2019/10/20 のログ
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にホアジャオさんが現れました。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にジェイさんが現れました。
ホアジャオ > 太陽が朱に燃えて空を染める秋の日暮れ。
セレネルの海との境に広がる砂地と岩場が入り組んだ浜辺も、朱にうっすら染められる頃。
王都からほど近いというのに、波が穏やかな今でも浅瀬には所々黒い岩礁が覗き、見渡す海に漁船の影ひとつない。
季節外れとて、海辺に遊ぶものの姿もなく、ざあ、と波に乗って吹く風が浜辺を渡って防風林の松葉を揺らす。

その人気のない浜辺、松林を背に海に向かって仁王立ちの女がひとり。
潮風に三つ編みを揺らされながら、何やら白い包みを両手で前に抱えて、その包み越しに足元をじいと細い目で睨みつけている。
その先には蟹がいるでも、他の動くものがあるでもなく

「哎呀(ありゃぁ)……思ったより柔いなァ……」

ぐにぐにと、靴の中で爪先を動かして砂地の感触を確かめる。
乾いた砂地に触れている足はずくずくと沈み込むよう。それでいて、もう片方の足はむき出しになった岩がすぐに当たって、堅固な感触を返して来る。
抱えた包みの隙間から時折、ゆらり、湯気が漂って、潮風に吹き散らされていく。
未だ人影は自分以外に無い。
女ははあーとひとつ溜息をついて、紅い口を尖らせて左右の浜辺を見渡す。
お腹辺りに抱え込んだ包みの中で、蒸篭がほこほこと暖かい。
何となくその事に口元を緩ませて、さて、どこか腰掛けて待つところはあるだろうか…?

ジェイ > 座るところを探す必要はないだろう。
包みを置く場所を探す必要は、あるかも知れないが――。

「――有無を言わせずに、賞品持参とは準備の良いことだ。」

風に乗って、言葉が届いただろう。
視線を向ければ、防風林を超えて歩いてくる姿。
先日見た時と同じように、黒い外套と帽子に身を包んだ服装にて。
距離は、きっと彼女が思っているよりもずっと近い。
ゆらりと、零れる湯気がその色を失う前に届きそうな程に近く。
その距離で――

「こんばんは。」

そんな日常的な挨拶を邂逅の証として告げるだろう。

ホアジャオ > 「!?ッ」

何となく穏やかな海に毒されていたのか。
声が耳へ届くと同時にびよん、と飛び上がって、ざん、と着地と同時に振り返る。
のんびりと待つ気持ちが、至近の声にきゅっと引き締まる。
細い目が目いっぱい開かれてから、ぶすっと不満げに眉を寄せた視線を男へと注いだ。

「晚上好(こんばんは)…… 驚かさないでよ、もォ。
 こいつはだって、終わったらどっちが食べたっていいでしょ?」

後半の言葉を紡ぐ頃にはもうご機嫌な笑み。
抱えた包みを目の高さに上げて見せてから、その湯気の香りを嗅がせるようにゆらーと動かしてから、下ろす。
敏感ならば、その白い空気に海老の香りやらニラの香りやらを感じるかもしれない…

「で、どォする?
 武器アリ?なし?」

今にも撥ねでもしそうに、うきうきと弾む声を黒ずくめの男へと。

ジェイ > 軽く風で飛ばされないように帽子に片手を添える。
挨拶を交わす頃合いには、互いの距離は会話に差し支えのない距離。
言い換えれば、いつでも“はじめられる”間合いにまで近づいているだろう。
注がれる視線に応える金色の瞳は――少し笑んでいるのにも似て。

「流石に、遠くから大声をあげて呼ぶ趣味は無い。
 なるほど。いや、成る程――確かに、賞品にするだけのことはありそうだ。」

漂う香りに、軽く頷いてみせる。
表情豊かな彼女とは裏腹の情感の薄い声音。
けれども、決して否定的な色合いはないだろう。
そして――次いだ問いかけには。

「何でも有りで構わないだろう?
 でなければ、喧嘩とは呼ばない。違うか?」

弾む声に、静かな色合いの言葉が応える。
そういう男は、武装をしている様子はない。
手は剥き出し、外套の下にも何かを持っている様子はない。
それでも、こういうのだ「何でも有りで構わない」と。

ホアジャオ > 「―――ふゥん?」

何でもあり、等と言う男へまた眉根を寄せた視線を投げる。
じいーと上から下、下から上へまた登らせた黒の視線を、金色にぴたり、と留めて。
相変わらずの黒ずくめ。
厚着はしているけど、何か大層な獲物は持って居そうに思えない。
ふん、と鼻息をひとつ。

