2020/01/27 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にアセナさんが現れました。
アセナ >  
己(オレ)は魔族だ。っていうか魔狼だ。
でも人間に化けて生活している間は、金が必要になる。
というわけで働かなければならない。

働いていると。

『おい、アセナの野郎はまだ見つからねぇのか!?』
『この辺りのはずだ、探せ!!』

必ずトラブルが起きるのが人間社会というヤツらしい。
木箱の陰に隠れていると、港の積荷を一緒に運んでいたかつての仲間…
今は己を探し出そうと躍起になっている筋肉質の男たちがすぐそばを通り過ぎていった。

「ふぅ………」

懐から小さな麻の袋を取り出し、匂いを嗅いだ。
積荷から偶然見つけたものだ。
間違いない。甘ったるい匂いがした。

トラブルの根源は甘い香りがするらしい。

アセナ >  
よくわからんがこれがボスの一番大事な積荷か。
そして、己がその正体に勘付いたと知って追っ手を差し向けられている。
冗談ではない。
ヒューマンがどのような嗜好品を口にしようと勝手だが、
これが原因で明日から糊口を凌ぐアテさえなくなるかも知れない。

憂鬱だ。

そもそもバレたら困るようなものを新人の荷下ろしの近くに置いておくほうも悪い。
しかし、誰が悪いかを考えても意味がない。
論じる相手がいないし、今回ばかりは最も悪いのは己かも知れないからだ。

木箱に隠れたまま腰の刀剣の留め金を外しておく。
こんなもの、いついかなる時も使いたくはない。

アセナ >  
月光が鬱陶しい。新月であれば闇夜に乗じて逃げ出したものを。
木箱に隠れたまま呼吸を整えていると。

『いたぞ!! あそこだ!!』

隠れているのがバレた。
そして……なんとも駆けつけた人数が多い。
取り囲まれた。大男たちが武装している。詰んだ。

両手を挙げてゆっくりと立ち上がる。

「ボスと話がしたい」

相手を刺激しないように、できるだけゆったりとした口調で声を張る。
しかし組合長の男は俺にカトラスを向けてこう怒鳴った。

『うるせぇ!! 仕事の時にも剣を腰に下げて鎧を着て、最初から怪しいやつだと思ってたんだ!!』
「待て、この格好は一般的に働く姿ではないのか?」
『えっ』

気まずい時間が流れた。
どうにも己は心得違いをしていたらしい。
これは冒険者の身分を表わす正装ではない……?

『い、いいから来いってんだこの野郎ッ!!』

ショックを受けている間にロープで後ろ手に縛られた。
そのまま急かされるように連行されていく。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 月光照らす船着き場。
昼間と違って人通りはとんとなく、繋がれた船が立てるぎぃぎぃという音と、波音と風音だけが静寂を揺らす。

いつもなら。

「フーンふ、フーン♪」

ふと、鼻歌交じりに船着き場へ踏み入れる人影。
きょろきょろと左右を見渡してから、船着き場の木箱の山の方へ、スキップして近寄って行く。
手には、買ったばかりの肉まんの紙袋。
海を見ながらホカホカ肉まんを頬張るのは、人影―――黒髪を三つ編みにしたカンフー姿の女のお気に入りの時間だ。



もっと好きなものもある…

「――…ンン?」

木箱へ近づくにつれ、波と風の音に混じって明らかに争う声。

(喧嘩?)

ぱっと顔が輝く。次の瞬間には音へ向かって走り出す。
その先にわやわやと集まっている連中の影を見付けると

「アタシも混ぜてよ!」

そのまま突っ込み、跳び蹴りを人だかりのど真ん中に!