2020/03/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > 一隻の大型のガレー船が今まさに接岸しようとしていた。桟橋には早くも大勢の水夫や人夫が、荷下ろしのために集まっている。ガレー船が接岸できるほど、この港は深く浚渫されているということだと、騎士は舷側から街並みを見やり、息をついた。久方ぶりの、陸地だ。愛馬もようやく地を踏みしめられる。そう思えば、口許には自然と笑みが深くなる。

「もう少しの辛抱だ…。おかに上がったら、思いっきり走ろうな」

我慢がならぬと、そういうのだろう。黒鹿毛の悍馬はさっきからしきりに足元の板を掻いている。その愛馬の鬣を撫でてなだめつつ、騎士もまた船を降りる時を心待ちにしていた…。

アルヴィン > 旅の途次、海賊に襲われた際には先陣を切って闘い、船の被害を最小限に止め得た。以来、船長はじめ船員達にはずいぶんと一目置かれて扱ってもらったものだ。すっかりと馴染みとなった彼らとも、これで別れと思えば一抹の感傷もある。が…修行を志した旅の途次だ。
随分と名残を惜しんでくれる荒くれ者の船員達と別れを告げ、騎士は張り渡された分厚い板を、その積み荷よりも先に降りてもよいという栄誉を受けると、愛馬の口を取って歩いてゆく…。

「…なんだか、おかの方が揺れるんじゃないか?」

つい、そんなことを愛馬へと語りかける様をみて、船員の一人が笑って告げた。“船上生活が長くなり、船に慣れた証だ”と…。そんな言葉に苦笑を零し、騎士はもう一度背後を振り返ると、荷下ろしの喧騒の傍ら、己を見送ってくれる船員達へと、もう一度大きく手を振って、別れを惜しんでみせたのだった…。

アルヴィン > 海風が、心地よく頬をなぶるにも慣れた。が、逆に様々な喧騒や雑多な匂いに包まれることがあまりに久しぶりに感じもする。
若い騎士にはそれもまた、新鮮な旅情というものであったのだろう。呑気にゆったりと、愛馬の口を取ったままに、荷下ろしに次第にせわしなさを増す船着き場を抜けてゆく。
路銀には、まだ余裕がある。どこぞの領主や貴族に宿と食事を乞わねばならぬ必要もまだなくて済もう。
腕試しと修行を兼ねて、怪物退治の口があるなら、受けてもよい。路銀も稼げ、思わぬ手練れと出会えたならばそれもまた良き修行というものだ。
いずれにしても、ようやく未だ見ぬ地へと降り立ったばかり。
騎士の足は愛馬と共にゆったりと進み、いつしか船着き場から港湾都市の繁華街へと向けられていた。

アルヴィン > 雑多で繁雑。猥雑とも言える港町の風土を、この騎士が忌む気配は全くない。お貴族様然と取り澄ました様子もまた、微塵もなかった。港町の風土風俗、気候や食事。路傍の屋台や露店から漂う、労働者向けの安い食事の匂いすら、楽しむ気配がありありとある。その歳若さに似合わず、随分と旅暮らしと旅の苦労を知っている…。見る者が見れば、そういう騎士の様子がうかがえたことだろう。
やがて騎士は、船着き場ほどの人通りの繁雑さがなくなったことを機に、ようやく馬上の人となった。
ゆっくりと、そしてしっかりと手綱を捌いて馬の脚を緩やかに進めさせ、青いマントを海風に靡かせながら、騎士は港町の喧騒を背に、次第に港湾都市のその中心へと進んでゆく…。

アルヴィン > いっそ長閑な気配すらまとい、騎士は港町の喧騒をゆく…。
未だ見ぬ大陸へと踏み出した一歩。これから己を待つ出会いも、艱難辛苦も、いずれをも楽しみに待ち望んでいるかのように、騎士はまっすぐに前を見つめて馬、うたせていた。
その騎影もほどなく、喧騒ましてゆく港湾都市の人波の中に飲まれてゆく…。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にカインさんが現れました。
カイン > すっかり暗くなった船着き場。
船員達はとうに街に繰り出すか、あるいは自分の船に引きこもり、
酒盛りを始めているかどちらかの時間帯である。
そんな中、如何にも荒事稼業でございという風体の男が下船して港に足を踏み入れる。

「…もうこんな時間か。酒の誘惑に負けた俺が悪いんだが、
 これは宿が見つかるかどうか怪しいな」

これは大変そうだと腰に片手を当て、
背負い袋のひもを握り直して天を仰ぐ。

カイン > ちらりと下船してきた船に視線をやるとつい先ほどまで、
自分も混ざっていた宴の喧騒が下まで聞こえてくる。
夕方で終わった護衛の終わりに誘われて、酒宴に参加したのが運の尽き。
酒に対する未練を断ち切る様に町の方に視線を向けると、
当然の様に盛況な様子が遠くからでも見て取れた。

「馴染みの宿もそうないし、多分埋まってるだろうしな。
 となるとハイブラゼールか…。空いてる場所はあるだろうな」

妙に空いてる場所はそれこそ次の朝まで無事でいられるかは別問題だが、背に腹は代えられない。
困ったものだと考えながら首を鳴らして当座の方針を決めると、
手近な木箱を椅子代わりに座り込むと休憩とばかりに体を伸ばし。

カイン > 「ま、仕方ない。できるだけ探すは探しておこう。
 最悪酒場で粘りでもするかね」

酒でも飲みながら待つことも最悪考えようと、
とりあえず当面の方針を決めてからその場を去っていくのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からカインさんが去りました。