2018/09/19 のログ
ご案内:「セレネルの海」にマーシアさんが現れました。
マーシア > 荒れ模様の一夜が明け、新しい朝の光が、静かに凪いだ海を煌めかせる時刻。
水面を渡る風は涼やかで、僅かな火照りを残す肌を心地良く弄る。

編み上げブーツを砂浜に脱ぎ、修道衣を模した衣の裾が濡れるのも構わず、
素足でめ冷たい水の中へ分け入って―――――腰辺りまで浸かった辺りで、そっと歩みを止める。
両手を胸の前で組み合わせ、目を閉じて天を仰ぎ―――――

「……どうか、御赦し下さい……私の、罪を、……穢れを」

異性と交わり、快楽に溺れた。
祈りを捧げるべき相手も、赦しを乞うべき相手も思い出せないのに、
滑稽だとは思えど―――――其れでも一心に、赦しを、浄化を乞う。
叶わぬならせめて、忘却を、と―――――。

マーシア > ―――――静まり返った朝の海に、異国のことばがぽつり、ぽつりと。

記憶に無い儘、祈りを続ける女の姿は、暫し、其の場に在り続けた。
其の背に広がる翼の白さを―――――微かに染みた影の色を、誰も知らない。
女自身も、また―――――。

ご案内:「セレネルの海」からマーシアさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」に姫遮那さんが現れました。
姫遮那 > ざぱーん、ざぱーん。
日の照る季節も遠く過ぎ、潮騒も大きく鳴り響く頃。
そんな曇り空の日に、セレネルの海の海辺に、小さなボートが一艘流れ着いた。

「……ふー、やっと着いたかィ。
 あと一日遅れてたら行き倒れてたところさねェ。」

ひょん、とその船から浜辺へ飛び降りたのは、マグメールではまず見ない珍しい姿の女性。
その顔立ち、髪の色は、遥かな海の先にある『東方』を思わせる。

「…さーてと…兎にも角にも飯、宿、酒!
 と言いたいとこだが、城下はどっちでィこりゃぁ。
 それに、こっちの手銭は使えるのかねェ。」

その女性は船から櫂を引っ張り上げ、肩に担いであたりを見渡す。
木で作ったこれまた珍しい履物が、さふさふと砂を噛んで鳴いた。

姫遮那 > 「……ここは…アレだ。伝家の宝刀ってやつをやってみるとすっかァ。」

そう言って、砂浜に櫂をざっくりと刺す。

奇妙な櫂だった。
箆にはぐるぐると包帯が巻かれており、そこにはおそらく異国の文字。
まるでワームでものたうったような奇妙なそれは、マグメール人はおそらく読めまい。
その上、そこらの男よりも高身長な女性より更に長い。小舟の櫂としては異様なほどに長い。
…そして何より、今の今まで漕いできたというのに、包帯には濡れも痛みもまるで無かった。

そんな櫂から手を離し、ささっと離れる。
櫂は砂浜の緩い拘束からあっさりと足を滑らせ、風にゆらりと押されて体勢を崩す。
哀れなことに、その姿はすぐに真横に寝転がることとなった。


「神様の言う通りー、ってなァ。……あっちかィ。」

倒れた櫂の先は、山賊街道を遡るように示していた。
道なりに行けば、確かに王都へ向かう道ではある。…徒歩で歩くような道ではないが。

ご案内:「セレネルの海」にカシオペアさんが現れました。
カシオペア > ──さく、砂を踏み、散歩の気軽さで歩み寄る長身の姿。
歩み寄るその途中、奇妙な儀式めいた行動が目に入ると、そのまま近寄っていく。

「……今晩は?」

近くで見ると、体格のいい男に比べれば目立たないとは言え、相当長身な自分より頭半分は上背がある。
随分と立派な女性。
彼女の姿を見かけてから近寄るまで、彼女の呟き自体は耳に入っていなかったけれど、
ジンクスめいた動きと雰囲気で、大体どんな事を考えていたのか何となく程度は分かる。
一度、彼女が顔を向けていた方向を見れば、彼女の顔を小首傾げて見上げ。

「貴女……旅人でしょう……?
 あっちは相当道が険しいから、止しておいた方がいいわ……。それに、もう夜。危険よ……?」

と、馴れ馴れしくはないが素っ気なくもなく、言葉を投げかけるのだった。

ご案内:「セレネルの海」にミロさんが現れました。
姫遮那 > 「ん。」

がんっと櫂を踏み、浮かしてから足で蹴り上げる。
まるで吸い込まれるように櫂は女の手元に戻り、右手から左手へ。

「おっと、今晩はァ。こいつァご親切にどうも、別嬪さんよ。
 …ああ、そうそう。ご明察ご明答。
 ついさっきここに流れ着いたばっかりの、文字通りの流れ者ってわけヨ。」

