2018/02/04 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にグライドさんが現れました。
グライド > (――ドンッ…と、鈍い音が響いた。
まるで猪か熊にでも体当たりされたかの様な衝撃と共に吹っ飛んだ相手の身体は
程なくして闘技場の床へと叩き付けられ、其の儘場外へと落下して行った。
カウントが始まる、10数え終わるまでに舞台へと戻れなければ、己の勝ちだ
構えていた巨大な盾を前面からずらし、場外の様子に視線を向ければ
舞台側へ上ってくる気配もなく、審判のカウントが無事、10まで数え終わるのを確かめて。

――兜の下で、やれやれ、と溜息を零した。)

―――――……ったく、最近の若い奴は根性って物が足りねぇ…。
威勢が良いのは試合前だけってのぁ何とかならんのか?

(舞台下、吹っ飛ばされて目を回している対戦相手の若者が
担架か何かでえっちらおっちら運ばれて行くのを見送りながら
思わず、歯応えが無いと、そんな駄目出しを零していた。
見世物としての面が強く為って居る闘技場、試合前の煽り文句と口上ばかりが
派手で過激であるほどに、客が盛り上がるのはまぁ判るのだが。
肝心要の実力に関しては、参加者によって可也ばらつきが在るのが実情だ

まぁ、何れにしても己は今宵の依頼である「決勝に出場する事」を果たせれば其れで良い。
久方ぶりの個人戦、面白い相手が居ればとも思ったのだが――今の所は、期待外ればかり、か)。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にオウカさんが現れました。
オウカ > 続いて入ってきたのは年若い少女。
その背に背負った大太刀を振るえるかもわからぬ華奢な体躯。
しかし、その歩む姿に隙はなく。
凛、と見据えた先は相対する男一人。

その床に歩みを進めあがれば、ぺこり、と頭を下げて。

「なかなかの剛勇、手練れの猛者。
 競い合う武もよいですが、私も仕事と言うものがありまする。
 倒させて頂きます」

そう言えば、一刀を抜き放ち、影上段で構える。

グライド > (あとひとつ、あとひとつ勝てば、決勝へと駒が進む。
其の時点で依頼達成なのだが、此の儘だと消化不良も良い所だ。
せめて「期待の若手」と言う前口上の相手に期待していたのだが
まだまだ、色々な意味で甘っちょろい若造だったと、肩を竦める
残りの試合数が少ない関係上、恐らくは此の儘連戦と為るだろう
次の対戦相手が発表されるまで、暫くの間は其の儘待つ事を強いられるが
この微妙に空いた時間は、如何にも退屈で仕方が無い。)

おいおい、男だろうが女だろうが、せめて試合に為る奴を連れて来いってんだ。

(トーナメント方式の試合では在るが、参加者は多岐に渡る…らしい。
貴族の子飼いや、個人参加の腕試し達、或いは「噛ませ犬」も紛れている
先刻の若者は、別に噛ませ犬ではなかったと思うのだが…まぁ、アレはもう良い。
ほぼ落胆めいて毀れる二度目の溜息を零した頃
ふと、次の対戦相手が壇上へ現れる気配に、其方へとゆっくりと振り向いて)

――――………! ……成る程、やっと来やがったか、ホンモノが。

(――嗚呼、と。 鎧兜の下で、口元に笑みが浮かんだ。
目の前に佇んでいるのは、其の見目だけならばまだ年端も行かない若い娘だ
華奢、とも表現出来るだろう其の体躯を見れば、大抵の人間は「噛ませ犬」だと思うだろう
現に、娘が現れてから観客の声が一気に野太く卑下たモノと変わり
其の敗北を望む、獲物としての役割を求めだしたのだから

けれど、違う。 これは違う、噛ませ犬ではない。
そんな物は相対すれば判る、寧ろ、アレは狼だ、「狩る側」だ。
刀を構える相手に向け、己もまた、片腕に巨大な盾を構えれば
先刻よりも、半歩、構えを低く取り)

