2015/10/30 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にクロウさんが現れました。
■クロウ > おい船長はどうした、と。乗組員の一人が声を漏らす。
どうせまた気付いたら舵輪を握ってるさ、と。他の乗組員が答える。
数多くの船が並ぶ船着き場の隅、『獣王の誘い号』は出港準備の真っ最中であった。
しかし、肝心の船長は船上にはおらず。
船長たるその男は、早朝の慌ただしい港町を音もなく歩いていた。
「―――出港するに良い朝だ。」
暁の色に染まっている東の空を見やり、少し目を細めるようにして笑いながらそんな言葉を漏らす。
男は視線を巡らせる。
旅客船に乗り込む者達や、コンテナを船に積み込む者達。
客船、漁船、商船、軍船。
様々なもので、朝の港はごった返している。
そんな様を見つめながら、ゆっくりと己の船へと向かって行く。
■クロウ > 最近は少し、軍艦が多いように思える。
人間と魔族の戦争の影響かも知れない。とは言え、魔族の国は山側である。
海軍に関しては、むしろ他の人間の国に対する国防の意味が大きいのだろう。
対魔族戦という事なら、むしろ商船からやたらと荷卸しされている兵器類や奴隷の方が本命というところか。
そんな事を考えながらも、男の興味の本質はそこにはない。
どこで捕らえてきたものやら、何人かの魔族の奴隷が商船やら軍艦に載せられる事が、最近多いように思える。
「前は、ミレー族ばかりであったがね。」
眼を細めながら、今目前を通り過ぎて行った美しい魔族の少女を目で追う。
体中に魔力封印の拘束や印を穿たれ、首輪を嵌められたその姿はどう見ても奴隷のものだ。同じような出で立ちの者と列を成している。まとめて奴隷として売り飛ばされるのか。乗り込む先は軍船であるのが興味深い。
眼を細める。
「―――おっと。」
うっかりしてしまった。
自身の肉体から、漏れ出てはいけないものが漏れ出る。
突如として、今通り過ぎて行った魔族奴隷の一団の何名かが錯乱して暴れ出す。
当然、強固な拘束が破れる事はないが、港はにわかに騒然とする。
■クロウ > 「いけないいけない。」
薄く笑いながら肩を竦める。
騒ぎの鎮静化は早かった。魔族奴隷を連れていたのは、やはり軍人たちであったようで、すぐさま暴力によってそれらは押さえつけられる。
男はその顛末にはさほど興味がないようで、そのまま変わらないペースで歩き続ける。
人の多い港にあっても、男の周りは不思議と人の流れが避けているかのようで。
そうやって己の船へと近づけば近づく程、人や物の密度は薄くなっていく。
加えて言えば、だんだんと堅気ではない、或いはまっとうではない類の荷や人、そして船の割合が増えていく。
当然と言えば当然で、『獣王の誘い号』は海賊船である。停泊している一角は、つまり「そういう」一角なのだ。
非正規の奴隷であったり、薬物であったり、ご同業の私掠船であったり。
「やぁ、おはよう。」
声をかけて来る他の船の乗組員に、男は薄く笑んだまま会釈を返す。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」に触手のロータスさんが現れました。
■触手のロータス > (魔王アスタルテ直属の魔王軍四天王、その一角たる触手のロータス。
彼は今、海岸にある建物の屋根から海を眺めていた。
その正体がタコなだけに、ロータスもまた海は好きだ。
さて、クラーケンと言えば何を思い浮かべるだろうか。
巨大なイカでありその触手で船を沈める。
大方、そんなところだろうか)
「さてと……人間への牽制も兼ねて、奴隷となった魔族でも助けてやるか……」
(誰にも聞こえない声で、一人呟く)
(突然、巨大な触手が何本も商船と軍艦……それぞれ一隻ずつ計二隻に捲きつく。
その商船には対魔族用の兵器も詰まれていた。
そして二隻の船には、多くの魔族の奴隷が乗っている。
一瞬だった……。
一瞬にして、軍艦と商船は触手により海に飲み込まれていったのだ)
(現在、海中にいるのは、触手のロータスの配下たるクラーケン。
その全長は50mにも達している。
二隻の船にある様々なものが海に沈められていくが、奴隷の魔族達はロータスの配下たる半漁人型の魔物の軍団により深海で次々に救出されていく。
兵器なども念の為と言った感じで、深海で半漁人に回収されていった。
海の戦いで、これら海魔は最大限の力を発揮するのだ)
■クロウ > 「―――うん?」
気配。
視線を巡らせるのと、事件は同じタイミングで。
おやおや、とは口腔の中だけで響いた声。
沈んで行く船。
こんな漁港部にまであんなデカブツが遊覧に来るという事もあるまいし、何者かの差し金であろう。沈んだのが、先ほど兵器を積み降ろししていた商船と、奴隷を積み降ろししていた軍艦であった事を考えれば、その何者かが大まかにどういった素性のものなのかまぁ、想像に難くない。
「元気がいいものだ。」
しかして男は足を止めるでもなく、気づけばその身は船上へ。
騒然とする港。今頃、阿鼻叫喚といった風情であろう。
それは、男の塒たる船でも同じ事であった。
乗組員たちが騒がしい。少なくない人数が、マストに上り、或いは船縁へ行ってその様を見ている。
が。
「錨を上げろ。出港だ。」
果たして、乗組員たちの言葉通り、船長はいつのまにか舵輪を握っていた。
その声が静かに戦場に響いた時、乗組員たちはそれまでの騒ぎが嘘のように整然と、そして俊敏に持ち場に戻る。
錨が上がり、帆が開き。
船が奔り始める。
混乱の港を後目に、『獣王の誘い号』は行く。
響くのは、陽気な船乗りたちの歌声。
―――その進路を阻めるものは、ない。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からクロウさんが去りました。
■触手のロータス > (クラーケンにより、さらに船は沈められていく。
奴隷の魔族は次々に、船が沈んだ先の海中で助けられていく。
そして、対魔族の兵器がどんどん無力化されていった。
混乱に乗じて一隻の海賊船が出向したようだ。
中々に、利口な奴等だな……。
軍艦の大砲など、海中のクラーケンに当てるのは難しいものだ)
「これは魔族と人間の戦争だからな……。
こちらも容赦する必要がないというわけだ」
(この日沈んだ船は、100隻を超える。
甚大な被害をこの港に及ぼした。
戦争と関係ない漁船や客船の被害は比較的少なく、商船や軍艦を中心に狙われた。
つまりこれが単なる魔物の襲撃というよりかは、戦争であると、勘の良い者なら気付くだろう)
「ふん……。このぐらいでよかろう。
大方、捕えられた魔族を救出できたわけだし、ほとんどの兵器を無力化できたからな」
(クラーケンや半漁人の軍勢は、海へと引き返していく。
この日、船着き場は粉々となった。
魔物の軍勢が、圧勝してしまったという事である。
今回救出した同胞達は、とりあえず魔王軍領で保護する事にしよう。
ロータスは、その場を後にする)
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」から触手のロータスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にフォンさんが現れました。
■フォン > (東方からの交易船から降りてきた男。
長い黒髪を潮風に揺らしながら周囲を見渡していき、ニヤニヤとした笑みを顔に浮かべ)
「ここがマグメールか…、ここでどのような商売が…そして出会いがあるかな?」
(色々な物がたくさん詰まっていそうな背負い袋を軽々と背中に担ぎながら、渡し板の上を渡り、
波止場へと上陸するとまずは他の乗客が大勢向かっている方向へ
男もそのままついて行くか)