2022/03/13 のログ
■ジール > 「こちとら朝から漁船はしごしてお金稼いでるわけ。
漁師の朝って早いのよ、知ってる?もう日が昇る前に船出すわけ。
だから俺も早朝から海出て、昼前に帰って来て、今度は別の船乗って海出て、夕前に帰って来て、また別の……
なのに、なのにだ!」
己がそんな過重労働をしているというのに。
素寒貧で明日の食事の小銭すら無いから頑張って稼いでるというのに。
「人がそうやって汗水たらして働いてるのを尻目に女の子を襲おうだなんてそんなの問屋が卸すかーい!!」
なんか違う。怒るとこなんか違う。
己の元へと駆け寄ってきた女の言葉を聞き、ムスッと不機嫌そうな表情を露わに用心棒たちを睨む。
まあ趣味趣向性癖は個人の自由だとは思うけれど、だからといって無理やりは良くないよ無理やりは。
「というわけで、鉄拳制裁!そういうことはそういうお店で!」
足元を封じられ身動きの取れないであろう用心棒たちへと駆けると、鳩尾に膝蹴りを叩き込んでいく。鉄拳……?
女性を助けるというよりはほぼほぼ八つ当たりの様な気もするが、用心棒たちが気を失ったのを確認出来れば、一息ついてから改めて悲鳴の主へと顔を向けよう。
「まーそんなわけでっ。大丈夫だった?」
にぱ、と幼さ残る満面の笑み。尖った八重歯がチラッと光る。
■ティアフェル > 「…………ん?
………………んん??」
突然長々とした口上……いや、愚痴が始まった。
足元以上に凍る周囲の空気。長文なフラストレーションのお終いの言葉に。
彼の近くまで寄ったところでぴた、となんとなく足を止めていた当方。
「ですよねー!!」
激しく同意しておいた。そんな強姦魔去勢して犬に食わせろって話ですよねーと強姦魔……もとい、ただの仕事中の用心棒たちを睥睨する様子に、よし、なんだか良く分からんがこっちの味方、と判断して。
巻き込まれないよーに脇に避け。
「いいぞー、がんばれー。やっちゃえー、そこだそこー!」
やいのやいのと外野で拳と云いながら膝で用心棒×3を落としていく様子に声援を送り。
そして首尾よくとっとと片づけてくれると、わあいなどと嬉し気な歓声を上げてぱちぱちと拍手を送り。こちらへ彼の相貌と声が向くとこくりと首肯し。
「お陰さまで! やー……助かっちゃったー。乙女の危機一髪でしたわ」
人懐っこそうな笑みを向けられると自然とにこ、と笑みを返してどうもどうもありがとう、と握手を求めた。
■ジール > 朝は早いし重労働だしで臨時で漁師の仕事を請け負った事を後悔していたから、愚痴が出るわ出るわ。
まあ収入はともかく三食付きだったのは大変ありがたかったらしい。日々食い繋ぐことに必死なので。
「とりあえず強姦未遂みたいだし、このままここに転がしとくくらいで良いかな?
見たところキミも元気そうだし。犯される寸前だったとは思えないレベルで元気そうだし。」
もしかして強姦未遂の被害者では無いのではないか。
そんな疑念が頭を過ぎるが、正義感よりも八つ当たりで動いた手前、その辺の些細な違いは置いておくかぁ、と。
真相を知れば用心棒たちに平謝りをするだろうけれどそれはそれ。
「あんまし独り歩きとかしないよーにね?
男でも危ないところだってあるのに、ましてや女の子一人はもう、危ないってレベルじゃねーもん。」
うんうん、一人で頷きながら救出した女性へと歩み寄って。
「俺、ジールっての。駆け出しの冒険者やっててさ。
この近くに住んでるなら送ってくけど。丁度仕事終わったし。」
差し出された手を握ろうとして一時停止、自分の手をすんすんと嗅いでから、よし、と握手に応じた。
魚臭かったらどうしよう、って思ったらしい。
■ティアフェル > 「おっけおっけ。大分温かくなってきたからほっといても風邪ひくくらいで済むっしょ。
まー……荒れ果てた治世の上に、ほらわたしってばうら若くか弱いじゃない?襲撃なんて慣れっこなのよ。やーね、本当に平和恋しいー」
襲われかけていたか弱き乙女(虚偽)でこの場は押し通す気の女。
暴漢(用心棒)たちはここらに放置でヨロシイ、と親指と人差し指で丸を作って見せ。
真実がバレない裡にズラかることを検討しつつ。
「わたしはわたしで仕事でねー。危ないからって行かないと仕事にならない訳だし。
今日はちょっと下手打っちゃったから……助かった」
ありがとねーと愛想よくにこにこと笑顔を送って、それで色々ごまかしていこう作戦。
「あ、ご同輩。わたし、ティアフェル。ヒーラーで冒険者なの。
ありがとう、でも家は王都なの。今日はここらで宿をとるつもりなんだけど。
――そーだ、お礼するよ。仕事終わったんなら飲みいこー。助けてもらったし奢っちゃう」
魚臭いのは気にならないが犬臭いと怯えるかも知れない女。掌を嗅いでから握手する所作が少しおかしくて肩を揺らし。
あんまり高いところは無理だけど、お礼に一杯、と気軽に誘った。
■ジール > 「慣れっこになるほど……?