……準備は良いぜ嬢ちゃん、俺にも仕事がある。 ……来い。

オウカ > 「――――なるほど。やはり、強いお方でするな」

この見た目、この体躯。
侮られる事は多々あれど、ひと目見ただけでこの身を見抜く眼力の持ち主。
久しく会ったことがなく、笑う。
けれど、分かる。それは面白がっている笑いではなく。
純粋に己と競り合える可能性がある人物との出会いに喜ぶ好戦的な笑みの類。
じり、と一歩踏みしめて。

「――――オウカ、参る」

名乗り一つ。
声を荒げたわけでも、さして大きな声でもないそれは。
何故か凛と澄んで響いたと思えば、踏みしめた音一つ。
その姿は霞んで消えて、刹那の内。
瞬きでもすればその身は消えたようにも見えようか。
一瞬の肉薄と同時、放たれるは雷速の如き突き。

グライド > 嗚呼、俺は強いぜぇ? だが、嬢ちゃんが俺より弱いかは――

(――それは、戦って見なけりゃ、判らない。
相手が一歩、踏み締めると同時に、地面に突端部が届く程の巨大な盾を
何処に刃を振っても、盾が受け止め、致命傷を避けられる位置へ構え――)

……!

(――疾い。 瞬きすらも赦されぬ高速の踏み込み。
己が大盾使いだと知って尚、真っ直ぐに放たれようとする突き。
其れは、其の軌道ならば、己が盾が完璧に受け止める筈だ
盾が刃を弾いた後、逆に己から踏み込んで、盾ごとの体当たりで敵を崩す
其れが、己が普段使う戦法の一つだ。

――けれど、其れは根拠の無い予感で、直感だった。
己からは踏み込まず、完璧に盾を構えていると言うのに、横へと顔を逸らす
其の瞬間、構えた盾を、刃の切っ先が僅かに貫き
顔を逸らさねば、咽頭を持って行かれた位置へと煌いて。)

―――……ッらァァア!!

(間髪いれず、僅かに盾を持ち上げれば、構えていた盾の下部を思い切り蹴り上げて
娘の足元か、或いは胴体部分にぶつけてやろうとするだろう。
負傷よりも寧ろ、牽制と、叶うならば距離を取る目的で)。

オウカ > 「……ッ、"勘"もなかなかよい……ッ!!
 いえ、これは勘は勘でも……積み重ねたものから来る戦闘経験の豊富さ故のものでする、かッ!!」

完全に"と"ったと思った。けれど、それは見事に避けられた。
そうして、打ち付けられる盾には、とん、と足をかけ。
蹴り上げた盾の打ち上げに逆らわず跳躍し、くるん、と虚空で体勢を整え、地に降りれば、ひゅん、と刀を振るい、切っ先を見やり。

「……――――ふー……。」

彼の目的通り、距離を取った。否、取られた。
彼女の武器は大太刀と刀二本。明らかな近接装備。
さて、どうしたものでするか、と小さく呟き。
一太刀で決められるとは思ってはいなかったけれど。

「ここまで"巧い"相手とは久しく遭うておりませなんだ。」

朗らかに告げるのは賞賛の言葉。

グライド > (――冷や汗が米神を伝う。
先刻までの高揚が一瞬で静まり、次第に冷静さが思考を支配する。
盾の重みだけでも、直に脚を打ち付けられれば、骨をやる事も在るだろう。
けれど、跳ね上げる其の勢いを利用して距離を離されれば
其の身体能力、冷静さ、そして何より洗練された「技」の裏打ちに、双眸を細めた)

