2017/10/31 のログ
クトゥワール > 過日に試みた洞窟探検は、無事に失敗に終わった。
かなり呆気なく迷ったのだ。もともとからして興味本位の行動で、大した準備もしていなかったとはいえあまりの呆気なさに消化不良気味なのは否めない。
ゆえ、とりあえず外見の全容を把握する所から始めようと海岸沿いをうろついていたのだが。
それなりに遠い距離、灯りのステッキを掲げる此方を発見して近づいてくる松明が複数見える。

「流石に予想外だったな。」

吐き出す言葉には溜息が混ざった。
夜と海を掛け算すると、出て来る答えの一つに拐かしというものがある。
距離を詰めてくる松明の向こう側には縄で縛り上げられた幾つかの人影。今まさに、という現場に出くわしてしまったというわけだ。
たとえ己に関わるつもりが無くとも、向こうが放ってはおかないだろう。
見られたからには、生かしちゃおけねぇ。
あまりにも判りやすい声が聞こえた。

「ガラではないが、仕方ないか。」

ステッキを砂浜に突き立てる。数歩下がる。
近づいてくる影をその場で待つ。ご挨拶までそれほど時間はかからないだろう。

クトゥワール > やがて目の前に現れた荒くれ達は、示し合わせたかのように様式美的な台詞を言い立て始める。

運が悪かったな、兄ちゃん。
男じゃ金にもなりゃしねえからな。
恨むならテメェのツキを恨みな。

前口上はちょっとした観劇のようでさえあった。
そして言いたい事を言い終えた彼らが殺到しようとした刹那、その動きに反応したように突き立てたステッキの持ち手から影が走る。
ステッキから放射状に飛び出した幾条もの触手が男たちの身体に絡みつき、その動きを封じて締め上げる。

「男に使うのは、あまり見たい光景じゃないんだがな。」

普段はもっと別の使い方をするモノ達は、普段使われる時の数倍にもなる膂力を発揮して捕えた対象を逃さない。
骨まで砕けるのにそう時間はかからないだろう。

ステッキと、捕えられた男たちを尻目にその向こう側、縄で縛られた影へと歩み寄る。
近づいて、彼らの姿がはっきりした。どこか良い家の子女とその従者というような出で立ち。

「こちらも典型的な組み合わせだな。」

淡々と感想を述べつつ近づいていく。

クトゥワール > 捕えられていた女達も、後方で身体を砕かれていく男達のように恐怖の表情を浮かべている。
無理もない事だが、不本意ではある。

「そんな顔をするな。ただの行きがかりだ。」

一人の縄を解き、彼女らに背を向けた。
事切れた男達の傍ら、ステッキを回収してその場を後にする。
彼女らは程なくして救助隊に発見されるだろうが、その場に居合わせるつもりはなかった。

程なくして生きた者の姿は消え、夜が明けた頃にはその場所には、男達の死体が転がっているのみになるだろう。

ご案内:「セレネルの海」からクトゥワールさんが去りました。