2015/12/27 のログ
イーリス > 日向で寝転がる野良猫は、にゃあ、とは愛想よく鳴いたが、
いざ手が伸びてくると身を起こし、触れられることを厭う様子を見せる。
大人しく手を引いて、少し苦く笑うと、屈めていた腰を上げ、ゆると腕を組んでは奴隷市へと視線を向けた。
続いていた戦闘の終結によって漸く戻ってきた日常たる光景は、いつも以上の盛況さを見せている。
その様を暫し眺めたのち、耳に届いた言葉に、こちらはゆるりと相手へと視線を映しては、同意を示すように頷き、

「奇異、か。まぁ、言いえて妙ではあるな」

買われていく奴隷たちの末路は知れぬが、想像することは容易であり、その行為が平然と行われる日常が広がっている。
相手の言葉にもう一度同意を示すように、軽く息を付いて頷いたものの、その彼の眸が己を捕えたのち。

「………私のことか、それは」

どうやら相手の呟く言葉が己に対してということは容易に理解に至り。
は、と息を吐くように軽く笑うと、これについてもまた同意を示すように頷く仕草をひとつ。

「奇異で奇妙ではあるだろうが…人を観察するのは楽しいだろ?」

自分のような人間もいるのだから、というやや皮肉めいた言葉を重ねたが、
軽い口調と笑みを浮かべた表情から相手の反応を愉しんでいる風でもあり。

ルーフェン > 「同族で殺し合い、さらには同族を商品として商う…呆れ果てた種族じゃ…俺には理解が及ばぬよ」

大袈裟に嘆息し、肩を竦めてみせる
だが、と小さく零ぼしてさらに言葉を続ける

「何をしでかすか、理解が及ばぬゆえに見ていて飽きはせんな…」

言い切ればにぃ、と笑みを浮かべて鋭い犬歯を見せる
奴隷市から興味の対象が男装の彼女へと移れば、ひょい、と樽の上から飛びおり、彼女に数歩、歩み寄る

「…それよ。人が人を商うのは糧を得る為、と思えば理解はできる、弱肉強食、というヤツじゃろう。
しかし、主が、雌でありながら雄のような格好をするのはどういう理由があるのだ?とくと聞かせてみよ」

愉しいだろう、と問う彼女にうむうむ、と頷きながらズカズカと疑問に思った事を彼女に問いかける

イーリス > その物言いに、特に肯定も否定もせず、変わらず腕を組み、遠巻きに奴隷市の喧騒を聞きながら、
笑みを浮かべたまま、興味深げに相手を眺めている。

「まぁ、のんびり人を観察するのもいいさ。奇異でない部分もある……はずだ」

断言するだけの材料がないのは残念なところ。少なくともこの街では奇異なことだらけだろう。
笑みを見せた相手の口元に、つい視線が移ってしまうが、樽から立ち上がったことで視線は再び戻る。
と、今度はこちらが少しばかり目を丸くする番。
掛けられた言葉は、遠慮なくストレートに問いかけてくるものだから、すぐに、ふっと表情を和らげると、

「君は…面白いな。そういう言い方をされたのは初めてだ」

直接的故に、男だと取り繕う気も、女であることを隠す気も失せたみたいに、ふふっと肩を揺らして軽く笑い。

「私は船乗りでな。船乗りは女ではなれないんだ。海の女神の怒りに触れる。だから、こうして…」

そこまで言うと、軽く両手を広げて男装している様を相手に示しては、

「こういう格好をしている、というわけだ。…人に対する興味の一端を担えたかな」

やや冗談めかした口調と、それに合わせて軽く首を傾けて相手を伺う仕草にて、終始楽しげな表情を浮かべたまま答える。

ルーフェン > 「他に聞き方を知らん。気に障ったのであれば、詫びるが…そういう風でもなかろ?」

彼女に浮かぶ表情は少なくとも怒りを感じさせるものではなかった
そうであったから語り始める彼女の言葉に耳を傾けてはふむふむ、と頻りに相槌を打ち興味深気な風であった

「…神か、存外つまらぬ事を気にするのだな。天上にあると言われながら誰ぞ姿を見たこともない者に対して
恐怖する割に…同族を殺し、売り飛ばすような禁忌は平然と犯す…いや、これは種族の規範の違いだな…」