――勘に頼るってのは、戦いじゃ下策も下策なんだがなァ…。
やれやれ、狼どころか、熊でも足りなさそうだぜ。

(目論見通り、距離は取れた。 だが、其れは圧倒的に不利な状況からの離脱と言うだけだ。
己もまた、獲物はこの盾のみと言う近接戦仕様、だが、其の圧倒的防御を貫く程の刃の前では
近接戦闘ですら分が悪い。 少なくとも、己の中ではそう判断せざるを得ない。

――じり、と、僅かずつ距離を詰めて行く。
無闇な突撃なぞ阿呆のする事だ、幸いながら刀の間合いは把握出来た
後は其の踏み込みと剣速を見極め続けるしか術は無い。
ゆっくりと、己が距離に為るのを見計らい。)

傭兵稼業なんてやってっと、そう言う所ばかり"巧く"なっちまっていけねぇ、そうだろ?

(くつり、戯言めいて言葉を返し――其れから、一歩、相手の速度には遥かに及ばないが
けれどそれでも、全身金属鎧と言う超重装備では、在り得ぬほどの軽い動きで踏み込めば
盾を平面に、そして横薙ぎに振るい、相手を打ち据えようとする、か。
平面打ちの分速度は無いが、下手に飛ぶこともくぐる事も許さない。
さぁ、如何するとばかりに、思い切り腕を振りぬき)

オウカ > 「ええ、ええ、そうでするね……されど、それを利用出来る御仁なれば。」

楽しげに笑う様は、街角にいる小娘のようにも見えて。
けれど、その姿にすら隙は見当たらず。

「けれど、小娘をクマ扱いとは……酷い御仁でするな」

じり、と詰められる様に刀を構え直し。
こちらもいつでも踏み込めるように前傾の姿勢。
測られている事もわかった上で……。

「いえいえ……それもまた、戦いの技。生き残るための生存技術。
 体系化されず伝えられぬ技であっても、巧いものには敬意を払いまする……っ。
 早い……ッ!!」

その重装からの踏み込みとは思えぬそれからの横薙ぎ。

(これは……下手に受ければ折れる……ッ!!)

自身の持つモノは繊細な扱いをしてこそのソレ。
重量級のソレを受け止めるようには作られてはいない。

「やむを得ませぬッ!!」

その手は背の大太刀に伸び、片手で抜き放つと同時。
鈍い音をあげ、その盾は大太刀の峰で受け止められ。
ぎりぎりぎり、と鋼のきしむ音をあげ、鍔競り合う。

「……ッ……!!」

その細い体躯、華奢な体。
どこからどう見ても小娘としか言えないその体躯から。
大柄な体躯の重装の男の盾と鍔競り合える力が出ているのか、と思う程で。

「……まさか、これを抜くとは思いませなんだ……ッ!!」

きん、と言う音と共に持っていた一刀は納められ、今は大太刀を両手で扱いながら。

グライド > ハハッ…なら、鬼か悪魔ってトコだ、そうでなけりゃ…

(――己の渾身の一撃を、こうも易々と受け止められて為るものか。
鍔迫り合いによる強烈な衝撃は、腕をびり、と痺れさせるほど
単純な力比べであれば、己が優位に立てるかと思っての仕掛けだが
今、娘が携えている大太刀が、まさか此処まで冷静に奮われるとは。

ならば、と、盾の裏側へと、己が片腕を奮う。
叩き込むは鉄の拳、其の衝撃を鍔迫り合いに上乗せしては
娘の体制をわずかでも崩れさせ、そして、其れが叶おうと叶うまいと
一歩踏み出し、唯一優位に立っている身長差を生かして
娘を上から、己が重みによって押し潰して行こうと仕掛ける、か。)

ちったぁ…奥の手を引っ張り出せた…かね…!!

