2021/11/08 のログ
■メイラ・ダンタリオ > 状況が一変した、強制乗員砲の厄介さ
それは全て屠り続けても終わらないということ
幽霊船の根源 乗員の可能性 それらの元を断とうと
つい先ほどまで狩ろうと意気込んでいた側へ向かって他所へ出ていけと言っていた組がそれなのだ
船長の長年の経験と風が知らせる
このまま共にいかなければ、結局解決するまで時間をかけるしかない
しかしそれは正解と呼べるのかわからなかった
王都の海を暴君と化して守り続けている者であったとしてもだ
だからこそ、船長自身がいくのではない
向こうに暴君がいるのだからと、陸の怪物を向かわせる
『お嬢さんっ! 船を寄せたなら一瞬こすり付けてから離れます!
頃合いを見計らって戻りますが、最悪の場合あの艦へと強引に乗り込んでください!』
船長の判断は一擦離脱というもの
そして人間砲弾染みたあれを回避するために、砲撃射程範囲から離れる
もし月の光を浴びたら襤褸がでる、生きていない生者のようなものだとしたら
海の中をナイフを咥えて泳いでくる可能性すらあるものの
飽くまでも乗船されなければまだ、やれそうだ
故に、完全にメイラを含める同輩部下数名 海の男数名以外は、船の維持と方へ備え
今擦り上げては回頭していく
フック付きロープは、帆や縁などの高い位置 近い位置から投げつけることで
向こうへと渡されたのならフリントロックや妨害でもない限り、乗り込むことが成功するだろう
しかし今回、相手の幽霊船は提督用大型船
どうしてもロープの先で上りあげるという、飛び込みができずに強引に乗り込む結果となっただろうか
「まったく、海というものはろくでもありませんわね。」
腕力で上り上げたメイラを含む身軽な者ら
腰のカトラスや片手剣を抜き出し、暴れ回るまであと数秒
■グレイス > 接舷し、まず真っ先に整然と乗り込んで行ったのは王国の誇る海兵隊員達。
その身に纏う青いプレートアーマーには海神の加護が施されており、
十全な防御が施されているにも関わらず、海に落ちても泳げるのだ。
彼らは敵船の甲板に乗り込むと、戦槌を振り回してひしめく亡者どもを叩きのめしていく。
あるいは、ショートソードを抜き放ち斬りかかる。
それか、マスケットより正確なクロスボウの射撃を放つか。
「突撃!突撃ぃ!!」
続いて、サーベルを振りかざすグレイスに続いて、突入していく海軍士官と一般水兵。
銃剣を取り付けたマスケットを、抜き放ったカトラスを振りかざし、雄叫びを上げながら次々と乗り込んで行く。
装備では負けても、勇敢さでは負けてはいない。
「まずは甲板を制圧するわ!船内には入らないこと!」
亡者を切り捨てながら、グレイスは叫ぶ。
幽霊船の船内など、どんな異空間になっているか知れた物でもない。
現に、甲板上も外見より数倍大きい異空間となっている。もはや、ちょっとしたダンジョンだ。
亡者の船員達は次々と押し寄せ、生者達を殺戮せんと襲い掛かる。
その度に剣を打ち合う音、マスケットを放つ音が響く。
■メイラ・ダンタリオ > 乗り込んだ矢崎、別の方角から威勢の好い声がする
恐れよりも征服するためのそれ 鼓舞ではなく随分と自信がこもっている
愛用している刀や大剣を持ち込まなくて正解でもあった、今回の乗船方法
船のサイズ差からくる脳筋なやり方は、一般人なら腕が悲鳴を上げている
乗り込んだ矢先から、次々と千切っては海に捨ててやると意気込んでいたというのに
メイラの半魔故での視力か 海の者らや、漁師出身の息子のような眼が好い者らが集うのだ