前から思っていたがやはり、変わった種族であるなと、マジマジと男装の彼女を見ながら思う
マジマジと視線を向けるほどに端々に見える彼女の女たる部分は男装よりも人種の雌らしく着飾ったほうが
見栄えは良いように思えてならない

「まあな…だが、何、気にすることはない
どの種族にも少なからず変わり者というのはいる…我が一族にも金銀財宝よりも人種や動物の身体の部位を
蒐集する変わり者はおったわ…貯めこんでもすぐダメになると嘆いておったがな」

かっかっかっ、と笑って見せればバシバシと彼女の背中を叩かんと腕を伸ばした

イーリス > 特に不快に思うわけでもなく、むしろ、そのストレートな言い方が小気味良く思えるから、
あぁ、と短くはあるが、相手の言葉を肯定して頷き落とす。
それに、目の前で相槌打っている相手の様たるや、妙に微笑ましいから、ついつい笑みも深まるというもの。

「確かに誰も神の姿を見たことがない。だからだよ、見えないモノを人は畏怖する。
それに怯えているクセに、君の言う通り、殺し合いもするし、あぁもなる…。
種族の規範、というが…君は。………」

あぁもなる、と口にした際、少しずつ品が減ってきたのか、喧騒も落ち着きつつある奴隷市へ一瞥を向け。
再び相手へと視線を戻すと、少し言いよどむように言葉が途切れる。
不躾にならぬように、と配慮してはいるようだが、つい相手の体躯を眺めてしまうのは、隠せぬ興味からくるもの。
彼が人かどうか、の答えが出ぬうちに、掛けられら言葉に意識がその言葉に向くと、

「身体の部位とは…そこまでの変わり者とは、出来れば一線を画したいとこだが。
…っと。…そうだ、私は、イーリスという。君の名を聞くのは構わないか?」

背を叩くその手と、朗らかな様に、変わり者ではあろうが、少々高レベルな蒐集癖の変わり者とは、出来れば別括りにされたいところ。
苦く笑いながらも、己の現状をフォローしてくれているらしいから、そこはありがたく相槌打って応えることにし。
やや遠慮を含みながら相手へと問う口調とともに、やはり彼が何者なのかという興味が尽きぬ眼差しが覗く。

ルーフェン > 「眼に見えぬモノに怯えても仕方なかろうに…妙な所で豪気な癖に妙な所で臆病なのだなあ…」

言葉が途切れ始めれば遠慮無く肩に触れたり、視線を向けた無礼を咎めることなく親切に話をしてくれた彼女の隣へ
しゃがみ込み日差しを浴びつつ寝転がる、野良猫の腹などをわしわしと撫でつつ、主はどう思う?等と語りかける

「変わり者であることはかわりあるまいて…だが、安心せよ。身体の部位を集めておった者と主が違う事くらいは
疎い俺にでもわかる故なー…主にはその格好をするだけの理由があるのだろ?ヤツの場合は習性みたいなだしなー」

―――ちなみに俺も宝には眼がなかった、無論、身体の一部などではなく、な。
と続ければ猫に向けていた視線が彼女に向けられ

「ルーフェンと名乗っとる。察しの通り人種ではない
嵐の竜の一族、竜種じゃ…暫く寝とったから世情に疎い故、無礼不躾は許すが良い」

すく、と立ち上がれば彼女に笑みを向け

「主の髪は美しい髪じゃな。お日様を浴びてキラキラしておるわ…故に男の衣服を纏うのは勿体無くも思うが、
こればっかりはそなたの生き方故どうにもならぬな」

艶のある彼女の髪を見てそんな感想零しつつ、へらり、と緩く笑ってみせた

イーリス > 人に対する感想は言いえて妙であり、同時に散々な風でもあり、その感想を聞くとなんだか苦笑いがこみあげてくる。
だが、その苦笑いも、野良猫と戯れている様を見ると、また微笑ましげに目を細めて、奴隷市とは違う日常の、
この街であれば非日常ではあろうが、穏やかな光景を眺めながら、