(――大太刀を、構えさせる事が出来たと言うのなら。
己は、僅かでも相手を追い詰める事が出来ていると言う事だろうか。
笑って、けれど、其の笑いに油断は無く、其の臀力で力勝負を挑みかかり)

オウカ > 「……ッ……!!」

びりびり、と痺れを感じるそれでじりじり、と流石に体格差から来る膂力に押されていき。
そうして振るわれた拳が盾と鈍い音を響かせたその瞬間。
少女の体が吹っ飛んだ。否、自ら飛んだ。

からん、と言う音をあげ、大太刀が落ち、その手は無手。
その勢いのまま床にしたたかに叩きつけられるかと思った瞬間。
とん、とそこに手をついて。
ずざざざざざ、とこすれる音をあげながら勢いを殺す。

「…………流石に力では勝負できませぬな…………」

当然の理。如何に人の身から外れたとは言えど。
この身は小柄な少女。元々は人間でしかなかったのだ。
あの膂力に対抗しうる大太刀は相手の足元。

「……――――はぁ……仕方ありませぬ」

そう言えば、少女は徒手空拳のまま構える。
……纏う空気が変わり、ゆらり、とその身が揺れる。

「――――……」

ゆらり、ゆらり、とその身が幾度となく揺れた刹那。
ふ、とその姿が消え、瞬時に踏み込む。
盾の前に現れれば、とん、と軽く触れるだけのソレ。

しかし、男が歴戦の猛者であるならば、分かるであろう。
"このまま触れさせていてはいけない"と。

グライド > (一瞬、盾に掛かっていた力が抜ける。
鍔迫り合いの拮抗が破れ、己の盾が相手を打ち据え――る、とまでは行かなかった。
踏み出した脚は其の儘、体勢を乱さない様踏ん張る形と為る。
恐らくは自ら飛んだのだろう、ならば痛手を負わせる事は出来なかった筈だ
けれど、遅れてがらんと地面に転がった大太刀が、娘の攻め手が一つ減った事を示して)

――――力勝負で負けちまったら、繊細な俺ァ、暫くヤケ食いだぜ。

(戯言も、今は最早笑みにすらなら無い。
此処までして尚、まだ有利と為った気がしないのだ
今の娘は無手、其処から刀を抜こうとしないのならば、何か手が在るのだろう
考え得るのは、其の素早さを最大限に生かして、盾を掻い潜る方法
機動戦で翻弄する形ならば、寧ろ刀は邪魔でしか無い筈だ
相手が構えれば、己も其れに合わせて先刻よりも盾を引き付けて構える
己が懐へ入り込まれる余地を無くし、堅固な盾本来の防御戦術を取り。)

―――――……チッ…!!

(其れは、疾い、と言う表現を既に超えていた。
完全に一度、瞬きすらしていない視界から娘の姿が失せ
次の刹那には、構えていた盾の前へと踏み込まれていた
舌打ちし、それから反射的に、娘へと、盾ごと当身を食らわせる様
己から其の身をかち上げようとした、のだが。

――盾の前面に、とん、と触れた感触。
其れが、拳か、或いは掌か、はたまた指先か、何れにしても

氷の様な、冷たい予感が奔り抜けた瞬間
其れまでの戦術を全て投げ捨て、盾をも手放して、全身のばねで、背後へ跳ぼうとするだろう

はたして、其れが間に合うか否か。
もし、間に合わなければ…脳裏に浮かんだイメージは
死、を予感させる、印象で)。

オウカ > 「――――フッ……!!」

吐息一つと共に放たれるのは、浸透打撃。
盾を放り投げて逃げたのは正解で。

鈍く、重々しい音を響かせ、その盾はへこみ、えぐれ、潰れる。
その浸透打撃の振動は盾を持っていれば間違いなく、腕を伝い、その体に伝わったであろうそれ。

「…………奥の手でするが、これもいなしまするか」

がらん、ごろん、と言う音をあげ、原型を留めぬ盾が落ちる。
心底驚いた、と言う顔できょとん、として飛び退いた巨漢を見やる。

「軽く触れただけで、察する御仁はそう多くはありませぬが……」

それこそが彼女の奥の手、切り札、奥義。
最早絶技とも言える触れるだけで相手を壊す浸透打撃。
放つには相応の代償を必要とするそれ。

「一日に一打、それ以上撃てば体を壊しまする故」

ひらひら、と手を振って。
事実、彼女の技を放ったであろう右拳の指先は紫色に鬱血しており。
その手では、最早刀をろくに振るう事は叶わず。
他にも色々と疲弊するのか、些か体の動きも鈍いように見えて。

