2018/09/02 のログ
ご案内:「セレネルの海」にアイディールさんが現れました。
■アイディール > 夜の浜辺に波が囁く。穏やかな音だ。
浜辺を撫でて、引いて、撫でて、引いて――規則的な声が夏の終わりの海辺へ響く。
月影に照らされる白く透き通るような砂浜には人影はない。
点々と、貝殻が転がる中に、その石は在った。
まるで誰かが砂浜に落とした忘れ物であるかのように。
――透明で小さな石の中に、まるで燃えているような光が存在する。
薄っすらと、時間に応じて色を変えていく。青、赤、黄、緑、紫――。
きらきらと煌めく色の中に、時折黒く闇のような色合いが走る。
それはそんな石だった。
ただ、静かに静かにそこに存在し、いつか消えてしまうだろう。
そこに存在するのが極自然で――けれど、決定的にどこか不自然な光。
そんな風に、今宵それはそこで何かを待っていた。
ご案内:「セレネルの海」にカシオペアさんが現れました。
■カシオペア > 気紛れに夜の砂浜を歩く妖魔の女。
足取りはゆるりとして、素足が砂の上に足跡を刻んでゆき。
夜風に揺らされる髪を押さえた時、視界の隅に眼を引くもの有り──
「──?」
始めは貝殻か、漂着したガラス容器か何かと思ったけれど。
近付いて見下ろしてみると、想像していた物と違う事が分かり。
見る角度を変えてもいないのに、小さな石のように見える物体の中で光が色を変える。
見た事も無い、奇妙な石だった。
妖魔はそっと、意思の傍に片方の膝をつき、もっと近くで観察しようとする。
夜にも稀な本を仕事の合間に読んで来たというのに、それに関する知識は無く。
それ故に非常に強く興味を惹かれるのであった。
■アイディール > 明るい緑色の眼差しに応えるように、魔石の色が変わる。
波を受ける度に群青色、山葵色、深碧、緑青――。
決して主張せず、控えめに控えめに誘うような光。
砂の中にあっても埋もれもせず、ただ、そこに在った。
膝をついて観察する妖魔にはわかるだろうか。
厳正にカットされ、厳重に整えられたような精緻なその石。
そこから僅かに漂うのは魔力のような気配。
大きさはちょうど、彼女の手に収まる程度。
■カシオペア > 近くで見るとまるで、視線に反応しているかのようにも──
光を受ける角度や見る角度で、大きく色が変わって見える石の存在は知っていたけれど。
見れば見るほど、不思議な物体、しかし。
「綺麗……ね……」
感想は、それだけでなくどこか妖しい魅力を放っても見え。
よくよく見ればカッティングの形跡があるそれは石と呼ぶべきでなく、宝石を呼ぶべきか。
触り心地は、どうなのだろう──?
冷たいのか、もしかしたら暖かいのか。
そんな興味をそそられた妖魔はゆるり、と手を伸ばし、その宝石を摘まみ上げた。
手の平に載せて、顔に近付ける──
■アイディール > 月の光に染まる訳でもなく、波の色に流される訳でもない。
ただ、見つめる妖魔の視線に応えるように色合いを変えていく石。
ぽつり、と零れ落ちる言葉。そして、伸びる指先。
抵抗などするはずもない。するりと摘まむ指に、掌に持ち上げられる。
じわり――と感じるのは仄かに暖かいような感触。
重さも、感触も、まるで彼女が持って、手に取るために誂えたように。
漆黒の肌に、指にそれは酷く馴染んで感じてしまうだろうか。
顔に近づくにつれて、仄かに熱が上がっていくようで。
■カシオペア > 近くで見ると宝石の中で揺れる光は一層美しく見えて。
まるで、宝石自体が目を喜ばせようしているかのように思える程に。
ただ不思議なのは、まるで人肌を思わせる暖かさだった点か。
夏の昼間に熱された石が夜に熱を保っている、なんて事もあるけれど──
そういうのとは、少し違うように思える。
それは元から暖かさを持った物体であるかのような。
普通なら不気味さを感じたかも知れないけれど、どこか心地良い。
まるで、自分の手の平に載せられる事を待っていたのか、と思ってしまう妖魔。
何となく手放すのが躊躇われて、顔に近付けた宝石の中を片目で覗き込み。
その暖かさを手の肌に感じながら──
■アイディール > 掌を、近付けた顔を、覗き込む瞳をまるで待ち望んでいたように魔石は煌めく。
覗き込めば、その内側に収められたような光の核が見えるだろうか。
自分自身で光を放つ魔石の中心―――その、刹那だった。
――魔石は発動する。
音も、気配もなく、彼女の頭上、前後左右に直方体の壁が生まれる。
そしてそれが急速に狭まってくるのが認識できるだろう。
縮小していく空間。ここではないどこかへの入り口。
石と、女を囲んだそれは逃れられない牢獄のように縮まって縮まっていく。
そして最後は、まるで最初から何もなかったかのように消える。
波の音だけを残して――。