「しかし、習性で蒐集とは、なかなか…」

思わず唸るように頷いては、世の中いろいろいるもんだ、としみじみしながら、目の前の彼は至ってノーマルな思考らしく、
安堵の表情がこっそりのぞくのは言うまでもない。
とはいえ、相手の口からでた種族には、さすがに驚きを隠せず、目を瞬かせるなり、不躾ながらその体躯を眺め、
今は片鱗は見えないが、否、あの口許の犬歯を思えば頷けて。

「竜、か。これは…驚いたな。あぁ、…そうか、…なるほど」

驚きを隠さず、相手を見る様から、初めて竜の種を見たことは明白なほど素直な反応。
初見ゆえの驚きもあるし、髪を褒めるその言葉も、その笑みも、驚きに十分に値するから、
咄嗟に言葉が出ず、まじまじと相手を見てしまう始末。

「あ、あぁ…その、なんだ。…ありがとう」

褒められ慣れてない故に、くすぐったさもあって、歯切れ悪く応えた。
が、すぐに相手の笑みに負けたのか、ふっと表情を綻ばせ、女であることを厭う様はなく、むしろ嬉しそうな色がにじむ。

ルーフェン > 「うむ…中々な。悪癖良癖の判断はつかぬが…
我らの種族は多かれ少なかれそうするように出来ておるらしい…欲の強いのも弱いのもおるが
財貨を…と言っても変わり者も中にはいるが蒐集する癖があるのだ」

そして、それらを蒐集するだけ蒐集して忘れ去ってしまうのも自身の一族の他の竜族にはない特徴であったが
この際それはまぬけなようにも思えるので黙っておくこととした

「…どうにも、ここいらの人種は素直に過ぎるな…
俺が竜種だ、と言っても疑うものがおらん。気の触れた人間とは思わぬか?まあ、元来、人は素直なものなのかも知れんが…」

彼女の素直な反応に驚くことはなかったが疑いもせぬ様子に何とも言えぬ表情であった
自分の産まれた土地では竜と人は争っていたから、まあ素直に受け入れられた後に存分に殺しあっていたから
随分と平和なものであったが…

「ふむ…海の女神とやらが嫉妬するのも嘘では無さそうだな。俺は女神が醜女なのか、美女なのか知らぬが、
イーリスの今の顔を見たら雌であれば嫉妬もしよう…故に残念と言わざるをえないのだが…」

うむうむ、と彼女が表情を綻ばせば立ち上がり満足そうな顔でこくこくと頷いてみせた

イーリス > 「へぇ。…なかなか興味深いな。竜の習性か、やはり昔から、竜は宝を護るというから、そうなんだな」

興味深く話に耳を傾けていたが、昔よく本で見た竜の様を思い出すように目を細めてみた。
彼の言葉から察するに、竜の習性とやらは絵本のそれに嘘はないようで。

「素直?………君、竜ではないのか?
空を飛んで、あと、口から火を噴くとか、宝を護ってるとか。そういう竜、なんだろう?」

相手の言葉に、少しばかり意外そうに目を瞬かせ、立ち上がった相手を見る。
竜だというから、竜なのだろう、という程度で疑いもしなかったが、逆にそう言われると、真偽を確かめるようにまじまじと見つめ。
ついでに、少々竜についての幼少期に読んだ絵本より得た知識だろう偏ったそれを口にして相手を見つめる。
その真偽が判明する前に、相手の思わぬ言葉に、軽く咽てしまい、

「………ルーフェン、君は世情に疎いというより、十分人を悦ばす術を知っていると思うんだが…。
………と、とにかく、その、なんだ、………その」

己がどんな顔をしていたのかは解らないが、恥ずかしいやら嬉しいやら。
否、そういう言われ方に免疫がない故に碌に返事もできず、それを誤魔化すみたいに、不意に手を伸ばし。
彼が人か竜か見定めようと、相手の体躯の強靭さを確かめるべく腕辺りに触れようと。

