2020/01/28 のログ
アセナ >  
さて、どうしたものか。
困惑していると、向こうから。

「なッ!」

鋭い跳び蹴りがすっ飛んできた。
髪を結った美しい女性のオマケつきだ。
咄嗟に身を屈めると、組合長に長い足が直撃して吹き飛ばされた。

「それはいいが、どっちにつくつもりだ?」

軽鎧の仕込み刃でロープを切って戦闘姿勢をとる。
やっぱり剣は危険か。
相手を殺したら同僚殺し、後味が悪い。

咄嗟に女に襲い掛かってきた大男を怪力に任せて殴り飛ばした。
そのまま背中を合わせて死角をなくす。

『ぶっ殺してやらぁ!!』

激昂した組合長が赤くなった鼻を押さえながら俺たちに対する攻撃指示を出す。
やれやれ、今日はなんて良い日なんだ。泣けてくる。

ホアジャオ > 上手い事顔面で受け止めたヤツが居た。
何てお上手、何て感心しながらすとん、と下り立った場所へ突っ込んでき大男の顎へそのまま脚を跳ね上げてやろうと思った所で
横から邪魔――加勢が入って大男は吹っ飛んでしまった。
獲物を取られた。
ちょっと悔しげにちらりと細い目がその男を確認するが、文句が口を突く前にぐるりを囲まれる。
背中に、そいつの背中が合わさるのを感じる。

「まァいっか……
 獲物、半分こね、ッ!」

鼻を押さえた男が叫んだのと、女が呟いたのはきっと同時。
女の紅い唇は弧を描く。
先ず正面から捕まえようと手を広げて来た奴の顎を掌底で突き上げて、そのまま続いて左右から雪崩れてきた手合いをそれぞれ蹴りと単眼蛇拳で鼻を潰してやる。
さて背後の男の方は―――なんて、ちょっと横目で見たりして

アセナ >  
獲物? 獲物といったか?
そうそう、確かこう言う女性をニンゲンの物語の中で……

「とんだお転婆だ」

と、言うらしい。
今まで見た物語から察するに、お転婆というのは多分、勇猛に戦う美しい女性のことを言うのだろう。
彼女にぴったりだ。

そんなことを考えていると豪腕で殴りかかってくる男の拳を頬に受ける。
痛い。だろうが、この野郎。
そのまま胸の辺りを殴りつけて吹き飛ばした。
頭を木材で殴られる。
頭が切れて血が流れたが、こんなもので魔狼をやれると思われたとは。

そいつは服を掴んで壁に頭からぶつけてやった。

「お嬢様、己(オレ)はボスに用事がある。というか、ボスに話を通さないと退職できない」
「あの扉の向こうだ、エスコートをお願いできるかな?」

エスコート。気取った言い方で、確か優しく連れていくことを言う。確か。

そんなことを考えている間に思い切り頭をカナヅチで殴られた。
痛いだろうが。そいつを無造作に前蹴りで吹き飛ばす。

ホアジャオ > 何だかちょっとした悪口を言われた気もするが
さておき獲物を半分こした相手の男は随分と丈夫らしい。
拳で殴られて、角材で殴られて、ぶつぶつ言っている間にカナヅチで殴られたけど割と平気そうだ。

「ウン?向こう?」

殴りかかってきた奴の拳を潜って胎に肘を入れてやって、ぐったりしたそいつを更に後ろから飛び掛かってきた奴に放り投げてやる。
ぶつぶつ言っている丈夫な男に視線をやると、どうやら行きたい場所があるらしい。

「フーン……好啊(いいよ)
 その代わり、面白くなかったらアンタ、後でアタシと喧嘩付き合ってよね!」

また寄ってきた奴の顎を蹴り上げて、そのままぽんと跳ねるように後転をひとつ。
そのまま近寄って来る奴らを或いは蹴り或いはひっぱたいて、丈夫な男が差す方向へと移動していく。

アセナ >  
見れば女性の動きは華麗だ。
流麗でもあり、直線的でもある。
そして美しい姿勢から繰り出される徒手空拳は力が逃げず、
力強い踏み込みがとんでもない破壊力を生む。