流石にそこまで……そんな風には見えないけどなあ。」
うら若いとか弱いは否定しない、というか否定材料も無い。
が、特別美人という感じでもスタイル抜群というわけでもなさそうだよなあ、とぐるりと女を見回して。首まで傾げて。
まだ行く先々で喧嘩吹っ掛けてるから、って理由の方がしっくり来てしまうな、と。
「仕事で?そんな危ない仕事わざわざしなくとも……
なるほど御同業かあ。妙に肝が据わってるというか、悲鳴の割に元気そうだから変だと思ったけど。」
納得。色々と納得。
それなら、わざわざ助けに出なくても自力で何とかしていたかもなあ、なんてぼんやり考えつつ。
「ティファエル。へえ、ヒーラーかあ。
俺はまだパーティとか組んだことないけど、やっぱ回復できる人が居ると良いよね……。
王都……確かにちょっと遠いな。今の時間でも取れる宿は酒場と一体のとこくらいだけど……」
心当たりが無い訳でも無い。奢ると言われて、マジで?と目を輝かせ。
「ああ、でもだめだめ。ほら、そーゆーとこだって。
もし俺がなんか不埒な目的で近づいて助けたフリしてたりする悪い男だったらどーすんのさ。」
今更だけど、注意は促しておかなければ。
妙な義務感で、めっ、と忠告する。
■ティアフェル > 「ここは嘘でも同意しとけ?」
意外とごまかせない。どーせブスだし巨乳でもねーわ、と膨れて余計見れない顔になり下がった。
ちぃ、と舌打ちしながら渋面を向け。
「それはわたしの勝手。こっちだって稼がなきゃならない事情ってもんがあるのよ」
一人で対処できたかどうか、それは用心棒たちの腕によるところだったが。
向こうは荒事のプロだが、こちらはそういう訳でもない。
チンピラ相手ならまた話は別だったのだが。そんな事情は今は絶対に云わない。
「ティアでいーよ。呼びにくいでしょ。
君は……前衛っぽいね。でも仕事にあぶれちゃってる感じかしら。冒険者が朝も早よから魚獲りだなんて……不景気過ぎて泣ける」
うく、と唇を嚙みしめて哀れっぽい視線を注いだ。
これも社会が悪いのよ、と全部世の中のせいにしておく。
「――うん、大丈夫。そうなったらわたし不能に――……な。なんでもない。
そうね、男は狼ね。そっちにも都合があるなら無理にとは云わないわよ。
別のお礼を考えるわ」
実はヒーラーのチート裏技。対象を不能にできるという技の持ち主である。
だから強姦の憂き目になど実は一回も遭ってはいない。遭う前に萎えさせる。でも今云ったら台無し過ぎるので言葉を切り。
忠告に、へいへい、とおざなりていどに肯いた。
■ジール > 「あっ、いや……ごめん。
別に可愛くないとか、そういう事を言いたいわけじゃ無くってさ。」
し ま っ た。顔中にデカデカと書かれている。後の祭り。
慌てて弁解を始めるが、果たして届くかどうか。
「まあ、そっか。冒険者なら大なり小なり危険な目には遭うし……
お互い苦労しますなあ……まあ見た感じそっちは食うに困るってとこまで貧しては無さそうだけど。」
冒険者であれば他に稼ぎようもありそうな気がしないこともなかったが。
まあ人それぞれ好みの働き方があるもんな、と頷きと共に呑み込んだ。
漁船に乗ってまで稼がないといけない方がおかしいのである。
「うあ、ごめん。名前間違った?ティアフェル……ティアか。
前衛…かなあ?ソロだからどんな状況でも対応できるようにってオールラウンダー目指しちゃいるけど。」
緊急でパーティ組んだ時も過不足なく動けるようにね、と笑って見せる。とはいえ経験値はまだまだ素人同然。
魚獲りに言及されると、何とも言えない表情で微笑んだ。やりたくてやってるわけじゃ無いのは先に言った通り。
「不の……?まあいいや。
んっ。……やっぱそうやってつけ込んだりとか、無理やりとか良くないよねえ?