ルーフェン > 「まあ、概ねその理解であっとると思う。
俺もなんだ、他の竜の一族は知らぬからハッキリはせぬがな」

他の竜の一族を知らないのは眠っていたせいもあるが、故郷では竜の一族といえば自分の一族だけであったし
他の竜とは出会ったことがないから何とも言えぬ所ではあったがそう大きく変わるものでもないだろうと頷き

「いや、竜じゃ。だがしかし、イーリスよ、よく考えてもみよ?俺の姿は人らと何ら変わりなかろう?
それなのに主は俺が竜であることを疑わぬ…それが不思議と言ったのじゃ」

因みに空は飛べるが火は吹けぬ、期待に添えず、すまぬことじゃが、と付け足して笑いつつ
マジマジと向けられた視線に、すん、と鼻を鳴らしキリッと表情を引き締めては、戯れに良い格好に
見せよう等としてみたりと茶目っ気を見せたりする…竜族の威厳とは一体…

「イーリス、主は見た目ほどには男ではないのだな
俺は男の格好をしているから、てっきり女神とやらを欺く以外でも男でありたいのかと思ったが…存外、可愛い」

恥ずかしそうなそれでいてどこか嬉しそうな
そんな彼女の様子に、まだまだ娘であるな…と齢200歳以上のドラゴンは年長者の余裕の視線を向ける
不意に伸びた手も嫌がることなく好きなようにさせ、彼女の指先に人間と変わらぬ程々に筋肉のついた肉体の感触を感じさせ

「街中に元の姿で現れるわけにもいくまい?
そんな事すればここいらの人間、一切、灰燼じゃ…俺は前科もある故なー…
問われれば隠し立てせぬが、そこは穏便にってとこじゃ…俺の真たる姿をみたいなら人気のない広いところでなければ」

腕に触れる彼女を眺めながら笑い声を零す
あっ、と思い出した様に零せば、無論、タダというわけにはいかぬ、と冗談っぽく付け足して

イーリス > 大きく頷き、己が抱く竜のイメージと知識が、さほど遠くないことを知って、なるほどなるほど、と頷くばかり。
竜だという相手の言葉に、不思議そうに、少しばかり首を傾けた仕草にて、
その容姿を眺めてみると、人と違いなく、確かに彼の言葉にも合点がいく。

「あぁ、そうか。…そうだな、確かにそういわれると、君を疑っていなかったな。
君がもし、神だ、といえば、あぁ、そうか、と頷いたと思う。驚きはするだろうが。
………それは君の人徳…あぁ、竜徳?
とにかく…君と話していると、嘘を言う様には見えなかったから、疑わなかった、と思う」

不思議だという言葉は理解できたし、確かに不思議だとも認識したが、
何ら疑わなかった理由を口にすると、それが一番しっくりくる理由であり、確信したようににこやかに微笑んで。
が、その笑みが、火は噴けない、と言った言葉に、ちょっとがっかりして曇ってしまったのは素直なところ。
そのがっかりは、相手のきりっと表情引き締めた辺りで、すぐにふっと息を吐いて笑うから、すぐに消えるが。

「か、かわ…」

聞き間違いかと、可愛いという言葉が上手く出ずに噛んでしまった。
それくらいに自分には聞き覚えもない言葉を言う相手に、なんだか調子が狂ってしまうが、
それはそれ、嬉しくないというのは嘘になる。勿論、否定するように首を振るのは忘れないが。

慣れない言葉にあたふたしながらも、掌に返ってくる感触は人と大差ない。
うにうに、と二の腕あたりを軽く指先で確かめながら、

「ここらが灰儘に帰すのも御免蒙りたいが…空を飛ぶのは見たかったな」

竜といえば、なイメージがいまだ抜けず、腕を遠慮なく触りながら、無邪気な呟きがぼそっと落ちて。
が、その希望を叶えるには、広い場所、というのだから、思わず相手をまじまじと見ながら、

「私の船はどうだ。海はいいぞ、広いしな。…ん、対価であれば、財宝ならいくらでも用意しよう」

タダじゃないとなれば、勿論対価は支払う心算。
それで竜の姿が見れるなら、と二つ返事で頷くあたり、彼の本来の姿に興味は尽きぬ様子。
漸く腕を触っていた手を引き、楽しみが増えた、などとすっかり竜の姿を見る気のようで。

