2018/02/10 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にイーリスさんが現れました。
■イーリス > 夜の帳が下りてまださほど時間が立っていない宵の口。
船着き場の傍は、夕刻に入港した船の積み荷の荷下ろしが続いていたし、
反対に夜に出航する船への積み荷の積み込みなど、忙しなく人々が動き回っている。
勿論、まだ宵の口、どこかしこの酒場も賑わっているし、娼館の客引きも華やかなものだ。
そんな中、船着き場の桟橋へと続く道を歩く一人の人影。
時折眉を顰め、背後を伺うように顎を引き、肩越しに背後を確認する仕草が何度か。
そろそろ「仕事」に行こうかと酒場兼食堂を出て通りを歩いてはいたが、いつからか―――…「追われている」のが解った。
いや、「追われている」というより、「追いかけられている」方が正しいような、正しくないような。
「………追いかけてこられるようなモノを持ってる心算はないんだが。
いや、そんなこと言ってる場合じゃない。どうする、船まで付いて来たら厄介だな…」
思わず苦々しく呟いて、一旦足を止めた。
通りは人通りも多い。このまま人ごみに紛れて、とも一考したが、
「追跡者」の姿を目に止めれば、苦々しい表情も霧散してしまいそうだ。
何しろ、追跡者は、小さなころころとした茶色い毛並の………子犬、なのだから。
そして、歩みを止めたばっかりに、「追跡者」たるそれは、
行きかう人々の足元を縫って、小さな身体が転がるようにこちらへ走ってくるから、
強欲な海賊稼業に骨の髄まで浸かっているとはいえ、さすがに愛でる気持ちは持ち合わせている、らしい。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にカインさんが現れました。
■カイン > 仕事で朝方から訪れていた港町。
一通りの用事が終わり、後は馴染みに挨拶だけして翌日には王都へ向かおうかという、
空いた時間の暇つぶしにと飲みある気をしていれば気が付けば人気のない場所にたどり着いてしまう。
王都ならばどこだろうと一定の土地勘がある自負がある物の、
この街ではさほど土地勘がないのが実際の所。
さてどうしたものかと歩く最中に、よく見知った相手の後姿を見つければ顎に手を当て。
「いよう、また珍しい所で珍しい事をしてる時に合うモンだな」
そのまま笑いながらに後ろから声をかけた。
普段の相手の様子からは幾らもかけ離れた様子は微笑ましくもありおかしくも感じ。
■イーリス > 足元へと駆けてきた子犬は、近くで見るとこれまたまるまるとした体躯に、くるんと丸を描く尻尾。
丸い黒い目でこちらを見上げてくるものだから………。
「………可愛い」
思わず素直な感想が零れ落ちて、軽く身を屈め、両手を伸ばし、子犬の前足の付け根に手を差し込むと、そのまま持ち上げて、腕に抱く。
よもや、そんな姿を見知った誰かに見られていようとは微塵も思っていないような、
常とは正反対の、海賊稼業のボスとは思えぬ穏やかさで子犬と対面し。
首輪らしきものはないが、毛艶もいいし、野良犬にしては愛想がいい、…ような気もする。
表情を綻ばせながらも、観察めいた眼差しで抱きかかえた子犬を見ていた時、
思わぬ声が背後から響き、さすがに驚いたように目を見開き背後を見る。
「カインっ!ち、違…―――言っておくが、この子犬、可愛いからとか思っていないからな。
ただ付いてきたから、追い払うのも少し可哀想だと思っただけで…」
風体からすれば、大の「男」が、子犬を抱いて目尻を下げている姿であろうし、
己の常を知る人からすれば、ある種好奇な場面に出くわしたであろうことは察しが付く。
だからこそ、この姿を見られた、という羞恥が先立って、可愛いワンコを愛でる姿、を誤魔化そうと必死に言い訳めいた意味不明な言葉を続け。
腕の子犬は、抱きかかえて貰えたことに喜んでいるのか、はち切れんばかりに尻尾を振っている―――。
■カイン > 「なんだ、別に犬が好きでも問題ないじゃないか。
可愛がってやればいいだろう?普段のイーリスからは確かに考えられんが、
俺がどうとかよりも部下が見ると楽しそうだな」
白々しく笑って言いながらも相手の反応に喉を鳴らして、
近づけば子供にするようにポンポンと頭を叩いて見せる。
ゆっくりと肩を揺らして見せながらも相手の手の内で喜ぶ犬の様子に、
軽く目を細めながらに声を上げ。
「まあ、程々にな。飼うにしたって船の上だと色々と大変だろ?」
預けられる場所のあたり位は付けとけよと軽い調子で告げ返し。
■イーリス > 「私は猫派だ。あ、…いや、犬も…捨てがたいが。
…これはちょっとした…その、出来心だ。海賊のボスが犬猫を可愛がるんじゃ、示しがつかん」
きっぱりと、海賊らしく船に乗り合わせている猫たちへの愛情を断言した…が、腕の温もりに気付き、それとなく訂正。
部下が、と言われると、何かと面子を気にするような口振りで、表情を引き締めると、いつもの怜悧な印象が浮かぶ。
…が、相変わらず子犬はそれを無邪気で純粋な姿で見上げて尻尾を振っている―――。
そして、子犬の代わりに、己が撫でられるとそれはそれ、表情を崩して、結局、苦く笑ってしまいながら、
「そうだよな、船じゃ無理か…。猫がいるからなぁ…」
心底がっかりしたように零す声色は、犬派を自認したかのような響き。
ため息を付きながらも、相手の言葉に、あぁ、と頷いた後、
「…預けられる、場所。………カイン」
復唱したあとで、何かに気付いた。
半歩、否、一歩相手に近づき、彼を見上げる。
預けていい?と言わんばかりの表情を浮かべる…が、相手に伝わるかどうか。
■カイン > 「旅暮らしの俺に預けてどうする」
相手の反応を眺めながらも、予想はしていたが案の定なことを言って来る、
相手の姿に思わず渋面になりながら軽く撫でていた頭をそのままペシっと叩いて困り顔。
猫以前の問題として航海に動物をそれほど増やすのは宜しくないのもまた事実である。
かといって男は方々、しかも危険な所に出歩くのが主な辺り犬を預かるのに到底適した人選とは言い難い。
少し考える仕草を見せた後、相手の頭から手を離して犬の顎を軽く撫で。
「でもまあ、預かってくれる伝手を探す位は構わんぜ。
番犬欲しがってる知り合いに宛はある」