。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
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■ヒナ > 「くっ、あの魔力放出の型からいって死にはしなさそうですが、やはり迫ってくる刃は恐ろしいですね。覚悟を決めましょうか。」
完全に相手の攻撃手段を潰した気で居た彼女に追撃の手はあれど防ぐ手段は乏しかった。しかし魔法少女として幾多の死線を抜けてきた彼女の決断は早い。受ける事が避けられないなら被害を抑える。
「ぐ、流石に痛いものは痛いです。」
迫る刀身に敢えて体をぶつける。勢いの乗りきる前の刃に身を晒す事で剣の動きを殺す。
だが代償として腹に殴られた様な鈍痛が響き衣装の全面はざっくりと断ち切られその未成熟な身体を観衆に晒した。
「このままでは少し厳しいですね。余り多くの人に見られるのは良くないですが負けたら元も子もありませんし。」
一度距離を取って自身のこめかみに銃口をあてがう。見ている観客らからも疑問のどよめきが上がった。
■クレス・ローベルク > 「くそ、この娘、自分で……!」
確かに、それは魔剣アストルフィンの弱点ではある。
要するにこの魔剣は、自らの魔力で刃を潰しているようなもの。
ならば、回避できない場合のダメージコントロールとして、尤も優れた方法は、腹や腕などの、衣服を切られても構わないような場所で、"受ける"のが正着、最適解ではある。
が、それは理屈だ。
「普通、例え切られないと解っていても、自分の体を刃物に晒すなんて、本能的に身体が忌避するんだけどね……!」
機敏さでは、体重の軽い少女の方に軍配が上がる。
こちらも素早く距離を詰めより追撃しようと詰め寄るが、彼女がする"何か"へのタイミングには、一瞬届かないだろう。
■ヒナ > 「えぇ、痛いのは流石に嫌いですし覚悟も要りますよ、ただそれをしなければ今生きてられない状況も何度も経験しました、悲しい慣れですね。」
そう言い自身に向けて引き金を引く。
刹那、赤い閃光が彼女を貫いたかと思えばその光は彼女を包み込む様に広がり彼女を変えていく。
「換装完了、ラファリエッタcodeストライクハウンドです。」
被っていたベレー帽の変わりにイヌミミを生やし髪も衣装も燃えるような赤に染まった彼女がそこに居た。断ち切られたはずの衣装も傷ひとつなく修復されている。
「さぁ、烈火の如き猛攻を凌げるなら凌いでみればいいです。」
2丁拳銃の変わりに抱えられたアサルトライフルライフルが火を噴く。先程までとは桁違いの弾幕が此方へ向かうであろうクレスに放たれる。曰く否殺傷であるその弾丸は、それでも浅くない弾痕を地に刻みながら迫っていく。
■クレス・ローベルク > 「そりゃ、悲しい慣れだね……」
尤も、自分も慣れてしまった側であるが。
しかし、その同情な様な憐憫の様な何かも、眩く変わった変身後の姿に憤怒に変わる。
何だそれは。
「待って!ちょっと待って!何それずっる!事実上の全回復じゃん!衣服修復って!?」
一応、雑誌や貴族の噂で少女が戦闘中の変身能力を持つ事は知っていたが。
まさか、衣服が修繕されるとは聞いてない。
自慢の魔剣がただの棒きれに変わった瞬間であった。
しかも、その手に携えているのは、魔導兵器の中でも、連射能力と威力の高いアサルトライフルである。
当然、男の非難など押しつぶすかのように、銃声を轟かせ男に迫る。
「うおおおおおお!この娘容赦ねえ――!言っとくけど絶対上の観客席に向けるなよ!非殺傷とはいえ、下手したら後遺症残るぞそれ!」
言いつつ、射線から逃れるように、ヒナの周囲を回るように走る。
普通のアサルトライフルなら、連射力の代わりに取り回しは悪く重い。
銃口に注意すれば、当たることはない。だが、下手に近接戦を挑もうと近づけば、恐らく忽ち蜂の巣だろう。
回るように走るクレス。だが、その口の端には笑みがあった。
「所でさ……奴隷の檻って奴は結構高いんだよねえ。
偶に飲み会で愚痴を聞くんだけど、頑丈さとか、場合によっちゃ魔力遮断性とか、そういうのを求めると、ちょっとした名剣が買えるぐらい高くなるんだってさ」
そう言うと、ある時点で止まる。
そこは、ラファリエッタと、クレスト、奴隷の檻が、丁度一直線上に位置する場所。
「だから、こういうなんかの魔法で檻が壊れそうな場所だとさあ、どうしても檻に値段賭けてられないんだよねえ……。
ただの檻、しかも閉じ込めるための縦棒も、どうしても少なくなるんだってさ」
ラファリエッタ-クレスの射線の先には、奴隷たちの檻がある。
例え戦闘経験があろうと、銃をどれだけ扱えようと、アサルトライフルの反動を完全に制御して、自分だけに当てるのは難しかろう。
