2019/07/13 のログ
ホアジャオ > 腰に手を当てて、はあっと大げさに溜息をつく。
少し視線をずらせば、黒々とした岩場が波に洗われている。
その一端、沖へと続く岩棚は引き潮の今、沖のほうで一際突き出た奇岩へとぬめる光を放つ道を作っている。

少し、首を傾げると決然とその岩棚の方へ。
砂地からぽんと飛び乗ると、すこし滑ってふたつ、みっつたたらを踏んだ。

「很危险的(危なかったァ)……」

思わず背後の浜辺を見回してから、改めて前に聳える奇岩を見据える。
凡そ、20メートルくらいだろうか?
所々、岩棚が波にのまれている部分もあるが…

「よォっし…」

にま、と紅い唇が三日月になると、弾む足取りが次の岩棚へ。

ホアジャオ > たん、とん、時折ぱしゃんと波しぶきに追われて。
器用に岩棚を辿って、奇岩の麓へと。
すとん、と薄く波に洗われる岩棚に両脚で着地して。
さて登ろう、とくろぐろと聳えるそれを足元から見上げて行って……少し仰け反る。

「哎呀……思ったより背、高いね…」

仰け反って見上げたまま、ぽかんと口を一瞬開けて呟きを漏らす。
ざざん、と波が奇岩に当たって跳ね、その波間に踊る風が女の三つ編みを嬲って行った。

ご案内:「セレネルの海 海岸」にノウンさんが現れました。
ノウン > 定期的に行われる街への行商、始めて長い故に相手取る客もほとんどが固定客だったようで今回も滞りなく済んだようだ。
夜が深くなる前に住処へ帰ろうかと思っていたが、ふと漂ってきた潮の匂いにつられて浜辺へと足が赴いた。
塩の乗った風が顔を隠す幕をはためかせ、佇む彼女のシルエットに動きを付けていく。

「…?」

気まぐれで海岸まで来たが特にこれと言ってすることもなく。
早めに帰ろうかと考えた最中に女の姿が目に入ったのはその時だった。
あれは一体何をしているのだろう、と興味が湧いて出た少女はザク、ザクと一歩一歩と砂浜に足跡を残しながら近づいていくのであった。

ホアジャオ > 呆気にとられたのは一瞬。

「よッ…!」

次の間には岩に飛び移って、覚束ない足場を蹴り微かな手がかりを掴んで、ぶらん、とぶら下がった。
その時だ、砂浜のほうから足音がしたのは。

「?」

ぶらんぶらんと揺れ下がったまま身を返せば、何やら黒ずくめの少女が此方を見ている。

「…やっほー」

にま、と笑うとなんとなく、手を振ってそう挨拶して見せる。

「何してンの、散歩?」

何をしているかは自分の方を説明するのが先ではあったかもしれないが
ともあれ手がかりを掴んでぶらぶらと身体を揺らしながら、そんな問いを少女へ投げかけた。
如何にも魔法使いじみた服装は、あまり馴染みのない女に取って好奇の的だ。

ノウン > 「…今晩は。」

ペコリと行儀正しく緩やかなお辞儀をすれば視線の先は彼女の方へ。
気づかれるのが早かった、と思うよりも先に面白い事をしているなぁと考えてしまうのは些か呑気だっただろうか。
彼女の体と連動するように流れる艶やかな三つ編みを眺めながらぼんやりとそんなことを考えていた。

「街の方まで出稼ぎに出ていた帰りでして…。塩の香がしてきたので立ち寄ってみたのですが、貴方様のは…訓練、でしょうか?」

海には馴染みのないシチュエーションに対して思い切って問いかけてみることにした。
近くに寄って彼女の姿を見れば鍛えられた肉体と見透かされそうな鋭い目つきが印象に残る。
軍人か、それに準ずる者かと思案するかと思えば屈託ない笑みにキョトンとして思わず手首だけ控えめに振って挨拶し返す。

ホアジャオ > 「ヘェーエ
アンタちっこいのにもう商売してンだ?えらいねえ」

細い目を瞬くと、ぶら下がったままけらっと笑う。
問いへの返しには、その笑ったまま片手で鼻の下を擦って

「アタシ?は…
ちょいと喧嘩相手探しそこねちまって、街をはみ出しちまったとこ。
したら、コレが登り甲斐がありそうだッたから」

コレ、でちらりと奇岩の方へ視線をやる。
(女に取っては)面白い恰好の少女と、会話を続けるには浜へ戻った方が良いだろう。
ぶらん、と一際大きく身体を揺らすと、浜へと続く岩棚へぽんと飛び降りる。