「面白くないと喧嘩になるのか?」

できれば美しい女性とは仲良くなりたいものだが。
襲い掛かる相手を殴りながら大きな扉の前に来る。

「確か……ノックは二回だったか?」

相手とタイミングを合わせてドアを蹴破る。
まぁ、己一人でも蹴り破るったら蹴り破るのだ。
所詮ニンゲンの建造物だ。

禿頭の中年男性がこちらを鋭く見ている。ボスだ。
その両隣には見上げるような大男二人が護衛として立っている。

グリダリブラザーズ。屈強なる兄弟。
母親が冒険者で、父親がサイクロプスと噂されるならずものだ。
……でも、二人はちゃんと両目があるから噂は嘘だと己は思う。

「ボス………話をしたい、話を聞いてくれ」

と、可能な限り穏やかに話しかけると、ボスはこちらを指差した。

『やれ!!』

取り付く島もない。船着場なのに無体な。

「女、己は左をやる」

グリダリブラザーズの兄のほう……いや、多分弟のほう?
よくわからんがとにかく相手取ると、防御もへったくれもない殴り合いを始めた。

ホアジャオ > 「アッタリマエでしょ!」

他人の常識なんて何のその。
取り敢えず襲い掛かって来る連中をかたっぱしから叩きのめす。

……ウーン
手ごたえ無い。物足りない。

ちらりと丈夫そうな男を見る細い視線は、すこし寒気を感じさせるかもしれない。
ともあれそうやってドアの前まで辿り着く。
丈夫な男が蹴ろうとするので、先を争うように女も扉を蹴ったらドアは内側に吹っ飛んだ。
ちょっと早さに差があったから、ギリ2回扉は音を立てたかもしれない。

そうして現れた見上げる大男ふたり。
女の眼には、禿頭の中年男なんて眼光が鋭かろうが頭が100ワットで光ってようが映らない。(たぶん)

(どっちにからにしようかな…)

すうーと細い目を更に細めていると、丈夫な男が左のやつへと向かって行ってしまった。
えーっ、ちょっと!と抗議の声を上げる間もなく
右の大男の拳が正面から襲ってくる!

女は風音立てるその拳を身体を崩れるように低くして躱すと、そのまま相手の脚目掛けて鋭い回し蹴りを

当たったら…たぶん大男の身体は丈夫な男の方へと倒れ込むかもしれない

アセナ >  
殴り合いを続ける。かなりギリギリの戦いだ。
グリダリブラザーズのどっちか片方、恐るべし。

口の中に血が滲む頃、隣からもう片方が倒れてくる。
あの女、わざとか!?

ダメだ、人間の姿を維持できない。

次の瞬間、空間が割れるような音が響き。
世界の破片の間から白い前肢が伸びてきた。
己は魔狼の姿になったのだ。

「うおおおおおおぉぉ!!」

倒れてくる大男を女のほうに後ろ足で蹴り飛ばし、
そして呆気に取られる目の前の大男を前足でぶん殴った。

「この姿を………見られたくはなかった…………」

いや、本当に。もっふもふだし。かわいいし。恥ずかしい。

とりあえずもう片方の大男は女に任せてボスの下へ。
怯えるボスの前に、亜空間から麻の袋を取り出して放る。

「この白い粉の正体………アンタは覚えがあるはずだ」

可愛らしいマズルを歪めて可能な限り凶悪に笑う。

「恐らく、カスタァドクリィムの粉。人間の世界では貴重な甘味だ」
「ドリアードの種子の粉末を混ぜて虫が湧きづらくし」
「そしてあとはミルクと卵黄を混ぜるだけでクリィム・フィリングになるように調整してある」

「この袋一つで末端価格10000ゴルドは下るまい」

……なんだろう。襲ってきた組織のボスの前で相手の秘密を暴いているのに。
己の可愛らしい姿とややファンシーな真実でイマイチ締まらない。

ホアジャオ > 「坏了(しまった)!」

わざとじゃない。
……けどまあ丈夫なんだし何とかなるんじゃない?
とか思いながら、倒れ込んで行った大男に向かって駄目押しの跳び蹴りを――――

「哎呀(わあ)…!」

轟音のあと、大男が起き上がりこぼしのごとく此方に戻って倒れて来る。
蹴りは顔面ヒットさせられたものの、倒れ込んでくる大きな身体は到底受け止められず、ドスンと下敷きになってしまう。

「ちょッと!重いよ、退いてよ!」
と喚く先の相手はもう白目を剥いている。
ひとしきりじたばた暴れ、喚いてから………丈夫な男の変化にようやく気付く。
細い目を、何度も瞬いて。