ルーフェン > 彼女の言葉を聞けば聞くほどに全く今時素直な娘だ、と逆に感心してしまう
自分に人徳…否、彼女の言う所の竜徳が備わっているかは甚だ怪しい所であったが一先ず頷き、年長者から一言だけ

「…主よ、イーリスよ…騙されたりせぬよう気をつけよ?」

というアドバイスを送っておいた
自身が火を吹けぬ、と聞いた彼女の表情に少し慌てて、全ての竜が火を吹くというわけでもあるまい…
と零して苦笑しながら、火は吹けぬが雨雲も雷雲も、雪雲すらも呼べるから許すが良い、と胸を張ってみせた

「照れるか、触れるかどちらかにせよ…
主の落ち着かぬ顔を見るのはたいそう、面白いがくすぐったくてかなわぬ…」

二の腕をうにうに、とされればぞく、と肩を揺らす
遠慮ない指先にあうあう、と擽ったそうに身動ぎしながら再び向けられた視線に首を傾げる

「沖合ならば問題なかろうが…船は1人では動かせまい?
姿を見せるのは構わぬが、他の船員が驚いたりせぬか?
…狂乱して大砲など撃たれてはかえって主に迷惑となるまいか?」

うにうに、と彼女の指先がくすぐったく、次第にへろり、と脱力していきながらこたえる
へたり込む前に指先が離れればキリッと復活を遂げ財宝なら、と聞けばふむ…と悪い表情を浮かべ…

「ならば、イーリスよ、主を貰い受けよう!美しく着飾った主をな!…ぐっへっへ、悪い話ではあるまいて…」

冗談半分だけれども
三流役者の如く悪い表情を作ればそんな事を吹き、彼女の顎先に指先を伸ばし、くい、と軽く持ち上げようとして

イーリス > 竜族からのありがたい助言を受けても、ん?という顔をしてしまうのは、自分は騙されない、と思っているからのようで。
とはいえ、助言は助言で受け入れる心算で、あぁ、と頷くから、そういう意味では素直であろう。

「そうか、火を噴く竜と噴かないのといるのか。…幼いころから竜は空を飛んで火を噴くとばかり」

思っていた、と子ども心にインパクトのあった竜のイメージ、現実は少々違うことを知ってもなお、ちょっと残念そう。
その代わりに、雨雲呼べる、という新たな能力を聞けば、すごいな、と無邪気に感心し。

「…じゃあ、触れる方にする。私の顔は見なくていいから」

褒め言葉は素直に嬉しいが、恥ずかしい。その上、面白がられるのは恥ずかしいし、居心地悪い。
なので、一旦は手を離したものの、触る方を選択し、肩から腕辺りの筋肉を確かめる、という口実で触る手は継続。

「あぁ、そうか…確かに船は私一人では無理だな。その点は大丈夫だ、私が言い含めておけば、君に危害は加えん。
まったく問題なし、だな」

鶴の一声があることを暗に含ませると、大船に乗ったつもりで、とばかりに大きく頷く。
すっかり大海原のもと、空を飛ぶ竜の、絵本から飛び出たようなイメージが脳裏に出来上がってしまっているらしい。
その竜が今は人の姿で、うりうりされて脱力気味だから、楽しさも倍増。
更に手をわきわきさせていたものの、続く言葉に手が止まってしまう。

「………竜とは、さすが物好きだな。いや、君が物好きな上、悪趣味か」

冗談だということは解った上での冗談めいた、笑いを含んだ言葉にて。
顎先を上げられ、相手を見上げる眼差しをすっと細めては、仰せのままに?となぜだか語尾が上がる疑問符付きの言葉を返す。

ルーフェン > 「人だって魔術を使うものと使わぬものがおるじゃろ…イメージとしてはあんな感じじゃないかの?
竜も色々じゃ…まあ、見てきたわけではない故、断言は出来ぬが…」

俺も詳しくはない、と何だか彼女のイメージを損ねてしまったようなので幾らか申し訳無さそうな表情であった
それでも、感心してもらえれば即座に自慢気に鼻を鳴らすのだけれど