「!ッとォ……」

また滑りそうにたたらを踏み、その勢いのままぽんぽんと少女のすぐそばまで岩棚を渡り歩いてきた。
さく、と着地すると、しげしげと少女を上から下まで見て。

「……前、見えてンだよねえ?
それも、魔法かなンか?」

身を屈め首を傾げて、少女の顔を取り巻く幕を覗き込むようにしながら無遠慮な言葉を。

ノウン > 「先立つものにも何とやらと言いますので…、しがない薬屋を営んでおります。」

ゴソゴソと手にした麻袋を漁ると身分の証明の為だろうか、小さな小瓶と複数枚の木の葉のようなものを取り出す。
果たしてそれだけで彼女に伝わったかどうかはさておき、小瓶に入った薄緑の液体や雰囲気をかもしだす木の葉はいくらか説得力を生み出せただろうか。

「喧嘩…ですか?して、この岩棚は満足たる相手だったのでしょうか?」

確かに戦い慣れしてそうな雰囲気であったが予想していたよりも好戦的な女性だと印象を抱いて。
そんな彼女の相手として選ばれたこの環境だが、一連の流れを見る限りだと彼女にとっては些か物足りない物だったのではないだろうかと想像を膨らませる。
尤も、海辺においてこの不安定な足場を渡ること自体並大抵の難易度ではないはずなのだが。
鍛え抜かれた人間とはここまでの力を発揮できるものなのかと感心していると、先ほどまで不安定に身を揺らしていた彼女が此方へと近づいてきたのに気づき――。

「…嗚呼、これは失礼致しました。勿論視界は良好なのですが、何分こうしていないと眼も合わせて頂けない物でして…。」

恐らく顔を隠していることに対して不振がっているのではないか、と少々被害妄想な考えを抱いた彼女はゆっくりとその黒衣の幕を外して素顔を晒す。
白い肌と対称となる醜く爛れた焼け跡を見て、果たしてどんな反応をするだろうか、とじっと彼女の目を見つめ――

ホアジャオ > 幕を外した少女をまたしげしげと見て。

「……ふウん?」

背筋を伸ばして遠目で見て、また身を屈めて近くで見て。

「眼ェ?奇麗な色じゃないのさ?」

その蒼を覗き込めば、覗き込んだ自分が映って見える程の、鮮やかできれいな色。
何が問題なのだろう?と首を振って

「…あァ、なンか、恰好が魔女っぽいから石にでもされちまうってえやつかねえ?
黒ばッかじゃァなくて、他の色着てみたら大丈夫なンじゃァないの」

独りで勝手に納得をする。
火傷には驚いた顔や不審な顔こそしないが…
そのまますうと、何気ない動作で、少女の火傷側の頬へと手のひらを伸ばす。
許されるのなら、指先でそっとなぞってしまおう。

「…ンで、コッチ、何かあッたの?」

火傷を不気味とは思わないが
白い素肌と対比してしまえば痛々しくて、思わずの踏み込んだ――先と同じように無遠慮な、質問。

ノウン > 目の前の彼女は忌々しく顔をしかめるだろうか、それとも慰めようとするだろうか。
答えはそのどちらとも違い、ただただ普通にするだけであった。
予想してたのと大きく違う反応にぽかんと、思わず呆けた反応を見せてしまって。

「あの、目のことではなくて…。それと、あまり派手なお洋服は得意ではないので…。」

なんだか急にじっくり見られる事に少し恥じらいを感じてか、少しだけ視線を反らしてしまう。
最初に自らが試そうとしたのは何だったのか、とばかりに大胆にして大らかな彼女のペースに乗せられていく。

「ん…。」

一字一句を真面目に返答していくとそっと肌をなぞる感覚に少々こそばゆさと温みを感じて。

「珍しい話ではないのです。昔、住んでた村で戦が起こりまして…その時に焼かれてしまったものです。もう、記憶が掠れる程昔の話。」

遠い昔を思い出すかのように静かに語りだす。
忌むべき昔だが戻らない過去、今更何でもないとばかりに緩やかに笑みを浮かべるとふと顔に触れる手の甲にそっと自分の手を被せてみて。

「貴方様の手は、温かいのですね。」

不意にそんなことを呟きたくなってしまった

ホアジャオ > 「そか。苦労してンね…
むかし、ッたって。アタシよか若いンだよねえ?」

しんみりした口調も一瞬。
流石に、なんて言いながらけらっと笑う。
頬の手に、己の手を重ねる少女に目を細める。

「カワイーんだから、もっと色んな色の服も似合うと思うンだけどなァ…」

何だったら、自分のと交換して…と思って視線を落とせば、自分もまた黒色の服だった。
ちぇっ、と独り言ちて
誤魔化すように、頬を触れていた手でとんがり帽子ごと彼女の頭をわしわしと撫でてしまおう。