その圧倒的な戦力には一瞬動きを止めている
船の上で 甲冑 鎧を着こんで制圧していこうとする
それは船の上では矛盾めいて見える光景だった
恐ろしく軽い金属なのか 水に飛び込んでも浮き上がってしまうようなものなのか
どちらにしろ、戦槌を持ち込んで弾け飛ばすそれは、装備ごと飛び込んでくるには大した地力である
「……。」
既にメイラを含む全員が、波や飛沫でしっとりと濡れている中
マスケットを持ち込んでいる辺りも含め、後ろの船が後退していくのを見やると
首をゴキッと鳴らし。
「あの聞こえる船内を禁止する声は?」
砲を飛び出させている部分から乗り込んでやろうかと一瞬思ってやめていたそれ
船内制圧の痕で火薬で爆破させてやろうかとも考えていたメイラ
同輩の海育ちが言うには、外側なら安心して攻められるものの
胎の中同然かもしれない其処は、突っ込むべきではないということかも、と
子供らが語るようなお化け屋敷の洋館を彷彿とさせる物言いだった
「チッ」
2級海賊に対して、海の上上等な特殊部隊でも送り込んでいるかのような光景
生きていない海賊擬きらとの殺し合いを期待していた割には、餅は餅屋というところ
「無駄に突っ込んでもあほらしいですわね。
船長が危惧していた、元を断つ場所は表層にあるとは思えませんわ。」
メイラを含む全員、此処で出張る必要はないと考えつつ、背中や腰にそなえた荷物を気遣い
そして剣を片手にあぶれ者が来たとしても
「お呼びじゃねーですわ」
傍を転がっていた錆びた砲弾や酒瓶を時間差で二つ投げつけ、ガンッとのけぞったところで揺れた船
ボチャーンと落ちていくのを眺めると歩き出す
元出の場所でも探して終いだ
■グレイス > その時、薄気味の悪い男の笑い声が甲板に響く。
それは船の中央、メインマストの辺りから聞こえた。
同時に、甲板上にある腐りかけの縄や、錆びた鎖が浮かび上がり、
乗り込んだ生者達に襲い掛かる!
「くそ…ッ!」
亡者の数が多いところに、蛇のように迫りきて動きを奪う縄や鎖。
足が止まれば、たちまち亡者に押しつぶされる。
グレイス達が苦戦していると、ごろごろと何か重い物が動く音。
そちらを見れば…。
「伏せて!!」
ドン、と大きな音が響き、鋼鉄の弾が飛んでくる。
吹き飛ばされる海兵隊員や水兵達。それは、独りでに動き甲板に上がってきた艦載砲の砲撃だった。
鎖と同様、それらは使えると思えぬほど錆び付いているにも関わらず、
まるでそれ自体が意思を持つかのように人間達を狙って発砲する。
それは、海軍の兵士達のみならずメイラ達も襲うだろう。
そして砲撃にも負けぬ大きさで、気味の悪い笑い声が甲板上に響き渡る。
「……あ、あれか!」
魔術師の素養のあるグレイスは、指揮をしながらもそれらを操る魔力の源を探し、ついにそれを発見した。
そう、船長は船内にはいない。甲板にいるものだ。
メインマストと半ば一体化した白骨が、狂ったような笑い声を上げながら人間達を見据えている。
それはおそらく、船長の成れの果て。この船を幽霊船にした元凶。
■メイラ・ダンタリオ > 混戦 マスケット銃 一発屋ではなく装填も行う銃兵だろうそれら
複数線がマスケットとという射程 射線も計算されたそこで連携して攻撃を行っていく
一直線に尖った路を作り上げるような、突撃馬鹿とは違う連携攻撃
状況は平たい甲板の上 乗り込める扉やマストを除けば暴れ回る海兵軍
それが良く見えながら、突如として錆びた鎖 帆を縛る為だろうロープや船を結び付ける為のもの
それらが蛇や触手のように唸り、向こうへ襲い掛かると同時にこちらへもきた