「……可爱(カワイイ)―……」

もふもふだ。
いや、もっふもふだ。
触りたい、フサフサしたい。
……重い。
乗っかった男をどかそうとじたばたしている間、なんだかもふもふはおやつの話をしている。

「我说(ねえ)!ちょッと!
 おやつなんてどうでもいいから、こいつ退かしてよ!」

喚く女の声は、(内容は兎も角)真面目な話し合いをする男同士に果たして届くのか……

アセナ >  
「ああもう、こっちは真面目な話をしているのだ!!」

女に圧し掛かってのびている男の襟首を咥えて退ける。
コホン、と前肢を口元に伸ばして咳払い。

「ボス……アンタ、甘いものが好きなのが恥ずかしいんじゃないか?」
「自分を偽るな!! そんなだから余計なトラブルを起こすのだ!!」

そんな風に一喝してから気まずい空気が流れた。
自分も人の姿に偽ってる魔狼だった。

「と、とにかく!! お互い秘密は握ったからこれきりだからな!!」
「正体を知られた以上、己は仕事を辞める!!」
「ボス、お世話になりましたァ!!」

言いたいことを一方的に言って女の下へ。

「助かった。だが、知らなくてよい真実を知ったようだな女……」
「恐れ戦け、我こそは魔狼の末裔……アセナであるぞ」

フフンと名乗りを上げた。
あ、首のところ痒い。座って後ろ足でサカサカ掻いた。

ホアジャオ > 退かしてもらってようやく一息。
ふうーと吐息を吐いて身を起こすと、どうやら男同士の真剣な話し合い(内容は兎も角)は、無事丸く収まったらしい。

取り敢えず、ひとしきり喧嘩もした。
ので。
取り敢えず次の喧嘩を仕掛けるでもなく大人しく、近付いて来るもふもふをじっと見る。

「……噢(へえ)、そォなの?」

首を傾げて上から下まで見る。
もふ……もっふもふだ。
細い目を精いっぱいきらきらさせて見ていると、首の後ろを掻き始める。

「痒いの?掻いたげるよ!」

ぴょんと飛びつくようにもふもふの背後に回ると、程よい場所をナデナデとガシガシの間くらいの力で掻いてやる。
少しとろんとした細い目は多分、油断してるなと思ったらもふもふに顔を埋めるくらいはやりそうだ。

アセナ >  
「そうなのだ」

どうだ、ビビれニンゲン。
己も女より大きいくらいは背丈があるのだ。
同族の間ではチビと蔑まれたが威圧感くらいあろう。

「なッ」

その時、飛びつかれた。
そして痒いところに手が届いた。

「や、やめろ女ァ!! 犬じゃない、犬じゃないのだぞ!! そこはダメぇ!!」

メスみたいな声を出しながら振り払おうと首をぶんぶん。
結局、顔を埋められてしまった。

「ハァ………ハァ……魔族だぞ……恐ろしいんだぞ…?」

疲れた声音で窓を鼻先で開く。

「騒ぎが大きくなってきた、とにかく行くぞ!! 今日だけは乗ることを許す!!」

衆目にこの姿を晒すよりはこの女を乗せて屋根伝いに逃げるか。
全く、最高の一日だ。こんな月の晩は、災難ばかり起きる。

ホアジャオ > 隙をついて飛びついてやって、顔まで埋めて思う存分もふもふわしわし。
魔族、と聞いてもふうーん、と気のない声が返って来るだろう。
聞いたことはあるけが会ったことは無いので、べつに何とも感慨が湧かないのだ。
喧嘩してみたい、とは思うけども。
あ、でもこれで会ったことにはなるのか。

眼の端を染めた女がむふぅーと満足げな鼻息が漏らす頃、ざわつく外の声が聞こえて来る。
気にせず顔を埋めていると、どうやらもふもふが背中に乗せてくれるらしい。

「太好了(やった)、ホント!?ありがと!」

掻いていた手をもふもふの身体に廻して、そのままぎゅーと背中に抱き着く。
ちょっと、力は強めかも知れない。

アセナ >  
気のない声。全くビビる様子レス。
これだからニンゲンの女は!! 魔狼の姿を少しは恐れろ!!
抱きつかれると、

「ぐええ、もう少し緩めろ女ァ………」

苦しそうに呻いて。くそう、くそう。厄日だ。

そんなこんなで月の下を魔狼と女が飛ぶ。
早く下ろして、宿に戻って。明日からの仕事について考えたい。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からアセナさんが去りました。
ホアジャオ > もふもふに抱き着いたまま、冬の冷たい空気の中を飛んでいく。
気持ちがいい。
苦しそうな相手にゴメンごめん、と言いながら、ちょっとだけ力を弱めて
兎も角も最高な夜だ。

(あたらしい喧嘩相手もめぼし着いたし)

女は色んな意味で笑いながら、もふもふの背中を満喫したのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。