2019/05/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 靄が掛った月が中天に架かる頃。
すっかり人気の無くなった船着き場は穏やかな波音で満たされて、停泊している船舶は月明りの下黒い影となって、ゆっくりと波間に上下している。

その船着き場、入口からぴょこんと顔を出して、辺りを見回す女がひとり。
誰もいないのを見て取ると、がっかりしたような、ほっとしたような溜息を零しながら足を踏み入れる。
そのまま片手に紙袋を抱えて、波間に揺れる影を何とは無しに眺めながら、端の方へと歩いて行く。
そうして、貨物の空箱が積まれている場所まで辿り着くと、その一つへ後ろ向きにぽんと飛び乗った。
紙袋を傍らに置いて、手を背後について天を見上げ、その細い目を更に細める。

「啐(ちぇっ)……ちょッと傘被ってンね…」

そう、紅い唇から言葉を零して、空箱から突き出した脚をぶらぶらと揺らした。

ホアジャオ > やがてふん、と一つ鼻息を漏らすと、傍らに置いていた紙袋を膝に置く。
そおっと取り出したのは、女の拳二つ分くらいの大きさの中華饅頭。

「…月見中華饅頭、のつもりだったのになァ……」

ため息交じりに言って、紙袋をまた傍らに置いて、手にした中華饅頭にかぶりついた。
天を見上げながらむぐむぐと動かす唇から、仄かな湯気が立つ。

ホアジャオ > そうやってぼやっと空を見上げて、中華饅頭を半分ほど平らげた頃。
足元から不満げな猫の鳴き声。
女がひょいと空き箱から身を乗り出して足元を見れば、見覚えのある白い毛並み。

「啊(わあ)!久しぶりィ!」

足元にどっかと鎮座していた少し太目の白猫の、首根っこの後ろ…だけだと猫が引きちぎれそうなので、前脚の下を両手でもって抱え上げて、空き箱の上に乗せてやった。
港を根城にしている猫は、大概が近辺で働く者に可愛がられている。
この白猫も恩恵に預かっているようで、太いだけでなく毛並みもつやつやだ…

「……アンタ、また太ったンじゃァないの…」

食べていた中華饅頭の、餡の部分を掬って与えてやろうとしていた女は、その動きを猫の鼻先でぴたりと止めた。

ホアジャオ > 不満げな唸りを零す白猫を横目に、指先で掬った餡を自分の口へ運ぶ。

「……ちょッと、遊ぼッか?」

それを飲み下して、女は猫へにっこりと笑う。
不満げな、抗議の唸りを上げていた猫がぴた、と喉を震わせるのを止めた。
そうしてのっそりその場を逃げ出そうとした猫を後ろから引っ付構えて、抱え上げる。

「大丈ォ夫、月は割と明るいし、夜はまだ長いから……」

ふっふっふ。
心底楽しそうに笑いながら、自分の口へ残りの中華饅頭を押し込む。
片腕に白猫を抱え、もう片方の手で紙袋を取り上げると、ぽんと空き箱から飛び降りた。

「れはひへひ……」

口の中に中華饅頭を詰めたまま上機嫌に言葉を紡いて、弾む足取りを船着き場の出口へと……

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジードさんが現れました。
ジード > 朝の喧騒が嘘だったかのように人の気配が少なくなった船着き場。
未だ通り掛かる人々は居るものの、昼食から帰ってきた人足などが中心である。
色とりどりの薬やアクセサリーが歯抜けに並べられている店先は、
その店がそこそこ程度に繁盛した形跡を残しているものの、
それに興味を示す人間が通り掛かる様子はない様子で。

「――それなりに受けは悪くは無いんだが。
 売れる薬はどうにも原価が高いんだよな。今日はこの辺が切り上げどきかね」

渋い顔でぼやきながらのセリフを漏らしながら、
店主らしき男は困り顔で肩を揺らした。トータルで見ると今一のようだ。
気を取り直してとばかりに人のまばらな通りに目をやるが、
客になりそうな一足はイマイチ。

ジード > 「そろそろ切り上げどきか。
 食事する場所だけはしっかり用意しておかないとな」

声を漏らしながら立ち上がり荷物を片付けて、街の方へと消えていくのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジードさんが去りました。