「降参致しまする」

両手をあげて降参の意を示す。
自爆に近い形ではあるが、彼女の本気の全力を以てしていなされたが故。

「此度は敗北でする故お好きに致されよ」

ぺたん、とそこに座り込み。
下卑た歓声が大きくなる。

グライド > (――どぉん、と、響いたのは、重い打撃音。
手放した盾が、まるで木片の様に回転して床に落ち
其の表面が、異様なまでに凹んでいる様を己が瞳に見せ付ける。
――思わず、変な笑いが毀れるのを飲み込んでは
滑る様にして場外転落する事だけは避け、舞台の淵で踏ん張り。)

………ったく…こんだけガチガチに鎧で固めてるのが馬鹿らしくなっちまうぜ…!

(――腕、だけで済んだだろうか。
肋骨を粉砕し心臓を貫き、背骨へと突き抜ける、そんな光景が一瞬で脳裏を過ぎり
其れ以上は、ただ呆然と娘の姿を見据えて構えるしか出来なかった。
いなす、だなんて高尚な物じゃない、ただ己は逃げたに過ぎない
身代わりと為って破損した盾は、其の本懐を果たしたと言えなくも無いが)

―――――――…………。

(――ふと、相手が告げた降参の二文字には、一寸眉根を寄せた。
それが、もしも己を翻弄し、愚弄する為の一言で在ったなら
恐らくは、もしもう一度アノ一撃を喰らうとしても
意地でも右の拳を一発くれてやる為に前進しただろう

けれど、如何やらそうではない様だ。
降参、の二文字によって決した勝負。其の内実よりも、娘が負けた事による陵辱の宴を期待して
一気に盛り上がりを見せた観客席が、犯せと、辱めろと、歓声の如く繰り返し始めれば
其れを一望し、そして、其れから娘の傍へと歩み寄って行けば。)

「――――――………来い、此処は礼儀ってモノが無ぇ。」

(伸ばす、腕。 指先が娘の衣服を掴み、そして、ひょい、と其の身体を鎧の肩へと担ぎ上げれば。
床に転がった盾を拾い上げ、慌てて歩み寄って来た審判に向けて
『盾が壊れた以上次の試合は無理だ、優勝はもう一人にくれてやる』
と、其れだけを告げて、出口へと向けて歩き出そうとするだろう。

そして、途中、思い出した様に後ろを振り向けば。)

――――準優勝の商品代わりに、貰ってくぜぇ。

(有無は、言わせないとばかりに、其れだけを言い捨てて
娘を担いで闘技場を出ようとするだろう。 ――当然、商品、とは)

オウカ > 「…………ふぇぁ……っつっ……」

担ぎ上げられ、どこかに触ったのか、一瞬顔を顰め。
その距離まで迫れば、その拳が先の一撃で使い物にならなくなっているのがありありと分かる。
渾身の一撃を受け止めた際の腕の痺れがあるまま無理して放った先の絶技。
その相乗効果にて、拳を一時的にとは言え壊したようで。
確かにこの拳であれば大太刀どころか刀もろくに持てぬであろう事は明白。
この少女なれば、他に手段もありそうにも見えるが……。

「……いや、あの……えっと?」

担がれたまま、衆人環境下で陵辱されると思っていた少女は。
肩に担がれたままぷらん、とぶら下げられていて。

「……あの、私は賞品の類ではございませぬが……」

そう言いながらも運ばれていき。
ふと、男の目にこの依頼をした男が観客席にいるのが見えるだろう。
何か歯噛みした様子であるが……。

「……? 依頼主殿……?」

それをめざとく見つけた少女が小さく呟く。
なんとはなしに此度の戦いの理由が繋がった気がするだろう。

グライド > ……其処までする技かよ、ったく…、……ンなイイもん見せられちまったら、俺の気が澄まねェんだよ!

