2019/01/06 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 夜半になって月も半ばまで登った頃。
中規模の客船がゆっくりとその船体を揺らしながら、港に滑り込んでくる。舫が結ばれ、桟橋が渡され、うっすらとした月明りに白い船体を浮かび上がらせながら静かに波に揺られるだけになると、ぞろぞろと客たちが吐きだされてくる。
客層は豪奢に着飾った者から、ごく普通の商人風、派手な色彩の服装の旅芸人風など様々だ。
この寄港は予定のものであったらしく、港の魔法の街頭は明々と炊かれている。
その灯りの元へ三々五々、客たちが散ってゆく様子を、まだ甲板に残り、手摺りに凭れかかって眺めている背の高い女がひとり。頭からストールをフードのように被って巻いているが、ちらりと覗くその頤の肌は赤銅色だ。
■ジナイア > 船内の見回りに通りかかった水夫が訝しげな視線を投げる。それに気づいた女は少し、彼の方に向けて微笑む
「やあ…出口が混んでいるようだから、少し、後で出ていこうと思ってね」
構わないかな?と首を傾げると、ストールの合間から黒髪が零れ落ちる。相手は何だか落ち着かなげに構わないとの内容をごにょごにょと告げ、その場を立ち去ってゆく。
水夫が立ち去れば、また再び、甲板からの光景をじっと見つめる。表情はうっすらと笑みを浮かべた取り澄ましたものだが、その翠の視線は、好奇心で輝きを放っている。
…やがてひとも疎らになり、ひとつ、頷くと女は甲板を離れ、桟橋の方へとゆっくり移動を始める。ショートブーツの底が船の床の木を踏む軽いごつ、ごつ、と言う音が、夜の静寂にやけに響く…
■ジナイア > 港の石畳の上に降り立てば、既に辺りは人もないが、街へと続く道の向こうから陽気な音楽が聞こえてくる。どうやら酒場などの繁華街が近いらしい。
女はストールの奥でうっすらと笑みをうかべて、港の出口へと踏み出す。
女が港から去って暫くして、残っていたらしい水夫数人も客船から出口の向こうへと消える…程なくして、港の明かりが一斉に落ちる。
港には、停泊した船たちが月明りの中で揺られる姿が残された―――
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジードさんが現れました。
■ジード > 早朝の喧騒からは大分落ち着いた船着き場。
色とりどりの薬やアクセサリーが歯抜けに並べられている店先は、
その店がそこそこ程度に繁盛した形跡を残している。
「――それなりに受けは悪くは無いんだが。
売れる薬はどうにも原価が高いんだよな。今日はこの辺が切り上げどきかね。
全く、新年だからって財布の紐が軽くなるってこともないか」
渋い顔でぼやきながらのセリフを漏らしながら、
店主らしき男は困り顔で肩を揺らした。トータルで見ると今一のようだ。
気を取り直してとばかりに人のまばらな通りに目をやるが、
客になりそうな一足はイマイチ見かけない。
■ジード > 「もうちょっと船乗り向けの商品でも揃えらればいいんだろうけど、
船乗りに受けるものってなんだろう?
酒とかその手のかなあ―薬酒はないな」
作るだけならば勿論作れるが、薬としてどんな効果を求められるかわかったものではない。
栄養剤たぐいならまだマシで媚薬など売ろうものなら下手をすればしょっぴかれかねない。
危ない橋すぎるなと首を横に振り、船の停泊する港に視線を向ける。
荷揚げ荷降ろしが終わった人足が思い思いに散っていくのを見。
「ま、慣れないことはするべきじゃないか」
総結論付けて息を吐く。何とも難儀な話だ。
■ジード > 「そろそろ切り上げどきか。
食事する場所だけはしっかり用意しておかないとな」
声を漏らしながら立ち上がり荷物を片付けて、街の方へと消えていくのだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジードさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > (夜更けの倉庫街は、いっそ気味が悪いほど静まり返っていた。
この界隈を闊歩する男たちならきっと、もうこの時間にはどこかの酒場か、
でなければ暖かいお姉ちゃんのベッドへでも潜りこんでいる頃合いだろう。
誰が好きこのんで、こんな寒い夜更けに、こんな寂しいところを、というような場所へ、
影から影へ、渡りそこねた己は千鳥足の靴音を響かせていた。
ほんのり赤らんだ頬、くちびるから零れる吐息の温度、甘ったるい香気、
なにもかもが己の状態を、酔っぱらい、であると告げている。
ふらり、大きく傾いだ身体を手近な倉庫の壁でなんとか支え、
あまりにも遅すぎる後悔のため息を、そっと、ひとつ。)
ああ、もう……やっぱ、このカラダと酒は合わない……。
(暖かくなりたかったし、久しぶりに酒の味を堪能したかった。
けれど、どうやらこの身体では、香辛料たっぷりの葡萄酒ほんの少しでも、
いささか刺激が強すぎた、らしい。
もう一度影渡りを試みる気力もわかず、ぐったりと項垂れて)
■リュシー > ―――お、っと。
(ぐにゃり、手をついてなかば身体を預けていた闇が、不意に柔らかくほどけた。
掌に触れるあたたかさは、最近、ようやく慣れはじめた予兆。
一度で帰れる保証はなかったけれど、帰巣本能のようなものを信じたい。
歪みだした闇色の中へ身を沈めて―――果実酒の香りだけを残して、姿を消した。)
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からリュシーさんが去りました。