「わかった。そだね。何でもあり…」

言い終われば金色に貼りつけた視線を男の向こうへ唐突に逸らす。
そのまま、何気ない足取りで男の傍らを通って松林の方へ。
ひとつ、樹の下の松葉が降り積もった辺りに屈み込み、包みをそっと置くと
腰の後ろへ手をまわす。ベルト留め金をぱちん、と外す音。
じゃらり、鎖を鳴らしてヌンチャクを手に取ると、包みの傍らにどさり、と落とす。
そうしてからいかにも身軽になった、とばかり跳ねるように立ち上がってまた、男の傍らへ駆けてくる。

「よォっし!じゃァどっちかが『参った』って言うまでね!」

にまーと紅い唇を三日月にして、帽子の下を覗き込む様に笑う。
そうしてぽんぽんと跳ねるように2,3歩。
男から距離を取って。
半身を向けて、少し、腰を落として。
両手を軽く、掲げて。

「じゃァ…やろっか?」

相変わらず唇は三日月を描いたまま。
首を傾けて、細い目の視線を鋭くして、黒ずくめの姿へと。

ジェイ > 観察する視線に逆らうことはしない。
見ての通り――だろう。衣服の下に刃物がしまってあることもない。
剣を帯びている訳でも、短剣を隠し持っている訳でもない。
と――向ける眼差しの先で、移動する女。

「――使わないのか?」

一言、問いかけるような言葉と、包みとヌンチャクが落ちる音が重なる。
YESと答えようが、NOと答えようが構わない。
駆け戻って来る女を視線で追いかけていく。

「良いだろう。
 もしくは、声が出せない状態になればそこで終わりとしようか。」

『参った』さえも言えない状況に陥ることは充分ある。
彼女がそうなるかも知れないし、彼がそうなるかも知れない。
半身に構える女に正対する姿。
特に構えてはいない。力も入ってはいない。全身脱力しているのが伺えるか。

「――良いだろう。はじめようか。」

言葉――そして瞬間、踏み込んだ。
本来ならば動きに必要とされる――溜めや捻り、関節の挙動。
それらがすべて廃された動きだ。
常人の目には、僅かに倒れ込むようにだけ見えるだろう。
ほんの僅かな自重の変化――位置エネルギーを加速に変えて、それを微細な動きで制御する。
結果生まれるのは――予備動作のほとんどない一撃。
まるで凪のように静かに、けれども颶風の如き速度をもって撃ち出される打撃。女の顎を手の甲ではじくようなそれ。

ホアジャオ > はじめよう。
笑みを浮かべたまま、男の諾、の言葉にこくん、と頷こうと―――その正に、刹那。
音もなく寄った気配。
視線ではとらえ切れなかったその一撃。

「!ッ―――」

当たる、そのぎりぎりの隙間を挟んで。
迫る圧に押されるかの如く顎が、くん、と持ち上がって
そのまま後転する勢いで半身を反らせる。
くるり、背後へ身を翻す刹那には
傍まで寄っている筈であろう黒い姿へ、軽いが一瞬の鋭い蹴りをけん制の様に放ちながら。

「―――ッとっとぉ!」

離れる事が叶うならそのまま逆立ちのように手を付いて、くるくると回りながら砂地を男から距離をとろうと。

ジェイ > 一歩目。踏み込み。
拳を作らない指先が、僅かに白い顎を掠めて過ぎる。
その隙間を埋めるように上がる蹴り
――それを踏み出した足と、振る腕を軸に身体を反転させるように避ける。
つまり、動きは止まらない。

「――避けるか。流石だな。」

称賛の声音が、届くのとどちらが先だろうか。
三歩目――そして僅かだけ跳躍。身体を横に滑らせる。
回転する身体の動きをそのまま、直線のそれに変換する。
逆立ち気味に回転しようとするならば、その手を弾くように滑らせる足先。
彼女が先ほど確認したように、沈み込む砂地の上。
回転の動きを軸にすることでまるで氷の上であるように滑らかに動く身体。

ホアジャオ > 「!?哎(わぁ)!」

卂い。
手応えのない爪先はさておき
後転のそのまま砂地へと下ろされる筈だったそこへ撃が奔って、置き所が無くなった重心がそのままどすん、仰向けに砂地へ投げ出される―――筈の所を

「ふンぐっ!」

逆さの両脚を振り子のように振り、無理やり爪先に重心を持って尻もちをつくに留める。
男には背後を向けた状態。留まる訳には行かない。
次にはバネ仕掛けの様に両脚でびよん、と飛び上がって
くるり、宙で身を翻して―――

