2020/02/26 のログ
ルヴィエラ > 「まぁ、確かにその様だ。 だが、何、そう言う事も在るのではないかな。
ルエット、成程、矢張り私の知人とは違う様だ。 だが…ふむ、そうだね。
君が今使っている、其の魔術。 ――私の知人も、良く使っていた。
髪が乱れるのが、余り好きでは無かった様でね。」

(彼女が抑え込んで居る周囲の風の流れを、助ける様に、同じ術式が重なっている
実際には手助けをする必要なぞ皆無だろう、それほどに彼女の力は強く、かつ安定して居るが
――さて、では、其の術式は、元来から彼女が得ていた知識だろうか?
それほどの魔術の行使が可能ならば、最早学び舎の生徒、と言う枠はとうに超えて仕舞って居る
そんな力を、果たして彼女は――何から得たのか。)

「なに、大した物ではないよ、とある『宿』を営んでは居るがね。
所で…、……嗚呼、そうだね、これは私の良くない癖だ。
遠回しな物言いは、時に失礼に値するからね、では単刀直入に言おう。」

(かさり、砂浜を踏みしめる音。
一歩、彼女の傍へと歩み寄りながら、立ち上がった彼女の顔を覗き込む程に近付く
紅の瞳が、彼女の茶色の瞳を捉えた瞬間――彼女の中に根付いた淫魔の知識が教える筈だ
これは、人間では無い。 ―――『同族』だ、と。)

「――――何故、君が彼女の術を使っている?」

(囁きは問いの形、けれど、同時に彼女の背筋へ、遡る様な悦を憶えさせる。
誘惑に留まらない其れは、『魅了』に近しい力で在ると、感じ取れはしても
果たして、彼女の、淫魔の知識で対処出来るだろうか。

するり、舞い上がる片掌が、不意に彼女の咽頭へと伸ばされ
叶うならば、其の顎先を、するりと撫ぜようと、して)。

ルエット > 「う……。ルヴィエラさん、魔術にお詳しいのですね……。それなのに、宿の経営者だなんて」

こっそり使った魔術を、こうもたやすく看破されて。
いや、魔術世界には自分の想像だにできない上手使いが多数いる事も十分すぎるほどありえる話なのだけれど。
それよりも、未だ後ろ暗さを拭えない『力の源』から行使した術を看破されたことのほうがより驚愕である。
自分が1ヶ月前に犯した過ちは、図書室の司書以外には一切打ち明けていない秘密である。
もちろん、このわずか数分の接触で一切合切バレたなんてことはありえない話だけれど。それでも言い様のない気まずさを覚えてしまい…。

「――――――なに、を………――ッ!!!」

さらに、それを『彼女の術』などと呼ばれ、身を寄せて迫られれば。
その威圧感だけでも、男性との接触経験が薄いルエットにとっては素で恐怖を感じるもの。
それに加えて、恐怖を打ち消すような『心地よさ』が首筋の手のひらから伝えられると、途端に脳内で警鐘が鳴り始めた。
――知っている。知らないのに、知っている。
この者は『人間』ではない何者かである。この接触は、自らの心に直接触れようとする試みである。
――脳内に植え付けられた知識は、それを歓迎するように悦びの波を放つが、それが却って強い違和感と危機感になる。

「……し、知りませんッ! なんですか、彼女って!!」

少女のありったけの力で、上体すべてをよじり、男の手を振り払う。長い髪が扇のように拡がり、付いた砂が飛沫のように散る。
ルエットは脚をもつれさせながらも懸命にルヴィエラから距離を取りつつ、恐怖と猜疑心に満ちた目で男を見据える。

「……ご、ごめんなさい。叫んじゃって。でもその……わたしも単刀直入に言うと……貴方、怖いですっ。
 いきなり傍に居た男の人が、唐突に昔の友人がどうこうって……そ、そんなこと言われても、わたし、どう反応したらいいか……」

ずれた眼鏡を震える指で正しつつ、ふぅ、ふぅ、と乱れる呼吸を整えようと肩をゆする。

「……わたし、今、すごく……気持ちが不安定で……。だから、ごめんなさい。
 ルヴィエラさんにとってその話が、似てるとか術がどうこうってのが大事なことでしたら……あとで、話させてください。
 ではっ……」

そこまで一息で捨てるように言い放つと、身を翻し、砂を蹴りながら王都の方へと駆け出してしまう。

ご案内:「セレネルの海」からルエットさんが去りました。
ルヴィエラ > (其れは、人の心を容易く絡め取る蠱惑の音色
知らぬ者であれば、疑念すら抱かずに溺れて行く蜜の如き声
けれど、其れを知識として『知って仕舞った』事が
何よりも彼女にとっての不幸で在り、幸運なのだろう
己が指先から離れる彼女が訴える危機感と、違和感に

また、ふ、と口元だけを笑ませては。
脱兎めいて去って行く其の背中を、暫しの間見送って。)

「――――――確かに、その通りだ。 では、また何れ改めて話をさせて貰おう。
其の機会が、訪れたなら、ね。」

(彼女の姿が見えなくなったころ、呟いた言葉と共に
砂浜へと佇んでいた男の姿は、一瞬の内に影となり、掻き消えて
後に残るはきっと、波と、風の音ばかり――)。

ご案内:「セレネルの海」からルヴィエラさんが去りました。