「幽霊船長の醍醐味ですわね。」
敢えて鎖を、誘導するかのように腕に巻き付かせたメイラは
剛腕かくやと言わんばかりに、ビキリと腕の肉が膨れ上がる
引き寄せようと 宙釣りにしようとするかのような海賊系の見本を行おうとするそれに対し
剣鉈が切り飛ばし、鎖を強引に引きちぎる
右の剣鉈 左の錆びた鎖 そこから、状況は変わっていく
「あら、意外と使えますわねこのチンピラ武器。」
左腕の鎖を鞭のように使い、脚を絡ませて分銅代わりにした海賊グール
ブンブンブンと振り回すようにして、間合いを広げて歩を進めていく
腰のマスケット銃を取り出した一人が、こちらへと発泡を向けた際には手元を引き寄せたメイラ
銃の受け止め役を担わせ、丸い鉄粒を放つ一発 その威力では内蔵を千切ることはできても
貫通にまでは至らない
さて、と探している傍ら、向こうの激戦は続いているようだ
鎧という行動が制限されているのが仇にでもなっているのか、思ったよりもやりづらいらしい
首魁の登場には、一層な盛り上がりを見せている
メイラはグール分銅を使い、ぎゅんぎゅんと振り回すそれで、こちらに向かってきた者らを弾き飛ばし粒蹴るものの
視界が遮られて見えなかったのか、砲の衝撃がメイラを襲った
完全な死角外からの攻撃 音 衝撃 メイラを含むものらは、砲丸こそ喰らわなかったものの、吹き飛ばされる
「―――ガャアッ!」
派手にとんだメイラと一人 抱き起されながら
パラパラと朽木破片があたりを舞う 黒髪黒姿のメイラも。木っ端に塗れていた
「く、そ、だ、れ、めぇぇぇぇっ」
船長らしい登場だとビキビキに青筋を立てるメイラ
周りに下がる様にいったのは、怒号
「華は持たせましょう……わ、わたくしは、わたくしの仕事をするだけですわ。」
そう言って、巻きつけられた鎖を持ち替え
目の前のまだ動いているゾンビに対し、下あごから上を拳というそれで千切る
そう、千切る ぐしゃりと、舌から上が飛んだのだ
うじゅる ぐじゅる と腐った舌が動き、喉奥から声にならない肺の音かもわからない空気漏れ
その体に対し、メイラは手を出す。
「火薬っ!」 『うっすっ!』
そう、持ち込んでいた火薬は使えずじまいだったことをいいことに
天候も回復している此処で恐ろし気なことをしでかそうとした
「火っ!」 『へいっ!』
火打ちと火鉄 二つで油をしみ込ませた縄に点火させたそれは、先端をブスブスと燃えさせ
「着火。」
そうして、ポーチを抜き出し、グールin鎖の現状 グールに取り付け結び付けた火薬と火縄
「マスト風情がぁっ」
そしてメイラは、砲丸投げスタイルを構える
グルリと一周されるグールが、四肢をばたばたさせながら何をされるかわかっているようだ
ブンッ ブンッ ブンッ
「ふっ!」
ブンブンブンブンブンブン!!
加速する回転 そのまま、船長がふんぞり返る方へと向かって
ギャリンッと踵が牙を立てる。
「ぶっとびやがれですわああああああああああああっ!!」
互いに認識度の甘かった現在
この雄叫びが互いを認識させながら グールin鎖&点火火薬ポーチという暴挙
それが船長のほうへと放物線を描くと
後に響き渡る音に対しメイラ勢は影になる場所へと隠れ、
火薬の炸裂する 音 炎 そして衝撃
■グレイス > 「ん…?」
亡者と幽霊船の設備相手に奮闘中、目に入ったのは明らかに海軍所属じゃない生者。
こちらに負けず劣らずの奮闘を見せ、その内一人は元気に亡者をぶっ飛ばしている。
「だ、誰よあれ…まさか」
あの民間船から乗り込んだ連中だろうか?いや何で!?
