2018/03/18 のログ
タピオカ > 照れくさそうにヒドラを手にある瓶に戻していく。
水に棲む生物が人の支配を受ける、そんな今まで見たこともない光景をぽかんと小さく口を開き見守って。

「ううん、気にしないで……。
魔の者……?魔族の人なんだ。魔族ってもっと……怖い人なのかと思ってたよ」

ヒドラが自分の何に反応したんだろう、と驚いてやや跳ねた心臓のあたりに片手で触れつつも。ゆっくりと首を振る。
魔族だと種族を明かす声音も丁寧で、とても王都を脅かすような悪い人には見えなかった。軽く唇を三日月にして笑みかけ。

「えへへ。春のはじまりの曲なんだー。朝の雰囲気の曲なんだけど、あのお月様が朝日みたいだったから、なんとなく吹きたくなって。
助産師の真似事……?儀式……。
ふふっ。謎めいてるんだね。
僕は、タピオカだよ。謎の紳士のお兄さんの名前、教えてもらってもいい?」

軽やかに話題を繋ぐ彼、自分の笛の音について言及されたら嬉しそうに後ろ手を組んで肩を揺らし。
助産師、儀式、太鼓の音。キーワードの連なりに不穏なものを感じつつ。彼へ興味を引かれたように自分の名前を知らせ。

「邪教での儀式って、どんな感じなの?
……こーんな、感じ?」

そう言うなりやおら、裸の男女がマスクをした集団によって鉄のテーブルに運ばれるようなおどろおどろしい曲を吹いてみせ。

ルルーエン > 「まぁ私もありようによっては恐ろしくもなるでしょうなぁ…しかし目に見える全ての生娘を犯して殺して食おうとはならない以上…今ここで抱く私の印象と腹の底は変わらないと思って頂いて良いでしょう。」

大体理性とは無縁の中で生きる魔族を思うと自分は確かに変わっているかもしれない。
魔の所業は男にとってはあくまで仕事であって、何でも無い今の時では平穏にもまた過ごすと言える
情動にかられる場合はその限りではないとしても

「タピオカさんですか…、私はルルーエンです。…こんな感じとい……おぉ?」

吹き奏でられる曲に驚いた。自分が立ち会ってきたのは太鼓と何だか良く分からない弦楽器だったが
笛でその雰囲気を再現されれば、思い返すと確かに全体の感じはその曲のままともいえる

「即興ですかな?…」

タピオカ > さらりと恐ろしい事を口走る整った面影に思わずびくりとなって。どうにか笑みを浮かべるけれど、少し口元がひきつる。

「うそ……だよね、あは……。
今までそういう事を何度も、してきたの……?」

あくまで穏やかな、落ち着いた口調と犯して殺してという台詞がうまく合致しなくて。しかし、豹変した彼が、その長身の影に自分や誰かを組み伏せるところを想像してしまってごくりと生唾を飲み。おそるおそる相手の顔を伺い。

「夜の砂浜での出会いなんて素敵だなー。よろしく、ルルーエン!
――うん!雰囲気的にはこうかなー、なんて。
哀れルルーエン達の餌食になった子羊は、肉の杭に屠られてしまうのですー……」

名前を返してもらえたら顔じゅうに笑み広げて声音を弾ませる。
彼の上がった語尾へこくんと頷いてみせる。
続けてその「邪教の儀式」を戯れのように続ける。
不協和音吹き散らしつつも、相手の足元に跪き。まるで相手を邪教崇拝の司祭のように敬いつつ、儀式の生贄を演じて。両手を合わせて身を屈めてみせ。

ルルーエン > 「まだ私が小さな一つのヒドラであった時はそうもしたでしょう…しかし私はその業を愛でるだけです。」
「そうするべき時をわきまえる事が出来る」

言葉の頭を聞き取るのであれば、先ほどまで周りにうごめいていた触手達、ヒドラ、海魔。
元を最初を辿ればこの目の前の男もあれらヒドラの一匹であったと言える。

「っほほーーーー、まるで戯曲ですな」
曲の間に挟まる口上に思わず上張りで声を高く上げる男。
不協和音と共に情景を振舞い見せる少女、足元に付くと男は、甲斐甲斐しく手に持っていた瓶を抱き
手をしなやかに上に上げると、目を細めて月を見上げた。何か合わせているようだった

エタイス瓶の底で赤黒い液体がゴポゴポと泡立った
「違う違う、呼んでない」
すぐさま瓶は元の空の状態に戻っていく

タピオカ > 「すごいや、哲学の授業みたい……
本当の意味で、お兄さんがこのヒドラだったのかどうかわからないけれど……」

人間を一本の葦に例える人もいるから。分厚い聖典の某節に出てくる例えの話なのか、それとも事実、彼の長身はもともとヒドラのサイズから始まったのかと再び見上げた。

自分の即興戯曲に合わせて役を演じてくれたら、瞳だけで微笑んで。貞淑な生贄のままじっと無防備な首を晒そう。

「……それじゃあ、夜も遅くなってきたし僕はそろそろ行くね。
さよなら、またね!」

頭上で何やら泡立つ気配がしてきょとんと顔を上げるけれど。
そこには空の瓶があるのみ。くすっと肩震わせたら立ち上がって。
ひらりと片手を上げれば、別れの挨拶代わりに笑みかけて。
夜の砂浜に足跡つけていけばやがて姿は見えなくなり――

ルルーエン > 「まぁ…話せば長くなってしまうのです…」
静かに目を閉じながら笑いかける

……戯曲が静まった、トンと立ち上がり、また活発なその姿に戻る頃には男も
エタイス瓶の中の魔を抑え込んだ所で、少女の別れに向けた笑顔に
僅かにほほ笑めば、くねる白く細い指が揺らめき、見えなくなる少女を見送った。

男も、すっかり短くなった煙草を、灰皿の中に押し込むと、2本目の煙草をふかしながら
また影のように現れるヒドラ達と共に海岸から姿を消していった

ご案内:「セレネルの海」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」からルルーエンさんが去りました。