2020/04/20 のログ
グライド > (波打ち際を、先に、先に
向かう場所へと、海側へ突き出た場所へ、洞窟が存在する
時折、魔物や海魔の類が住み着いたりして、討伐依頼が出る事も在る
そんな場所に、ふと、焚き火の明かりが見えるだろう

女の眼がどれ程の物かは判らない、が
遠くを見渡せるのならば、今は其の付近に、誰も居らず
ただ、風に負けず炎が煌々と、其の僅かな周囲を照らして居るのが見て取れる筈

――焚き火の傍には、常人なら持ち上げる事も難しいほど大きな
そして一般的とは言い難い形状の盾が、ひとつ
主の帰りを待って居るかのように、鎮座して居り)。

ナラン > 時折、白い砂の絨毯に自分が残した足跡を振り返りつつ歩く。
王都からもその他の人里からも離れたこの場所は、取り敢えず現状自分が独り占め状態だ。

眺める波間に、時折銀色の鱗を煌めかせて魚が跳ねる。
釣りなどしたことがないけれど、何時か、試してみるのも面白いかもしれない。

そんなことを考える独りの足取りは跳ねるようになって、小さく歌さえ口ずさみながら歩く女の、前方。
海へと突き出す黒い影を背景に、灯りが見えてくる。

「……ヒト、か……?」

訝し気にその灯りを見て鳶色の瞳を細めて、足取りが、徐々に緩くなっていく。
―――止まりはしない。
この場所で、ヒトが何をしているのか…興味は、ある。

「―――……」

ゆっくりと近づき、辿り着くが、辺りを見回しても誰もいない。
焚火の傍には今ただ一つ、大きな、恐らくは盾と思しきものがひとつ。

「……主は、食われでもしたのか?」

編んだ髪を緩く風に揺らされながら、盾に問うように屈みこむ。
これを扱うくらいの者だ。見回して、見当たらないのなら……相当遠くにでも行っているのかもしれない。

グライド > (洞窟の入り口、中には踏み入らぬ程度だが
雨や潮風の直撃は防げる様な辺りに、其れは在った
十分に薪はくべられているが、燃え始めでは無いと知れるだろう
語り掛けても、巨大な盾は沈黙した儘

けれどその周囲には、誰かが座ったり、歩いたりした痕跡が残り
そして、其の足跡は辿れば、ゆっくりと海へ続いて居ると判る筈
波打ち際で途絶えた其の足跡。 痕跡の主が、意図的にか事故的にかは兎も角
海へ入った事は間違いなく。

――程無くして、ざばぁっ…と、水飛沫が上がる
水面から勢い良く姿を現した、巨大な体躯が、大きく呼吸を繋ぎ
そうして、其の手に携えた、細い銛を掲げながらに、陸へと戻って来る
果たして、其の時に、来訪者たる女は何処に居たかで
驚かせたか否かの度合いは、変わるだろうが。)

「―――――――……おう?」

(一言、きっと、女の姿を見て、そんな声が。
携えた銛の先端で、数匹の魚が、ぴちぴちと尾を揺らして居た)。

ナラン > 当然のことながら、盾は返事をしない。
問いかけた言葉は洞窟の奥の方へ吸い込まれて、吹き込む海風のごうごうという音に混ざってかき消えていく。
その、洞窟の暗闇を暫く鳶色の瞳で見透かすように見つめてから、改めて焚火の周りへと視線を戻す。

ヒトの痕跡は、ある。
それは……今は穏やかな波音が聞こえるほうへと続いているようだ…

(―――…)

戻ってくる前に立ち去るか……安否を一目、確かめてからにするか。
逡巡の合間に耳にしたのが派手な水飛沫の音。
思わず振り向いた女のすこし吊り上がった瞳が、軽く見開かれて雫を垂らしながら陸へと上がってくる男を捉える。

「――――……」

銛を手にした男の驚き、一種問うような声に、女が引き結んだ唇から言葉は零れない。
只、軽く頭を下げてから。

「…失礼。灯りが見えたものだから。
 ―――あなたは、漁師?」

海については知識がないから、そもそも『漁師』がどんな格好かは知らないが
その手にした銛の先に魚がいるのなら……そうなのではないかと。
瞳に少しだけの警戒の光と好奇心の光とを同居させながら、逞しい体躯の男へと問いかけた。

グライド > (海から上がったばかりで、髪からは雫が滴り落ちる
相対した女の姿を前にして、此方も此方で、僅か警戒の色を滲ませた後
――頭を下げる姿を見て、漸く、其の口元に、弧を描いた。)