グレイスの頭に疑問符が浮かぶも、そちらにも大砲の砲弾が直撃し。
「い、言わんこっちゃない!衛生兵!あちらに…」
その時聞こえたのは、幽霊船長の笑い声に負けない、怒声。
そちらに目を向ければ、それを上げたのは先ほど砲撃に吹き飛ばされていたはずの女。
あ、と。偶然同じ方向を見ていた副官が声を出す。
『見覚えあります…確か彼女、ダンタリオ家の…』
「ダンタリオぉ!?」
ダンタリオといえば、グレイスにも聞き覚えがある。
というか、知らない貴族もいないだろう、イカれた猪武者の家系だ。
しかし彼女、魔族の国とか北方帝国とかを攻めている陸の人間のはずだったが…。
「なんでダンタリオ家の令嬢が海にいるのよ!?」
そう副官に言った瞬間、聞こえてくる雄叫び。
慌てて振り向きそちらを見れば、何かを砲丸投げのように投げ飛ばす令嬢の姿。
それは鎖に繋がれたグール、に繋がれた…。
「は…?」
爆薬は轟音を立てて大爆発を引き起こす。誰もがそちらを見て、慌てて伏せる。
そして、煙が晴れ、そこには…半分吹き飛んだマストと、変わらず笑う幽霊船長!
「だ、駄目だったみたいね…」
船長はメイラに目線を向ける。そして骸骨が両手を上げれば、甲板を突き破って何かが現れる。
それは幾分巨大な鎖に繋がれた、朽ちかけた錨。それが二本。
伝説の巨大海蛇のごとく鎌首を持ち上げるそれは、船長が手をメイラに振りかざせば、恐ろしい速度で彼女に襲い掛かる!
「クソッ!彼女を援護!!」
グレイスの指示のもと、海軍の兵士達はメイラ達に合流せんと亡者を打ち払いながら向かう!
■メイラ・ダンタリオ > メイラの怒りと偶然のアイテムに恵まれた
火薬付グール 鎖ぶん回し投げは思いのほか衝撃 音 火 威力は小さくまとまる
それもそのはずだろう 黒化薬とはそういうものだ
狭い筒の中でその力が玉を真っ直ぐにぶっ飛ばす そういう力の火薬だ
故にマストにグールごと放り投げられれば 帆とその直立するメインマストの半分が抉れるという事態
本来なら絶望的なダメージ 風も纏えぬ船は漂流と変わらない 手漕ぎで行ったとしても
波がいずれ攫うのだ
しかし船長は笑う
突然の考えられもしないような攻撃 戦が海と船の上ではされないような攻撃にも嗤う
ゲラゲラと ゲラゲラと
『駄目だお嬢っ! 効いてねぇっ!』
退魔系か銀でもなきゃ多分無理だと叫ぶのは
海の迷信と逸話にかかわる故の海育ちの男のセリフ
メイラは、物理的な攻撃が効くのならばどんなものでも屠って見せる気概がある
しかし目の前のそれは、焼かれようとも糠に釘 暖簾に腕押しである
要は意味がないのだ
「幽霊、幽霊船長を粉みじんにするには……。」
ギロリ 船内へと目を向けるそれは し ず め る か とイカれさながら発想
視線に対して全員が説得しながらも、甲板を突き破って出てきたそれに 周りは一瞬海のバケモノを想像した
海蛇 龍 しかしそんなものではない 鉄の塊というアンカー 錨と太めの鎖のそれは二本
先ほどのようにこちらへと重量を無視して襲い掛かってくる素振りに、ギザ歯を剥き出しにした
もはや三日月の笑みではない 獰猛なトラバサミ同然の食いしばりを見せているメイラ
その赤い瞳とギザ歯 魔性めいた怪力が、周りに困惑を広げて聞こえるダンタリオの声
同輩部下一同が、お嬢の存在に気づいたと思う傍ら キレッキレのメイラは
向こうが援護に入ろうとしている素振りにも構わず、襲ってくる二つの錨に対し