クレスが一度でも回避すればおしまいなのだから。
「さあ、どうする?案外、俺だけを狙い撃つのは、そう難しいことじゃあないかもしれないぜ?」
挑発するように言う。
さて、これは予想外のハズだが、と内心彼女の反応を伺いながら。
■ヒナ > 「はぁ、それをやられると私には打つ手がありませんね。」
あっさりと銃撃をやめ得物を放り投げる少女しかしてその表情は皮肉にもクレスと同じ笑みだった。
「私が銃器だけの残念な女であれば、の話ですが。」
そう言い残し彼女は消える。否、上だ。檻を易々と飛び越え一息にクレスへ向かい飛び掛かる彼女の脚部、ブーツからはまるで猟犬の牙のように展開させた仕込み刃がギラリと光っていた。
「挑発したのは貴方、それに乗ったのは私、多少の怪我は多目に見てくださいね?」
と、どう考えても殺意剥き出しの声で申し訳なさそうに謝る。
弱者を盾にした時点でクレスは大なり小なり少女から【悪者】の烙印を押されてしまったらしい。
■クレス・ローベルク > 「おっと……?!」
案外素直だな、と思ったが、しかしその拍子抜けした感想は、次の一言で緊張に変わる。
猛禽の様な速度で跳んできた少女の仕込み刃を、とっさに後ろに跳ぶ事で避ける。当たっていれば腸をズタズタにぶちまけたであろう刃が、彼の横を通り過ぎていく。
「いやいや、そういう場所なんだから遠慮しないでいいよ。寧ろ、乗ってくれて有難う。お蔭で……この射程に君を誘導できたんだからねッ!」
着地の隙をつく様に、少女に右拳で殴りかかる。
しかし、それはフェイント。肝心なのは、先程左でホルスターから引き抜き突き立てる、媚薬注入器の方だ。
【試練の媚薬】と名付けられたソレは、一回では相手の代謝を上げ、知覚を機敏にする程度の効果しかないが、二度三度と喰らえば、発情の効果がある。
とはいえ、彼女には浄化の能力がある。前に懇意にしていた貴族から聞いた話だが、無効化される可能性はある。が、構わない。
この相手に、一瞬の隙が出来れば、それで十分上々の効果なのだから。
■ヒナ > 「まぁ、避けるのは想定済...へ?拳?」
回避までは読んでいた、しかし予想していた剣での一撃は来ず迫るのは拳。完全に虚を突かれた彼女は無防備にその拳を受け止めてしまった、続く二の矢が本命とも知らずに。
「っ?何?毒?」
チクリと走った痛みに思わず飛び退く。見れば剣はクレスの背後に突き立っていた、視線が切れた時に持ち変えていた様だ。
「少なくとも即効性は無いか、重ねがけには気を付けないと。」
彼女の浄化は護るべき者へ使われるもので自身への効果は存在しない。そのため彼女の中に幾ばくかの焦りが生じていた。
「相手の手札を見れてないうちにこっちの手札は余り切りたくないけどこのまま分の悪い賭けを続けるのも得策じゃない...か。仕方ない。」
生来のギャンブラーでもある彼女は持ち前の頭の回転で状況を整理し次なる一手を仕掛ける。
一度黒を基調とした通常形態に戻り再び自身に向けて引き金を引く。
先程とは違う薄桃色の閃光に包まれ変化した少女は淡いピンクの髪と衣装にピンと立ったウサミミを生やしていた。
「換装完了、ラファリエッタcodeフォーミュラーラビット。」
先程の事を考え早々に得物であるショットガンを投げ棄てた彼女は軽くぴょんぴょんと跳ね告げる。
「疾駆する俊兎を捉えられる?」
そして彼女の内には相手の出方次第で次なる手札を切るべく魔力が燃焼していた。
■クレス・ローベルク > 二重のフェイントを決め、一度距離を取る。
上手く行った時ほど、警戒するというのが、この男における戦いの基本だった。
とはいえ、今距離を取ったのは、どちらかというと思考を纏めるための物だ。
「(……浄化を、使わなかった……?)」
相手からすれば、効果のわからない薬を体内に入れられているのだ。
幾ら少女に覚悟があるとはいえ、それを無効化しない理由はただ一つ。
つまり、彼女のソレは、多大な隙が出来るか、或いは――自分には使えないか、だ。
「ふぅん……」
つまり、アストルフィンは完全に無効化されたが、媚薬での攻撃は効く。それに――
「おっと」
思考に没頭していた頭を上げると、今度はうさみみだった。
おー、マニアに受けそうだ、と思うが、しかしそんな事はともかく、あの跳躍は問題だ。一見準備運動に見えるが、その中に魔力を蓄えている。
「やれやれ、頬ずりしたくなるような可愛らしい見た目なのにねえ。怖い兎さんだよ」
とボヤくように言って、背後の剣を引き抜く。
右手に剣、左手に薬品注入器。
この構えは、
『おーっと、あの構えは!数々の女性選手を婬楽に堕とした構え!"女の敵の構え[レディーキラー・スタイル]だ――ッ!』