ふはは、と高らかに笑う女。
…気配はないものの、その立ち居振る舞いは『襲われれば迎撃できる』ような姿勢。

「だがヨ、『道が険しい』ってこたァ…『間違っては居ない』ってことかィ?
 こいつァ嬉しいね、異国異郷でも神さんのご加護は生きてるってェわけだ。」

ご案内:「セレネルの海」にミロさんが現れました。
ご案内:「セレネルの海」からミロさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」にカシオペアさんが現れました。
カシオペア > …戦い方や兵法の知識には疎いので良く分からないが、非常に隙が無い──と、そう感じた。
そも、隙を探して見ていた訳でもないのだけれど、迂闊に手を伸ばすのを躊躇われる独特の空気。これには覚えが有る。
戦い方自体は分からなくても、そういった使い手達と邂逅した記憶から、経験則によって目の前の彼女が『戦える人間』、それもかなりの達者、と分かる。

「ええ、私はこうして散歩をするのが趣味なのだけど……
時々、貴女のようなヒトを見かけるから」

だから、旅人だと推測したのだ、と。普通の見方をすれば、この辺りでは物珍しい装いに印象を全て持っていかれてしまいそうなもの。
高らかに笑う様子を眺めて、二度、三度──長い睫毛を重ねて瞬き。何か変な事を言ったのかと思いはしたが、そうでもない様子だ。

「何処に行くのか……想像だけれど、旅人なら大抵は王都に向かうわ?
そういう意味では……ええ……間違っては居ない、わね。
もっと楽に進める道もあるのだけれど……貴女は険しい道の方が楽しい、という人かしら」

あまり無理に親切を押し売りするのは気が進まない。なので、控えめにそう尋ねれば──

「でも、お節介だけれど……明るい内の方がいいわよ、険しい道なら、猶更……。
 宿も、近くにある事だし。少しいかがわしい宿だけれど、身包みを剥ごうなんて人はいないから」

姫遮那 >  
「なるほど。そういう事なら対応に慣れてるはずさネ。
 ってェ事は同郷も何人か居るのかねェ…別に会いたいわけじゃァねえんだが。」

ふーむ、と櫂をぐらぐらと揺らしながら首を傾げる。
暗闇の中では見えづらいが、そんな姿勢でも眼は忙しなく周囲を見つめている。
生まれ育ちか、それともカンなのか、辺りを警戒しているようにも見える。

「お、これまたご明察。いかにも、ちと城下を目指してみようかなんて思ってなァ。
 はは、まさか。それはそれ、これはこれヨ。険しい道も楽しいが、楽できるなら楽したいのがアタシさネ。
 そして何より、すぐにでも飯食って屋根の下で寝酒と洒落込みたいのが本音サ。」

カラカラと笑い、櫂を肩に背負う。
どうやら警戒は解いたようで、触れがたい空気感もふっとどこかへ消え去った。

「……ほほう。そいつはありがてェ。
 ココらへんとなると港町の宿かねェ、いいなァ。活気がありそうでヨ。」

くるっと振り返れば、海を挟んで向こう側にダイラスの灯火。
…「いかがわしい」という言葉に反応したように見えたのは、きっと気のせいだろう。

カシオペア > 同郷──と呼んでいいのか分からないが、同じ国の出身と思しき者を見かけた事はある。
旅先で同郷同士のコミュニティを頼る、何て事は良くあるので、そういう伝手を探しているなら……とも思ったが、特に探しているという訳ではない様子だ。
これが武器なのかしら……という興味を惹かれた視線で櫂? を横目に。
戦える人間の習性なのか、油断無く周囲を意識する様子は自然体に見え、女性ではあるが相当腕利きなのだろうと推測する。

「そう、それは良かったわ……。
 旅で疲れている所に余計な親切で煩わせたくなかったから……」

余計な口出しにならなくて、良かった。そう思い唇に薄く微笑みを湛え。
彼女が警戒心を解くと、空気が物理的に軽くなったような気がした。何となく吐息、一つ。

「あれはダイラス。見ての通り、大きな港町で、それ程離れていないところにあるわ……。
 貴女、健脚そうだから昼間なら半日もせずついてしまうかしら。
 私が言った宿というのは、確かに港もあるけれど……どちらかと言うと、街道沿いの宿場町ね」

 ここからだと道を少し迂回するから灯りは見えないが、ほんの十分程度の距離にある。

「大っぴらに下ろすのは憚られる荷を一時的に置いておくとか……
 そういう所。少し柄は悪い所だけど、小さい割に賑やかよ。
 女性を売ったり買ったりする宿ばかり……でも、意外と質は悪くないわね。私も今はそこに居る」

姫遮那 > 「ふはは、アンタみたいな別嬪さんに親切にしてもらってンのに邪険にしたら殺されちまわァ。
 ありがとヨ、えーと……あぁ、アタシは姫遮那(ニシャナ)っつーもんさネ。
 良ければお名前を教えて頂けやすかねェ。」

ぺこ、と頭を下げる。
…なんというか、仕草はどこか男性的だ。違和感があるとも言う。

「そうかィそうかィ、あれが『だいらす』ね。覚書しとかなきゃなァ。
 ……酒も充実してんだろうなァ。

 ……あ、それならアンタと同じ宿に泊まっても構わねェかィ?
 なぁに、どんな宿でどんな輩でも小舟の上よか十二分にマシだろサ。」

さふさふと砂を踏み、街道の上へ。
舗装された石畳を踏みしめれば、木の板のような履物がカロンと小気味良い音を立てた。

そして、唐突にくるりと振り返る。

「時にアンタ、人間かィ?それとも、あやかしの類?
 どっちにしろ悪いものじゃァねえようだがヨ。」