もっとちゃんとお互いを知って、雰囲気とか尊重して合意の上でじゃないと。
あ、別に俺はこの後予定なんて無いから宿に案内ついでに奢られるけど!」
狼、という単語に一瞬表情が引き攣ったが、何だかよく分からない持論を展開すると同時に元に戻った。
別に誘いを無下にしたかったつもりは無いよ、と最後に添えて、再びぱあっと笑顔になる。人の奢りで飯が食いたい。
■ティアフェル > 「あんたに褒められようとは別に思ってないから」
腕を組んでなにがしか云いかけている様子に、っへ、とやさぐれ顔を向こうに向けて――拗ねた。十二分にかわいくなかった。
「フツー、五体満足で最低限のスキルがあれば食い詰めるほどにはならないと思うんだけどねえ……。借金でもあるの?」
それか仕事を選ばなければ。こちらはこちらでヒーラーとしてどこへでも出向くしできる範囲でなんでも受注するもので忙しいが貧困層ではない。
むしろ漁船で朝から晩まで魚と格闘していた彼の方が疑問である。
「誰それって感じで呼ばれたので逆に新鮮だった。ややこい名前が悪いのよ。
なる。魔術も使えるなら後衛でもいけるか。接近、援護両方できれば……いや、漁船乗らなくてよくね?」
結構小器用そうなのでいくらでも立ち回れそうに思えて疑問形に首を傾げ、アホ毛を揺らした。
新人かどうかなどはご存じないもので。
「取りま、君わたしのこと別にタイプじゃなさそうだし。甘い雰囲気に流され…なんてまあ無さ気で。いかにも安全パイって感じだから気軽に云ったんだわ。
無理やりする奴が強姦魔に説教タレてボコるかって話だし」
一応そういう理屈での声かけ。下心は双方ナシ。となると同じ冒険者同士話も合うかと思ったのである。
つまりタダ飯は歓迎という彼の態度にうむ、と首肯して。
「じゃあ早く行くわよ。わたしもお腹空いてるの」
同年代のようだが、なんか弟に対するように促して倉庫街から繁華街へ向けて歩き出した。
■ジール > 「ううぐぅ……」
辛うじてぐうの音くらいは出せたが、気分的にはぐうの音も出ない。
申し訳なさに一回り小さくなって見えるくらい縮こまって。
「借金は無いけど、どういうわけか収入が無くて。
ぺーぺー向けの依頼が丁度無かった事に始まり、どうにか依頼にこぎつけても依頼人が事故に遭ったりして報酬が遅れたりとかね。
一度お祓いとか真面目に行ってみようかなって思う時もあったさ……」
まあお祓いに行く前に空腹でそんな余裕無くなったわけですが。
「だーいじょーぶ、一度覚えちゃえば忘れないのには自信あるし!ティアフェル、ティア。うん、覚えた。
まあパーティ組むほどの依頼を受けるには下積みが足んないって言われたからさ……
とりあえず日雇い漁師が一番実入りが良さそうだったんで……それで…」
漁業系冒険者の一丁上がりである。農業系冒険者の可能性もあったし、酪農系もあった。その二つは日雇いで済まなかったから選ばれなかったけど。
思ってたよりも冒険者って大変だった、と振り返って思う今日この頃。
「え。まあ、一目見て堕ちるみたいな性格じゃないけどさあ。俺も一応男だかんね?
そりゃ女の子とお近づきにはなりたいし、一晩の過ちとかそういうのだって出来なくは無いんですよ!男なので!」
まあそれより今は飯食いたいんだけど、と絵に描いたような色気より食い気。
しかしこうも立て続けに異性から無害そう判定を受けると少し揺らぐものもあるのだ。男として。
「もうちょっとグイグイ行く感じの方が良いんだろか……
あ、じゃああんないするね。こっちこっち。」
深刻な顔で独り言ちた後、はたと我に返ってティアの後を追う。
すぐに並び立って、そのまま酒場兼宿屋まで道案内を遂行し、お礼の奢りを存分に満喫したのだった。良識の範囲で。
■ティアフェル > 実家の弟見てるよーだ……。
ボス猿的にはそんな風に感じて郷愁とともに眺めていた。
「呪われてるんじゃない?
思ってる時間を使って速やかにお祓い行った方がよさげ」
慈善事業で引き受けてくれる神官も探せばいるかも知れない。
それこそ冒険者ギルドで相談するのも手では、と前向きな検討を促した。
「そうか。合ってる合ってる。よしよし賢いねー。
新米かね。じゃああんまり稼ぎにならない仕事が主になってくるわね。
……肉体労働、おつ」
絶賛下積み時代という訳か。分からないでもない。こちらはヒーラー技能のお陰で新人の時も肉体労働には転ばなかった訳だが。
一応命懸けの職業である。冒険者なんて泥被ってなんぼだ。
「安心して。わたしはあやまたない。ちゃんと好きな人を相手にするよ」
彼の中の漢は認める。
が、助けてもらった恩はあるが、それで好きにしてくれと云うほど今のところ心酔していない。
友達にはなれそうだが。
「ヤリたきゃそうしないと何も始まらないとは思う。
ただ、それはジールも好きだと思う相手が見つかった時のがいいんじゃないの?」
今はそんな艶な話よりも、ご飯が先だ。腹が減ってはなんとやら。空腹だとロクなことはないと案内に応じてたどり着いた宿付きの食堂で、高いものばかり頼まなければお腹膨れるまで食べなよ、と勧め。
そうして食べ終わるのを待って上階に部屋をとるのだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジールさんが去りました。