2016/05/31 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にフォーク・ルースさんが現れました。
■フォーク・ルース > 「さあさあ、お立ち会いだぁ!」
荒くれ者の船乗りたちが行き来するダイラスの船着き場。
かもめが飛ぶ天気のいい昼下がり、よく通る声が響いた。
声の主はフォーク・ルース。最近、姿を見せるようになった傭兵である。
「俺の顔面に一発でも当てたら、賞金1000ゴルドだ!」
がっしりとした上半身を露にして男は叫ぶ。
その横には「一発10ゴルドなり」と書かれた木の看板が立てかけられていた。
『もちろん、俺は絶対に手を出さない。神さまと母ちゃんに誓って約束するぜ』
男の呼びかけにちょっとした群衆が出来上がる。
その内、何人かの血の気の多い連中が挑んでくるが、男は身の丈に合わない俊敏な動きで連中のパンチを躱し続けた。
「毎度ありぃ……ウヒヒ、思ったより儲かるな、こりゃ」
木製のお椀に溜まったコインを数えながら、急に影が落ちてきた。
男が見上げれば、2m以上ある男よりもさらに長身で筋骨隆々な巨漢が立っていた。
『5000ゴルドだ。これでオメぇを500発ぶん殴ってもいいんだろう?』
巨漢が酒臭い息を吐く。どうやら賞金目当てではなく、ただ人を殴りたいだけのようだ。
■フォーク・ルース > 「こりゃまた随分、でっかいな。何喰ったらこんなに膨れ上がるんだ?」
男はゴクリと生唾を飲んだ。
こいつ強いな。巨漢の身のこなしからかなりの実力者と判断する。喧嘩の達人という奴だろう。
巨漢は金の詰まった革袋を男に強引に渡す。
男はいちいち革袋の中身を確認する。たしかに5000ゴルド入っていた。
『それじゃいくぜ!』
巨漢が大きく拳を振り上げて、渾身のストレートを撃ってきた。
……が、それよりも速く男のケンカキックが巨漢を宙に蹴り飛ばしたのである。
まさか反撃されるとは思わなかったらしく、積まれていた樽の上に落ちて巨漢は伸びてしまった。
「ごめんな。あんた強そうだったから……。でも『手』は使ってないだろ?」
稼いだ金を大切に腰の財布袋に入れながら、男は巨漢に言う。
「ま、聞こえてないか」
これで数日分の生活費はできた。あとは少し船着き場を散策することにする。
潮風を胸いっぱいに吸い込んで、輸入されたばかりの珍しい動物を見学したり、食べたことのない異国の果物を食べたりするのである。
■フォーク・ルース > 「世界は広いよなぁ~。俺、それなりに各地で戦ってきたのによ」
極彩色の鳥の羽で作った飾り物を頭に嵌めて、男は驚きの声をあげる。
手に握られているひょうたん型の果実は強い芳香を放っている。
かぶりつけば歯が溶けるのではないかと思うほどに甘い汁がほとばしった。
「驚くほどいっぱい船が出入りしているな……っつうことは、人の出入りも激しくなるってことだな」
手についた果物の汁を舐めながら、男はひとりごちる。
人が増えれば揉め事も多くなる。揉め事が多くなれば、傭兵の出番は増える。
もし傭兵の仕事が少なくとも、冒険者としての仕事は多くなる。
「これからが楽しみだぜ」
頬を撫でる潮風に目を細め、しばし人の行き来を眺めるのである。
■フォーク・ルース > 「さて、行くか」
そろそろ水平線に日が沈む。
日が沈めば、酒場や娼館の灯りがともる。
どちらも男が大好きなものだ。
今夜は少し懐具合が暖かいので、それなりに楽しむことができるだろう。
男は鼻歌をうたいながら、歓楽街の方へと歩いて行った。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からフォーク・ルースさんが去りました。