(――娘の拳が、壊れている事に気付かぬ筈は無い。
一時的な物かも知れないが、少なくともこの先、まともに戦いは出来ないだろう
己を倒せたとて、この先にまだ待っている決勝こそが、観客の誰もが待ち望んだ陵辱劇の幕開けとなりかね無い

――故に、其れでは己の気が済まないのだ。
何故己が、「優勝する事」ではなく、「決勝まで勝ち上がる事」)を依頼されたのか
それが、依頼主の男と視線を合わせた瞬間に、漸く理解出来た。
ならば、余計にもうこの闘技場なぞに用は無い。)

……あの糞野郎、俺をダシにしやがったな。
嬢ちゃんは良いから黙って運ばれとけ、俺ァ見世物に為るのはゴメンだ。
どうせ抱くなら、せめて宿まで運んでやる。 それが、俺なりの敬意って奴だぜ。

(こまけぇことはいいんだよ、と言う奴である。
歓声と怒号の渦巻く闘技場を抜け出せば、夜道を歩いて、道の先に見える併設の宿の明かりを目指す
建物の中へと脚を踏み入れ、参加者である事を従業員に示せば
参加者専用に用意された宿部屋へと、通されて行くだろう。
がちゃり、閉じられる扉と共に、小さく吐息を零せば、担いでいた娘を、寝台の上へと放ってやり。)

……嬢ちゃん、名前は?

(一言、そんな風に問うだろうか。
同時に、身に付けていた兜を両掌で外し――隠れていた素顔で、娘の方を見やり)。

オウカ > 「……はぁ、そうなのですか。……いえ、たしかに無理はする技でするけれど。
 あの盾は良い威力でした。之ほどにまで拳がイカれたのは久方ぶりでうる。
 じき治りまするからご心配なく」

担がれたまま、首を傾げて壊された事にはさして興味はない様子で。
むしろ、治るから心配はいらないとまで言われて。

「……ダシ? はぁ……なるほど。なるほど。」

そう言われれば、なるほど、同じ男に依頼を受けていたのか、と納得し。
なれば、後の流れは理解できるだけの場数は踏んでいるのか、納得する。

「……いえ、抱かれたいわけではないのでするけれど。流石に見ず知らずの殿方に抱かれるのは、こう、その、恥ずかしゅうございます。
 ……娼婦をやってみないか、とも誘われた事はございまするが……。
 ぶにゃ!!」

放り投げられ、ごん、と頭をぶつけて奇妙な叫びを上げた。色気はない。
頭を抑えながら、涙目で向き直り。

「……? 名乗りはあげたと思いまするが。
 オウカ、と申し上げまする。
 竜殺やら鬼斬などと呼ばれた事はございまするが」

首を傾げてから、告げて。

グライド > 治るのか、なら良い。 俺が奪っちまうには惜しい技だからなぁ。
……しかし、まぁ、景気良くぶっ壊してくれたもんだぜ、全く。

(娘の拳については、治るのであれば、其れで良いと頷いた。
其れは其れとして、己の命を救った代わり、如何しようも無く破損した盾を
部屋の壁際へと立てかけては――ニヤリ、と、満足そうに笑うだろう。
手甲を外しに掛かる。 がちん、がちん、と重い音を立てて外した其れを、テーブルの上へと積み
胴防具、脚防具、と順に外して部屋の隅に並べては――多分、其の辺りで
娘が闘技場に置いてきた、大太刀が従業員によって届けられるだろう。
二人係で必死に為って運んできた辺り、其の重量が知れて。)

……娼婦? ハッ、もし始めたら連絡しな、第一号で買ってやるぜ。
オウカ、か…、……嗚呼、いや、それなら良い。 あの闘技場、明らかに偽名って奴が何人か居たんでなァ。
しかし…しかしだぜオイ、鬼斬だとぉ? コイツはとんだ出会いだぜ全くよぉ!

