2018/09/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジードさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジードさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジードさんが現れました。
ジード > 昼間の喧騒が嘘だったかのように人の気配が消えた船着き場。
薄明かりに照らされたまばらな人影が通るだけになった路地に、露天が広げられていた。
色とりどりの薬やアクセサリーが歯抜けに並べられている店先は、
その店がそこそこ程度に繁盛した形跡を残している。

「――それなりに受けは悪くは無いんだが。
 売れる薬はどうにも原価が高いんだよな。今日はこの辺が切り上げどきかね」

渋い顔でぼやきながらのセリフを漏らしながら、
店主らしき男は困り顔で肩を揺らした。トータルで見ると今一のようだ。
気を取り直してとばかりに人のまばらな通りに目をやるが、
見向きもされない様子に息を吐いて頬杖をつくのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にアリゼさんが現れました。
アリゼ > アリゼはいつもの甲冑姿のまま、やや困ったように時折首をかしげながら
月明かりが照らす夜道を歩いている。
その手には果実酒が詰められ、コルクで止められた陶器の瓶が二つ。
こんな場所でそんなものを持ち歩けば当然荒くれものが一杯やろうと誘ってくるが、
彼女はそれを一笑に付し、強引に連れ込もうとする男を空いた片手で殴りつけて黙らせる。

「……まったく、捨てるのも勿体ないし、どうしたものかな」

そんな時、頬杖をついてつまらなさそうにしているジードを見かけた。
品物の売れ行きは好調なようだが、何故か不機嫌な表情をしている。

「どうしたジード、そんな顔をして。
 こいつで一杯やるか?」

そう言ってドンと店先に置いたのは、先程から持っていた果実酒の瓶。
芳醇な柑橘類の匂いが辺りに漂い、飲みやすさを感じさせる。

ジード > 「おや?アリゼじゃないか、そっちこそこんな所で一体どうしたんだ」

渋い顔のままお金の検算を手持ち無沙汰にしていると聞き覚えのある声が男の元にかかる。
不思議そうに視線を上げた直後、眼の前に置かれた酒瓶に目をパチクリさせ。

「どこから持ってきたんだい、それ?――それも悪くないね。
 今日はコレくらいで切り上げて後はアリゼと一献。付き合ってくれるんだろう?」

酒を煽る仕草をして笑って見せながら改めて相手に視線をやり。

「やあ、こんばんは。…でもこんな所でどうしたんだい?
 てっきりしばらく王都を拠点にするものだと思ってたけど」

アリゼ > 「護衛の依頼だよ、商人が王都からここまで来るのについてきたんだ。
 ところがいざ街について報酬をもらおうとすれば、持ち合わせがないから現物報酬だとゴネてね」

そこで一旦言葉を区切り、目の前の酒瓶をコツコツと叩いて苛立ちを表す。
確かに酒瓶に詰まった果実酒は上物だったが、旅人であるアリゼには現金が何よりも大事だ。
野外ならば大剣を突きつけてむしり取るところだったが、街の中ではそうもいかない。

「仕方なくよさそうな酒瓶二つを選んでもらってきた……というわけだ。
 王都に帰った際にはギルドに届けを出す必要がある!」

事情を話しているうちに苛立ちが募ってきたのか、徐々に口調が荒くなっていく。
そうして酒瓶の一つを掴み、ジードに突きつけた。

「一献どころではない、空になるまで飲むぞ!
 まったく、私の祖国ではこんなことはなかった――」

ジード > 「なるほどねえ。しっかり仕事はしてるようで関心関心。
 それなりに良い酒のようだけど、アリゼのお気には召さなかったかい。
 お手柔らかにはしてあげなよ」

ハッハッハと声を上げて笑いながら女を宥めすかして荷物をまとめると
指を鳴らして立ち上がるなり露天が立ち消えて一つのカバンが現れる。
そんな手品じみた光景を眼前で展開して見せながら、突きつけられた
酒瓶を手に取り軽く揺らしてみせる。

「ストレス発散に付き合うのは勿論やぶさかじゃないけどね。
 どうする?どっかの酒場にでも入るかい、それとも借りてる部屋があるからそこに行くかい?」

アリゼ > 「……部屋だ。港町の酒場なぞ酒を味わう場所ではない。
 船乗りという連中は騒がなければ死ぬ病にかかっているようだからな」

相変わらず奇妙な魔術を使う男だ、とアリゼは目の前の光景を見て思う。
魔術と言えば炎や雷を出すようなものというイメージしかなかった彼女にとって、
一体どういう原理か見当もつかないものだった。

そんな奇妙な光景を見て驚いたためか、いつもの落ち着いた口調に戻っていく。

「酒のつまみになりそうな食料はあるか?
 あいにくこちらは保存食しかなくてな……干し肉なら分けられるぐらいだ」

そう言って腰の革袋に詰まった干し肉をパンパンと叩く。
旅のお供には便利だが、こういう時には口寂しいものになってしまうのが難点だ。

ジード > 「俺は騒がしいの、嫌いなわけでもないけどね。
 あんまり辛気臭くされるのも困りものだ」

相手の不服そうな物言いに笑いながら応じてみせると
つまみの要求に任せておけとうなずき返し。

「もう少しアリゼも仕入れるものを変えてみるのもいいかもね。
 保存食一つとっても干し肉や硬いパンよりも良い物もあるしな。
 さて、それじゃあ行こうかお嬢さん」

笑顔でそう告げればカバンを片手にとり反対の手を相手に差し出し。

アリゼ > 「場を盛り下げるつもりもないさ。
 旅の途中で見たものを話すだけで、この夜ぐらいは過ごせるだろう」

そう言いつつ、二つの酒瓶を片手で掴み、空いた片手で差し出された手を掴んで立ち上がる。
その姿はエスコートされる淑女というより、戦友に気兼ねなく頼る騎士といった風情があった。

「思えば食にこだわることはなかったな……
 少しはマシな食べ物を食べたいとは思うがね」

こうして二人は夜になっても騒がしい港湾都市を歩き、ジードの借りた部屋へと歩いていった……

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からアリゼさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジードさんが去りました。