一方をサイドステップで避けると ビシッと頬に一筋の赤い線
外側に入った直後に、鎖を掴むとガントレットの掌と、鎖が火花を立てて擦り上げられる
五指で鷲掴んだ鎖が、手の内にくるのなら これは一本だけの巨大な錨ではない
船を複数個所から垂らしてとどめる為の錨ゆえに、サイズが提督船に対して一つ一つ小さめなのだ
だからこそだろう
もう片方に対し縫いとどめるようにガッツンと甲板に突き刺した鎖
鎖と甲板が錨で噛みあい、そして鎖の根本は、あの胎の中だ
「火薬っ!」
ぶっ飛ばしてやると意気込むものの、其処にメイラ一同 グレイス一同が混ざり合う
鎖が出現した大穴甲板へと、吹き飛ばしにかかろうとするメイラに対し
周りはどう接するのか。
■グレイス > 錨の動きを止めたメイラに、船長はしばし首を傾げ。
しかしまた笑い出すと、その眼球の無い目が妖しく光り出す。
錨は己の船の甲板を破壊し、無理やりと自由になり、また鎌首をもたげ。
さらには甲板の大穴には木材や亡者の残骸が集まり修復されていく。
そして、空が暗くなり、豪雨が降り始める。
いかなる火薬も湿気させるような豪雨が。
「ダンタリオ!ダンタリオのお嬢様!!」
ようやくメイラの近くまでたどり着いたグレイスは、声を張り上げ叫ぶ。
「火薬を投げ込んでも意味無い!この船自体がヤツの身体よ!
魔力はあのマストから船全体に流れ込んでる、つまりアレがヤツの心臓であり頭!」
グレイスはマストを、そこに一体化した船長を指差す。
彼の頭蓋骨から魔力の光が漏れているのが、遠くからでも分かるだろう。
「遠くからモノを投げ込んでも今度は防がれるわ、近づいてぶった切りなさい!
ダンタリオ家ならできるでしょう!?怪力令嬢!!」
私達が援護するから!とグレイスが叫べば、部下の海兵隊員達や水兵達が呼応し、マストまでの道を塞ぐ亡者どもを薙ぎ払っていく。
そして、グレイスはサーベルを掲げ、呪文を口にし、そしてマストに向け突き出した。
その瞬間、迸る風魔法が豪雨と亡者を弾き飛ばしながら、風のカーテンに守られた道を作り出す!
「行きなさい!!」
■メイラ・ダンタリオ > 胎をこれ以上開けさせるのは良くないと
廻りの連中は騒ぎだす しかし青筋を立てている 普段の狂戦士ではない
ブチ切れたバーバリアン一号相手では周りは ヒッ と一瞬すごむものの
同輩部下らは宥めている
そんな中で、混ざり合った混合の中でグレイスが進み出る
こちらに対し、船でクエスト同然にオフの暴力を楽しもうとした矢先
本格的に乗り出していた作戦にぶつかる不遇
その海戦能力を前に思う様に暴れられなかった鬱憤を
火薬付グール砲丸投げを叩きつけようとも まだ青筋が消えることはない
木っ端が付いたまま掃うつもりすらない姿勢がすでに キレッキレ
そのメイラに対し、進み出て助言をする この雨降りしきる中の最終局面
デカパイ 美人 艦長の匂いに メイラの部下同輩の一人が
『あ、めっちゃタイぶへぁっ』
抑えていた部下の一人がメイラの裏拳で頬を撃ち抜かれ、甲板に沈む中
今だギザを剥き出しのままで 魔導に詳しいのだろう 雲を晴らせた張本人と思わせる
分析でもしていたのか メインマストを折れば解決するというそれに
偶然とはいえ火薬付投げは半分えぐった 偶然とはいえど 半死半生にはさせているのだ
あの高笑いは死者の余裕か それとも海の虚勢か
どちらにしろ 今は馬鹿力に賭けるしかないと 目の前の艦長が踏んでいるのに対し