(この娘に娼婦をしないか、とは、割と命知らずな気がしないでも無い。
けれど、それよりもだ、改めて名乗られた其の名より、後から告げられた二つ名の方に耳を止めて、思い切り笑い出した。
其のどちらも、己が戦場にて聞き及んだことの在る勇名だ。
手合わせ前に告げられていたら、流石の己でも信じたかは怪しいが
今ならば其の二つ名を出されても、すんなりと信用出来る。
頭押さえて痛がっている姿に、漸く、鎧全てを外し終え、肌着姿で向き直れば
ゆっくりと、そばまで歩み寄り、其の顔を覗き込んで。)

……そんな奴を抱けるなら、俺は歓迎だぜ。 だが、嫌なら構いやしねぇ。
――どうするよ、竜殺しの嬢ちゃん。 

オウカ > 「ええ、なおりまする。この体。色々と壊れてまするので」

その壊れていると言う物言い。物理的な意味ではない何らかの意味がこめられていて。
重そうなそれが次々と積まれていくのを眺めながら。
拳が壊れて無くても"壊す"のは苦労しそうだな、と呟き。

「始める予定はありませぬ。だから買えませぬ。
 ……勝手に名が広まっていると言うのも複雑なものでするね。
 私としては行き掛けの駄賃程度のつもりだったのですけれども」

明かされる衝撃の事実。行き掛けの駄賃程度で祓われた鬼と竜が哀れである。
歩み寄られ、向き直られ、顔を覗き込まれれば。

「…………今の私は敗北者であり、闘技場の理にて縛られた存在ゆえ。
 お好きに致せばよいかと思いまするが一つだけ」

真紅の瞳がじっと見上げて。

「名も知らぬ殿方に抱かれるつもりはありませぬ」

名を尋ねるように見つめて首を傾げ。

グライド > あん? そんなのは見りゃ判るさ、壊れてる所か狂ってるぜ。
嬢ちゃん、何て呼んじゃいるが、実際の所、そんな歳じゃあないだろうしなァ。

(一朝一夕で、そして、其の見目の若さで体得していい技では無い。
壊れているとも、狂っているともどちらも納得出来ると頷けば
行きがけの駄賃で襲名したらしい其の二つ名の真実に、また可笑しそうに笑うだろう。
覗き込んだ其の瞳は、矢張り、十代半ばの娘の其れでは無い。
告げられた言葉に、判った、と頷いて見せれば、片掌を伸ばして、娘の頬へと添えて。)

……なら、俺は喜んで御前を喰う、そう言う男だからなァ。
……グライド・クラウス。 好きに呼べば良い、俺もそうする。

(告げた、己の名。 それで、最後の条件を満たしただろうと、其の耳元で囁けば
ゆっくりと其の身体を、寝台の上へと押し倒して行き

――其の後は、誰にも知られる事は無い。
ただ、勝者と敗者たる二人だけが、知ることと為れば、其れで良い――)

オウカ > 「……ええ、まぁ、狂ってはおりまするが……」

そう言われ、お嬢ちゃん扱いをされながら押し倒されていき。
真紅の瞳をぱちくり、としてから。

「…………はい、グライド殿。
 …………で、できれば、優しくお願いいたしまする……」

体が成長しない故か、心のあり方もその年を保つのか。
まるで生娘のように頬を染めて。

彼の獣欲を受け止めた事は彼女と彼のみが知る事実。
余人には伝わらない一夜の睦事。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からオウカさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からグライドさんが去りました。