2023/03/25 のログ
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にエファさんが現れました。
■エファ > (…あまり寒くなくてよかった)
沖から吹いて来る風は湿気を含んで、緩やかに浜辺を渡って行く。
波は穏やかに打ち寄せては引いて、月光の元砂浜の上をちょこちょこと歩く甲殻類の影。
そんな穏やかな光景に、防風林を抜けて小さな人影が現れる。
周囲を見回すと、他に人影が無いのに安堵の吐息を零して、波打ち際のほうへと下って行く。
片方の肩には大きなカバン。中にはスケッチブックとノートと筆記用具と画板が入っている。
王都からここまで、小さな『認識阻害のおまじない』が掛ったアミュレットの力を頼みに、独りで来ると決心するのは度胸が要った。護衛を雇うよりも高かったけれども、出発してからは逸る気持ちを抑えるのが大変だった。
(――――たぶん、あと少しで)
普段王城の天文台から見ていて、予測どおりの星が予測通りの位置に見えるはず。
灰色ローブの人影はポケットから懐中時計を取り出して時間を確認すると、もう一度辺りを見回して
腰掛けるのに丁度良さそうな流木を見付けると、そちらへと移動していく。
波音は単調なようで時折変調がある。初めて聞く音は、不思議と耳朶に心地よかった。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にコルボさんが現れました。
■エファ > 空に掛かる月は半分に欠けている。
星を観測するのにはすこし明るすぎるけれど、これ以上暗かったら王都から来るのは難しかったろう。
アミュレットの力はあるものの、人の気を引かないのに越したことは無い、となるべくカンテラは点けないで来た(そのため何度か転んだ)―――が。
「――…あ …」
流木に腰掛け、いそいそと画板とスケッチブックを取り出してから気が付いた。
書き込もうと屈めばどうしても手元が暗い。
どうしようか、と首を傾げる。
スケッチブックには既に端に目盛りを入れてある。手探りで描けないこともない、気がする。
■コルボ > 一人のつもりだった。
軽薄な男。女癖の悪い男。爛れた関係を好む男。
世間でそう評価される男は、夜の海辺に訪れて、
水晶球と盤、メモ帳を取り出し、カンテラに灯りを灯すと静かに空を見上げる。
「……まだ、だな」
依頼の一つをこなした折に、誰もいない時期を見計らい、
一見すればちんぴら風の男はその浜辺で何かを探すでもなく、
真剣に盤を動かし、空を見上げ、何かをメモ帳に書き記していく。
……その中で、ふと、顔を上げる。
(……誰か、いるのか?)
空虚。
周囲になにがしかの気配が存在しないか、意識を巡らせながら目的を果たしていく男の認識の中に生まれる”探知の欠落”
おそらくは認識阻害か何かか、大方付与師が右も左も分からない貴族だかに高く売りつけた代物だろう。
認識阻害だけで、周囲の気配に融け込ませる処置もしない、三流のやり口だと辟易しながらも、
使い手本人は何も知らずに使っているのだろうと思えば、
「……わりいな独り占めしてるとこ邪魔して。
別になんもしねえから趣味に没頭してていいぜ。」
なにはともあれ、先客、この場に足を踏み入れたのは己だ。
礼儀程度に”独り言”だけは呟いておこうか。
……遠目に見ていても貴女の方を見るでもなく、近づくでもなく、
ましてや、少し動いても反応を示さないだろう。
……もし、興味を抱いて近づき、背後からメモ帳を見れば、
びっしりと、ここ数か月の日付と共に星辰の記録が手帳に記されているだろう。
■エファ > 「―――…!」
声を出さないで居られたのは奇跡だった。
だがそのために口を両手で塞いだせいで、拍子に手にしていた画板もスケッチブックも何もかもが砂の上に落ちて明らかな音を立ててしまう。
思わず背中を凍り付かせて、そおっと声の聞こえてきた方を見遣る。
確かめたはずなのに、人影がそこにはあった。
手の下で押し殺した呼吸をした後、漸く、気付かれてはいるものの、何かは起こりそうにないと悟って
「―――――……」
女はそおっと口元から手を外すと、こちらが見えているのか見えていないのか解らない、それでもわざわざ声を掛けてくれた主にぺこりと礼をすると
砂の上に転がったスケッチブックと荷物とを拾い上げて、砂を払うと引き上げる準備を始める。
相手がああは言ってくれたものの、自分が落ち着かないのだ。
それに、多少場所を変えても観測は可能だろう……例えば
(…向うに見える崖のほうにでも行ってみよう)
大きなカバンを肩に掛け直すと、灰色ローブの姿は崖の用を見てそう決めて
もう一度、向うに見える人影に頭を下げると、再び防風林の方へと去って行った。
(…今度来る時は、もっと他の手を練らなきゃ)
などと考えながらだったから
防風林の方から、何かが躓く音が聞こえてきたかもしれない…
ご案内:「セレネルの海 浜辺」からエファさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」からコルボさんが去りました。