名前程度 海の武勇と陸の武勇では互いに知れることは少ない
「……。」
ガルルルルと唸っていた口元のまま 手に持っていたカトラス替わりの持ち込んだ剣鉈を放り棄てる
もはやこれは用無し役立たずだとメイラが認めているのだろう
しかし大穴を塞ぐ蟻のようなことをする連中といい、他にあれをなぎ倒す武器もない
メイラは全員千切って投げて捨てるつもりで来ている
マストを折る武器を手元にもっていなかった
ギロッ グレイスの部下その4が携える戦槌を見ると、後ずさり一歩とる相手に
こっちにこいというかのようなハンドサイン
ようやく、持っているそれが目当てと知るや、戦槌としては大振り
先端の膨らみが金づちサイズではなく、武器として使用していることをありありと伝えるような
頭部三つ分の膨らみはズシリとメイラの手の中で頼もしく感じる
もっとも、それは地上やこの地に足つく場所での話
「でかぱいっ!」
でかぱいっ!? と周りが後ろを振り向く中で
「その風でわたくしをあそこに投げなさいっ!」
いうのは、マスト中央 抉れた場所
あそこを狙わなければいけないものの、投擲は恐らく駄目だと言われるのに
メイラは風を提案した グレイス艦長はそれを承諾
空いた通路に飛び出た直後、跳躍と共に投げられた寒色
それと共に、高笑いの幽霊船長は腐りロープを巻き付ける
マストの穂を結ぶためのそれ しかし、巻き付け尚足場にたどり着いたメイラは
ニィィィィッ と三日月を浮かべていた
幽霊船長が腰のサーベルを抜き、脇に突き立てるものの、それを意に返さない
深々と貫けていないのは、生地の材質か 筋肉か
大きく振るう戦槌に、船長は声の無い叫びをあげる中
抉れた箇所に対する、戦槌のフルスイング 一撃では足りない
斬撃ではなく打撃のせいか もう一度
それに対し、今度はサーベルが顔面に来たのを、メイラは避けない
ガ キ ィ ッ
ギリッ ミシッ と そのギザ歯で噛みしめたサーベル
ケダモノ そう思わせる半魔の貌は雨に濡れ 怒りに塗れ そして
「ガ、ァアアアアアアアアアッ!!」
もう一撃がマストを叩き折ると、ロープと共に落下を始めるメイラが最後の姿。
■グレイス > 近くで見たダンタリオ家の令嬢は、蛮族めいた戦いぶりの割には美少女の部類で。
しかし、真っ先に目に付くのは攻撃的に剥き出しのギザ歯。
海の人間であるグレイスにはそれは鮫を思わせた。
「……男には興味無いのよ」
裏拳に沈むメイラの部下の姿に冷たい目線を向けながら、吐き捨てるように小声で。
その間にメイラの視線が海兵隊員のほうに向く。百戦錬磨の彼もその怒りに気圧され、一歩下がるが、
『…………』
彼女の要求が明らかになれば隣の海兵隊員と顔を見合わせ、そして一歩踏み出す。
彼は無言のまま騎士めいて膝を着き、己の得物をメイラに捧げる。
それは彼らの鎧同様、海神の加護を得ており、確かな威力を発揮するだろう。
それを受け取ったメイラの、次のとんでもない言葉。
「次それ言ったら先に沈めてやるわ…いいわよ、飛んでいきなさい」
そして、彼女の風魔法がメイラをマスト目掛け飛ばす。
その勢いで幽霊船長のもとにたどり着いたメイラは…彼をついに葬り去った。
船長の断末魔の叫びが響く!
「やった…って、ヤバいわね」
グレイスは気づく。魔力の供給が途絶え、亡者達は次々と崩れ落ち、
船は元の姿を取り戻していく…元の200年前の沈没船の姿を!