「―――――いんや、昔は農夫だったがな。
今は一端の傭兵だ、コイツは…今晩の飯さ。」

(銛の先端で跳ねている魚は、女に一寸した磯臭さを。
水場から上がり、焚き火の傍へと歩めば、平らな石の上へと魚を引き抜いて乗せ
これまた、鋭い石のナイフで、其の身に切り傷を作って血を抜き始める
次第に動かなくなってゆく魚をしり目に、てきぱきと慣れた様子で仕込みを始めれば

――ふと、途中、女の姿を見上げてから。)

「―――――……折角だ、喰って行くかい、嬢ちゃん?
何も無いトコだがよ、幸い、砂は乾いてる。」

(或いは、腰かけられそうな岩は、幾らでも在る、と
告げながら、全ての魚を血抜きし――細い木串に通して行こう)。

ナラン > 相手の口元が弧を描くと、女の引き結んでいた口元も綻ぶ。

「農夫に、傭兵…
 ……器用、ですね」

磯から上がってきた男の動作を、視線で追いかけて見守る。
魚自体、余り馴染みがない。
ぴちぴちと跳ねていたそれを男が石の上に据えて、手際よく片付けていく様子に心底関心したような声が漏れる。
―――流れる血の甘美な香りが、磯の匂いに混じって届くのに少し顔を顰めつつ
思わず男の手際を屈みこんで見ていた女は、見上げる男に瞬きを返して見せる。

「――…嬢ちゃん、と呼ばれるような歳ではありません。
 ……良いん、ですか?
 一人で食べるつもりだったのでは……」

興味は、ある。有り余るほど。
魚を食べた事が無いわけでは勿論ないが、殆どが川魚で、海のものは、口にしたことがない。
それに……一見して年上と伺える相手に、素直に甘えていいものかどうかと。
迷って迷って視線を彷徨わせてから

「ええと……では
 あなたが、食べ残しそうだというのなら」

木串に通される魚をちらりと見て男に視線を戻して
男より少し離れた焚火の反対側の砂の上に、腰を下ろした。

グライド > 「あっはっは、器用とは程遠いんだがなぁ
だが、ま、生きてくにゃこう言う事も覚えにゃならねぇ
実際の料理人なんぞに比べりゃあ、素人作業だがな。」

(使って居るものも、料理用の刃物では無い、在り合わせだ
ただ、その場を凌ぐ為の知恵と術であり、高尚さとは無縁のモノ
其れでも、血を抜くには十分だし、抜かないよりは美味く食える
女には少々、見目宜しく無い光景かも知れなかったが、気には留めず

串に通した魚は、一本ずつ焚き火の周囲へ立てかけて行く
串が倒れない様に、小石で支えながら、計四匹を。)

「うん? ……クク、嗚呼、そいつは悪かった。
焼けるまで、ちょいと待ちな。 流石に生魚で食うにゃ、暗すぎるからな。」

(仕事中、食料に有り付けない時には、そうやって栄養を確保する事も在るが
何せ寄生虫も居るから、暗い所では取り除きづらい
一番は焼き魚だと、のんびり声を響かせながら
盾の上へと掛けてあった手ぬぐいを引っ張り、己が上半身と、髪を拭いては。)

「俺様は、グライドだ。
御前さんは、何モンだい? こんな所、この辺の連中なら、んな時間には出歩かねぇ。」

ナラン > 笑いながら素人作業、と言う男に、そうなのですか、と生真面目に頷きを返す。
女が普段暮らすのは、草原が、森の中。
野の獣の処理ならば慣れているが、それとは程遠いように思える生き物を調理できるということ自体、尊敬の念を抱くようで
男が魚を処理して、火の周囲へと立てかけていく様子を、膝を抱えるようにしながらじっと見ている。

待っていろ、との声にも只頷きを返して、爆ぜる火に炙られる魚を瞳に炎の揺らめきを映しながら眺めている、と

「――…私、は ナランと言います。
 ……少し離れた森で暮らしていて…ちょっと、夜の散歩に。
 …こちらには、最近来たばかりで、海は、珍しくて。」

一瞬、考えるように下を向いた後
雫を拭っている男に顔を上げて、そう、静かに返して笑って見せる。少し目立つ八重歯が、ちらりと覗くかもしれない。
嘘はついていない。…言わない事はあるけれども。

「グライドさんは、こちらには、どうして?」

女は焚火の揺らめく灯りに白い顔を照らされながら、小首を傾げて男へと質問を返した。

グライド > (ぱちぱちと、魚が焼けて行く音に重ねて
香ばしい匂いが広がって行く。
置いて在った布袋の中から、取り出した粉末を、ぱらりと焚き火の上より魚へ振り撒けば
さらに広がる香りから、其れが香草の類だと知れるだろう。)