「薬のほか、魔法でも使えンの?なンか帽子とか、ソレっぽいケド…」

言っている端、ぼちゃんと大粒の雫が女の鼻の頭に落ちる。
思わず顔をしかめて天を見上げれば――雲がまた、黒々とした面を大地に向けつつあるのが見て取れた。
すいとまた、少女へ視線を戻すと、自分が乱した三角帽子を今度はしっかりと被せてやろうとしながら

「――また雨みたいだ。
良かッたら、雨宿りがてら一緒に王都まで戻ンない?
晩ご飯でもおごるよ」

喧嘩はしそびれたものの、興味深い少女――しかも可愛い――と出会えてご満悦だ。
口調はとても楽し気に、紅い唇を笑ませてまた三角帽子の下を覗き込んだ。

ノウン > 「ええと、今年十六を迎えたばかりで…いえ、それよりもカワイイというのならば貴方様の方が女性らしいのでは?…やっ?!」

しんみりした雰囲気も一転、太陽のような笑顔の彼女に褒められれば照れ隠しのように上目遣いで見上げるだろう。
何やら視線から少々邪な気配も感じたが、それを疑うよりも先に撫でられた頭に何となくこそばゆさを感じて。

「はい、未熟ながらまじないの類を研究しておりまして、薬はその産物に御座います。」

若干違いはあるだろうが、概ね彼女が想像している通りのことだと隠すことなく伝える。
しかし目立たない恰好だからと着ている服であったがそんなにステレオな恰好であったか、とズレた考えをしていると帽子のツバに雫が掛かり――

「雨にかかってしまうのはあまり宜しくありませんね…。
それに…この出会いも何かのご縁、ならば私で宜しければご同伴致しましょう。」

大きくかかった雲の色は濃く、徐々に増えていく雨粒に長い雨になるのかもしれないと感じた。
そんな最中かけられた誘いに暫し考え込むも、凛としたツリ目も柔らかく見える暖かな笑みに興味を抱き誘いに乗るとしよう。
和やかな会話に暖かなスープとパンが添えられるのならば、この雨もそう悪くはないかもしれないと考えながら――

ホアジャオ > 思った通り。
魔法に携わっている、と答えが返れば、やっぱねと少し得意げ。
その頭や肩にまた、大粒の雫がぼたり、ぼたり。
ともすれば砂を弾けさせて足元に落ちる。
夕食の誘いに了承の言葉が少女から帰ってくれば、そうこなくちゃ、とにいっと笑みを浮かべた。
次には少し屈んで、少女の膝裏と腰へと手を回そう。

「――じゃァ、ちょッと掴まっててよね」

するりと流れる動作で、彼女をその荷物ごと抱き上げる。
そうしてまた、間近に蒼を覗き込みながらけらっと笑うだろう。

「辛いものとか、大丈夫?
身体あったまるの、ご馳走したげるよ!」

返答を聞く気があるのかないのか。
た、と砂地を蹴ると、跳ねるような大股で海岸を、王都の方へと――

ご案内:「セレネルの海 海岸」からホアジャオさんが去りました。
ノウン > 「さて、帝都まではここから歩いても一刻程…でしょうか。それまで雨の勢いが強まらなければよいのですが…」

両手の平を空に向け、ポツポツと降り始めた雨の勢いを探る。
今は然程強くはないものの、そう遠くないうちに二人とも雨露に打たれることになるだろうと。
食事前に濡れてしまう事に関してどうしたものかと思案していると…。

「…え?」

ひょいっと宙に浮く感覚。
呆気にとられた少女は、いわゆるお姫様抱っこという事をされてる事に気づいたのはそのすぐ直後であった。
彼女の価値観的に16にもなって抱えられてる事の恥じらいと、それよりも眼前で浮かべられた満面の笑みを見れば何やら不安に近い物を感じ取り、無意識に彼女の肩周りへと腕をしがみ付かせると――

「ええええぇぇぇ………!?」

なんとも情けない声を出してしまったのは怒涛の展開に負けない彼女の速さによるものだったかもしれない。
その速さたるに1時間はかかるだろうと思われていた道のりを僅か30分程で駆けてしまうのであった。
道中「とっても早い」以上の事は考えられなかったとは後の談である…。

ご案内:「セレネルの海 海岸」からノウンさんが去りました。