待って、その名前初耳。と言うか、手の内をばらすのやめてください。
「精々、木の根っこに引っかからないように、気をつけなよ!」
言って、剣の切っ先を向けて、ラファリエッタに肉薄する。
まずは様子を見るため、隙の小さな突きを、少女の胸元狙いで放つ。
最小限のリスクで最大限の効果……というより、
「そろそろ、エロ方面の需要も満たさないと、上から怒られちゃうからねっ!」
最小のリスクで、最大限のサービスシーンを狙う構えだ。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
■ヒナ > 「女泣かせ、なるほど。そーゆーことですか。」
結社の差し向ける数多の化物を叩き潰した彼女は実況娘のその一言で全てを理解した。確かに厄介、数度盛られて完全に効果が出てしまえばそっちの経験が極端に浅い自分は対抗手段が無いに等しい。結果的に自分の正体を晒すことになるだろう。
「遅効性の認識阻害も出来ますがそれは最悪の場合、ですね。悪いですがそれを貰う訳にはいかないです。」
肉薄してきたクレスを一瞥し呟きを残しラファリエッタ本人は既にクレスの遥か後方、突きを放ったその場に残されたのは置き土産のピンが抜かれた手榴弾。
今まさにその俊足が発揮されたのだがそれを知覚できたものは観客席を含めても何人居ただろうか?
「魔力充填は抑えてあります。ご安心して爆ぜて下さい。」
直後に手榴弾は炸裂するだろう。
■クレス・ローベルク > 「ほらー、即バレしたじゃないかあ!ってえ?」
効果が出てからやろうと思っていた演出とか戦略とか諸々全て潰され、内心半泣きで突きを出す。しかし、その瞬間、クレスは影を知覚した。
突きを出すために真っ直ぐに前を見つめる視界が、見た影。
それは、つまりラファリエッタの残像であり、そして
「手榴弾……!」
取り残された様に置かれた手榴弾は、突きの姿勢では拾い上げる事はできない。しかし、その瞬間、ラファリエッタの一言が、クレスの耳に届いた。瞬間、クレスの中で、ほぼ反射と言っていい思考が駆け巡る。
――魔力充填は抑えてある。つまり、今の距離でも食らっても死なないように調整してある?"至近距離でも死なない"ならば、そこから距離を離せば?
――背骨が折れるかも知れない。でも、このままだと全身骨折は免れない。このままだと全身骨折だが実行に移せば最悪死ぬ。だが、此処で負けるのは余りにも――
「面白く、ないよなあっ!」
次に取った行動は、手榴弾を追い越すような跳躍だった。
そのまま、軸足を次に置かずに地面と平行になる様な跳躍姿勢。
多少無茶だが仕方ない。何せ、斜め上にぶっ飛ぶことだけは避けなければならないのだ。
「ぐ、おおおおおおおお!」
爆発。そして、爆風のエネルギーがまず、クレスの足の裏から順番に伝わる。足の裏から順番に。つまり、クレスは――爆風のエネルギーを使って、前方に思い切りぶっ飛ぶことになる。
「うおおおおおおおお!」
爆風を使った、爆速の突撃。
勿論それはラファリエッタの瞬間移動じみたそれよりは遅いが、しかし虚を就けるハズ。
そして、虚を突ければそれでいいのだ。何故ならば、
「兎ぶつかれ木の根っこ……!」
本命は、回避を予測して、その回避先に投げる障害物の方だからだ。
突撃しているので後ろには避けられない。ならば、咄嗟に利き足である右足を使って回避するはずだ。ならば狙うは左。
そこに、クレスが隠し持っていたアナルビーズだの円筒状のディルドだのをばらまく。
これに足を取られれば、少なくとも転倒はするだろう。
「喰らえ必殺、エロ撒菱……!」
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にヒナさんが現れました。
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■ヒナ > 「足をとられた哀れな兎、それは果たしてどのウサギ?カゴメカゴメと声高く。回る踊るは万華鏡。」
ー仮面舞踏会【マスカレイド】ー
クレスの目論見はうまくいった、だが果たして成功とは言えるのだろうか。如何わしい玩具に足を滑らせ転ぶラファリエッタが一人二人。回りを見渡せば13人にまで増えた彼女がお出迎えした。
「魔力消費は激しいですが仕方無いですね。」
「実態のないまやかしじゃ無いですよ?」
「こちらも余裕があるわけでは無いので。」
「「「始めましょう、そして終わらせましょう。」」」
果たして、魔法少女に発の黒星をつけるのはこの男か、はたまた。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からヒナさんが去りました。