「――ンのぉっ!」

眼下に男の姿を捉え、
その横面か後頭部目掛けて蹴りを放ってやらん、と

ジェイ > 回転、そして直線の動き。
手を弾く動き、反動はそのまま、己の挙動を止めるブレーキの役割を果たす。
尻餅をつく女の動き。そこから、飛び上がったのは見事といえるだろう。
頭上近くまで跳躍する動き。
けれど、尻餅をついて、跳躍して、反転する三挙動――。

「ほう――?中々身軽なものだな。」

それに要する“時間”はそんな台詞をはさむだけの時間を此方にくれる。
さて、言葉にしないが、女に問うべきことはまだある。
果たして、空中でそれ以上勢いをつけることができるのか?
空中で身をかわすことは適うだろうか?
答えは、是か、否か――。

「――ただ、それは悪手だろう?」

その答えは、言葉と共に振るわれる挙動で知るとしよう。
今度は滑る動きは必要としない。
砂の上で身体を支える両脚と共に上体を捻る。
狙われた横面は、そのまま重ねる首の捻りで衝撃を受け流して
そして蹴り足の挙動に添わせるように滑らせる片腕。
足首を掴むことが適えば、そのまま、女の身体が鈍器であるかのように砂地にたたきつけようと。

ホアジャオ > 「これくらいが取り得だもンね――」

身軽、と掛けられる言葉に返す軽口。
その間も視線は鋭く男の挙動を追う。
放った蹴りが当たることは余り期待していない。
寧ろ、避けてくれれば此方が追撃の立場になれる―――が

「!ッと!?」

横面を狙った足から予想外に『当たり』の感触。だが、『僅か』の前置き付きだ。
となると次来るのは!

「ッぶなっ!」

足首を狙って伸ばされる男の手に僅か遅れて
半身を折るようにして両手を伸ばし、男の腕を弾くように突き飛ばす。
掴まれたその、指に握力が籠りきる前になんとか跳ね飛ばして――

「ッた…っ」

ざん、と地面に転がるのは結果的には変わらない。
只受け身を取って、そのまま砂まみれにごろごろと距離を離した後。

ざん、と起き上がり様に踏み切った砂が舞い上がる。
恐らく女に正面を向けたままであろう男の懐に、身を低くして跳び―――その腹に肘を突き入れん、と

ジェイ > 伸ばした手が弾かれる。靴先が掠めた頬に僅かに痕。
ずれかけた帽子を片手で押さえる。
それと同時だろう。女が体勢を立て直すのは。
彼女の予想通り、正面を向いて立っている――。
動いていない?違う。
相手の速度に翻弄されていた?違う。

「――かわしてばかりも芸がないだろう?」

ただ、待っていた。女の打撃をまっすぐに向か撃つために。
僅かに引いた一歩を、踏み出して――突き出すのは拳。
狙う先は腹に向かう肘だ。存分に体重を乗せた拳。
人体の拳は関節が多い故に、脆い。故に肘とぶつかれば大抵砕けるだろう。
けれど―――それで全く構わない。
己のそれはぶつかり砕けるけれど、当てた部分も必ず破壊する。
それはそういう一撃で、そういう打撃――。

ホアジャオ > 「―――その帽子、気に入ってンの?」

軽口とともに起き上がり、男に向かって踏み切った刹那。
明らかに『待っている』発言と、その姿勢。
肘を繰り出しながら、視線は男の動きを追う。

そうして、男が繰り出すのは―――拳

当たればお互い無事ではない筈のその一撃。
女は視線に捉えればふ、と紅い唇が微笑む。
それを、男の金の視線が捉えられるかどうかの間に女の腕が解かれる
突き出していた肘を僅か、下方向へずらして男の拳の下へと滑り込ませる
袖と袖が正に擦り合っていく、その瞬間にくん、と男の腕を肘の内側へと押すように手を這わせて
同時、片足がざく、と踏みとどまる。
足が柔く沈む。

「ェヤあッ!」

女の身体の勢いを乗せたもう片方が、男が放った拳の側から、その側頭部目掛けて跳ね上げられて―――

ジェイ > 「――そんなところだ。」

軽口に短く言葉を返す。
そして、交差する二人の身体。
突き出した拳を、肘が逸らす。柔らかな動き。
男の拳が上へ逸れて――。

「――ああ、そうだな。
 誰だって、そうする。肘は惜しいだろうからな。」

ぱっと、拳が開かれる。
同時に、ブレーキをかけるように滑る足先。
空いた手が、跳ね上がる女の足を、掌で受け止める。
視線さえ向けずに、衝撃を掌とそれを支える身体で受け止めれば
ふわりと、帽子が頭から落ちる。
その、刹那だろう――。

「―――参った。俺の負けだ」

あっさりと、敗北宣言が口から零れた。

ホアジャオ > ばしん!