「…人と大差はなかろうに…」

見なくて良い、と言われても恥ずかしそうにする表情は見ていて何となく心の中が暖かになるし、
可愛げがあるものだから視線をは中々背けられず…自分も彼女に触れられてヘタっているのだから
お互い様だ、と勝手に自分の中で決めつけ視線を向けたままでいた

「…ならば良いがな…」

どうやら彼女は、一船員というわけではなくそれなりに指揮統制を行う者らしい
そんなふうに思いながらこくこく、と頷きながらうりうりとされているのであった
竜の姿へと変じれば鈍痛というか皮膚は鱗に覆われているから触れられれば妙な感覚でくすぐったくて堪らない
そんな手も、自分の冗談に止まればようやく、落ち着き

「…物好き、というのは人らの尺度から見てじゃろ?
竜には竜の価値観があるのじゃ…であれば、俺を悪趣味じゃ、と断じられるのは竜でなければならぬ…
と、思うがどうじゃ?」

するり、と顎に添えた指先で持って彼女の頬を軽く撫で、ふにり、と緩く摘めばそっと手を離す
柔らかな日の光を艶のある彼女の髪を受けて煌めけば、うむ…とやはり美しいな、と1人満足気であった

「まあよいわ!褒美はイーリスの気の済むようにせよ
無理強いすればイーリスも気分が悪かろうて」

たっ、と彼女から一歩退けばニィ、と歯を見せて笑ってみせ

「俺は腹が減った故、失礼する
真たる我が姿、見たくなったのであれば…そうじゃな、そこな猫にでも伝えておくが良い!何れは我が耳にも届こう
…ではな、イーリス。次にあうまで精々、海の女神とやらの怒りを買わぬようにすることだ…髪の手入れも怠るな」

すん、と鼻を鳴らせば市場の方から漂う何かしかの匂いを嗅ぎつけたらしくすんすんと鼻を鳴らしながら
ふわふわと手を振りつつ彼女に背を向けて歩いて行くのであった

イーリス > 「なるほど。人も竜もそれぞれ、か。あぁ、ルーフェン、すまない、気を遣わせてしまったな。
竜について話が聞けたから嬉しかったよ、ありがとう」

相手の表情を見れば、こちらが申し訳なさそうに眉を下げて苦く笑い、首を振る。
そもそも火が噴けずとも、雨雲呼べるだけでもさすが竜というべきところ。
自慢げな様にふふっと笑みを零して微笑ましげに眺めて。

「いや、…いい。とにかくこうして、君を触って、君を困らせる方が私はいいんだ」

意固地になって触りまくっているが、そうすることで、気恥ずかしさを誤魔化そうという算段。
一頻りナデナデ、わきわきしたところで手を離すと、ちょっと満足げ。
先ほどまでテレていた様は落ち着いたようで、表情にその様子はない。

「君と話していると、自分がどれだけ狭い価値観で見てるか、が解るな。
はは、参った。君の言う通り」

降参、とばかりに軽く首を竦め、苦く笑うとふるっと首を振る。
彼の言うことに理解を示してから、離れていく手を眺めたのち、耳に届いた一人言ちた言葉にふっと表情を和ませ。

「あぁ、何か君の気に入るものを用意しよう。空を飛ぶ姿、楽しみにしている」

距離を取った相手に、軽く手を上げ、返事とし。
言われるまま、視線を下に落とすと、暢気に野良猫は日向ぼっこ、ごろん、と寝返りを打ってこちらを見上げてくる。
ふふっと笑みを零し、視線を相手に向けると、

「あぁ、そうするよ。忠告、ありがとう。髪は…まぁ、善処する」

その背に向かって声をかけ、見送る心算。
その姿が見えなくなると手をおろし、ついでにしゃがみこんで野良猫に手を伸ばす。
今度は大人しく触らせてくれるらしく、にゃぁ、と鳴いただけで嫌がらなかった。

「猫と竜、通ずるもんがあるのか…知らなかった」

竜の新たな知識を習得してちょっとご満悦。
しばし猫と戯れたのち、落ち着きを取り戻した船着き場の人混みへと消えていき。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からルーフェンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からイーリスさんが去りました。