2019/05/04 のログ
ご案内:「セレネルの海」にエレイさんが現れました。
■エレイ > 「──そぉい!」
そんな気合の掛け声が響いた直後、陽光を照り返して輝く青い海の上を、巨大な影が吹っ飛んでいった。
それは複数のうねる足をもち、赤い体表をした生物──要するにタコだった。
8本あるうちの一本が千切れたその巨大タコは、海岸側から大きく投げ出された後、大きな音と水柱を立てて派手に着水し、そのまま浮かんでこなかった。
──一方、その海岸側では。岩場に立ち、何かを投げた後のような動作で立ち尽くしている金髪の男が一人。
その片手には、巨大なタコ足が1本掴まれている。どうやら、巨大タコを放り捨てたのはこの男らしい。
男はタコが着水したのを見届けると、フォロースルーを解いてフー、と息を吐き出し。
「──ったく……タコが陸に上がってくるんじゃないだよ。人の釣りタイムの邪魔をしよって……。
まああ昼メシは確保できたからいいんだがよ」
ブツブツとボヤきを漏らしつつ、手に掴んだタコ足を一瞥し。
それから手慣れた様子で火を用意し、タコ足を切り分け吊り下げて焙り焼きにし始めて。
■エレイ > 焼けてゆくタコ足をじっと眺めながら、男は顎に手を当てて何やら思案している。
「……。触手なあ……」
このタコ足に絡め取られ、海中に引きずり込まれそうになったのを思い出しながらふと、呟く。
勿論、触手の快感に目覚めたなどという話ではない。男の触手プレイなど誰得である。
だが、伸ばしたり絡めたりと、道具として使う場合には中々便利なのでは? などと思い始めたのだ。
そして、そんな事を考えながら自分の羽織っている銀色のジャケットを見下ろす。
持ち主の意思に応じて形状を変えることのできる金属でできているそれを、男はこれまで
傘やテントなど、特定の形を与えることで運用していた。
釣りに使っていた釣り竿も、このジャケットを変形させたものであった。
だが──理論上、触手のような不特定な形の運用も不可能ではないはずである。
「ふぅむ……ちょっとやってみるかのぅ」
少し悩んだ後、男は一度試してみることにした。
そしてむぅん、と唸って念じてみれば……ジャケットの背中側からペリペリと剥がれるような感じで、
2つの薄っぺらい銀色の触腕が生まれ、男の前まで伸びてきた。
「……おおう。やってみるもんだなあ……」
それを目の当たりにして軽く驚いたような声を漏らし、それからとりあえずクネクネと適当に蠢かせて動作確認をしてみたりして。
■エレイ > 「……む、そろそろ食べ頃かな」
触腕を動かして遊んでいたら、タコ足がいい具合に焼けてきていた。
男はまた少し思案してから、触腕の先端をフォーク状に変化させ、タコ足にドスッと突き刺した。
当然、自分の手ではないので熱くはない。
そのまま、触腕でタコ足を口元に引き寄せれば、がぶりと一口かじり取り。
「……。やはり便利だなという顔になった。あもりにも便利すぎるので頼りすぎないようにしねぇーとなあ……」
もしゃもしゃと咀嚼しながらそんな独り言を漏らすのだった。
■エレイ > そうしてタコ足を平らげ終えれば、片付けて海岸を後にした。
ご案内:「セレネルの海」からエレイさんが去りました。