「岩塩に香草を混ぜたもんだ、ま、何も無いよりはマシになるぜ。
……ナラン、か。 ……散歩な、この辺りはちょいちょい野盗も魔物も出る
まぁ、其の程度何処にだって出ると言えばそうだが…一応、頭に入れて置きな。」

(来るなとは言わない。 そんな物を言い始めたら、家から出られなくなってしまう。
けれど、頭の片隅に残って居るのと、不用心では違うだろう。
視線向ければ、笑いかける女の顔が見えて、、己もまた、ふ、と笑い。)

「なぁに、此処最近、荒っぽい依頼にゃ縁が無くてな。
いざって時に勘が鈍らねぇように、野営する心算ってだけだ。
後はまぁ、俺様の趣味だな。」

(――海、に限る事無く、自然の中で過ごす事。
街中を拠点にしていると、時折無性に、そんな環境に身を置きたくなる事が在るのだ、と
魚が焼けて行くのをのんびりと眺めながら、答えよう)。

ご案内:「セレネルの海 砂浜」にナランさんが現れました。
ナラン > ぱらと振りまかれるそれに目を瞬いて、問う視線を男に向ける前に言葉が返ってくる。
香草の、磯の香りに負けずに漂ってくる匂いをまた生真面目に吸い込んで吟味して、ふむ、と小さく頷いて見たりしている。

「――…一応、腕に覚えはあります。
 時折、冒険者ギルドの仕事を受けたりもしますから。
 …野宿が趣味、なんですか?――街の人なのに?」

後半、瞳を丸くして男へと尋ねる。
女が知る『街の人』は、野営はあまり好まないし避けるものだと思っていたから。

「―――…それこそ、野盗も魔物も、出るんじゃないですか」

本当は、そういう己さえも魔物の一種なのだが。
女がくすり、と笑みを零すのを、果たして男はどう捉えるか…
そうして肩を揺らし膝を抱えて、時折炎に近場の小枝をくべる。

「まあ、傭兵のあなたが暇を持て余しているのは、良いことだとは思いますけど」

言葉を付け足して、悪戯っぽく肩をすくめて男を見上げる。

「あなたなら、別の何かに転職も難しくはなさそうですし」

グライド > 「ほう? なら、御互い此れから、街でも見かけるかも知れんな。
なぁに、今は街住まいなんざやってるが、ガキの頃は農夫だ
其れに、一度遠征にでも付いて行きゃあ、ベッドも無いトコで野晒し生活よ
安全ってのは良いもんだが、こっちもこっちで、身に染み付いちまってるのさ。」

(安全、の面で言えば、野営何て避ける物だろう。
だが、傭兵であり冒険者でも在り、依頼を受けて事を成すのが己なら
野営如き嫌って居ては、何も出来やしない。
戦場に居れば、夜襲なぞざらだろう。 暗殺の類も在るやも知れない。
街に居ては、そんな物に慣れる事も出来ないのだから。)

「それに、だ。 ……腕に覚えは在るんだろう?」

(そうして――ふと、口元に弧を描きながら、女を見る
要するに――女も、戦力に為るのだろう、と。
何かが在れば、是非頑張ってくれなぞと戯言交じりに言えば
一番最初に焼き始めた魚を一本、手に取って、少しばかり串の熱が下がるのを待ってから
火の通りを伺った後で、女へと差し出そう。)

「転職なんざ考えてもねぇな…ま、生き延びてりゃあ
何時かは傭兵も引退するのかも知れねぇが、よ。
今だって、一見平和でも、そう長く続きやしねぇ
争いの火種は其処彼処に燻ぶってんだ、何時火が付くか、それだけでよう。」

ナラン > 「――そうですね。
 …厄介なものが身に沁みついてしまってますね」

確かに、危険と隣り合わせの職業に慢心は命とりだろう、が
其れがなければ落ち着かない、というのもまた、病の一種だろう、と女は笑う。
腕に覚え、と言われればこちらも笑みを浮かべて返して
頑張ってくれ、等と言われれば生真面目に頷いて見せるのだ。

「いえ、私は後で……」

差し出された魚の串。
それを男とを交互に見て、先にどうぞ、と手振りで示す。

「―――…あまり、大勢の人を巻き込んだ争いは苦手です。
 皆それぞれが、手に余らない程度の実りを手にできたら、十分だと思うのですが……個人的には」

何が原因で争いは起こるかわからない。
食料か、土地か、金か……
誰もが手にできるもので十分と納得するのなら、その大多数が解決できる気がするけれども。

「――グライドさん、何だかんだ、傭兵稼業はお好きなんですね……?」

薄く笑って、炎に照らされた女の顔が男をみつめる、

―――そうやって、夜は更けていって
女は果たして、ご相伴にあずかれたのか、否か……

ご案内:「セレネルの海 砂浜」からナランさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 砂浜」からグライドさんが去りました。