「とっとと脱出するわよ!アンタら船は?退避してる!?ああもう!!」
形を維持していた魔力を失い、崩れ沈みゆく船から生者達は慌てて退避する。
横付けされていたグレイスのフリゲート、<デファイアント>へ。
「っと!アンタも!!」
グレイスの風魔法がメイラ目掛け放たれ、それは少々強引に彼女を吹き飛ばし、
海軍艦の甲板に誘った。
全員を軍艦に移乗させ、最後にグレイスが己の船に戻る。
そして<デファイアント>が離脱していくのを見ながら、かつての幽霊船は泡を立てながら海中に没していった。
■メイラ・ダンタリオ > マストを叩き折る
偶然とはいえ、機会と武器 方法が揃ったことで達成されたそれは、メイラ一同の殲滅では無理だっただろう
例え竜骨を真っ二つに折り鎮めようと、マストが残れば恐らくは再び出現する可能性だってあった
そんな中、戦槌を手放しロープが今だ絡まるまま折れたマストと共に甲板に倒れ伏すメイラ
強かに身体を打ち付けようとも、其処は怪力令嬢の本分か
立ち上がり、両腕に力を込めるとマストロープ如きと言わんばかりに、ブチリと千切れる
崩れ 亡者は拡散していく 襤褸船の浮力は理由がなくなったことで浸水し、沈んでいく
朽ちた部分から折れていく最中で、一歩踏み出すとディファイアント号が見えた
既に他の者らは退避し、裏拳成敗した同輩部下も背負われいる
折れる音 沈みだす船 視界は高さを変え始める中で
トドメを刺したことで理性が戻ったかのような赤い瞳が、グレイスを捕らえる
風が再び、雨降りしきる中メイラを捉えるとディファイアント号へと浚う中
それは穏やかなものではない 強引な狂風に対し、猫のように身をひるがえすと着地する瞬間は四足
ガリンッギャリンッと 手首上から身に着けるガントレットの鋭い指先が甲板を擦り上げ
持ち上げた爪先だけのそれが踏ん張りを利かせる
「――――っ!!」
獣のような着地と踏ん張り それで起き上がると、バサリと前髪を後ろに撫でつけ
雨でぬれたせいか あまり見ることも無いだろう カチューシャを利用して前髪を後ろに撫でつけた
オールバックの表情のメイラ
周りが沈みゆくことで、渦をつくり 其処から退避した
その様子に大急ぎでこちらへと向かってくる船の範囲は既に豪雨はない
互いに並行している現在の中で 負傷者はいたとしても沈み 死ぬ者はおらず
獣のような戦闘と熟知した猛者らのそれは、思わぬ経緯を持ちながら完了したと言える
メイラの唇の端からは一筋の血 噛みしめたサーベルの影響か
拭いながらも、頬の傷跡や脇腹を一度突き込まれたことなど
今回のそれは普段の暴れよりも、撃をもらった姿だった
周りが安心と勝利での余韻の中で、グレイス・アル・フォート メイラ・ダンタリオ
海と陸との暴君同士が向かい合うという場面へとなり。
■グレイス > 嵐が嘘のように、晴れ渡る空。
幽霊船団は皆海の底に消え、微かに浮かぶ泡と木片が残るのみ。
こちらと並走する大型船と、後ろをついてくる僚艦<トライアンフ>にも、既に亡者の姿は無い。
戻ったグレイスが戦闘終了を宣言すれば、水兵達はほっとした表情で、武器を戻して持ち場に向かっていく。
あるいは、休息に入るだろうか。
「はぁ…疲れた。コーヒーでも飲みたいわ」
『淹れてきますね、艦長』
お願い、と副長を送り出せば、グレイスの視線はメイラの方へ。
はぁ、と一つ、ため息をつき。
「アンタの部下から聞いたわよ、幽霊船狩りに来たそうね。
はぁ…そういうのは海軍にも一言ぐらい言いなさいよ」
呆れたような表情で、メイラの方を見る。
「そうしたらあんな船じゃないちゃんとした軍艦と水兵を貸してあげるし、
こっちだってアンタの船に逃げろなんて言わないわよ。いい?」
まぁそれはそれとして、とグレイスは視線を戻す。
その顔には微笑みが浮かんでいた。
「幽霊船団の討伐、協力に感謝するわ。
上にはちゃんとお嬢様のことも報告しておくから、報酬でも期待しとくのね」
そして手を差し伸べ、握手をすれば、
それからはにこやかにお互いの船に戻り、別れて航海を続けるだろうか。
ご案内:「セレネルの海」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」からグレイスさんが去りました。