音立てて掌の正中で蹴りが受け止められる。
ふわり、男の帽子が舞う。

(―――また掴まれる!)

総毛立つ勢いでぎょっと女の細い目が開かれた、その時。

「―――――怎么(はぁ)?」

蹴り脚をあげたまま、器用に固まって。
ぽろりと女の唇から声が漏れる。
そのまま数度、瞬きをして。

「――――冗談?」

ではない事くらい、男の動きが止まった時点で解ってはいるが。
ゆっくりと足を下ろしながらまた器用に身を屈めて。
砂地に落ちた帽子を拾い上げる。
釈然としない表情で着いた砂を払い、唇を尖らせながら、男へと差し出そう。

ジェイ > しなやかに上がる足。
それを受け止めて、響く敗北宣言。
そのまま、なめらかに女の足を離せば――。

「無論、冗談ではない。」

と、言葉を返せば砂地に落ちた帽子を手に取ろう。
「ありがとう」と一言返せば、それを再び頭に乗せて。
釈然としない様子の女の顔を金色の眼が見返して。

「中々練り上げられた技量だった。
 このままやっていても、早々に決着はつかないだろうから
 だから――そろそろ頃合いだ。料理が冷める。」

そう言って、視線で指さすのは彼女が先程、武器と共に置いた包みの方だろう。
そんな、解説にもならない理由付け。

ホアジャオ > 淡々と言葉を紡ぎ、包みを指す相手。
引き換え、女の方は顔に朱を昇らせ、軽く肩で息をしている。
『レフェリー』というものが存在していたのなら、判定負けしていたようなタイミング。

「………確かに点心はあったかいほうが美味しいケド…」

不承不承頷いて、両手を腰に当ててもう一度下から金色を覗き込む様にしてから、はあーと溜息を漏らす。
ここでごねたって、きっとテコでも相手にしてくれないだろう…
そうとなれば。
女が次に背筋を伸ばした時には、にまー、とまた紅い唇が三日月を作る。

「まァ、身体動かしてジェイもお腹へったってとこ?
 じゃァ今日は引き分けってェことにしといてよ!」

ぽんぽんと、弾む足取りでまた男の傍らを駆けていく。
包みを拾い上げて松葉を払い、抱えると、まだとどまっている温もりにうん、と頷いて男を振り返った。

「ちょいと暗くなってきてるケド…
 宿に戻って食べる?それともそこらへんで食べる?

にこにこと問いかける。
どちらにしても、ご相伴には預かろうとしているだろうことは、男には見え透いた事かも知れない……

ジェイ > 肩で息をしている女と、かすり傷で息も乱していない男。
けれど、ここにはレフェリーも、審判もいない。生死も何も賭けてもいない。
ならば、喧嘩の終わりは当事者同士が決めることなのだろう。
屹度、それは勝敗もまた然り――ならば

「ああ。引き分けで構わない。
 お前の勝ちでも構わないが?ホアジャオ。」

そう名前を呼んで言葉を返すが――屹度それこそ女が認めないだろう。
三日月を作る女の表情を見返す頃には、その姿は防風林の下
まだ温度を保っている点心を持っている頃合いだろう。

「――そうだな。せっかくだ。
 宿に戻ってから食べるとしよう。」

疲れている、とか、そういう言葉に答えは返さない。
付け加えれば、相伴にあずかろうとしていることに言及もしない。
ただ、「此方だ」とまるで促すような言葉を添えるだろう。
あとは、振り返らずに、けれども女の歩調に合わせて宿に向かって歩いて――。

ホアジャオ > 言い出す前に、宿へと共に、促す言葉が添えられたのならば
きょとんと瞬いた後、ぺろりと一瞬舌を出す。

「ありがと!
 ホント美味しいんだよ、お城で作ってもらったやつ。
 ―――4段目だけアタシが作った水餃子だケド、文句言わないでよね」

果たして、どういう手段で王城の料理人に依頼したものやら。
兎にも角にもそう言って、包みを抱えたまま跳ねるように、男の後へ続いて松林の中を王都の方へと。

「――ねえ、ジェイのあの動きって、どっかで習ったの?」

前と同じく女は姦しく話しかけつつ
2つの影は、夜が忍び寄る浜辺を後にする…

ご案内:「セレネルの海 浜辺」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」からジェイさんが去りました。