2022/03/12 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「――っは、は……っ、はぁっ…! もぉっしつこい!!」

 息を乱しながら駆け抜けて行く足とそれを追う足――
 依頼を受けてとある商船から今日運びこまれた荷を確認し、代わりにある商品を仕入れてくるように云われたのだが、それは余り公に出来ないものらしく。
 探している内に商人に雇われた用心棒に不審感を抱かれて、捕らえられそうになり逃げ出した。
 捕まらないように汗を飛ばしながら全力の走りを見せる。
 現在はそんな状況。

 奴隷市を突っ切って波止場を走り抜けて、倉庫街まで駆けてきたが――追っ手はなかなかの健脚らしく撒けない。

 じぐざぐに走って角を曲がったり人込みに突っ込んだりするが、背後からなかなか離れてくれない。「待てコラァア!!」と時々怒号を浴びせられながら。

「ここで待つなら端から逃げませんからー!」

 ぜいはあしながらこっちも脚力には自信がある。
 どうにか振り切ろうと、我武者羅に港を走り周り、時に通行人にぶつかり――、

「あっ、ごめんなさい…!」

ティアフェル >  慌てて謝罪するも足を止めている余裕はなく、

「急いでて……本当にごめんなさい!」

 申し訳なさそうな声を出しては、追手から距離を詰められていることに気づき。やばいっ、とさらに足を速めた。
 しかし、僅かなタイムラグが致命的に作用し、そこから数メートル走った時点で追いつかれ。

「……! っわ!? やっ……離して……! やだってば、離して!」

 足の速い用心棒に肉薄されて腕を掴まれ。コンテナの並ぶ倉庫街の一角でじたばたと暴れ藻掻くも、向こうだって仕事だ。
 そう簡単に解放される訳もなく。

「や…めて! あんたたちの思っているようなことはしてない!
 こっちはこっちの仕事で………」

 しかし内容は守秘義務もあり口外禁止だ。云い淀むもので、そんな不審な女を野放しにもできず。
 ついに3人の用心棒たちに取り囲まれるとさすがにこれはとても拙い、と蒼褪め。

「ぜ、絶体絶命……ですか……? え? これってどっか連れ込まれる……流れ?
 それでから非常にやばい目に遭わされて、なんなら最悪…湾に重りつきで放り込まれて魚の餌になる的な……あれ?」

 生々しい末路が脳裡に張り付いて。そうなるくらいだったらここは洗い浚い白状した方が賢明かと判断できたが。
 ここまできたら吐いても無駄かもな……。
 そんな見当もついたので、口も塞がれていない今、できる最後の手段と息をすうう…と大きく吸い込み。

「っきゃああぁぁあぁー!! だーれーかーあぁぁ!!」

 これはこれで無駄のような気もするが、物は試し。甲高く切羽詰まった悲鳴を上げてみるという最終作戦。

 港の宵闇を引き裂くように遠く反響しながら鳴り渡る女の悲鳴。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジールさんが現れました。
ジール > それは、女の悲鳴に呼応するかのように倉庫街に犬の遠吠えが響いた。
直後、女と用心棒たちの周囲に異様な冷気が立ち込め、パキパキと異質な音を立てて用心棒たちの足元が凍りついていく事だろう。
あ、もしかすると女の方まで巻き添えは食らうかもしれない。超自然現象だから仕方ないね。

「……と、思わず慣れない魔術を使ってしまったけど。
 なになに、これどういう状況? 強姦魔に襲われてるとか?」

その割には女の方は身形の綺麗なままだし、と怪訝そうに首を傾げながら男が一人、姿を現して。
港町で臨時の肉体労働をしていた新米冒険者、どうみても漁師姿で悠々登場である。

「あんまりよくないと思うよー、双方の同意なくってのはさ。
 ていうか場所選べよー、こんな潮臭いところで女抱こうって人居る?」

全海沿いの街に住んでる人たちに謝った方が良い様な事を口にしつつ、多少警戒しながら一同に近づいていく。

ティアフェル > 「―――!?」

 悲鳴の谺する中、被さるように響いた犬の遠吠えに……実は犬怖い派ヒーラー。総毛だって立ち尽くした。
 い、犬…?! といかつい用心棒たちよりもよほど怖いものを見るような顔で、真っ青になって辺りをば、ば、と見回し……ていれば。

「え、え……?! なに、なになに、これ……冷たっ……!」

 そろそろ暖かくなってきた初春の港町。雪も解けて路面の凍結もとっくに終わったというのに、一月前に逆戻りしたかのように、不自然に凍り付いていく足元に驚いて飛び上がり。
 爪先が凍って。ぎゃあ、と今一色気のない悲鳴を上げながらどさくさに紛れて用心棒の手を振り払い。

「……な、に……誰……?
 えっと、まさか! まさか天の助けという奴?! よっしゃキタァ!
 助けてー、犯される吊るされる殺される~」

 そこへ現れた漁師…?にしか見えない長身の青年。
 悲鳴を聞きつけてやってきてくれたのかとアタリをつけると、現時点では事実無根な虚偽申請をして助けを求めた。

 さささ、と速やかにそちらへ駆け寄った上。

「こいつら変態なのッ! 見られてると燃えるんだって!キモイ!」

 思い切った大嘘こいて、逆に事態が呑みこめず戸惑う用心棒をいいことに畳みかけるように。